『終わりの始まりは突然に』 作:のーとりあす
◆◇◆
「嗚呼!! 世界は『
男は叫んだ。
誰もいない研究室で、独り未知を尊んでいた。
未知とは希望だ。
「君も、そうは思わないかい? 浅野さん」
「ヴあ」
否、独りと一匹の部屋だった。
そこには壁に吊るされたゾンビがいた。
男は語る。
「そうだろうそうだろう。未知!未知!未知こそは運命!未来!真理!さてさて、さてさてさて、君はいったいどうしてそんな見た目になってしまったのかな? 私は大いに興味がある。私に恋していると言って憚らなかった君を僕は無視していたわけだが……いやはや、こうまでして僕の興味を惹きたいとは……人は私のことをマッドサイエンティストだなんて呼んでいるが、乙女の恋心というものも存外狂気だね。献身ではあれど、自己犠牲とは違う。求愛ではあれど、それで死んでは元も子もない。ふむふむ、なるほどね。そうかそうか。……ヒトというものも、存外未知に溢れているものだ。なるほどねぇ、私は見落としていたっていうわけだ。私としたことが、猿も木から落ちる落ちると言うべきか、灯台下暗しというべきか……少なくとも君は私に未知を提供してくれたわけだ。ならば、私も最低限のお礼はしなければならないね。君が私を信じてくれたように、私が君を治そうではないか。うむうむ。興味深いことこの上ない。──さぁ、君は見た目だけでなく中身も美しいのかな?」
「ヴヴヴヴヴ」
「ククククク、アーハッハッハッハ!!!!!」
狂笑響き渡る研究室で、
美智課高校に通う高校三年生、灰原
そのそばに幼馴染であり、同じ高校に通う同級生であり、許嫁である浅野……なんとかさんの死体を前にして。
死者蘇生という偉業を成さんと高笑いするのだった。
◆◇◆
突如として世界を満たした狂気の脅威。
機械が軒並み壊滅し、どこからか湧いてきたゾンビのような何かが伝染しその範囲を急速に拡大している。
どこの国もなぜか、国の中枢に当たる人物が全滅し、一斉にゾンビと化したために、まともに機能していない。
移動手段は肉体に限られ、一番早くて自転車か、あるいは自転車より早く走れる人間だけだ。
何が起こったのか、誰もが理解していなかった。
近しいものがゾンビ化し、抵抗できずにゾンビになったもの、殺して生き残った者。
混乱に乗じて己が欲望を満たそうとするもの。
突然の非日常を当然のように受け入れるもの。
そうして突如として顕現した未知を喜ぶもの。
人それぞれとは言うが、まるでまとまりがない。
船も、飛行機も、車さえつかえず、この島国に閉じ込められた人々は……国も機能せず、誰もが発狂し、そこかしこにゾンビが彷徨い歩く地獄で果たして生き抜くことができるのだろうか。
そんな世界で生きる意味が、あるのだろうか。
彼らは何を思い、何を成し、どこへ向かうのか、今はまだ、誰も知らない。
ああ、それは、なんて素晴らしい未知だろう。
世界に混沌が溢れ出して一日──世界の人口が半分になった。
◆◇◆
だんだんだんだん文字数が減っていく。
書くことがなくなっていく。
書くのに疲れ、書くのが嫌になっていく。
書いて、書いて、書きたいことはたくさんあるのに、頭は思ったとおりに動いてくれない。動け、働け、死ぬまで考えろ。そうして初めて──。