アルフレッド・バクスターの半生   作:マロニエ19号

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エクスペリアームス

後日、ミアはマクゴナガル先生に相談したことで解決したらしい。マクゴナガル先生はモンドに注意したり、ミアに嫌がらせをした生徒達も叱ったそうだ。そして、ミアはマクゴナガル先生から嫌がらせを受けていたことに気が付かなかったことを謝られたらしい。

 

「まだ寮内は少しギスギスしてますけど、何とか解決したと思います」

「そうか。まぁ、良かったよ」

「あの、本当に……本当にありがとうございました」

 

ミアは頭を下げてお礼を言った。お礼を言われて、少し照れくさくなった。

 

「良いって。気にすんな。じゃあ、俺そろそろ行くよ。ヒッポグリフクラブに行きたいからさ」

 

 

 

ミアと別れて、ヒッポグリフクラブの部室へ向かう途中、不意に気配を感じて立ち止まった。振り返って周囲を確認すると、いつの間にか数人の生徒達に囲まれてしまっていた。彼らの襟章やネクタイの色から見て、全員ミアと同じグリフィンドール生のようだ。

 

そして、そのうちの一人には見覚えがあった。俺達スリザリン生の間では悪い意味で有名な男子生徒、ジェイク・モンドだ。モンドは俺の顔を見ると、不愉快そうに顔を顰めて言った。

 

「君がミアにちょっかいを掛けているスリザリン生だな?」

 

ちょっかい? 何言ってるんだ、こいつは?

 

思わず俺がポカンとしていると、そんな俺の態度が気に食わないのか、モンドの取り巻きの一人が嚙みついてきた。

 

「おいっ! ジェイクが聞いてるだろうが! さっさと答えろ!」

「まぁまぁ。落ち着けよ、ザッカリー」

 

怒鳴る取り巻きを落ち着かせると、モンドは気取った様子で言った。

 

 

「君は確か……バクスターだっけ? 悪いけど、スリザリン生がミアに付き纏わないでくれ。君が付き纏うせいで彼女が迷惑しているんだ」

 

モンドはそう言うと、杖を取り出して俺に向ける。他の奴らも同様だ。

 

「これは警告だ。次ミアに付き纏うようなら容赦しないよ。君のような悪を僕は絶対に許さない」

 

言いたいことを言って満足したのか、モンドは取り巻きを引き連れて去って行ってしまった。

 

「なんだ、あいつら……」

 

色々ツッコミどころの多い奴だな。話も通じなさそうだし。まるでマンティコアと会話しているような気分だった。言葉は通じるけど話は通じない……みたいな。ミアも変なのに目を付けられてしまったものだ。思わず彼女に同情した。

 

 

 

「はぁ……」

 

俺はヒッポグリフクラブの部室で課題をしていた。先程の出来事を思い出して思わず溜息が漏れる。そんな俺にミスティが声を掛ける。

 

「あら? どうしたの、アル? 溜息なんて吐いて……」

「ん? ああ、ミスティ。さっきね……」

 

俺はミスティに先程モンドに絡まれた出来事について話した。ミスティもミアの事情を知っているので俺に同情的な視線を向けた。

 

「うわぁ……想像以上ね。そのモンドって人……」

「うん、少し身の危険を感じるんだよね。何か身を守れるような呪文をフリットウィック先生あたりから教えてもらおうかな……」

 

確か呪文学のフリットウィック先生は決闘のチャンピオンになったこともあるそうだ。そんな彼なら何か役に立つ呪文を教えてくれるかもしれない。

 

「え? えっと……それはちょっと難しいかも……」

 

ミスティが首を横に振った。

 

「え? 何で?」

 

ミスティが申し訳なさそうに、その理由を明かした。実は去年、ミスティも似たような理由でフリットウィック先生から決闘に役立つ呪文エクスペリア―ムスを教わったことがあったらしい。しかし、すぐあとに決闘騒ぎを起こしてしまったのだそう。その後、決闘騒ぎがバレて呼び出しを食らってしまったのだ。

 

「……だから、フリットウィック先生から呪文を教えてもらうのは多分無理かもしれないわね」

「そんな……」

 

俺は思わずがっくりと項垂れた。確かに事情を説明しても去年のこともあるからフリットウィック先生は教えてくれないかもしれない。それならダメ元でスネイプ先生あたりに聞いてみるか。スリザリン生である俺の頼みならスネイプ先生も無碍にはしないだろう。

 

そんなことを思っていると、ミスティがある提案をした。

 

「まぁまぁ、そんな顔しないで。そうだ! 先生の代わりにあたしが教えてあげるわ。武装解除呪文エクスペリアームスをね」

「え、良いの? ミスティ」

 

思いがけない提案に顔を上げると、ミスティはニヤリと得意そうに笑みを浮かべた。

 

「もちろん。同じクラブの可愛い後輩が困っているんだし、元はと言えばあたしが原因でもあるしね。特別よ」

 

ミスティはお茶目にウインクした。こうして俺はミスティの教えの元、武装解除呪文エクスペリアームスを練習した。それから二時間程経過して、俺とミスティは向き合っていた。

 

 

「よし、それじゃあ、試しにあたしに向かって撃ってみて」

「え、大丈夫なの?」

「大丈夫よ。さっきも言ったけど、この呪文は杖を弾き飛ばすだけで相手に危害を加えるような呪文じゃないから。さぁ! 思い切りやってみて」

「そ、そうなんだ。それなら……エクスペリアームス!」

 

俺がそう唱えると、杖から出た赤い光がミスティの手にある杖を弾いた。ミスティの杖はカランと音を立てて転がる。ミスティは嬉しそうに笑った。

 

「おめでとう、これでエクスペリアームスの免許皆伝ね」

「ありがとう、ミスティ。これなら安心かも」

「でも、あくまでもこの呪文は相手の杖を手から落とすだけだからね。危なくなったらすぐに逃げること」

 

ミスティのアドバイスに俺は素直に頷いた。俺とて大人数相手に立ち向かう気はさらさら無い。ミスティは「ならよし!」と頷く。俺は改めてお礼を言った。

 

「本当にありがとう、ミスティ。呪文を教えてくれて」

「良いの良いの。あたしも楽しかったから。前にローワンが『勉強を人に教えるのは面白い』って言ってたけど、彼女の気持ちがやっと分かったわ」

 

ミスティはそう言ってカラカラと笑った。それに釣られて俺も笑ってしまった。

 

 

 

それから数日後、俺はミアと一緒に図書室で勉強することになった。俺は薬草学が、ミアは変身術が得意なのでお互いに得意な科目を教え合うことにしたのだ。

 

「えっと、薬草学だったらこの本なんかもオススメだよ。図とか凄く分かりやすく描いてあるから」

「うわぁ、本当だ。ありがとうございます。変身術ってイメージとかがすごく大事なんだと思います」

 

グリフィンドール生とスリザリン生が勉強を教え合うというホグワーツでは異様な光景だが、目撃者は殆どいない。あまり人目に付きにくい席で勉強していたからだ。高い本棚に囲まれて死角になっている。

 

ちなみに、死角になるこの席は悪戯の温床になりやすいので、司書のマダム・ピンスが特に目を光らせている場所だ。マダム・ピンスが頻繁に見回りに来るので、図書室の中でも特に人通りがないのである。俺達はそこに目を付けてミアと勉強することにした。時折マダム・ピンスがやって来るのを除けば、人目につかないこの場所は絶好の勉強場所だ。

 

 

数時間後、キリの良い所までいったので、終えることにした。

 

「それじゃ、ここまでにしようか」

「そうですね。ありがとうございました。色々と参考になりました」

「こちらこそだよ。ありがとう」

 

俺とミアは分かれて図書室から出る。図書室から出て、寮に戻る途中、突然呪文が飛んできた。思わず躱して振り返ると、そこにはモンドとその取り巻き達がいた。モンドは嫌悪感を剥き出しにしていた。

 

「バクスター、どうやら僕の警告を聞かなかったようだね。ミアに付き纏うなと言ったはずなんだけど」

「付き纏う? さっきから何を言ってるんだ? というか、ミアにストーカーしているのはあんたらじゃないのか?」

 

俺がそう言うと、モンドの取り巻きの一人が怒鳴った。

 

「スリザリンの屑が生意気言ってんじゃねえぞ!」

 

そんなことを言っているが、どっちが屑なんだか。五対一でこちらを恫喝している奴らの方が屑だと思うんだけど。

 

呑気にそんなことを思っていると、モンドは杖を向けて言い放った。

 

「君は僕の警告を聞かず、ミアに付き纏って困らせている。君のような悪を僕は許さない。口で言っても分からない悪には身体で教えてやる。覚悟し……」

「エクスペリアームス!」

 

モンドが長い口上を垂れている間に、ミスティから教わった武装解除呪文を放つ。モンドの手から杖が弾き飛ばされた。

 

「なっ!? 杖が……」

「てめぇ! よくもモンドに!」

「いきなり攻撃とはなんて卑怯な……」

「卑怯者のスリザリンが!」

「許さねぇ!」

 

モンドが驚いて慌てて杖を拾おうとしている間に、怒り狂ったモンドの取り巻き達四人が杖を構えようとする。だが、四人を相手にするつもりはない。俺は咄嗟にあるものを取り出した。

 

それを放り投げると、ボフンッと音を立てて緑色の煙が吹き上がった。

 

「うわっ!? 臭い!」

「何だこれ! ペッペッ……」

「これ、糞爆弾じゃねえか!」

 

この糞爆弾は前にミスティから何かの役に立つかもと渡されたものだ。持っていて良かった。俺はそのまま逃走した。モンド達は苦しんでいるため、追ってくることはなかった。

 

 

その後、モンド達がマクゴナガル先生に言いつけたらしく、呼び出しを食らったものの、特にお咎めはなかった。スネイプ先生が庇ってくれたのと、呼び出したマクゴナガル先生自身もモンド達の行動に疑問を持っていたからだ。おかげで軽い口頭注意だけで済んだ。

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