アルフレッド・バクスターの半生   作:マロニエ19号

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決闘クラブ

俺は、ノーマンに連れられて、決闘用のコートに移動する。練習をしていた他の生徒達がこちらを見ている。何人かは「またやってる」と言いたげな顔をしていたので、よくあることなのかもしれない。

 

コートに入ると、ノーマンは俺の前に立ち、堂々と宣言した。

 

「それではこれより、アルフレッド・バクスターとこの私、フロイド・ノーマンの決闘を執り行う!」

 

周囲から歓声が上がった。ノーマンは続ける。

 

「アルフレッド・バクスターの立会人はリサ・カウワンが、私の立会人はロイド・フィッツパトリックが務める。そして、勝敗の判定についてはアデレード・カトラスにお願いしたい。良いね?」

「大丈夫です」

 

同じヒッポグリフ・クラブのカトラスがそう返事する。彼女も決闘クラブに入っていたのか。

 

「よろしい。では、簡単にルールを説明する。決闘の範囲はこのコート内。コートから出た者、杖を失った者、戦闘能力を失った者は敗北となる。そして、重要なことだから言っておくが、この決闘クラブでは医務室で治せないような怪我を負わせた者は問答無用で敗北、クラブから出禁となる。まぁ、二年生の君はそこまでの魔法をまだ習っていないはずだから心配はないはずだけど、一応念のためにね。以上、何か質問はあるかい?」

「いえ、大丈夫です」

「よし! では早速始めよう! アデレード、合図を頼む」

「はい!」

 

ノーマンに言われ、カトラスは、声を張り上げた。

 

「では、両者、互いに礼! ……それでは、はじめっ!!」

 

伝統的な決闘の所作をとり、ノーマンに背を向けて三歩進んだ俺は、振り向きざまにエクスペリアームスを放った。ノーマンの腕はダランとぶら下がっていて、無気力そのままだ。

 

だが、ノーマンはすかさず防御してしまう。杖の動きも殆ど見えなかったし、呪文も滅茶苦茶早口だったけど、多分プロテゴ……だよな? 「プゴッ」て聞こえたけど。

 

「なるほど。何を撃ち込むか、最初から決めていたようだね。悪くない。だが、その程度では私には勝てん。さぁ、どんどん掛かってきたまえ!」

 

そう言われると、流石にカチンとくる。なので、今覚えている魔法で、攻撃に使えるやつを色々ぶつけてみるが、ノーマンは全て完璧に防御してしまう。またしても、ノーマンから挑発の言葉を投げかけられる。

 

「どうしたどうした! 君は廊下わきに突っ立っている甲冑飾りか? コート内なら、どこから攻撃しても良いんだぞ! 足を使え!」

 

そう言われて、ハッとする。確かにずっと同じ場所から攻撃していた。これでは簡単に対処されてしまうだろう。俺は右方向に駆け出し、エクスペリアームスを放つ。走りながらだとどうしてもズレてしまうから撃ちづらいな。

 

横方向や背後から魔法を使うが、どれも完璧に防がれてしまう。そんなこんなで二十分後。

 

俺は息も絶え絶えになっていた。ノーマンはふむと頷いた。

 

「中々根性があるな。よし! 折角だ。本物のエクスぺリアームスを見せてやろう」

 

そう言うと、ノーマンは杖を構えた。俺も警戒するが、散々走り回ったせいか、頭が全然回らない。

 

「エスペアスッ」

 

 

……何が起こったのか一瞬、分からなかった。ノーマンが杖をほんの僅か揺らし、呪文なのか分からない文言が飛んだ時、俺の手から杖が消えていた。カランッという音が背後に聞こえ、振り返ると、俺の杖が一メートルくらい離れた場所に転がっていた。カトラスの声が決闘場に響いた。

 

「それまで! 勝者、フロイド・ノーマン!」

 

その瞬間、周囲から歓声が飛んだ。

 

「ナイスファイトだ、バクスター!」

「下級生相手に大人げないぞ~、フロイド!」

「なかなか有望そうなのが来たな!」

 

観衆が沸く中で、俺は落とした杖を拾うと、声を掛けられた。リサとフィッツパトリックだ。

 

「お疲れ様。どうだった、ノーマン会長は?」

「……強すぎる。何なの、あれ? 六年生は皆あのレベルなの?」

「そんな訳あるか。言っておくが、あいつが異常なだけだからな。間違っても、僕達の学年の基準にはしないでくれよ?」

 

フィッツパトリックが食い気味に否定していると、ノーマンも話しかけてきた。

 

「やぁやぁ、お疲れ。さっきも言ったけど、君は根性があるね」

「あ、ありがとうございます」

「君は運動が苦手かい? 魔法使いは体力が資本だ。どんなに魔法の知識があっても、身体を動かせないとどうにもならないぞ、ハッハッハッ」

「……知恵を重んじるレイブンクロー生とは思えない発言ですね」

「ああ、よく言われるとも。だが、揺るぎない事実だ」

 

リサやフィッツパトリック、ノーマンと会話するうちに、俺は決闘クラブも結構面白そうだなと思い始めていた。ボロクソに負けたけど、相手は上級生、しかも会長を務める程の人だ。悔しいというより、凄いという気持ちの方が強かった。決闘クラブに通えれば、ノーマンみたいに強くなれるかもしれない。そう思うと、クラブに入りたい気持ちが強くなった。そんな俺の内心を見抜いたのか、ノーマンは真面目な顔になる。

 

「バクスター、我々決闘クラブは決闘を通じて、自己研鑽に励む修行の場だ。そこに寮も出自も関係ない。己を高めたいのなら、ここはとても良い環境だと、私は思っている。同じような思いを持つ者がおあつらえ向きにゴロゴロいるからね。君はどうしたいかな?」

 

ノーマンはそう言うと、俺の反応を待った。リサやフィッツパトリックも同様だ。気づけば、他の人達も俺達のことを見ている。俺は少し考える。

 

俺は、死喰い人の息子だ。俺が生きている限り、それはずっと付き纏う。事実、それがバレてしまった時、色々な人が離れた。敵意も向けられた。冗談じゃない。俺はあいつらと違うと、周りに認めさせるには実績が必要だ。今のままじゃ何も変わらない。少しでも自分を高めたい。

 

「俺は……決闘クラブに入りたいです!」

 

俺がそう言うと、ノーマンはニッコリと笑った。

 

「歓迎するよ。ようこそ、決闘クラブへ」

 

途端にわあっと沸き立った。フィッツパトリックは、背中を叩きながら、歓迎してくれた。リサも仲間が増えて嬉しそうだった。他の決闘クラブのメンバーからも歓迎の言葉を貰い、俺は正式に決闘クラブに入会した。

 

それから、俺はリサを始めとした同級生三人と決闘した。結果は一勝二敗とまだまだ発展途上の戦績だったが、同級生が相手だと自分の未熟さが浮き彫りになるな。自分でも知らなかった呪文とかも教えてもらえたので、有意義な時間だったと思う。

 

帰り道、俺はリサにお礼を言った。

 

「今日はありがとう、リサ。楽しかったよ」

「こちらこそよ。決闘クラブって他のクラブより少し人数が少ないから、一人でも入ってくれると大歓迎なの。それだけ戦えるからね」

 

リサが戦闘狂じみたことを言う。そんなリサに苦笑しつつも、俺は疲労感と同時に、充実感を感じていた。楽しかったけど疲れた。それにお腹も空いたし。とはいえ、汗が気持ち悪いから、その前にシャワーだな。

 

それから俺は、決闘クラブにも顔を出すようになった。その活動を通じて、呪文のやり方も上達していき、妖精の呪文学でフリットウィック先生からお褒めの言葉を頂いた。




フロイド・ノーマン
決闘クラブの会長のレイブンクロー六年生。ホグワーツ生活を決闘に捧げた、生粋の戦闘狂。訓練の賜物か、無言呪文は勿論使え、詠唱や杖の動きも非常に速い。きちんとルールがある決闘が好きなので、闇祓いとかには興味がない。そもそも、闇祓いになるには全科目を高成績でパスする必要があるのだが、彼の場合は呪文学と変身術がずば抜けているものの、それ以外は及第点レベルなので、どの道なれない。

ロイド・フィッツパトリック
決闘クラブ副会長。スリザリンの六年生で監督生。ノーマンとは親友で、突拍子もない行動を取ることのある彼のブレーキ役でもある。決闘の腕は普通に高い。
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