『終わりの始まりは突然に』 作:のーとりあす
◆◇◆
世界中に突如として電波異常が起こった。
通信機は使えなくなり、人類は混乱に陥った。
次第にありとあらゆる電子機器が使用できなくなっていった。
携帯ゲーム機が強制シャットダウンされた。
今時一人一台当たり前に持っている携帯電話は突然爆発した。
テレビは砂嵐しか映らなくなった。
冷蔵庫は止まり、掃除機が止まり、医療機器が止まる。
それだけじゃあない。
自動車は止まり、電車はブレーキが壊れ脱線し、飛行機は墜落した。
世界中が人々の悲鳴に包まれた。
原因不明、因果不明の突如とした異常事態。
誰もが混乱に陥り、誰もが不安に支配される。
「──ふわ~ぁ」
しかし、電子機器を一切使わないアナログ人間、
◆◇◆
一人の少年が歩道を歩いていた。
少年は制服を着崩していた。
胸元を開け、シャツを出し、ポケットに手を突っ込んだまま歩いている。
「………あ?」
少年は、気づいた。
左正面を走っていた車が突然曲がり──こちらに突進してきていることに。
「………はぁまたかよ」
だが、動じない。
少年はまるでいつものことのように……拳を構えた。
何してるんだ。馬鹿か。避けろ。
死ぬぞ。
トラックが少年めがけて突っ込んでくる。
まるで減速する様子がない。
それどころか勢いが増してきている。
時速は70キロを超えている。
そんな高速物体が、少年に、ぶつかる。
少年は、ぺしゃんこになり、ミンチに………なっていなかった。
「はぁ……………いい加減そんなんじゃ死なねぇんだよ馬鹿がッ! ら゛ッ!!!!」
あり得ない。
男は思った。トラックの運転手だった。
突然ハンドルが聞かなくなったと思ったら何かを踏んで進行方向が歩道へと変わった。
当然焦ってブレーキを踏むもまったく効かない。
前を見れば、そこには年端もゆかぬ少年がいた。
小学生、いや制服を着ているし中学生だろうか。
どちらにせよ終わった。
男は晴れて人殺しだ。
だが、少年はこちらに気づいたようだ。
よかった、この距離ならまだ避けられる、そう思った。
しかし、次の瞬間希望は絶望に変わった。
なんと少年がこちらに向けて拳を構えたではないか。
終わった、そう思った。
中二病? いや、きっと咄嗟の出来事に本能がそうさせたのだろう。
ああ、ごめんよ娘、お前の父は犯罪者になった。
男は何もかもを諦めそう思った。
だが、現実は小説よりも奇なり、とでも言うのか。
「──ら゛ッ!!」
そう少年が叫びながらこちらに──高速で迫るトラックに向けて拳を振るった。
すると、なんということだろうか。
──男の前には空があった。
男の視界は空を向いていた。
「………はい?」
否、そのまま視界は一回転して──
ゴンッ!!!!
強い衝撃が男を襲った。
「ぶ──っ」
ボフっ
トラックの安全装置が遅れて起動し、男はなんとか頭を打たずに済んだ。
ピヨピヨと男の周りをヒヨコが回っている。
「………あ、な、なんだっ??」
男には何が起きたのかわからなかった。
状況を理解できず、視界はクッションで埋まっていて何も見えない。
少年はどうなった。
「──あのー??」
しかし、すぐ横から声がかかった。
まだ声が高く、それが先ほどの少年の声であることがわかった。
何が何だかわからないが、とりあえず少年が無事でよかった。
「大丈夫っすかー??」
「あ、あれ? ここは僕が君の心配をするところでは……?」
「ん?? 舐めてるっすか。オレ最強なんで、こんなんじゃ死なないっすよ??」
「え……? あ、そう……なんかごめんね?」
どういうことだろう、男は思った。
このくらいってどのくらいだよ。
どう考えても死ぬだろ。
馬鹿か、ああいや馬鹿っぽい話し方をしていた。
多分バカだ。話が通じないタイプのバカだ。
「いえ。たぶんこれオレのせいなんで。謝るのはオレの方っす」
「え、え? えっと、どういうことか聞いてもいいかな?」
「え、説明っすか。えー-っと……オレ、生まれつき運が悪くて、じゃなくて。」
「え、え? どっち?」
「オレって実は世界によく殺されかかるんすよね」
「……世界に殺されかかる」
「はいっす。学校に不審者が侵入してきたり、新品の電子機器が買ったそばから爆発したり、こうやって車が突っ込んできたりってのがよくあるんすよね」
「へ、へー……?」
(えー?????)
男は少年の言っていることの意味が理解できなかった。
「まぁそんなわけで、こういうのいつものことなんす。だからたぶんこれもオレのせいっす。あんたはオレの運命に巻き込まれたんだと思うっす」
「う、運命、か」
どことなく痒い。
しかし、現実は馬鹿にできるようなことではない。
彼は確かにトラックを、ただの身体能力で止めたのだから。
「えっと、その力は生まれつきなのかな」
「力っすか? そうっすね。オレ最強っすから。ていうかもうそろ学校始まるんで、すまないんすけどもう行っていいっすか」
「だ、大丈夫? 痛いとことかないかい?」
「ビンビンっす」
「(ピンピンかな……やっぱあほの子なのかな……でも、悪い子じゃない)まぁ、うん。怪我がないならよかったよ、ごめんね」
「おぉ、おっさん、いい人っすね。それじゃ! 今度は気を付けていくっすよ!」
「あ、ああ……君もお大事にね……」
そう言い合って、男は少年と別れた。
男はトラックから降りて、しばらくの間呆然としていた。
そうして、トラックの頭を見た。
そこは──
「……なんだこれ」
少年の拳大のくぼみを中心に、鋼鉄の外装が大きくへこんでいた。
「……化け物かよ」
まったくもって素直な感想だった。
「あの少年が、これを……? ほんとに人間か……?」
あまりに非現実的な現実を前に、男はそうやって現実逃避することしかできなかった。
だから、気づけなかった。
「──う゛ァ」
「──え?」
大きな音に寄せられてきた──大量のゾンビに。
「え? え? え???????」
「う゛あ゛」「ぐがっ」「うべォ」「あえェ」「あ゛ー」「ィィィ」
「痛っいたっイタイッ!???」
男はゾンビに囲まれ、噛みつかれた。
噛まれて、噛まれて、噛まれて。
男はゾンビの中に埋まり、天へと伸ばした手だけが見えていた。
そうして、しばらくするとゾンビたちは離れていった。
「──エ゛、エ゛、エ゛ー……」
男だったモノは顔を食われ、そこには穴があるだけの、ゾンビになっていた。
◆◇◆
二千字書いて疲れたの巻き、適当に書くのが世界で一番楽しい!最強!適当に書くなや。