アルフレッド・バクスターの半生   作:マロニエ19号

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メロフォース

久々に対峙した俺とミアの間には、ギクシャクとした空気が漂っていた。

 

「……なんでここに?」

「……ジャクソンに誘われたんです。気分転換にどうかって。最近色々悩んでいたので、丁度良いと思いまして」

 

ミアの回答に、俺は思わず、離れた場所で呑気に談笑しているジャクソン・ケンドールを睨みつけた。余計なことを。折角入った決闘クラブでまでギクシャクしないといけなくなったじゃないか。

 

「私があれほど悩んでいたのに、誰かさんは随分楽しそうにしていたので。決闘がどんなものか興味が湧いたんです」

 

チクチクと嫌味をぶつけるミア。そうして、決闘開始の合図が出た。

 

「インセンディオ!」

「グレイシアス!」

 

ミアの炎と俺の氷が同時に杖から放たれ、激しく衝突した。氷が水を通り越して一瞬で霧散することで一気に視界が悪くなる。

 

「っ、知らない呪文を……!」

「このクラブで覚えた呪文だよ」

 

ミアが苛立ちげに歯噛みするのをよそに、俺は次の呪文を放つ。そして、攻撃を食らわないように、動き回って、常に自分の位置を変えることも忘れない。決闘クラブに入って、最初に学んだことだ。

 

「レヴィオーソ!」

「わわっ!?」

 

ミアの身体が浮かび上がる。その隙を突いて杖を弾き飛ばすため、更に呪文を唱えた。だが、ミアの手首はある程度自由が効いていたようだ。

 

「エクスペリアー……」

「エイビス!」

 

ミアの杖先から無数の鳥が現れて、自分に向かって飛んできた。鳥に気を取られたせいで呪文が途切れてしまう。鳥もすぐに消えてしまうが、それと同時に浮遊していたミアも地面に降りて更なる反撃を仕掛けてきた。

 

「フリペンド!」

 

衝撃呪文を撃ってこようとしてきたので、俺はそのままミアの足元に向けて呪文を撃つ。

 

「スポンジファイ!」

 

ミアの足元が柔らかくなってバランスが崩れたのか、呪文は俺から離れた位置に当たる。

 

「エクスペリアームス!」

「あっ」

 

ミアの手から杖が弾き飛ばされ、カランッという音を立てる。勝負ありだ。

 

「そこまで! 勝者、アルフレッド・バクスター!」

 

審判のカトラスの宣言が響き渡る。勝負が終わって、一息吐く。

 

決闘に負けたミアは呆然としていたが、特に声をかけることなく、俺は決闘場を後にした。そんな俺にリサが声をかけてきた。

 

「勝利おめでとう、アル。中々のものじゃない」

「……ありがとう、リサ」

「まったく、ベイカーはいい気味よ! いちいち突っかかってきてさ!」

「良いって、放っておけば」

「でもアル……」

「決闘相手の悪口はここじゃ駄目なんだろ? だったら、何も言うな」

「あ、そうだった……」

 

ここ決闘クラブでは、決闘相手を侮辱するのはご法度だ。当然、悪口など以ての外。あくまでも決闘で白黒つけるのが、ここでの作法なのだ。リサもそのことを思い出したようで、黙り込む。

 

その後も、特にミアと会話することなく、他の人の決闘を眺めるだけで終わった。それでも色々な呪文を見ることが出来るので、有意義な時間ではある。

 

 

ーーーーーーーーーー

休日は暇だ。三年生以上であれば、ホグズミードに行くことも出来るのだが、俺はまだ二年生なので、ホグワーツで過ごす他ない。そして、溜まっている課題を消化する。健全な学生……と言えば、そうなんだろうが、なんか物足りなさがある。

 

仕方がないので、図書室で課題を片付けることにした。闇の魔術に対する防衛術の課題がまだ残っていたからだ。

 

「……よし、こんなもんで良いだろ。ブリアン先生は厳しいからな。去年ディライト先生だったら言わなかったところも、徹底的に指摘してくるし」

 

課題をどうにか終わらせて寮に帰る途中、嫌な顔に出会った。モンドの取り巻きの一人、ザッカリー・パーだ。俺を見るなり、いきなり呪文が飛んできたが、どうにか躱す。パーが舌打ちする。

 

「チッ、外したか」

「……いきなり何の用だ」

「決まってんだろ。犯罪者予備軍を成敗するんだよ。このクズが!」

「おっと!」

 

またしても呪いが飛んでくる。この時ばかりは、決闘クラブに入って良かったと痛感する。パーが飛ばしてきた呪いは、鼻呪いや歯呪いといった悪趣味なやつばかりだ。だが、パーが大振りで呪いを撃ってくるので、狙いが分かりやすい。俺に全然当たらなくて、パーも段々イラついてきたようだ。終いには怒鳴り始めた。

 

「このクズがっ、大人しく食らえよ!」

「呪いを大人しく食らう馬鹿がいるかよ、メロフォース!」

 

俺がその呪文を唱えると、パーの頭がカボチャに変わった。

 

「ーーー!! ーーー!」

 

パーが何かを叫んでいるようだが、カボチャ越しなので何も聞こえない。このまま早いところ、ずらかろう。

 

「しばらくそうしてな、クソ野郎」

 

そう吐き捨てて、未だにパニックになっている馬鹿を置いて、さっさと寮に戻った。だが、これで終わらなかった。

 

その翌日のことだった。モンドと、パーを含む取り巻き達が突っかかって来たのだ。大広間で食事を取っている時の出来事だった。

 

「バクスター! よくもザッカリーにあんな酷い真似が出来たな!」

「おいおい、何の話だ?」

「言いがかりとは感心しないな」

 

ランディとモートンが煽るように言った。昨日、俺から事情を聞いて、モンド達が仕返しに何かしてくるかもしれないと側についていてくれたのだ。持つべきものは友達だな、本当に。

 

「そこのバクスターは、昨日ザッカリーに酷い呪いを浴びせたんだ。おかげで、ザッカリーは遅くまで呪いが破れなくて、帰れず減点までされた!」

 

そういえば、昨日パーにかけたカボチャ頭の呪いは、何か少し違っていたな。決闘クラブの先輩が使っていたのを見て、試しに使ったやつだったんだが、パーが被っていたカボチャの色は先輩が使った時みたいなオレンジ色じゃなくて、緑色だったな。もしかして、それが原因か?

 

俺が内心首を傾げていると、ランディが嘲るようにモンド達を煽った。

 

「へぇ? 僕は、アルがそこの間抜けから特に理由もなく呪いを受けそうになったから逃げてきたって聞いたけどな」

「嘘を吐くな!」

「嘘を言っているのは、そちらではないのか? 大した証拠もなしにこちらを犯人呼びとは。愚かしいにも程がある」

「こいつは、死喰い人の息子だ! 悪辣な呪いをいくつも知っているに決まっているだろ!」

 

悪辣な呪い……ね。カボチャ頭の呪いを使ってた先輩は、ハッフルパフだったけどな。

 

「何の騒ぎですか?」

 

声が聞こえた方に振り返ると、そこにはマクゴナガル先生が立っていた。パーが勝ち誇ったように言い放った。

 

「マクゴナガル先生! こいつです! こいつが俺に呪いを……」

「ミスター・パー。あなたは昨日、いきなり呪いを受けたと言っていませんでしたか? カボチャ頭の呪いで相手の顔も声も分からない状態だったにも関わらず、何故ミスター・バクスターが犯人だと分かるのですか?」

 

マクゴナガル先生から疑問を投げかけられ、パーは言葉に詰まる。

 

「そ、それは、正面からいきなり……」

「それと、昨日あなたの杖を確認させて頂きましたが、いくつも呪いを放ったであろう痕跡がありました。それはどういうことですか?」

「いや、それは、いきなり呪いをかけられたから、咄嗟に反撃しようと……」

「その割には、受けた呪いはカボチャ頭の呪いだけでしたが。それに、呪いを使った後に、呪いを解除するための呪文を使った痕跡も多くありました。普通であれば、呪い解除の呪文をまず使うのでは?」

「そ、れは………」

 

完全に言葉に詰まるパーに、マクゴナガル先生は大きく溜息を吐く。多分、彼女は分かっているのだろう。どちらに非があるのか。

 

「疑わしきは罰せずです。昨日の減点は、あなたが遅くまで校内を出歩いていた分のもの。それは覆りません。そして、ミスター・モンド」

 

マクゴナガル先生は、パーから視線を離し、今度はモンドに視線を向ける。名指しで呼ばれたモンドはどこか身構える。

 

「友人を信じることは大事ですが、何でもかんでも鵜呑みにすることはよろしくありません。自分で物事を判断することも大切ですよ」

「ですが、先生。彼の親は……」

「今はあなたの話をしているのです。ミスター・バクスターも、彼の親も関係ありません」

 

ピシャリと言われ、黙り込むモンド。それを見て少し溜飲が下がる。もう少し見ていたいが、そんな時間もなさそうだ。モートンに小突かれ、次の授業時間が近いことに気付いた。

 

「えっと、マクゴナガル先生。俺達、授業があるので行っても良いですか?」

 

マクゴナガル先生はチラリと俺達を見やると、頷いた。

 

「えぇ、構いませんよ」

 

マクゴナガル先生から言質を取った俺達は一斉に立ち上る。そして、マクゴナガル先生からお説教を受けているモンド達を尻目に、俺達は大広間を後にする。背後からモンド達の突き刺すような視線を感じるが、スルーした。

 

「助かったよ、二人とも。ありがとう」

「良いって。気にするなよ。それにしても、あいつら本当に嫌な奴らだな。スリザリンってだけで目の仇にしてくるんだから」

「全くだ。ああいうのがいるから、我々が無駄に敵視されるのだ。……いや、うちにもトラバース達がいるからお互い様か」

 

そんな会話をしながら、俺はランディやモートンと共に、次の教室へ向かった。

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