トレーナー君はおしまい!–タキオンの薬で『女の子』になった男トレーナーが担当ウマ娘にお世話される話–   作:カンヌシ

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 設定とか細かいことはご都合で進めるので、あまり気にしないで頂けると助かります……! とりあえず、この話のトレーナーの担当ウマ娘はカフェとタキオンの2人だけです。


マンハッタンカフェ:その1『変身』

 

 

 

 そこはトレセン学園に存在する禁足地、正確には『入ることは禁止されていないが誰も近付く事のない』一室……『アグネスタキオン』の研究室である。

 

 諸々の事情でその部屋は彼女と、彼女と浅からぬ縁のあるウマ娘『マンハッタンカフェ』の2名によって占領されている。部屋の中には怪しげな薬品やら機材やらが所狭しと並べられている。しかし、線で区切ったようにあるスペースからは毛色の違うオカルティックな雰囲気の装いが成されていた。

 

 もちろんその一室は生徒会にとっては目の上のタンコブ以外の何物でもなかったが、アグネスタキオンの研究がごく稀に非常に高い益をもたらす事もあり、更に強制的に撤去しようとすると不可思議なポルターガイスト現象に見舞われるので現在はお目溢しされている状況だった。他の生徒たちも『その部屋に近付いたら実験台にされてしまう』と怖がってその部屋の前は通らない。

 

 アグネスタキオンは実験に協力してくれるウマ娘が少ない分、彼女のトレーナーをよく実験台にしていた。だが、その事を同じく彼の担当ウマ娘であるマンハッタンカフェは不満に思っていた。それは底抜けのお人好しである彼の体調面の心配もあったが、マンハッタンカフェの唯一と言っても良い『理解者』であるトレーナーを好き勝手されているような感じがして胸の中がモヤモヤするのが主な理由だった。

 

 

 

 これは、そんな彼女たちとトレーナーの身に降りかかったとあるハプニングの記録である。

 

 

 

 ある日の放課後、研究室にはアグネスタキオン、マンハッタンカフェと彼女らを担当する男性トレーナーが集まっていた。普段ならトレーナーはトレーナー室に居るのだが、アグネスタキオンにお弁当を届ける時と彼女の実験のモルモットとなる時だけその部屋に来ていた。どうやら今日はモルモットの方の案件のようだが……

 

 

 

「見たまえ、トレーナー君、カフェ! ついに『イメージトレーニングを現実化する薬』が完成したよ!」

 

 

 

 テーレッテレー!という効果音と共に、タキオンはショッキングピンクに発光する怪しげな液体が入った瓶を掲げていた。それをカフェはジト目で見つめている。

 

 

「……よくそんなに胡散臭さの概念を現実化したような薬が作れますね。ここ数日引き篭もっていたと思ったら、それを作っていたんですか。毎度のことですが、その集中力をトレーニングに活かそうとは思わないんですか?」

 

「そう! それがこの薬の発想のきっかけになったのさ、流石はカフェだ!」

 

「褒められても1ミリも嬉しくないって不思議ですね……」

 

 

 そんなカフェの言葉を無視して、タキオンは語り出す。

 

 

「私も常々思っていたのさ、トレーニングも大事だが研究も疎かにはできない。ならば研究をする最中にもトレーニングが出来る薬を開発せねばなるまいと! それがようやく実現したのさ! あとは実際に誰かに飲ませて効果を確かめるだけ、という段階だ!」

 

「その段階で実現したと言える豪胆さ『だけ』は評価します……」

 

 

 カフェの隣に立っていたトレーナーは顎に指を当てて頷いた。

 

 

「なるほど、その薬の効果が本当なら、君みたいにレース以外の活動もしなければならないウマ娘のサポートや、怪我をして満足に動けないウマ娘のリハビリにも役立つかもしれないね。君のことだからそれらを想定して作っていたんだろう、タキオン?」

 

 

 トレーナーは情熱と尊敬を込めた眼差しでタキオンを見つめていた。

 

 

「そ……そうだとも、トレーナー君! この薬が完成した暁にはきっと多くのウマ娘たちの助けとなるはずさ!」

 

「嘘ですよね? あなたがズボラだからそんな薬を作ろうとしたって聞こえましたが。目が泳いでますよ、タキオンさん……」

 

 

 当然のようにカフェの言葉を無視して、タキオンは踊るようにカフェとトレーナーに近付くと、2人の前にそのショッキングピンクに光る瓶を差し出した。

 

 

「この薬がウマ娘とヒトの両方に効果があるのか試したかったのだが、あいにく1人分しか作れなかったんだ。だから君たちのどちらかに協力……コホンッ! 実験台になってもらいたい」

 

「今の直す必要なかったですよね……? なぜオブラートに包んだものをわざわざ引っぺがしたんです……?」

 

 

 すると、トレーナーが迷う事なくタキオンの手から薬を取った。

 

 

「よし、僕が飲んでみるよ」

 

「!! 待ってください、トレーナーさん。いつもあなたが危険を冒すことはありません。普通に考えてそんな薬、失敗する可能性の方が高い……」

 

 

 カフェが心配そうな目でトレーナーを見つめると、彼は爽やかに微笑んで言った。

 

 

「そうだね、確かにこの薬は失敗かもしれない。でも、成功するかも分からない。僕はいつかタキオンの研究が多くのウマ娘たちを救うと信じている。だからそれに賭けてみるのも僕の役割なんだ。心配してくれてありがとう、カフェ。今までだって何とか無事だったんだ。きっと大丈夫だよ」

 

「身体が七色に光るのは無事とは言いませんよ……トレーナーさんは、いつもそうです。そんな底抜けにお人好しだから心配なんです……」

 

 

 カフェはトレーナーから目を逸らした。その表情の微細な変化に、薄暗い部屋の中で気付く者は誰もいなかった。

 

 

「これ、そのまま飲むだけだよね?」

 

「そうとも、グイッと行っておくれ」

 

 

 トレーナーが瓶を口元に近付ける。それを見たカフェが珍しく慌てた様子でそれを止めようと手を伸ばす。

 

 

「待ってください……! 今回は私が……っあ!?」

 

 

 カフェが床に転がっていたガラクタに足を取られて躓いた。彼女は瓶を口につけたトレーナーにぶつかり、2人はもつれるように床に倒れた。カフェがトレーナーを押し倒したような形となり、2人は重なったまま見つめ合った。

 

 

「ゴクン、ゴクン、ゴクン」

 

 

 と、トレーナーはカフェを見上げたまま瓶の中身を飲み干してしまった。咥えた瓶をキュポンと口から外して、起き上がろうとする。

 

 

「あっ、ト、トレーナーさんっ……すみません! お怪我は……」

 

 

 カフェは急いでトレーナーから離れる。

 

 

「プハッ……大丈夫だよ、カフェ。それにしても、やけに甘い薬だったな。まるでハチミツみたいな……うっ!?」

 

 

 薬の瓶がトレーナーの手から落ちる。割れはしなかったが、ガチャン!と大きな音を立てた。

 

 

「ううっ……うあああっ……ぐああああ!!!」

 

 

 トレーナーが胸を押さえて苦しみ出した。突然の事態にカフェは普段は見ないような焦る表情でトレーナーの元へ駆け寄った。

 

 

「トレーナーさんッ!? トレーナーさんッ!! タキオンさん、トレーナーさんに何が起こってるんですか!?」

 

「いや、この薬にそんな苦しむような成分は入っていないはずなんだ、多分!! 私にも何が起こっているか分からない!!」

 

 

 すると、トレーナーの身体がピンク色に輝き始める。見る間にその輝きは強くなっていき、ついには2人のウマ娘が目を開けていられない程になった。

 

 

「トレーナーさん……っ!!!」

 

「これは一体、何が……っ!!!」

 

 

 2人は腕で目を覆った。そして……

 

 

 

 ボフーーーーーーーン!!!!!

 

 

 

 トレーナーを中心に爆発が起こり、研究室内がピンク色の煙で充満した。爆発と同時に光は収まったので、タキオンは換気の為に慌てて窓を開け、煙を外に逃す。

 

 マンハッタンカフェは咳き込みながらトレーナーを探していた。

 

 

「ケホッ、ケホッ……トレーナーさん! どこですか、返事をしてください……!」

 

 

 だんだんと部屋の煙が薄れていくと、カフェは床に倒れているトレーナーと思しき影を見つけた。その影はモゾモゾと動いてゆっくりと上体を起こした。

 

 

「トレーナーさんっ!! 無事ですか、トレー……え……?」

 

 

 煙の中から現れたトレーナー?を見て、カフェは絶句する。窓際のタキオンも同じ様に驚愕の表情になっている。以前にもトレーナーはタキオンの実験のために身体が七色に発光した事があるが、今回はそれとは全く違うベクトルの事態が発生していた。

 

 

「う、うぅん……何が起こって……え? 声が、変だ。身体もなんか軽い感じが……髪も伸びてる……?」

 

 

 トレーナー?は喉に手を当てた後、髪の毛を触ってから、自分の両手を見つめる。

 

 

「あれ、喉仏が……手も……僕の手ってこんなに細かったっけ? 服も何でこんなにブカブカに? あ、あと……これって……」

 

 

 トレーナー?は自分の胸元を見つめた。オーバーサイズのシャツを着たみたいになっているが、確かに下の方から押し上げている『膨らみ』があった。

 

 彼?は徐ろにソレに手を当てると……

 

 

 ムニョン

 

 ムニョニョン

 

 

「えっ……」

 

 

 マシュマロの如き柔らかな膨らみがその手を押し返した。そして、彼?は落としそうになったスプーンをキャッチするかの様な速さでバッ!と股ぐらに手を移動させる。

 

 だがしかし、そこに彼?が求める感触は確かめられなかった。

 

 

「えっ……な、無……えええええええええええぇぇぇ!?!?」

 

 

 彼?は『可愛らしい声』で悲鳴を上げる。

 

 

 そこに居たのは……マンハッタンカフェにそっくりな、小柄な女の子だった。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

「ふむ……これはこれは……非常に興味深いと言わざるを得ないなぁ!!」

 

 

 アグネスタキオンは興奮した様子で声高らかに言った。

 

 研究室の一角、マンハッタンカフェのプライベートスペースに置かれたソファに、マンハッタンカフェと彼女にそっくりな女の子に変身したトレーナーが並んで座っている。

 

 トレーナーはカフェそっくりと言っても、ウマ娘にはなっていない。その見た目は耳と尻尾の無いマンハッタンカフェと言った感じだった。

 

 カフェは心底複雑そうな顔でトレーナーを見つめ、トレーナーは落ち着かなそうにモジモジとしている。そんな2人をタキオンは少し離れた所で立ち歩きながら観察していた。

 

 

「……トレーナーさん、その……大丈夫ですか? いえ、明らかに大丈夫ではないのは分かっていますが……体調とか、気分とかの意味で……」

 

 

 カフェが心配そうにトレーナーに声をかけると、彼(精神は男性なのでそう表記する)はゆっくりとカフェの方を向いた。

 

 

「その、うん。気分は全然悪くないよ。ただ……全身が違和感だらけで、髪が長くて、服がブカブカなのもそうだけど……感覚が色々と違って脳が混乱してる……」

 

 

 トレーナーは自身の身体を見下ろして、顔を赤らめる。シャツを押し上げる膨らみにどうしても目が行ってしまうのだった。

 

 

「そりゃあ、そうだろうとも。何せトレーナー君は、私が目視する限りでは間違いなく『女性』だからねぇ。流石に私でも他人のプライベートゾーンの確認は許されないから、質問だけにしておくが……トレーナー君、その身体は『女性』なのかい?」

 

 

 瞳の奥の興味津々で楽しそうな様子を隠すこともなく、タキオンは彼に尋ねた。

 

 

「……見てないから分からないけど……多分、『女性』だと思う……有るべきものが無いし……今まで無かったモノが有るし。声も違和感が凄い。高い音が頭に響いてる感じがしてる……」

 

 

 トレーナーは自分の喉をさする。そこに男性特有のボコッとした突起は無かった。

 

 

「後、君は気付いていないかもしれないが、君の顔はカフェにそっくりだよ。ほら、この手鏡で確認してごらん」

 

 

 タキオンがどこからか取り出した手鏡をトレーナーに渡すと、それを覗き込んだ彼は驚きを隠せなかった。

 

 

「ほ……本当だ! 本物よりもちょっと幼い感じがするけど……カフェの顔だ。どうして……!?」

 

「……本当に、不思議な感じがします。まるで、私の昔のアルバムを見ているかのよう……身長も私より頭ひとつ小さかったですし」

 

「あの薬はイメージトレーニングを具現化する効果があったはずだ。もしかしたら、トレーナー君が薬を飲んだ直後に転んでカフェを見つめていたのが原因かもしれないねぇ。ウマ娘には変身してないが、そのイメージが固着してその身体になったのか……だがしかし……」

 

 

 タキオンは訝しげに呟いた。彼女の目はトレーナーの胸元に集中していた。それには明確な理由があって……

 

 

「身長は小さいのにトレーナー君の胸、カフェと比べるとかなり豊満だねぇ。それもトレーナー君のイメージなのかい? もしくは、それが好みだとか?」

 

 

 3人の視線がトレーナーの胸に集まる。ふっくらとシャツを盛り上げているソレは、明らかにカフェのソレよりも大きかった。いわゆる◯リ巨乳な体型だった。

 身体の発達と発育の早いウマ娘はトレセン学園内にも居るが(ダイワスカーレットやゼンノロブロイなど)、トレーナーはウマ娘でもなければ元々女の子でもない。どう判断すれば良いのか、きっと誰にも分からない。だが……

 

 

「…………そうなのですか? トレーナーさん……」

 

 

 カフェが氷の様な冷たい眼差しでトレーナーを見つめる。研究室の温度が多分10℃くらい下がった。ガタガタとカフェの私物の置物が揺れ始める。

 

 

「ち、違う! そんな事イメージしてない! 大きいのは、その……嫌いじゃないけど……別にそれをどうこう思ってなんていない! 本当だ!」

 

 

 トレーナーが必死に弁明するが、カフェの氷の眼差しは止んでいなかった。それを聞いてタキオンは指を顎に当てて考え込んだ。

 

 

「ふむ……確かにあの咄嗟の状況でそれをピンポイントで想像するのはおかしいねぇ。とすると……トレーナー君、以前君の母親はウマ娘だと言っていたね? 彼女の胸の大きさはどうなのかな?」

 

 

 え?と言って、トレーナーは思い出す仕草をする。

 

 

「……大きい方、だと思う。顔はもちろん違うけど、イメージとしてはメイショウドトウみたいな……」

 

「なるほどねぇ」

 

 

 タキオンはニヤリと笑った。

 

 

「ならば、その胸は『遺伝』の可能性が有る。イメージしていないのならば、元から存在する遺伝情報を反映させているのかもしれない。良かったねぇ、トレーナー君。君は女性に産まれていれば巨乳だったみたいだよ?」

 

「嬉しくないよ、そんな情報! 僕は男なんだぞ!」

 

 

 トレーナーは顔を真っ赤にして叫んだ。その拍子にシャツの下の膨らみが揺れた。それを見て、カフェは内心で物凄くモヤモヤするのだった。

 

 

「と、とにかく、僕は元の身体に戻りたいんだ! どうにかならないのか、タキオン?」

 

「心配いらないよ。君に渡した薬の濃度から考えると、恐らく24時間ほどで効果は切れる。明日のこの時間には男性に戻れるはずさ」

 

 

 タキオンは腕を組んで自信たっぷりな風に言った。恐らく、それは本当なのだろう。

 

 

「……それでも、24時間なら少なくとも今夜は女性のままですよね。トレーナーさんはどこで過ごすつもりなのですか?」

 

「それはもちろん、トレーナー寮で……あ、でもこの姿じゃ守衛さんが通してくれないかも……」

 

 

 トレーナーの顔が曇った。そこですかさずタキオンは提言する。

 

 

「ならば明日までこの研究室で過ごすと良い! なぁに、今までだってトレーナー君は私の実験で度々寝込んでいたからね。1日くらい姿を消したって誰も気にしないさ! そして何よりも、私はその身体を徹底的に調べ上げたい! 完全に女性化しているのか、体毛や体組織はどうなっているのか! 染色体まで変化しているのか! うーーーん、興味が尽きないねぇ!!」

 

 

 タキオンが完全にマッドサイエンティストの顔でトレーナーに近付く。「あわわっ!」と怯えたトレーナーがソファの上で脱げそうなズボンを押さえながら後ずさる。

 

 すると、トレーナーは誰かに抱き締められるのを感じた。それは隣に座っていたマンハッタンカフェの仕業だった。

 

 

「駄目です……! これ以上トレーナーさんを危険な目に遭わせるわけには行きません……!」

 

 

 カフェは胸にトレーナーの頭を抱き込みながら、タキオンを睨み付けた。

 

 

「えぇ〜! そんなカフェ、トレーナー君を独占しないでくれよぉ〜!」

 

「タキオンさん……私、これでも怒ってるんですよ? 薬を飲んだ時、トレーナーさんはあんなに苦しそうに呻いて……万が一のことがあったらと、気が気でありませんでした」

 

「うっ……」

 

 

 カフェの放つ怒りのオーラに、流石のタキオンもたじろいだ。根負けして、とても残念そうにため息をついた。

 

 

「ハァ〜〜……分かったよ。まぁ、異性の身体になっているだけでもトレーナー君に大きなストレスが掛かっているだろうしねぇ。精神が肉体に作用する薬なら安全性を確保してからでないと何が起こるか分からない。今回は追加の実験は諦めるさ」

 

 

 それを聞いてトレーナーもホッとする。タキオンにはいくらでも協力する心構えはあるが、今回は流石に怖かった。そして、同時にカフェの暖かい体温と感触にドギマギしていた。彼はそれをもっと感じていたい気もしたが、恥ずかしくなってカフェの胸から離れた。

 

 

「あ、ありがとうカフェ。でも、どうしよう……トレーナー寮に帰れないなら、やっぱりここで過ごすしかないのかな……」

 

「……それは駄目です。いつタキオンさんが暴走するとも分からないですから。ここにトレーナーさんを置いておけません……」

 

 

 「酷い言われようだねぇ」とタキオンの言葉を無視して、カフェは言葉を続ける。

 

 

「……私に考えがあります」

 

 

 どこまでも深く沈んでいきそうな不思議な目で、カフェはトレーナーを見つめながら言った。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

「カフェ……珍しく門限を破って帰ってきたと思ったら、何だいその子は? やけに2人ともそっくりじゃないか。カフェに姉妹が居るって、アタシは知らなかったよ。あと、その子は何でこの学園の体操服を着てるんだい?」

 

「……申し訳ありません、ヒシアマゾンさん。実はこの子は私の従姉妹なのです。親と大喧嘩をして家を飛び出したそうなので、私が匿っていました。ここに来る途中で服を汚したみたいで、私の体操着を貸しています」

 

「ふーん、そうなのかい。しっかし、本当にそっくりだね。ウマ娘ではないみたいだけど……」

 

 

 美浦寮の寮長のヒシアマゾンは、膝に手を置いてその小さな女の子に目線を合わせた。すると、彼女は恥ずかしそうにカフェの背に隠れるのだった。

 

 

「……すみません。この子、とても人見知りなので……ヒシアマゾンさん、無理を承知でお願いしたいのですが、今夜だけでもこの子を私の部屋に泊める許可を頂けませんか……? 明日には必ず、親の所へ返しますので」

 

「うーん、部外者を寮に泊めるのは規則違反なんだけどねぇ……」

 

 

 ヒシアマゾンは腕を組んでカフェと女の子を交互に見やる。少し思案したのち、ニヤッと微笑んだ。

 

 

「仕方ないねぇ。カフェは今まで寮の規則を破った事はなかったし、事情が事情なんだろうしねぇ。今回だけだ、特別に許可をしてやるよ」

 

「……ありがとうございます、ヒシアマゾンさん。ほら、あなたもお礼を言いなさい」

 

 

 カフェが背後に隠れた女の子を前に引っ張り出す。その様子を見てヒシアマゾンは可笑そうに笑った。

 

 

「ハッハッハッ! カフェがお姉ちゃんしてるのは、何だか新鮮だねぇ!」

 

 

 女の子はおずおずとヒシアマゾンにお礼を言う。

 

 

「あ……ありがとう……ございます」

 

「うんうん、いいって事さ。ただし! 明日はちゃーんと帰って、家族と仲直りするんだぞ。ヒシアマ姐さんとの約束だ」

 

 

 よしよし、とヒシアマゾンは女の子の頭を撫でる。女の子はカァと恥ずかしそうに顔を赤くしている。まるで年上の男性トレーナーとしての威厳が崩れ去ったかの様に見えるのは気のせいだろうか。

 

 

「あ、すみません、後……」

 

 

 カフェは引き続きヒシアマゾンと何やら交渉をしていたが、女の子は恥ずかしさでいっぱいだったので聞いていなかった。

 

 

 なんだかんだで、カフェと『女の子』は無事に寮の部屋に辿り着いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




 後半はTSの王道な展開で行こうと思ってます。よろしくお願いします!
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