トレーナー君はおしまい!–タキオンの薬で『女の子』になった男トレーナーが担当ウマ娘にお世話される話– 作:カンヌシ
お待たせしてしまいました!
月末でかなりリアルの方のお仕事が立て込んでおりまして、かなり間が空いてしまいました。とりあえず、短めでも更新していこうと思います。またお付き合い頂ければ幸いです。
ビーチの砂浜に沿って舗装された道を2人の見目麗しい若いウマ娘が手を繋いで歩いている。ハタから見れば、仲良しな姉妹が常夏の島を散策しているようにも見えるが、その実はアスリートと担当トレーナー(男性)な関係の2人である。
彼女たちは道の先に設置された小さなコテージの様な建物に入っていった。嫌な予感しかしなかったトレーナーはサトノダイヤモンドの手を振り払おうとしたが、無理矢理に引っ張り込まれてしまう。
果たして、トレーナーを待ち受けるものとは一体……?
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「……すげ、何ここ?」
トレーナーの目に映るのは、白い壁の端から端まで吊るされている大量の女性用水着だった。天井近くまでラックが設置されていて、2段2列にギッシリと掛けられている。その途中にぽっかり空いているスペースがあり、そこは壁が丸ごと鏡張りになっていた。側には籠とハンガーラックも置いてあるので、そこで着替えろってことらしい。
まるでデパートの服売り場にある試着室を一軒家サイズに拡大したみたいな空間だった。
「何って、毎年使ってる更衣室じゃない」
ダイヤは更衣室だと宣っているが、トレーナーからしたら一軒家である。壁に大量の水着さえなければ暮らすのに不自由は無い程度の広さだった。更衣室らしいのは窓が無いという一点だけだった。
(というか、俺たち水着持ってないじゃんって思ったら、こんなドレスルーム丸ごと用意されてるって……今更だけど庶民の俺にはついていけない……)
「ふんふ〜んふ〜ん♪ 今日はどれを着ようかしら。トパーズちゃんはどんなのが良い?」
ダイヤの問いかけにトレーナーは少しビクッとした。見渡すと色とりどりの女性物の水着が陳列されている、スクール水着のようなおとなしいデザインのものから、学生が着るものとは到底思えない際どいデザインのものまで、正に選り取り見取りという状況だ。普通の女の子なら気分の高揚するシチュエーションなのだろうが、女装癖もないノーマルなトレーナーには『女の子の水着』を着ることなど考えられなかった。
「お、俺は良いよ……泳ぐ気分じゃないし」
トレーナーはそう言ってダイヤの方をチラッと見ると……
ダイヤが泣きそうな目でウルウルとトレーナーを見つめていた。
「トパーズちゃん……私と泳ぐのイヤ……?」
うっ、とトレーナーは罪悪感で声が詰まる。彼はサトノダイヤモンドが純粋に妹との休暇を楽しもうとしているだけだと思い込んでいる。罪悪感を抱く時、人は最も弱くなる。それは人を支配するのに最も効率的な手段なのだ(そんな感じの話を某少年漫画の空島編で見た気がする)
「分かったよ、泳ぐからそんな顔しないでくれ」
すると、ダイヤの顔がパァ!と明るくなる。
「だったら、私がトパーズちゃんの着る水着を選んであげる! まずはコレと、後コレも! あ、見て見て、トパーズちゃん! これ、私がファッション誌の撮影で着たのと一緒だよ!」
ダイヤは数ある中でもひときわ目立つ白色の水着をハンガーごとトレーナーに見せた。セパレートタイプで細やかなフリル装飾の施された際どいデザインのそれに、彼は見覚えがあった。ダイヤの言う通り、以前雑誌の企画で彼女が着ていたもので間違いない。
(年頃の娘がこんなに肌を晒して、ご両親は心配しないのかとダイヤに言ったっけ……あれ? それっていつの事だった?)
トレーナーはつい最近その写真を見た気がしたが、うまく思い出せなかった。
「ふふふ……トパーズちゃんも着て見たいって言ってたもんね」
ギラリ、とダイヤの目が怪しい光を放つ。
「い、いや、言ってない! 多分、言ってない!!」
「そんなに恥ずかしがらないで、お姉ちゃんが着替えさせてあげるから♪」
ジリジリとダイヤがトレーナーに接近する。
「ま、待てって……せめてもう少し露出の低い水着を……!」
「大丈夫、大丈夫♪ 時間はたっぷりあるんだから、色んな水着を試そうね……♡」
トレーナーは肩をガシッと掴まれると、巨大な鏡の前に引きずられていく。そこにはニコニコとした笑顔のサトノダイヤモンドと、困り顔のサトノトパーズの姿が映っている。誰がどう見ても、双子のウマ娘の姉妹にしか見えない。勿論、トレーナー自身からも。
「帽子も脱いでここに掛けて……と。じゃ、トパーズちゃん、ワンピースも脱ごっか♪ 水着に着替えるならぜ〜んぶ脱がなきゃね♪」
「!!! いっ、いや、待て! それは流石にマズイからっ!」
トレーナーが叫ぶと、ダイヤはキョトンとして尋ねる。
「何がマズイの? 姉妹なんだから何にも問題はないわよね?」
「そ、それは、俺が恥ずかしいと言うか……」
「ふふふ……だったら、『お姉ちゃん』の私が全部やってあげるから。はい、バンザイして♡」
「なっ!? ちょ、ダイヤ、待っ、わぁあああああ!!!」
※ここから先は規制に引っかかる恐れがある為、皆様の脳内で補完して下さい。多分、To L○VEる並みのシーンが鏡の前で展開されてます……
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「うう……」
鏡の前で伏し目がちに自分の姿を見るトレーナー。
サトノダイヤモンドは彼の両肩に手を置いて横からピョコンと顔を出して同じく鏡の中のトレーナーを微笑んで見つめている。
「うん、可愛い! トパーズちゃん、すっごく似合ってるよ。ほら、もっとちゃんと見て……鏡に映る自分を」
クイっとダイヤはトレーナーの顎を指で押し上げる。そして、トレーナーははっきりと見てしまった。
『サトノダイヤモンドと同じ顔と身体で際どいデザインの水着を着ている自分の姿』を……
(うぅっ! 駄目だ、否定したくても全身が伝えてくる……自分の身体のカタチが……女の子になってることを……)
トレーナーは歳の割には豊満と言える胸と、艶かしい曲線を描く腰周りを守る2枚の布地の感触に困惑していた。男性の彼からすれば、あまりに心もとない格好だった。少し動くだけで色々と大変なことになりそうである。
クーラーの効いた室内で冷気が素肌をくすぐるが、自分の吐く息だけは生温かく感じた。
恥ずかしさで足を擦り合わせてしまうが、むしろその絹のような素肌の感触にドキドキしてしまう。
少しでも見える面積を減らそうと、両手を腰の前で交差させると、逆に胸が強調されてしまう。
「ほら、猫背になっちゃダメ! サトノのウマ娘はいつ何時でも優雅たれ、だよ! 自身を持って、貴方はこんなに可愛いんだから……」
「ひぅっ!」
グクッとダイヤが腰と胸を押して、トレーナーの背筋をピンと伸ばす。
「か、可愛いって言うなぁ……俺は違うんだぁ……」
「むぅ、トパーズちゃん、それって私も可愛くないってこと?」
ピクンとトレーナーの耳と尻尾が動揺して動いてしまう。
「い、いや違うんだ! そう言う意味じゃなくて、ダイヤは可愛いと思ってるよ! でも、俺は」
「だったら、貴方も可愛いのよ。だっておんなじ顔で、おんなじ身体なのよ、私たちは? ほら、もっともっとじっくりと見てみて……貴方は『可愛い』わ」
サトノダイヤモンドはトレーナーを背中からギュッと抱き締めて、鏡を見るように促す。その柔らかい感触に、彼の心臓が煩く鼓動する。
トレーナーが再び鏡面に目を向けると、そこには顔を赤らめるサトノトパーズと、悪戯っ子のように微笑むサトノダイヤモンドが立っていた。
(お、俺……本当にダイヤと『同じ』水着を着てしまってるんだ……あのグラビアと同じ……意識すると、顔が熱くなるのを止められないっ……!)
2人が身を寄せ合う姿には、何故だか背徳的な雰囲気があった。百合の花の香りが何処からか漂ってきそうだ。
「可愛い……可愛いよ、トパーズちゃん……♡」
「あぅ……ぅぅ、やめ……ろぉ……」
トレーナーの耳元でダイヤは甘く囁いた。身体の中を熱いものが駆け巡る。男性ならば分かりやすく変化しているかもしれないが、今のトレーナーはウマ娘である。その昂りが発散される方法も分からず、ただ悶々とし続けるしかなかった。
(ああ……何かしら、この気持ち。トレーナーさんに『サトノ』の意識を植え付けられればそれで良かったはずなのに、本当にトレーナーさんが……『可愛い』……!)
ダイヤもダイヤでイケナイ扉が開きそうになっていた。変化しているのは、トレーナーだけではなかったのかもしれない……
イケナイですよ、お嬢様!(今更)