アルフレッド・バクスターの半生   作:マロニエ19号

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お久しぶりです。


ハッフルパフの友達

モンドと不愉快な仲間達が絡んできたのを切り抜けてからしばらく経った。相変わらずグリフィンドールの連中は俺達スリザリン生を異様に敵視している。まぁ、スリザリンにもグリフィンドールの連中を見下している奴らが多いしお互い様か。

 

現在、俺やランディといったスリザリンの一年生達はホグワーツ城の裏側に位置する温室へ向かっていた。次の授業が薬草学だからだ。薬草学では温室内で様々な植物の取り扱いについて学ぶ。といっても、一年生はまだ本格的に植物に触れることはなく、講義が殆どだ。マンドレイクや暴れ柳など、危険な植物も多いので、まずはそれについて学ぶことが必要なのだ。

 

また、薬草学はスリザリン内では好き嫌いが露骨に分かれている科目の一つである。何せ泥で汚れてなんぼの教科なため、そういうのを嫌がる生徒達からはとことん嫌われる。一方で、この教科はスリザリン生の多くが得意とする魔法薬学に密接に関係するため、薬草学に興味を持つ生徒も多い。材料に関する知識が深くなければ、優れた魔法薬を調合することは不可能だからだ。

 

そして、俺は薬草学は好きな科目である。動物のように明確な意思表示をしてくれる植物もあるし、言葉が通じない分、人間よりずっと単純で良いからだ。

 

ちなみに、この薬草学の授業ではハッフルパフと合同で行っている。流石にこの科目までグリフィンドールと合同だったら、授業の時間が憂鬱になっていただろう。特にモンドとその一味には極力関わりたくない。そこは教師陣に感謝だ。

 

温室に入り、担当教授のスプラウト先生から植物が植えられた鉢を受け取ると、空いている席に座る。この授業ではグリフィンドールとの合同授業ほど、露骨な分かれ方はしていないが、割とハッフルパフとスリザリンで分かれている。

 

本当にスリザリンって嫌われてるんだな。そんなことを思っていると、温室に一人のハッフルパフ生が慌てた様子でやって来た。遅刻ではないが始業時間ギリギリだ。スプラウト先生がそのハッフルパフ生を注意する。

 

「ミスター・エメライン、時間ギリギリですよ」

「いや〜、すみません、スプラウト先生。途中、ピーブズの邪魔が入ってしまって……」

 

そのハッフルパフ生、エメラインは鉢を受け取ると、すぐ近くの俺の隣の席に座った。そして、彼は呼吸を整えてから周囲を見渡すと、「しまった!」というような表情を浮かべる。授業の時間に間に合うのに夢中で、自分がスリザリン生達のグループに入ったことに気が付かなかったようだ。移動しようにも始業時間になってスプラウト先生が話し始めたので、エメラインは諦めたかのように項垂れた。別に取って食いはしないのに。失礼な話だ。

 

「はい、揃いましたね。では皆さん、授業を始めますよ。今日はこのカノコソウについて勉強していきます。この薬草は様々な魔法薬にも使用されています」

 

スプラウト先生の説明を聞きながら、カノコソウを眺める。葉は青々としており、水も肥料も十分そうだ。チラリと横を見ると、エメラインはうつらうつらと船を漕いでいる。開いているページも随分前のところだ。

 

「……では、ミスター・エメライン」

「っ!? は、はい!」

「カノコソウを育てる上での三つの注意点のところを音読して貰えますか?」

「は、はい! えーと……」

 

スプラウト先生に指名されたエメラインはパラパラと必死に捲るが、どこのページなのか分からないようだ。そんな彼を見かねて小声でアドバイスを送った。

 

「161ページ」

「えっ? えーと……161、161……」

 

俺に言われて驚きつつも161ページを必死に捲るエメライン。そんなエメラインに呆れたのかスプラウト先生は溜息を吐く。

 

「ミスター・エメライン。飛行訓練に夢中なのは知っていますが、授業中に居眠りはいけませんよ。ハッフルパフに二点減点です。では、ミスター・ウェルボーン、代わりにお願いします」

「はい」

 

先生に注意されてシュンと項垂れるエメライン。周りの席からクスクス笑いが漏れる。

 

ちなみに、エメラインが減らした二点は、同じハッフルパフ生のウェルボーンがしっかりと音読したことでしっかりと回収された。流石ハッフルパフの寮監だ。

 

 

「おーい、待ってくれよ!」

 

それから授業が終わり、寮に戻ろうとした時、俺はエメラインに呼び止められた。

 

「さっきはありがとな! 結果的に減点されちゃったけど、助かったよ」

 

屈託の無い笑顔で礼を言われて思わず「おぉ」としか答えられなかった。

 

「そういえば、スプラウト先生が飛行訓練に夢中とかなんとか言ってたけど……」

「ああ、オレ来年はクィディッチチームに入りたいからさ。学校の箒借りて練習してるんだよ」

 

どうやらランディやモートンと同様、寮のクィディッチチームに入るために情熱を燃やしているらしい。こりゃあ、来年以降は手強いライバル出現だな、二人とも。

 

「まぁ、クィディッチチームに入りたいのは結構だけど、あまりやりすぎるなよ。今回は気まぐれで手助けしたけどさ」

 

結局減点されてたから手助けにもなってなかったけど。

 

そう言うと、エメラインは楽しそうに笑った。

 

「まぁね。いや〜スリザリン生にもこんなに話しやすいやつがいるんだな。正直意外だったよ」

「意外?」

 

エメラインが言うには、スリザリン生は自分達ハッフルパフ生を見下している者が多く、手助けしてくれること自体なかったのだそう。まぁ、そうだろうな。ハッフルパフは劣等生の寮だと思っている輩は一定数いるし。

 

「俺は元々ハッフルパフ志望だったからな。入りたかった所を悪く言いたくないんだよ」

「え!? ハッフルパフ志望だったの!? それなのにスリザリンって珍しいね!」

「笑えるだろ? 組み分け帽子も耄碌したのかな?」

 

俺が皮肉げにそう言うと、エメラインは少し困ったような顔をして言った。

 

「でもまぁ、スリザリンに入れたのなら入れたなりの理由があるかもね。君はスリザリンに入ったことを後悔してる?」

 

エメラインに質問された俺は顎に手を当てて考える。

 

確かに最初はスリザリンに組み分けしたあの帽子に恨みもあったし、燃やしてやろうかとも思った。だが、今ではスリザリンに入ってそんなに後悔はしていない。寮の人も基本良い人ばかりだし。ただ、嫌われ者の寮なので余計な悪評も立ちやすいが。

 

「確かに、案外悪くないところではあるな」

「だろ? オレもハッフルパフってあんまり良いイメージが無かったけどさ。今ではすっかり気に入ってるよ」

 

エメラインとそんなことを話していると、次の授業の時間が近づいていることに気がついた。次は魔法史なので、そこまで慌てる必要はなさそうだが。

 

「じゃあ、俺はそろそろ行くよ。君も早く次の授業の準備しないと大変だぞ」

「おっと、いけない! 次は呪文学なんだ! それじゃあね!」

「ああ!」

 

俺とエメラインはそれぞれ自分の寮に戻ろうとした時、再びエメラインに呼び止められた。

 

「あ! そうだ、自己紹介忘れてたわ。オレはユーイン・エメライン! 君の名前は?」

 

エメライン、いやユーインにそう尋ねられて俺も返事をする。意外と同級生でもスリザリン以外だとあまり名前が分からない人も多い。スリザリンが他の寮と隔絶しているのも原因だろう。モンドみたいによっぽど目立ってないと認知しにくいのだ。

 

「俺はアルフレッド・バクスター。アルで良いよ」

「OK、じゃあな、アル。また薬草学の授業でよろしくな!」

「遅刻しないようにな」

「勿論さ!」

 

そうして、俺とユーインはそれぞれ自分の寮に戻った。新たな友達が出来た嬉しさから思わず笑みが溢れ、ランディから気味悪がられてしまった。




1年生時の薬草学の授業風景が分からないので、普通の講義形式にしました。最初のうちは普通の座学形式が殆どかなと思います。マンドレイクとか碌な説明も無しに扱わせないでしょうし。
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