アルフレッド・バクスターの半生   作:マロニエ19号

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前半、ミア視点です。後半からはアルフレッド視点になります。


和解

私の周りでは昔から不思議なことが起こった。何もしていないのに近くの棚から勝手に物が落ちてきたり、おつかいでブロッコリーを買ってきたはずなのに帰って来た時には何故かカリフラワーに変わっていたり……と様々だ。どうしてなのか理由がずっと分からないでいたが、十一歳になってその謎が解けた。

 

私は魔女だったのだ。エメラルド色のローブを着た女性、マクゴナガル先生がその事実を教えてくれた。そして、魔女である私は魔法使いや魔女の通う学校、ホグワーツ魔法魔術学校に入学する必要があるそうだ。最初は両親も半信半疑で「娘をそんな訳の分からない学校に通わせるなんて……」と乗り気ではなかったのだが、マクゴナガル先生の説得と私が通いたいと言ったこともあって最終的には納得して応援してくれた。

 

私としては魔法を習うことにも興味があったけど、ホグワーツが全寮制だということにも魅力を感じていた。全寮制であれば、一人で過ごさなくて良いからだ。

 

私の両親は根っからの仕事人間だった。朝から晩まで仕事、仕事の毎日で学校の父兄参加の恒例行事にも出たことはなかったし、家でも一人でいることが多かった。

 

両親は自分のことを愛してくれているとは思う。誕生日プレゼントやクリスマスプレゼントは私が好きなのをしっかり吟味してくれたものだったし、夜遅くに帰ってきた時にこっそりベッドで眠るフリをしていた私を見に来て優しく頭を撫でたりしてくれた。

 

両親があんなに仕事をするのも私が不自由なく生活出来るようにするためでもあるのだろう。それは私も分かってる。でも、やっぱり寂しいものは寂しい。両親もそんな私の気持ちが分かっていたのか少し申し訳なさそうな顔をしていたのはよく覚えている。

 

 

 

ダイアゴン横丁という所でマクゴナガル先生と買い物をしながら私がこれから通うホグワーツについてや魔法界について色々教えてくれた。初めて会った時は怖そうな印象があったけど、買い物を終える頃には優しくて親切だと大きく印象が変わっていた。魔法の使えない人間のことをマグルというらしく、私のようにマグルの両親から産まれた魔法使いや魔女も毎年入学するらしい。正直、ワクワクと同時に不安も少なからずあったけど、マクゴナガル先生はマグル生まれでも優秀な成績を修めて卒業した生徒を大勢知っていると励ましてくれた。

 

そんなこんなで入学の日を迎えた。お母さんが駅まで送ってくれた。ホグワーツへは9と3/4番線という一度も聞いたこともない場所の列車に乗るのだ。マクゴナガル先生は9番線と10番線の間の柵を通れば良いと教えてくれたが、今一つピンとこなかった。そんな時に、ホグワーツの生徒らしい少年がいたのは幸いだった。

 

茶色がかった黒の短髪に青い瞳の穏やかそうな雰囲気の男の子だった。お母さんに背中を押されて勇気を出してその子に声を掛けたら、どうやら彼もホグワーツの新入生だったらしい。彼は行き方を教えて、見本として先に9番線と10番線の間を通り抜けて行ってしまった。お母さんは「これなら大丈夫だろう」とそのまま仕事に行ってしまった。お母さんと別れると、私はあの男の子の後を追って、柵を通り抜けた。ぶつかるかもって不安だったけど、そんなことはなかった。

 

 

男の子はアルフレッド・バクスターというらしく、新入生同士ということもあってすぐに仲良くなった。彼はハッフルパフが希望らしい。マクゴナガル先生から事前に四寮の特徴を聞いていたので、アルフレッドならハッフルパフにぴったりだと思った。私はマクゴナガル先生が寮監を務めるグリフィンドールに入りたいと思っているので寮が別になってしまうのは寂しかったが、アルフレッド曰くグリフィンドールとハッフルパフは仲が良いと教えてくれたので安心した。

 

そして、ホグワーツ城に入り、寮の組み分けの儀式の時間になった。マクゴナガル先生は「当日までのお楽しみです」と教えてくれなかったのだが、帽子をかぶると帽子が決めてくれるらしい。見るからにボロボロで「大丈夫かな……」と心配になるが、仕方ない。私はベイカーなのですぐに組み分けの番になり、かぶった。結果はグリフィンドール、私の希望通りになった。

 

次はアルフレッドだったのだが、彼はグリフィンドールと相性最悪のスリザリンに決まった。アルフレッドは呆然とした様子でスリザリンのテーブルに座った。正直私もショックだった。彼ならハッフルパフだろうと思っていたし。それからも組み分けが続いてようやく最後の子の組み分けが終わり、校長先生の話を経て食事の時間になった。

 

この頃にはお腹もペコペコだ。そんな時、隣に座っていた長い黒髪を三つ編みに結んだ活発そうな少女が話し掛けてきた。

 

「ねぇ、あなたも新入生だよね? 良かったら名前教えてくれない? 組み分けで緊張してて他の人の名前聞いてなくてさ。あ、そうだ。あたしはエレノア・ワードって言うんだ。よろしく~」

「えっと、私はミア・ベイカー。こちらこそよろしく」

「よろしくね、ミア。ねぇ、折角同じ寮になったし、仲良くやろうよ」

「う、うん」

 

エレノアはグイグイ来る子ではあったけど、仲良くなれそうだ。そんなこんなで私はホグワーツでアルフレッド以外の友達が出来た。

 

 

 

希望だったグリフィンドールに入り、すぐに友達も出来たのだが、この寮には他に厄介な同級生がいた。ジェイク・モンドだ。

 

モンドは金髪碧眼の美少年で、何かキラキラしたオーラが溢れている人だった。既に同じグリフィンドール生達と仲良くなっており、私やエレノアにもにこやかに挨拶してくれた。確かに美少年だし、御伽噺に出てくる王子様みたいな雰囲気はあったけど、どこか私は苦手だった。話し方や言葉にどこか「自分は特別なんだ」という傲慢さを感じたからだ。

 

モンドは端麗な容姿に見合う程、優秀なようで呪文学や変身術ではグリフィンドールの同級生の中では一番早く魔法を成功させた。眉目秀麗で成績優秀なため、入学して数日で彼は人気者になった。そして、彼は極端なスリザリン嫌いでもあった。なんでも彼の両親は闇払いというマグルの世界で言う警察官みたいな仕事をしていたらしいのだが、闇の魔法使いに殺されたらしい。そのため、闇の魔法使いや魔女を多く輩出するスリザリン寮が憎くて仕方がないようだ。

 

スリザリンについては入学前の買い物でマクゴナガル先生も説明してくれていたが、「要領が良く社会的に成功したり歴史に名を遺した人が多い」というもので、闇の魔法使いや魔女を多く輩出したとは言っていなかった。正直アルフレッドがそうなるとは思えなかったし、話だけで勝手に決めつけたくなかった。

 

しかし、ある日、中庭でエレノアや友達数人とゴブストーンというゲームをして遊んでいると、スリザリン生数人が近くのグリフィンドールの上級生に呪いを当てたりして喧嘩に発展するという事件が起こった。たまたま近くにいたモンドも参戦して何とか喧嘩を仕掛けたスリザリン生達を追い払った。

 

それ以降、私はスリザリンに対してマイナスのイメージを持つようになった。

 

 

やがて数週間経つと、モンドはマグル生まれだと魔法に慣れてないから大変だろうと、よくマグル生まれの生徒に勉強を教えようとしてくるようになった。私にもしつこく絡んできた。しかも、今年のグリフィンドールでマグル生まれの魔女は私だけだったのが災いした。

 

いつしかグリフィンドールの女子達から敵視されるようになっていった。最初は無視だったり、酷い時は物を隠されるようになった。エレノアや一部の上級生は庇ってくれたが、嫌がらせはエスカレートする一方だった。

 

もちろんモンドにも「もう大丈夫だから教えなくても良い」と言ったし、嫌がらせのことも言ったが、全然取り合ってくれなかった。しまいには「君が良い学校生活を送って欲しいから教えているのに何でそんな嘘を吐くんだい?」と言われた。その言葉を聞いて、もうこの人には話が通じないと諦めた。マクゴナガル先生に言おうかとも思ったが、中々言い出せなかった。心配させたくなかったからだ。

 

そんなことがあって、私はこの学校生活が楽しいと思えなくなった。アルフレッドとは何度か廊下とかで会ったが、私と違って楽しそうな彼を見ていると自分が惨めになってくる。羨ましいし、悔しかった………

 

 

ー---------

 

俺はベイカーの話を黙って聞いていた。最近、全然元気がないとは思っていたが、まさかこんなことになっていたとは……友達だと思っていながら全然彼女のことを知ろうとしなかった自分が恥ずかしくなる。

 

ベイカーは話の途中から今までのことを思い出したのかボロボロ泣き崩れる。ずっと我慢していたのだろう。涙は止まらなかった。その間、俺は何も言葉を発することが出来なかった。ミスティも俺達の様子を見て只事じゃないと思ったようで何事かとやって来たので事情を話す。話を聞いたミスティは難しい顔を浮かべる。

 

しばらくして、ようやくベイカーは落ち着いたようだ。目は赤く腫れていたが。ミスティがベイカーに話し掛けた。

 

「ねぇ、ミア。やっぱりマクゴナガル先生に話してみたら?」

「ぇ、でも……」

「心配かけたくないのかもしれないけど、今のままの方がよっぽど先生を心配させてるわよ。それに、あたしも知る限り、マクゴナガル先生は非常に生徒思いの良い先生よ。先生を信じて相談したら?」

「は、はい………」

 

ベイカーはミスティの言葉に頷く。俺も口を開いた。

 

「ベイカー、俺は違う寮、グリフィンドールと犬猿の仲のスリザリンだから直接解決は出来ないけど、話を聞くくらいなら出来る。あんまり役に立たないかもしれないけどな」

「ううん、アル。自分の話を聞いてくれる人って本当に大事よ。あたしも去年ローワンがいなかったら耐えられなかったと思うわ」

 

ローワンはミスティの親友で同じハッフルパフの二年生だ。彼女とは寮も違うし所属クラブも違うので直接会ったことはないが、ミスティの話によく出てくるので知っている。ベイカーもミスティの言葉に同意する。

 

「うん、話を聞いてくれて本当に嬉しかった。それと……ごめんなさい!」

 

ベイカーは突然頭を下げて謝罪してきた。突然のことで困惑してしまう。正直謝られる心当たりがない。

 

「ど、どうしたんだよ。急に……」

「私、あなたがスリザリン生だからってずっと冷たい態度を取ったりして本当にごめんなさい」

「いや、俺の方こそ全然ベイカーのこと気付けなくてごめん」

 

俺も謝罪すると、ベイカーは首を横に振る。

 

「ミアで良いです。あの、もし良ければ私ともう一度友達になってくれませんか?」

 

ベイカーの提案に思わず彼女の顔を凝視する。ベイカー……いや、ミアは言葉を続ける。

 

「虫の良いことかもしれませんけど、グリフィンドール、スリザリン関係なくもう一度私と友達になってくれませんか? ……組み分け前みたいに」

 

そう言ってミアは右手を差し出す。彼女の右手が少し震えているのが分かった。俺の答えは決まっている。俺は右手を返して彼女の手を握る。

 

「俺もアルフレッド、もしくはアルって呼んでくれて構わない。こっちこそ改めてよろしくな、ミア」

「……っ、はい! よろしくお願いします! アル!」

 

近くで見ていたミスティは微笑ましそうに笑っていた。そんなミスティに釣られて俺もミアも笑う。こうして俺とミアはスリザリンとグリフィンドールという寮の垣根を越えて、改めて友達になった。




アルフレッドとミアが和解、改めて友達になりました。
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