トレーナー君はおしまい!–タキオンの薬で『女の子』になった男トレーナーが担当ウマ娘にお世話される話–   作:カンヌシ

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 朝起きてビビりました(ブクマ、評価、感想などなどに)
 こんな妄想を書き殴った作品を読んで頂き、本当にありがとうございます。過去に無いくらい応援を頂いておりますが、私は従容不迫の精神で淡々と書きたいものを出していく所存ですので、引き続き楽しんで頂ければ幸いです。

 なりたいよなぁ……『女の子』によぉ……!!!!!!!!



マンハッタンカフェ:その4『堕ちてゆく』

 

 

 

 

 

「ふぅ……いいお湯でした。これで後は眠るだけですね……トレーナーさん」

 

 

 管理人室の脱衣所で身体を拭き、ドライヤーで髪を乾かしたマンハッタンカフェとトレーナーは、寮の部屋まで戻ってきていた。ホカホカに温まったカフェは満足そうな様子だった。対して、トレーナーは顔を赤らめてショボくれていた。

 

 

「ひぐっ……ぅぅ……男としての最後の尊厳が……『女の子』に……されちゃったぁ……」

 

「何を言ってるんですか。お風呂に入ったのに脱いだトランクスを履こうとするなんて不潔なこと、駄目に決まっています……そのショーツは新品ですから履き心地は悪くないでしょう……?」

 

 

 

 

 そう、トレーナーは今カフェが貸したサイズの合わないパジャマを着けていた。多少ブカブカしているが、それは大した事ではない。問題は下着だった。

 

 湯船から上がり、身体を拭いた後、いざ着替えをする段階でマンハッタンカフェはトレーナーに新品のベージュ色のショーツを突き付けた。彼は真っ赤になってそれを拒否し、脱衣籠の中の自分のトランクスを引っ張りだそうとしたのだが、もちろんカフェはそれを許さなかった。

 

 彼は必死に抵抗したが、か弱いヒトの『女の子』になったトレーナーが、ウマ娘であるカフェに力で敵うはずもなく、無理矢理ショーツを履かされたのだ。しかもその時はかなり恥ずかしい姿勢になっていたのだが、そこは読者の想像にお任せしよう。

 

 

 

 

「履き心地の問題じゃなくて……僕は、越えてはいけない最後の境界線を……越えてしまったんだぁ……ぅぁぁぁぁ……」

 

 

 トレーナーは俯いて悔しそうにパジャマのズボンを握ってシワを作る。臀部と鼠蹊部、そして大事なトコロを優しく包み込む綿100%の布地の感触に、彼は自分のアイデンティティを喪失したような気持ちになっていた。

 

 トランクスは最後の砦だったのだ。それを失った今、トレーナーは生物学的にも物理的にも純度100%の『女の子』となった。彼が男性だと証明する手立ては最早この世には存在しないのだ。

 

 まあトランクス1枚で男だと言い張るのもナンセンスなのだが、そこは気持ちの問題である。

 

 

「うぅ、でも……まだ、ブラジャーを着けてないのは良かった。もしソレまで着けていたらと思うと……」

 

 

 トレーナーがそう呟いた瞬間、部屋の温度が一気に15℃くらい下がった。ガタガタと室内の本棚や置物が揺れ始める。

 

 

 

「……そうですね。あいにく私は『そのサイズ』のブラは持っていないので、トレーナーさんのお力になれません……」

 

 

 

 カフェは目を見開いて、凍てつく様な視線でトレーナーを見つめていた。

 

 

 

「ヒィッ! い、いや、カフェ! 別に大した意味は無いぞ! 本当にブラは着けたくないだけで……ヒッ!」

 

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……とカフェが黒いオーラを発している。

 

 彼女が手をワキワキとさせながら近付いて来たので、トレーナーは胸を両腕で庇って怯えるのだった。彼の脳裏についさっきのお風呂場での光景がよぎる。彼の『ふわふわ』が『ふわふわ』に『ふわふわ』された光景が……

 

 

「……くすっ……まあ、冗談はこのくらいにして寝る準備をしましょうか、トレーナーさん」

 

 

 ガタガタと部屋の隅に縮こまるトレーナーに、カフェは蠱惑的な微笑みを向ける。明らかにカフェの中の何かのタガが外れているとトレーナーは感じたが、今はとにかく逆らってはならないという本能の警告に従うことにした。

 

 

 そうして、トレーナーはカフェから(無理矢理に)お肌の諸々のケアを伝授されて、カフェの就寝前のストレッチも一緒に行って、買い置きの歯ブラシを使って歯を磨いて……まるで姉妹の様に就寝前の一時を過ごした。

 

 そうして、長かった1日もようやく終わろうとしていた……

 

 

 

 

–––––

 

 

 

 

「……そろそろ寝ましょうか。明日の夕方までは油断出来ません。特にトレーナーさんはしっかりと休眠を取らないと駄目ですよ……」

 

 

 ベッドに腰掛けた黒猫柄のパジャマ姿のマンハッタンカフェが、歯磨きを終えて洗面台から戻ってきたトレーナーに語りかけると、彼は欠伸をして返事をする。

 

 

「ふぁぁ〜〜……そうだね……今日は本当に大変な1日だったなぁ、まさか『女の子』になる日が来るなんて想像だにしなかったよ……」

 

 

 そう言ってトレーナーはポテポテ歩いて、カフェが座っているのとは反対側のベッドに向かって行った。

 

 

「……トレーナーさん、どこに向かっているんですか?」

 

 

 カフェの声にトレーナーは立ち止まる。

 

 

「え? どこって、ユキノビジンのベッドだよ。本当にタイミングが良かったね。ちょうど眠れるベッドが2つあって……」

 

「……? 何を言ってるんですか?」

 

 

 カフェがキョトンと真顔で深淵まで繋がっていそうな瞳をトレーナーに向ける。

 

 

 

「トレーナーさんは、今夜は私のベッドで一緒に眠るんですよ?」

 

 

 

 さも当然かの様にカフェは言い放った。トレーナーの眠気は一瞬にして彼方へ吹き飛んで行った。

 

 

「え……ちょっと待って、カフェ。今、同じベッドで一緒に寝るって言ったように聞こえたんだけど……?」

 

「そうですけど……何か問題でも?」

 

 

 問題しかないよ!!!とトレーナーは心の中で叫んだが、ここは大人の対応をする事にした。

 

 

「カフェ、僕と君はトレーナーと担当ウマ娘の関係なんだよ。恋人同士でもない成人男性と学生なんだよ。そんな2人が同衾するのは、世間では決して許されない事なんだ」

 

「一緒にお風呂にまで入ったのに、今更何を言ってるんですか?」

 

 

 確かにぃ!!!と、トレーナーはまた心の中で叫ぶ。カフェの言葉にぐうの音も出なかった。

 

 

「それにトレーナーさん、いくらユキノさんが優しい方でも、勝手にベッドを使われるのはあまり気持ちの良い事ではないはずです。あなたが自分を成人男性と言うのならば、そんな事をして心が痛まないのですか?」

 

「うっ……痛い所を突くなぁ……」

 

 

 そして、トレーナーの頭にピーン!と電球が灯る。

 

 

「そうだ、だったらユキノビジンに許可を貰えば良いじゃないか! カフェもルームメイトなら連絡先は知っているだろう? この時間なら彼女もまだ起きているはずだ。そこのスマホで電話すれば……」

 

 

 トレーナーがカフェの机の上に置いてあるスマホの方を向くと……

 

 

 カタカタカタカタカタカタッ!!!

 

 

 突然、そのスマホが震え出した。バイブ機能とは明らかに違う異常な現象が発生していた。そして、それはフワリと宙に浮かび上がった。

 

 トレーナーが呆然としていると、更にバンッ!と音を立ててひとりでに部屋の窓が開いた。一瞬の突風が部屋に流れ込んで来る。

 

 そして、スマホはピューンと真っ直ぐ窓を通り抜け、外へ飛んでいってしまった。

 

 

「…………………(唖然)」

 

「……『お友だち』がイタズラをしたようです。これではユキノさんに連絡が取れませんね、トレーナーさん」

 

 

 ニコッとベッドに座るカフェが微笑む。普段は笑う事が少ない彼女の笑顔が可愛らしいが、トレーナーは同時にちょっぴり恐怖を感じていた。

 

 

「……うおおおおお! 僕はユキノビジンのベッドで寝るんだあああああ!」

 

 

 大人の対応?何それ食えるの?って感じでトレーナーはカフェと反対方向のベッドに突撃する。無駄な足掻きかもしれないが、先に毛布にくるまってしまえば何とかなるかも知れないと、彼は必死にダッシュする。しかし……

 

 

 ドンッ!

 

 

「うわぁ!?」

 

 

 トレーナーはユキノビジンのベッドに触れる瞬間、『見えない何か』によって突き飛ばされてしまった。何者かによるトレーナーとカフェを絶対にくっつけようとさせる強い意志が感じ取れた。そして……

 

 

 ぽすん、ぎゅっ……!

 

 

 と、トレーナーの小さな身体をカフェがしっかりと抱き止めた。その瞳の奥にはピンク色の恍惚とした感情が渦巻いている。

 

 

「捕まえた……一緒に眠りましょうね、トレーナーさん……♡」 

 

 

 ああ、駄目だ、逃げられない……と絶望の表情をするトレーナーは、カフェの毛布の中に引き摺り込まれて行った。

 

 

 パチンッ!と部屋の照明がひとりでに消えた。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

(駄目だ……駄目だ……これは、非常にマズい……っ!)

 

 

 トレーナーとマンハッタンカフェはシングルベットの上で掛け布団を共有して、向かい合って横になっている。真上から見ると左にトレーナー、右にカフェと並んでいる。

 

 カフェは左手をトレーナーの右肩に添えていた。なので密着とまではいかないが、2人の間の距離は殆どゼロと言っても差し支えないだろう。

 

 そんな状況でトレーナーはとある事に心を乱されていた。暗闇に目が慣れてきて、目の前にカフェの頭の輪郭がぼんやりと見えるのもドキドキするが、視覚よりも嗅覚の方が問題だった。

 

 

(〜〜〜っ! めちゃくちゃ……『良い匂い』がする……! 風呂から上がってしばらく経つけど、それでも石鹸の香りと……カフェ自身の匂いが……布団の中いっぱいに……布団そのものも良い匂いがするし……頭が……クラクラ……するぅ……これが『女の子の匂い』……?)

 

 

 呼吸を止める事は当然だが無理である。故にトレーナーは毎秒毎秒常に鼻腔をくすぐり続ける『カフェの香り』に翻弄されていた。彼はまるでカフェそのものに包まれているかの様に錯覚していた。

 

 

「……くすっ……トレーナーさん、眠れないんですか?」

 

 

 薄明かりの中で、カフェがトレーナーを見つめていた。その顔はイタズラ好きの子供のようで、妖艶な魔女のようでもあった。

 

 

「う、うん……だってこんなに……カフェが……って、んんっ!?」

 

 

 トレーナーが言葉を言い終わる前に、カフェはグイッと彼の身体を引き寄せる。トレーナーの額がカフェの胸に押し当てられる。その柔らかな感触もさる事ながら、より濃厚な『カフェの香り』が直接トレーナーの脳を刺激する。彼の脳内はその瞬間にパニックを起こしていた。

 

 

「っっ!? 〜〜〜っっ!?」

 

「ふふっ……トレーナーさん……」

 

 

 カフェはトレーナーの頭に顔を近づけて、すぅーーーー……と深呼吸をした。

 

 

「あぁ……トレーナーさんは……とても『良い匂い』がしますね。お風呂上がりの石鹸の香りと、トレーナーさん自身の匂いが……布団いっぱいに広がってます……」

 

「えっ……?」

 

 

 トレーナーはキョトンと我に帰る。

 

 

「いや、違うよ……これは……カフェの匂いで……」

 

「生き物の鼻は、敢えて自分の匂いが感じ取りにくい構造になっているそうです……周囲の状況を判断する為に、そのように進化したのだと、何処かで聞いた事があります。だからトレーナーさんが感じている匂いは、私にはあまり分かりません……けど」

 

 

 カフェは暗闇の中で微笑んで、トレーナーの耳元に口を近づける。女子にしては低めの、独特の深みのある声で、彼の脳に直接語りかけるかのように……囁く。

 

 

 

「トレーナーさんからも、きっと自分が感じているのと『おんなじ匂い』がしていますよ……私とおんなじ……『女の子の匂い』です……」

 

 

 

 その声を聴いた瞬間、ゾクゾクゾクゾクと、トレーナーの背筋を甘い快感が這い上がっていく。その蠱惑的な囁きに、彼の脳は破壊された。

 

 

「ひぅっ!? んっ……! はぁっ……ぁぁっ……ぅぅ……んぅっ、ぁっ……!?」

 

 

 カフェの匂い、同じ布団の中に居る状況、自分も同じ『女の子』だという事実の激流の如きコンボ攻撃でスタン状態になっていたところを、最後に耳の中にカフェの生ASMRという媚薬を注がれてトレーナーは完全にとどめを刺された。

 

 身体をビクンッビクンッと痙攣させて、カフェとそっくりな姿をした小さな『女の子』はマンハッタンカフェという奔流に飲み込まれた。その口元から唾液がとろりと垂れていく。

 

 自分が同じ『女の子の匂い』を発して、既に『カフェの香り』と溶け合い、混ざり合っていたという事実に気付いてしまった彼に、その快感に抗う力は残されていなかった。

 

 

「ふふっ……可愛い……トレーナーさん、安心して下さい……今はなんにも考えないで……私の胸の中で、ぐっすりと……眠ってください……」

 

 

「んぅ……はぁ……ぁぁ……ぅん……♡」

 

 

 

 

 トレーナーは堕ちてゆく

 

 

 半径数十センチ以内の全てと一体化してしまう錯覚に囚われながら

 

 

 マンハッタンカフェという空間の中で

 

 

 ゆっくりと

 

 

 意識を手放したのだった…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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