トレーナー君はおしまい!–タキオンの薬で『女の子』になった男トレーナーが担当ウマ娘にお世話される話– 作:カンヌシ
すみません、書いてたら色々と想像が膨らんでしまったのでその1、その2って感じて分けて書くことにしました。TSな展開といえばコレって話が始まります!
ガチャリ、とドアを開けてマンハッタンカフェとトレーナーは部屋に入った。門限からかなり時刻は過ぎていたので、運良く他のウマ娘たちと鉢合わせする事は無かった。
カフェはヒシアマゾンとの交渉という緊張から解放されてホッと一息ついた。だが、トレーナーは逆に緊張しっぱなしだった。女の子の身体になって、しかも男子禁制の女子寮に入っているこの状況では仕方ない事だろう。部屋に入った瞬間から、何やら『女の子の部屋の匂い』がするのも落ち着かない。何かアロマでも使っているのだろうか?
トレーナーがカフェに言われたのは『誰と会っても、とにかく人見知りのふりをしてカフェの背中に隠れる』ことだった。そうやって寮に泊まる許可を取る作戦だったのだが、それが見事に功を奏した。
「……ここまで来れば、ひとまず安心ですね。トレーナーさんも疲れたでしょう? 右側が私のベッドなので、そこに腰掛けて休んで下さい……」
「あ、ああ……ありがとう、カフェ。それじゃ、遠慮なく」
トレーナーがカフェのベッドに座ると、身長が縮んだせいか、シングルサイズのベッドが巨大に思えて再びドギマギした。ちょっとした事で、自分の身体がいつもと違うことを思い知らされる。そして、彼は目の前のもう一つのベッドを見て思い出したように言う。
「そういえば、カフェはユキノビジンと相部屋なんだっけ? 彼女はどうしたの?」
「ユキノさんは、今は遠征でこの学園には居ません。帰ってくるのは明後日以降のはずです。タイミングは良かったですね。せめてこの部屋の中だけでも、落ち着けると思いますから……」
カフェは室内に置いてあるポットでお湯を沸かしてコーヒーを作る準備を始めた。その香りに、トレーナーの緊張は少しだけほぐれた。しばらくしてコーヒーが出来上がると、彼女は2つのカップを持ってトレーナーの側にやって来る。1つを彼に渡して、彼女は勉強机の椅子に腰掛けた。
「どうぞ……トレーナーさんの好みの味に近いものをチョイスしました。本当は自分で豆を挽くのが1番ですが、寮では出来ないので……最近はインスタントでも味わい深いコーヒーが増えているんですよ」
「ありがとう、カフェ。良い香りだ……心が落ち着くよ」
カフェが飲むのを見てから、トレーナーも同じくカップに口を付ける。彼の口の中にコーヒーの苦味がいっぱいに広がって……
「んんっ!? んんんん!! ケホッ、ケホッ! に、苦いぃ……!!」
「!? トレーナーさんっ、大丈夫ですか?」
トレーナーは文字通り苦虫を噛み潰したような顔をして、舌を出していた。
「うぇぇ……おかしいな、コーヒーってこんなに苦かったっけ?」
「……もしかしたら、その身体になって味覚も変化しているのかもしれません。子供の身体なら、舌がコーヒーの苦味に敏感になっていてもおかしくありません」
「ううう……そうなのかもね。カフェのコーヒーは大好きなはずなのに、それも飲めないなんて……」
シュン……とトレーナーが手元のコーヒーを見つめて落ち込んでいる。その姿は見た目相応の可愛らしい『女の子』だった。それを見て、カフェはドキンとした。彼女の中にある母性本能が刺激されたような気がしたのだ。
「……トレーナーさん、そのカップを貸してください。ミルクと砂糖をたっぷり入れれば美味しく飲めますよ。私も今夜はカフェオレを飲みたい気分なので、一緒に飲みましょう」
「いいのかい? それじゃあ、お願いするよ。でも、カフェって甘いのは苦手じゃなかったっけ?」
「……たまには、そんな気分の日もあります」
そうして、2人はゆっくりと甘いカフェオレを味わった。今のトレーナーの舌にはむしろそれの方が味わい深いと感じるみたいだった。
無意識かも知れないが、トレーナーはカフェオレを一口飲むたびに蕩けたような笑顔になっていた。それを見るマンハッタンカフェもつられて笑顔になる。そんなポカポカなコーヒータイムがゆったりと過ぎていくのだった。
ーーーーー
「んっ……」
2人で甘いカフェオレを飲み終えて少し経ち、トレーナーは『ある感覚』に身体を震わせた。
馴染み深いはずなのに初めての様に感じるその焦燥感に、トレーナーは脚を擦り合わせる。
「えっと、カ、カフェ……」
恐る恐るといった様子でトレーナーはカフェに呼びかける。
「はい。どうしました? トレーナーさん」
「その……」
トレーナーはサイズの合っていない大きめの体操着のズボンを軽く握りしめる。
「ト、トイレ……借りても良いかな?」
ーーーーー
トレセン学園の学生寮の各部屋には全て簡易シャワー付きのトイレが完備されている。トレーナーは現在、マンハッタンカフェの部屋のトイレの白い便座の正面で、途方に暮れた様に立ち尽くしていた。
「うぅ……なるべく考えないようにしていたけど、生理現象からは逃げられないよなぁ……どうしよう……」
どうするも何も、やるべき事は1つなのは彼も分かっている。しかし、身体構造が変わってしまった今は日常の行動すらも大試練と化していた。と、そこに……
コンコン
と、トイレの扉がノックされる。意識外だったその音にトレーナーはビクンと驚く。
「は、入ってますぅ!」
「……すみません。トレーナーさんなのは分かってます。その……大丈夫ですか? 女性のトイレの仕方とか……もし分からないのなら……」
トレーナーのトンチキな返事に、カフェは落ち着いて答えた。トレーナーは担当ウマ娘にトイレの仕方まで教わったら『男』としての何かが終わってしまうと感じて、慌てて更に返事をする。
「だだ、大丈夫っ! 座れば良いんだよね!? それくらいは、知ってる!」
「……そうですか、もし助けが必要なら呼んで下さい。待っていますので」
「うん、わ、分かった!」
トレーナーは緊張で冷汗をかき始めた。彼は成人男性であるはずの自分が、排泄行為1つにここまで翻弄されている事実に打ちのめされていた。情けなくて涙が出そうだ、と心の中で叫んでいた。
(む、無心だ! 無我の境地に達すればきっと、トイレなんて瞬く間に終わっているはずだ!)
トレーナーは意を決してズボンに手をかける。勢いのままバッとそれを下ろすと下半身が途端に涼しくなり、それが彼の尿意を加速させた。下着はそのままトランクスを履いていた。カフェとタキオンの保管してある新品の予備の下着を着けるかという話もあったが、男としての矜持を守る為にトレーナーは辞退していた。
元々はカフェの体操着だった事もあり、ブカブカの上着に隠されてトレーナーから自身の下半身は見えなかった。もちろん、本人も見るつもりは一応なかった。
(べ、別に度胸が無い訳じゃないぞ! ただ、今の自分はカフェにそっくりなワケで、彼女のトレーナーとしてその裸を見るのは倫理上の問題があるからで。大人として当然の判断であるからしてッ……!)
トレーナーになる為に勉強一筋でこれと言った女性関係を持ったことのないDTの彼は、心の中で御託を並べつつ便座に腰掛ける。
下を向くと、当然上着で隠されて下は確認出来ないが、こんもりと盛り上がる胸があったので慌てて正面に視線を向けた。
(後は、すれば良いだけ……さっさと終わらせて……でも客観的に考えてみると、この状況ってヤバくないか? 男性トレーナーが担当ウマ娘の姿でトイレをするって、物凄くマズいような……)
無我の境地など夢の彼方、考えるのが仕事のトレーナーがこんな状況で何も考えない事などあり得るだろうか? いや無い。
(……あれ? 僕は今カフェと殆ど同じ身体になっていて……そしてここはカフェの部屋のトイレで……必然的に彼女もここを使っているワケで……もしかして、これってカフェのトイレを覗いてるのと同じってことに……!?)
「〜〜〜〜〜〜〜っ!?!?」
考えなくても良い事を余計に考えてしまい、トレーナーはかつて無い罪悪感と羞恥心に襲われて両手で顔を覆った。
そして……ついに催していたものが決壊した。
「ひゃ!? あ、んんっ! な、こ、これ……〜〜〜〜っ!?!?!?」
トレーナーの脳内はパニックで爆発寸前だったのに、生理現象は容赦なくトドメを刺しにくる。そうして、彼の身体はやるべき事を果たすのだった……
ーーーーー
ジャーーーーー
キィィ……パタン
トイレを流す音が聞こえて、少しして続けてトレーナーが出てくる音がした。彼はトボトボと力無い足取りでベッドまで進むと、先程と同じ位置にポスンと腰掛けた。
その目からはハイライトが消えており、カフェと同じ黒髪も相まってまるで闇堕ちしたかの様な雰囲気だった。
「ト、トレーナーさん……大丈夫ですか?」
心配そうに声をかけるカフェの方を、彼はゆっくりと向いた。
「は、はは、ははは……カフェ、僕はもうトレーナーとしても……男としてもおしまいだぁ……」
どうやら、彼にとってその身体で用を足すのは相当なショックだったらしい。その事を察したカフェはトレーナーの隣に腰掛けると、彼の肩をギュッと抱き寄せた。トレーナーは放心状態でされるがままになっていた。
「大丈夫ですよ……トレーナーさん。これは事故です。あなたは何も悪くありません。どんな姿になってしまっても、あなたは私の大切なトレーナーさんです……だから、何も気にする必要はありません……」
「うぅ……カフェぇぇぇ……!」
トレーナーは涙目でカフェを見上げた。その姿に、キュゥンッ!とカフェの中の何かが目覚める。
頼れる男性だったはずのトレーナーが、今は自分の助けを必要とするか弱いその存在に成り果ててしまっている。その事実がカフェの母性本能やら諸々を刺激して、彼女をより大胆な行動に駆り立てた。
カフェは更に真正面からトレーナーを抱き締める。小さく、暖かく、柔らかい『女の子』の彼の頭を優しく撫でる。
「ふふ……トレーナーさんは、私が守ります。だから、安心して下さい」
「むもっ、んむ! カ、カフェ……ちょっと苦しい……」
そう言ってもがく彼を、カフェは力づくて抱き続ける。元々ウマ娘の腕力には大人の男性でも敵わないのだが、トレーナーは今は小さな女の子になってるので、尚更敵う要素などあるはずもなかった。
(可愛い……トレーナーさんは今、こんな簡単にされるがままになるんだ……♡)
ゾクゾクとカフェの背筋を何か痺れるものが登っていく。それが何なのかはカフェ自身もまだ理解していなかった。
「ああ、そうでした……」
パッとカフェはトレーナーを解放した。トレーナーはハーハーと深呼吸して酸素を取り込んでいる。
「トレーナーさん、トイレが済んだのなら……次はお風呂に入らないといけませんね。大変な1日でしたから、身体をちゃんと綺麗にして、しっかりと休まなくてはいけません……」
お風呂という単語にピクンとトレーナーは反応した。彼はカフェから目を逸らして早口で捲し立てる。
「い、いや、カフェ! どうせ明日には元の身体に戻るんだし、1日くらい風呂に入らなくても大丈夫だよ! ほ、ほら、それにこの部屋のトイレにシャワーがあるだろ!? 最悪、あれでパパッと済ませるだけで良い……」
「駄目です」
有無を言わせぬ威圧感でカフェはトレーナーを萎縮させる。
「例え1日限りでも、女の子ならキチンとお風呂に入らなければなりません。それとも、トレーナーさんは汚れた身体のままベッドで眠るつもりなのですか?」
「い、いや、そんなつもりじゃ……そ、そうだ! 寮のウマ娘たちは大浴場をつかっているんだろ! そんな所に僕が入るのはイケナイと思うヨ!」
「それは問題ありません。ヒシアマゾンさんに管理人室のお風呂を使わせて貰えるよう交渉しました。そこなら他のウマ娘が入ってくる事はありません。着替えなら私の物を貸します。下着も新品の予備があります。サイズはこの際仕方ないので諦めて下さい」
カフェ横にはいつの間にか2人分のバスタオルと着替えが用意されていた。
「『お友だち』も協力してくれています。さあ、行きましょう。トレーナーさん……」
「カ、カフェ……何か、性格変わってないか? って、うわぁ!」
トレーナーの手を取って、カフェはベッドから立ち上がる。トレーナーは抵抗できるはずもなく、引っ張られる。
この先に待ち受けるものを予感して、トレーナーの心臓はバクバクと鳴り続けていた。
頑張って続き書いてます。もしお暇ならなら私の去年完結した過去作も読んで頂けると嬉しいです。ではでは。