「そう、だったんですね……」
俺が今までどのように過ごしてきたかを話すと、ミアはそう呟いた。こうやって話すと、色々な記憶が蘇ってくる。だからか、口調がややぶっきらぼうになる。
「……俺の話を聞いて、君がどう思うのかは、君の勝手だよ。だけど、俺は両親のようになる気はない」
「それは本当……ですか?」
「ああ。と言っても、今ここで言っても信じられないだろうけどな」
俺が半ば投げやりにそう言うと、ミアは俺の目をジッと見て言った。
「……分かりました。私は信じます」
「えっ?」
「私はアルのことを信じます。アルは……アニーを殺した人みたいにならないって」
ミアは言葉を続ける。
「分かってはいるんです。今までアルが両親のことを教えてくれなかった理由も。去年私はアルがスリザリン生だからって離れたし、それを考えたら……教えたくなかったのも理解出来るんです」
「ミア……」
「私、少し怖かったんだと思います。アルがいつか、アニーを殺した人みたいになるんじゃないかって。私はこんなに悩んでいるのに、アルは決闘クラブに入って楽しそうにしていて、無性に腹も立ちました」
俺はミアがあの時、何故か怒っていたことを思い出す。
「それでこの前、ミスティに相談したら言われたんです。まずはアルときちんと話をした方が良いって。人を一面だけで判断すべきじゃないって」
「……それで話を聞こうとなったのか」
そこまで言われてようやく納得がいった。あれだけ俺と距離を取っていたのに、どういう風の吹き回しかと思ったが。
「そうだ。今度のクリスマス休暇、アルの家に遊びに行っても良いですか?」
「えっ?」
ミアの提案に、思わず俺は呆けた声を漏らす。
「俺の家って言っても、屋敷しもべ妖精のヘザーしかいないし、ジルク叔父さんも来るかどうか分からないよ? それに部屋だって狭いのに……」
「今年のクリスマスは両親は不在なので、元々ホグワーツで過ごすつもりでしたし、それに……アルが慕う人達がどんな人なのか興味がありますから」
「いや、でも……」
結局、俺はミアに半ば押し切られる形で、約束を交わすことになった。だけど、どうせ今年もホグワーツで過ごすつもりだったし、これはこれで悪くないかもしれない。
それから俺はまた、ミアと話をするようになっていった。すると不思議なことに、今まで離れていた人ともまた話をする機会が増えた。もちろん、相変わらず距離を取る人もいるが、それでも不思議だった。なのでヒッポグリフクラブでの活動中、そのことをヒッチェンズに話すと、呆れた様子で返された。
「何度か話をしようとしたけど、バクスターが避けてたからだろう。まぁ、こっちも少し態度が固くなってしまったのは事実だけどさ」
「え? そうだったっけ?」
「そうだよ。決闘クラブにも入って、その活動で忙しかったというのもあったんだろうが、バクスターの方が避けていたぞ」
そう言われると、思い当たる節がないこともない。どうやら俺の方が勝手に壁を作っていたのかもしれないな。
「前にも言ったろ。僕は実際に見てから決めるって。少なくとも、去年の一年間を通してバクスターが悪い奴じゃないのは分かってるつもりだよ」
「ヒッチェンズ……ありがとう」
ヒッチェンズの言葉に、胸が少し熱くなった。
俺の両親は死喰い人。それは変わらない。だけど、だからと言って、全ての者が俺までそういう人間だと見ているわけではない。それが分かったのは本当に大きかった。
もっとも残念なことに、そういう人間だと見ている者もいないわけではないが。
「バクスター! この犯罪者が!」
「覚悟しろ!」
モンドやその取り巻き達だ。俺を見るなり、いきなりパーとモーティマーが呪いを放ってくるが、それを難なく躱す。決闘クラブで培った動きがこんな形で役立つとは思わなかった。といっても、あいつらからすれば簡単に呪いを躱す俺の姿こそ、小賢しい闇の魔法使いに見えているのかもしれないが。
モンドは俺のようなスリザリン生を闇の魔法使い予備軍と決めつけて全く話を聞かないし、パーやモーティマーといった取り巻き達は顔を合わせると、こうやって挨拶代わりに呪いを仕掛けてくるし、罵倒もしてくる。こんな奴らとは話し合いにならないし、和解なんて絶対に無理だろう。こいつらは、まず人の話をきちんと聞くところから始めた方が良い。
ボフンッ!
「うわぁっ、臭え!?」
「こいつ、クソ爆弾を……!」
まともに相手をする気もないので、俺はさっさとクソ爆弾を爆発させて、その場を後にする。管理人のフィルチの怒鳴り声が遠くから聞こえてきた。多分捕まって罰則とかになるだろうが、同情の余地はない。仕掛けてきたのは向こうだ。
自分を犯罪者の息子と見ている人はいる。だが、スリザリン以外の寮にも自分自身を見てくれる人がいる。それが分かっている今、モンド達のことは大して気にならなくなっていた。
臭いから逃れるように距離を取ると、
「あ、おーい、バクスター! これから決闘クラブに行くんだけど、一緒に行かないか?」
「今度こそ決着を着けてやるぜ!」
同じ決闘クラブのシン・ウェルボーン(ハッフルパフ生)とジャクソン・ケンドール(グリフィンドール生)だ。決闘クラブに入ってから、話すようになった同級生達だ。
「良いな! 俺も行くよ!」
俺はそう返事をして、二人に付いて行った。決闘クラブに参加したことは、俺にとって色々と良い結果をもたらしてくれた。
ようやく肩の力を抜いて過ごせる日常が戻ってきたような気がした。