アルフレッド・バクスターの半生   作:マロニエ19号

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スマホゲーム「ホグワーツの謎」にはまったので書いてみました。それではどうぞ!


一年目(1985年)
入学前


1985年。闇の帝王が奇跡の子ハリー・ポッターに打ち破られてから数年………魔法界には平和が訪れていた。

 

しかし、数年の月日が流れても闇の帝王の傷跡が完全に癒えた訳ではない。闇の帝王によって人生を狂わされた魔法使いや魔女は数知れないのだ。英雄ハリー・ポッターのように。そして、俺の両親もそうだった。

 

 

もっとも、俺の両親の場合は被害者ではなく、()()()()だったのだが。

 

俺の両親は闇の帝王の配下である死喰い人だった。と言っても立場はずっと下の方だったらしいが、色々あくどいことをやっていたようで、俺が小さい頃に捕まってアズカバン行きになってそれっきりだ。多分もう二度と会うことはないだろう。

 

そんな訳だから元死喰い人の息子である俺は魔法界ではものすごく風当たりが悪い。俺の面倒を見てくれる奇特な存在が二人もいなかったら俺は間違いなく死んでいたと思う。

 

 

この日も俺は家の郵便受けから手紙を取り出していた。郵便受けの中には()()()()の手紙が入っている。それも何通も。

 

俺が死喰い人の息子なのがもうバレたようだ。小さい頃から何回か引っ越しているが、すぐに特定されてしまいこういった誹謗中傷は当たり前になる。しばらくすればこの家にも落書きやら何やらをされるだろう。前に住んでいたところでは窓に石を投げられた。その前は家の前に生ゴミを捨てられた。

 

はぁ……そろそろこの家ともお別れかね……この家にもやっと慣れてきたってのに……

 

そんなことを思いながら紙をペラペラとめくっていると、一枚の手紙を見付けた。差出人を見ると、俺は文字通り、飛び上がった。

 

こうしちゃいられない。そう思って俺はこの家の同居人に向かって駆け出した。

 

「ヘザー、ヘザー!!」

 

俺が呼び掛けると、一人の年を取った屋敷しもべ妖精がパシュッという音と共に姿を現した。彼の名はヘザー。俺の面倒を見てくれる奇特な存在の一人だ。俺はヘザーと一緒に暮らしていた。

 

「どうしましたか、アルフレッドお坊ちゃま。そんなに大声を出されて。もしやまた誹謗中傷の……」

「ううん、いやまぁ、それもあるけど…… それより、これ見てよ!」

 

俺はヘザーに手紙を見せる。手紙に目を通すと、ヘザーは「ふひゃあ」と変な声を上げて俺と同じように飛び上がった。

 

手紙には簡潔にこう記されていた。

 

 

『アルフレッド・バクスター様

 

このたびホグワーツ魔法魔術学校に、めでたく入学を許可されましたこと、心よりお喜び申し上げます』

 

 

とても短い内容だったが、俺はすごく嬉しかった。

 

「ねぇ、ヘザー。俺とうとうホグワーツに入学出来るんだ。やったよ!」

「おめでとうございます、本当におめでとうございます、アルフレッドお坊ちゃま。早速ジルク様にもご連絡をしないと」

「あ、そうだね。ジルク叔父さんにも伝えないと」

 

久しぶりに我が家は楽しそうな笑いに包まれた。晩御飯は誕生日やクリスマスと同じくらい豪勢なものをふるまってくれた。

 

 

 

それから数日後、俺はジルク叔父さんとダイアゴン横丁まで買い物に出かけていた。ジルク叔父さんはお父さんの弟で魔法生物学者として各地を飛び回っている。そして、ヘザーと同じく俺の面倒を見てくれる奇特な存在の一人だ。ジルク叔父さんは結婚をしておらず子供がいない。だからなのか小さい頃から俺のことを可愛がってくれている。

 

ジルク叔父さんは感慨深そうに言った。

 

「それにしても、あの小さかったアルがもうホグワーツに通う年なんてな。早いもんだぜ」

「もう、やめてよ。ジルク叔父さん。小さい子供扱いするのは」

 

いつまでもチビッ子扱いされるのは嫌なのでそう言うと、ジルク叔父さんはガッハッハと豪快に笑って俺の頭をクシャクシャにする。ジルク叔父さんの手はゴツゴツしたダグホッグみたいで少し痛い。

 

「痛いよ、ジルク叔父さん」

「な~に生意気言ってんだ。俺から見りゃまだまだ小さいガキだよ。ガハハ」

 

そんなこんなで俺とジルク叔父さんは色々な店を回って買い物をする。教科書やローブ、鍋などの授業道具、それからペットだ。ペットはヒキガエルにした。このヒキガエルは何故か小さめの壺に入るのが好きなちょっと変わった子で、気に入ったのでそいつにしたのだ。そのヒキガエルには「クライン」と名付けた。我ながら秀逸な名前だと思う。現在クラインは一緒に買った小さめの壺の中でスヤスヤ眠っている。

 

ジルク叔父さんは買い物リストにチェックを入れながら確認する。

 

「さてと……お次は杖だな……」

「杖なら店は()()()だよね?」

「ああ、それじゃ行こうか。オリバンダーの店に」

 

 

オリバンダーの店。ジルク叔父さん曰く杖の店では魔法界一らしい。だが、目の前の店の外観からはとてもそうには見えなかった。一瞬、ジルク叔父さんが間違えたのかと思ったけど、扉に剥がれかかった文字で「オリバンダーの店」と書いてあるので間違いないみたいだ。

 

歴史があると言えば聞こえは良いけど、正直少し……いや、かなりボロい。本当にここが魔法界一なのだろうか? そんなことを思っているとジルク叔父さんが中に入ったので、俺も続いた。

 

店の中には沢山の杖の入った箱が所狭しと積み上げられており、下手にぶつかると雪崩が起きてしまいそうだった。それにどこか埃っぽい。そんなことを思っていると奥から一人の老人が歩み出て来た。店主はしわがれた声で挨拶をする。

 

「いらっしゃいませ。オリバンダー杖店へようこそ。杖をお買い求めで?」

「ええ、俺の甥っ子が今年ホグワーツに入学なので」

 

ジルク叔父さんがそんなことを言いながら、俺を肘で小突く。挨拶しろってことか。

 

「えっと……初めまして」

「ほほう、元気が良いのう。さて、ではまずは採寸といきましょう。杖腕はどちらかな?」

「えっと右です」

 

俺は右腕を出すと、店主はポケットから巻尺を取り出す。巻尺はひとりでに動き出して俺の身体を採寸した。身体のあちこちを採寸してくるので正直気持ち悪かったが、何とか我慢する。やがて採寸が終わると、店主はいくつか箱を俺の前に出した。店主曰く杖には様々な木や様々な生物の部位を使っているらしく、一本一本にそれぞれ違う個性があるのだそう。中々興味深い話だった。今まではただの木の棒だと思ってたけど、違うのか。

 

店主は複数の箱の一つを開けて一本の杖を取り出した。

 

「まずは試しにこれを振ってごらんなさい。モミにドラゴンの心臓の琴線で25センチ、耐久力は抜群」

 

俺は杖を受け取って試しに軽く振ってみると、杖が石鹸のようにすっぽ抜けてしまった。もちろん、ちゃんと握った状態で振ったはずなのだが、手から勝手に抜けてしまったのだ。店主は顎に手を当てて呟く。

 

「……ふむ。それならこちらでどうかの? リンボクに一角獣のたてがみで29.8センチ、やや弾力性があり柔軟」

 

俺は次の杖を受け取って軽く振ると今度は何も起きない。店主は首を横に振った。

 

「どうやら、これも違うようじゃの。それならお次はこいつじゃ。ハンノキにドラゴンの心臓の琴線で24.7センチ、少々頑固だが忠義者」

 

今度は武骨なフォルムの杖が現れた。試しに握ってみると、杖が光ったような感じがした。さっきまでの杖と違ってフィットする感覚が走る。遠くで見ていたジルク叔父さんが「ほお……」と感嘆の声を上げているのが見えた。店主も俺と同じことを思っていたようで、何度も頷いている。

 

「うむ、うむ。どうやら杖がお前さんのことを所有者と認めたようじゃな」

「へぇ、これが……」

 

初めての感覚で俺は杖を見つめていると、ジルク叔父さんが俺を小突いた。お金を払わないといけない。魔法界一と謳われる店なだけあって中々のお値段だった。

 

 

こうしてホグワーツの準備は終わりを迎え、俺達は家に帰った。入学の日を迎えるのが今から待ち遠しい。




オリバンダー翁が二本目に渡したリンボクの杖はホグミスで主人公が選ぶ杖の一本です。今作のホグミス主人公は別の杖を選んでいます。
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