アルフレッド・バクスターの半生   作:マロニエ19号

13 / 28
勉強会からの友情

「だからこの薬草は陽当たりの良い場所じゃないと育たないんだって」

「ああ、そうなんだ……」

 

ある日の放課後、俺は図書室でユーインに薬草学を教えていた。なんか俺、いつも図書室にいるような気がする。実際何人か、図書室に顔見知りが何人か出来てきた。

 

ユーインはあまり薬草学に興味が無いようで、俺の解説にも生返事だ。なので、試しに全く別の質問をしてみた。

 

「なぁ、ユーイン。ドップルビーター防衛って何だっけ?」

「え?」

 

ユーインは呆けた声を上げるが、すぐにスラスラと答える。

 

「ドップルビーター防衛は、二人のビーターが同時にバットを振ってブラッジャーを弾き飛ばすテクニックだ。二人分だからこそ威力も高いけど、ビーター同士のタイミングが重要な……」

 

そんなユーインに思わず溜息を吐く。

 

「お前、何でクィディッチ関連はそんなスラスラ答えられるのに薬草学は全然なんだよ……」

 

俺が呆れたようにそう言うと、ユーインはバツが悪そうに頬を掻く。

 

顔を覆いたくなってきた。さっきから教えているのだが、全然伝わっている感じがしないのだ。ハッフルパフの同級生が匙を投げるのも分かる気がする。かく言う俺も投げたい。

 

そもそもの話、俺が教えなくても、ユーインと同じハッフルパフ生達が教えれば済む話なのだ。だが、彼らではなく俺が教えているのは、俺が薬草学が得意なのと、献身的で忍耐強いはずのハッフルパフ生達が投げ出す程にユーインが全然分かっていないのだ。つい先日クィディッチシーズンが始まって、より一層勉強に身が入らなくなったらしく、小テストの点数が凄いことになっていたそうだ。

 

そんな訳でユーインに泣きつかれて俺が教えることになっているのだが、全然効果がない。「今日は特に予定も無いし良いか」と思って安請け合いした少し前の自分をぶん殴りたくなってくる。もうスプラウト先生にでも聞けよと言ってやりたい。

 

そんな時、俺達に声を掛けて来る者がいた。

 

「あれ? アルじゃないですか?」

 

聞き覚えのある声だったので、顔を上げると、そこにはミアともう一人の女子生徒がいた。赤毛の三つ編みと青縁眼鏡が特徴的だ。その子は見覚えがあった。確か、いつも図書室で見かけるレイブンクロー生だ。名前は知らないけど、ずっと本を読んでいる印象がある。

 

「なんだ、ミアか。まぁな。友達のユーインに薬草学を教えていたんだ」

 

普通に会話をする俺達をユーインとレイブンクロー生は意外そうな顔をしていた。犬猿の仲であるグリフィンドール生とスリザリン生が仲良くしているのが滅茶苦茶珍しいようだ。

 

全然話したことがない人もいるし、折角なので、お互いに自己紹介することになった。

 

「あ〜俺はアルフレッド・バクスター。スリザリン生だよ。えっと、君は……」

「あ、わ、私はイスカーチェリ・マッケイ。えっと、レイブンクローです」

 

どこか辿々しい。随分大人しい雰囲気の子だ。

 

「私はミア・ベイカー、グリフィンドール生です。イスカとは同じスフィンクスクラブなんですよ。だから、一緒に図書室に来たら、アル達がいたので……」

 

ミアがそう言ってユーインにチラリと視線を向ける。ユーインも心得たと言うように自己紹介を始めた。

 

「オレはユーイン・エメラインだよ。見ての通りハッフルパフ生。アルに薬草学について教えて貰ってたんだ」

 

ユーインが能天気にそう言うと、俺はジト目を向ける。次にミアとマッケイに目を向ける。

 

「そういえば、ミア達、今暇か?」

「え? まぁ、特に用事は無いですよ? ここに来たのもイスカが来たいみたいだったので来ただけですし」

「……私も本を読みに来ただけで、特に用事はない」

 

どうやら二人とも読書のために図書室に来たらしい。なら彼女達の力も借りよう。

 

「なら頼む! ミアとマッケイもユーインの勉強を教えてやってくれないか? 俺一人じゃもうお手上げで……」

 

俺がパンッと手を合わせて頼んだ。ユーインも俺に倣って頭を下げる。ミアとマッケイは顔を見合わせた。

 

「あ〜私で良ければ」

「……私も大丈夫」

 

この子達の力を持ってお手上げなら素直にスプラウト先生に投げよう。こうして四人の勉強会が始まった。

 

結局、ユーインはスプラウト先生に聞かずに済んだ。今まで俺が教えたのが何だったんだと言いたくなるくらいにすんなり覚えられたのだ。

 

というのも、マッケイは教え方が凄く上手い。俺がクィディッチ関連ならスラスラ答えられると愚痴ったら、それに絡めて色々な雑学を教えてくれたのだ。

 

そのおかげでユーインも興味を持ってくれたので、何とか覚えられるようになったのだ。皆で一息吐き、俺はミアとマッケイにお礼を言った。

 

「ありがとな、二人とも。手伝ってくれて」

「ああ、本当にありがとう。凄い分かりやすかったよ」

「どういたしまして。といっても、殆どイスカのおかげでしたけどね」

「……私は何も……」

 

マッケイがプイと顔を背ける。顔が若干赤い。照れているようだ。

 

「なんというか、マッケイ、お前よくそんなことまで知ってるな」

「えっと、私……小さい頃から本が好きで色々な本を読んでたから、それで」

「へぇ、凄いな……」

 

俺が感心したように言うと、マッケイは意外そうな顔で俺を見てくる。

 

「? どうかした?」

「……あなた、変わってる。ミアと友達な時点でかなり変わってるとは思ってたけどそれ以上」

「そ、そうか……?」

 

マッケイ曰く、以前スリザリンの女子から本の虫と馬鹿にされたことがあったらしい。それでスリザリン生に対してあまり良い印象を持っていなかったらしい。確かにスリザリンの女子も気が強いというかキツイ感じの子が多いからな。マッケイみたいなタイプは鼻につくんだろう。

 

「オレもビックリしたよ。お前、グリフィンドールの子とも友達だったんだな」

 

ユーインが意外そうにそう言った。思わずミアと顔を見合わせる。

 

「そんなに意外なのか?」

「まぁ、普通はいないみたいですしね……」

 

そんなことを話していると、夕食の時間になったのでそろそろ図書室を出ることにした。

 

「アル、ベイカー、マッケイ。今日は本当にありがとう。おかげで助かったよ」

 

ユーインが改めて俺達にお礼を言った。俺は肩を竦める。

 

「ホントだよ…… 次の小テスト、期待してるぞ」

 

俺がそう言うと、ユーインは頑張るよと意気込む。これなら今までのような点数にはならないだろう。俺からもミアとマッケイにお礼を言った。

 

「俺からも礼を言うよ。二人とも、特にマッケイは今日ありがとな。俺一人じゃどうにもならなかったよ」

「はい、どういたしまして」

「ん……どういたしまして」

 

ミアもマッケイも頷いた。

 

「それと……イスカで良い。あなた達、良い人だから」

「あ、私もミアで大丈夫ですよ。私もユーインって呼んで良いですか?」

「へ? ああ、良いよ。改めてよろしくな〜」

「俺もアルで良いよ」

 

勉強会を通じて友達の輪が広がった。スリザリンの同級生以外に、俺はこの三人と行動することが多くなった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。