イコさんっているやん? 作:猫又猫々
続きました。
御劔家に来てから1週間が経った。
時間の流れとは早いもので、気付けば1週間である。
碧さんと戦ってタコ焼きパーティーをした日から色々とあったので、ダイジェストにして振り返ろうと思う。
まずは滞在2日目からだ。
この日は朝6時に起きると、朝から碧さんと鍛錬を行った。
てか、この日から毎日朝は彼女と一緒に鍛錬をしている。
走り込みから始まり、素振りと、呪力なしでの竹刀を使った組手など、新たな日課である。
さて、それが終われば呪霊討伐の任務だと彼女に連れられて、お隣の石川県のとある廃墟で、2級呪霊3体と3級呪霊5体を祓った。
何でもその廃墟には「過去に自殺した女性が霊になって出る」という噂があり、更にはその近場に墓場があった事も起因してか、結構な数の呪霊が発生したのだそうだった。
因みに祓った感想だが、見た目がキモかった。
呪霊って何であんなにキモい見た目をしているのだろうか?
コレがワカラナイ。
そんなこんなで2日目は任務に行って終わりだった。
さっさと山口さんの運転する車に乗り込んでその日は家に帰り寝た。
ベッドが超ふっかふかで快眠だった。
続いて3日目だがこの日は特に何もなく暇だったので、街に出て色々と散策した。
カラオケに行って歌ったり、街の人にオススメの定食屋を教えて貰ったり、その定食屋に足を運んだり、色々と楽しかった一日だった。
街の人達はみんな優しくて、心がとても暖かくなったのを覚えている。
少し、泣きそうになったのは内緒だ。
散策を終えた後は御劔邸に帰り、その後は寝るまで自身の術式について、ああでもないこうでもないと研究していた。
さて、問題が起こったのは4日目だった。
この日は朝に鍛錬を行うと任務があったので、窓の方と一緒に福井市の外れまで行った。
行ったまでは良かったのだが、どうやらそれが罠だったらしく、恐らく扇のオジさんの放った刺客であろう術師に襲われた。
取り敢えずボコして箸巻きにしてから高専に送っておいたが、まあまず揉み消されるだろう。
何たって御三家だもの。
上層部の人間は五条さん曰く腐ったミカンのバーゲンセールらしいので、あの刺客達も呪詛師として処理されるだろう。
南無三。
4日目は結局、刺客に襲われて終わった。
個人的には扇オジさんには、俺を殺そうとかいう無駄な事はさっさと辞めて欲しいところだ。
何で呪霊とかいう明確な脅威が存在する癖に内ゲバしてんだよ。
ボーダーを見習えよ、ボーダーを。
あそこの上層部は有能中の有能だぞ。
しかも、内ゲバもあるにはあるが民間人を守るという目的は一貫している。
なのに呪術界と来たらホンマ………。
こんなんじゃ、本格的な呪霊や呪詛師による侵攻が起こったら負けちまうよ。
え?
五条悟が居るから安泰だって?
うるせえ、それは禁止カードでしょーが!!
おっと、話を戻そう。
5日目だが、この日は碧さんから御劔家の秘伝技を教えて貰った。
禪院家にもあった秘伝技であるが、御劔家にもそれは存在した。
その名も秘伝──『
何でも、二代目当主である御劔
弱者の領域であるシン・陰流の簡易領域を見た彼がそれを元にし、御劔家オリジナルの簡易領域としてこの技を編み出したのだそうだ。
それって、パクr──………いえ、何でもないです。
この日は秘伝技を教えて貰った後に、御劔家の歴史とこの家の術師達が遺してきた色々な術式についての取説を見せて貰ったり、更には御劔家が保管している呪具なんかも見せて貰ったりした。
その後は訓練場にて、また術式について色々と研究したりして、その日は終わった。
とても有意義な休みだった。
次に6日目だが、この日は五条さんに呼ばれて高専に行った。
五条さんに紹介したい人が居ると言われ、何としてでも友達になるぞとウキウキで向かった俺は、なんと俺にそっくりな少年と出会ったのだった。
あと、その少年の姉も紹介された。
俺にそっくりな少年の名前は伏黒恵くん。
なんと俺の2つ下。
後輩ちゃんである。
しかも禪院家相伝の『十種影法術』を持ってるのだとか。
禪院家が喉から手が出るほどに欲している逸材だった。
そして姉の方は津美紀ちゃん。
この子は非術師らしく、ただの一般人らしい。
俺と同い年との事らしく、デ◯モンの話をしたらポ◯モン派だと言われた。
よろしい、ならば戦争だ。
という事でジャンケンをしたら俺が勝った為、津美紀ちゃんがデジ◯ンシリーズを見る事が決定した。
精々無印の最終話で泣くがいいわ!
おっと、また話がそれてしまった。
話を戻してその2人だが、なんと禪院家を追い出された例の天与呪縛の人の息子さんと、義理の娘さんなんだそうだ。
宗家の血筋で尚且つ相伝持ちの逸材を、良く禪院家が手放したなと思って五条さんに質問した所、10億で禪院家から手を引いて貰ったそうだ。
御三家ェ……。
金持ちってスゲェんだなと改めて分からされた。
その後、何で俺に紹介したのか五条さんに聞いたら、「君なら恵の良い先輩になってくれそうだし、それに来年からそこの彼女の同級生になるからね。顔合わせは必須でしょ?」とニヤニヤしながら言われた。
多分コイツはバカなんだろうと思った。
何と五条さん、俺の通う中学校を勝手に決めてやがったのである。
おいおいおい、俺の意思はどこにあるんだ?
なんて常識、現代最強の五条さんには通じなかった。
最後に7日目だが、恵くんと一緒に任務に行った。
軽ーい低級呪霊討伐任務である。
俺は恵くんのサポートとして連れてかれたのだが、何故か準一級レベルの呪霊が居た為、俺が斬っておいた。
恵くんからは驚愕の目で見られた。
なんでや?
そんなに弱そうに見えたのか?
ホントにそうだったら泣く事になるよ?
主に俺が。
その後は顔合わせと任務の労いも込めて、五条さんと津美紀ちゃんも連れて4人で焼肉に行った。
とても美味しかった。
さて、そんな感じの充実した?1週間を送った俺は今、富山県にある廃墟と化したとある遊園地に来ていた。
何故そんなところに居るのかと言えば、術式によるトリガー完全再現を終わらせる事が出来たので、その性能実験も兼ねて任務を受けたからであった。
性能実験とはいっても、この1週間の内の少ない暇を活用して、やっとこさトリガーを完全に再現する事に成功したので、それがどれほどの出力なのかの簡単な確認である。
再現が終わったのが何故今更なのか、それには谷よりも深ーい理由がある…………訳でもなく、やっとこさ術式と向き合う為の余裕と時間が取れたのと、我慢もそろそろ限界だったからという理由でしかない。
他にも、禪院家に居た頃は敵の目が多過ぎたり、何よりも任務に、鍛錬に、双子と遊ぶなどやる事が多過ぎて術式の研究が出来なかったというのも原因だったりする。
だからこそ、禪院家を追い出され暇になった今になって、やっとこさ完成させる事が出来たのだ。
双子と遊ぶのは充分に暇な証拠だろって?
友達と遊ぶのは暇だからじゃないんです。
野菜が必要だから食べるのと一緒です。
遊ぶ事もまた大切な事なんです。
一度過去の話をしよう。
俺が始めて術式を発動したのは、先生のクソみたいな理不尽課題をクリアする為に孤月を再現した時だ。
初めてだろうと関係なく、俺の希望通りに孤月を具現化する事は出来た。
出来はしたのだが、問題があった。
俺の生得術式なのだが、俺が思う以上にゴミofクソの酷え術式だったのだ。
最初に孤月を再現した時なんかは、結構な量の呪力を持ってかれるし、とんでもない集中力がないとすぐに孤月が消えちゃうしで、マジでやってられるかって感じだった。
そんなもんトリガーの切り替えとかしながらだと、まともな戦闘すら出来ないじゃないか!?
qあwせdrftgyふじこlp!!
とか一通り発狂しまくった俺は、冷静になって術式に幾つかの縛りを課した。
その縛りが中々どうして上手くいったお陰で、ノーマルトリガーにおける幾つかの設定の再現と、術式発動の難易度を著しく落とす事に成功したのだが、それが嬉しくてもう一回発狂してたら理子さんに頭を叩かれて離れに連れて行かれたのを覚えている。
お勉強の時間忘れてたのはごめんやん、理子さん。
まあそれとは別に、縛りを思いついた時には我ながら自身の頭脳が恐ろしかったし、それと同時に縛りの巧い扱い方が重要な事にも気付かされた。
マジで縛り様々である。
後はもう訓練あるのみである。
高い集中力を保つ為の訓練、集中力を乱さない為の訓練、呪力操作の訓練、体術の訓練。
毎日毎日、来る日も来る日も、3年に渡って只管に訓練し続けた。
そのお陰で、手足がもげようが消し飛ぼうが、お構い無しに術式を発動しながら戦える様になったのはありがたい事だ。
俺はこれまで縛りを術式に利用する事で、孤月とか旋空とか、木刀を再現していた。
だが今回はそこに新たにプラスして、シールドとバッグワーム、あとはノーマルトリガーに元から付いてるレーダーと
なので、その性能がどれほどなのかを確認しようというのが、今日の目的であった。
え?
他の
俺の理想のトリガー構成はイコさんと一緒だって言ったでしょーが!
世界で最もイコさんに憧れている(当社比)この俺が、イコさんと同じトリガー構成にしなくて誰がするんだって話ですよ。
憧れは止まらねーのです。
さて、俺の下らない考え事もこの辺にして、そろそろ任務について考えよう。
「ほうほう、遊園地……」
「はい。窓による報告ですと、ここは地元でも有名な心霊スポットになっていたそうなのですが、およそ2日前からここを訪れた高校生2人が行方不明になっておりまして、龍人さんにはその2名の遺体の確認と呪霊の討伐をお願いしたいのです」
今回補助監督に就いてくれている磐田さんが真剣な表情をしながらそう言った。
磐田さんは今回の任務の為に派遣されて来た補助監督の方だ。
今年で40歳のベテランらしい。
最近の悩みは娘の反抗期に対してどう接すれば良いのか分からないらしい。
笑えば良いと思うよ。
今回の任務地である遊園地は13年程前に潰れたらしく、そこから改築も解体もされる事なく放ったらかしにされた結果、地元では知らない人がいないレベルの心霊スポットになったのだそうだ。
その結果、ここ数年で負の感情が湯水の如く溜まりに溜まってしまい、遂に呪霊による被害が発生してしまったのだそうだ。
今回の俺の任務は、そこに居るであろう呪霊の一掃と被害者の遺体の回収もしくは発見であるらしい。
なんでも今回の件を重く受け止めた遊園地の所有者が、遊園地の解体を決定したらしく、今回の仕事は解体工事の邪魔をする呪霊を1匹残らず祓ってくれというものらしかった。
遊園地自体が結構広いこともあり、窓の方がザッと確認しただけでも呪霊が2級レベルが4体以上は居たとの事。
イイじゃんイイじゃん、オモロイじゃん。
俺1人で殲滅してやろうじゃないか。
被害者が出てしまったのは頂けないが、こちとら元ボーダー志望、現イコさん志望の一般市民の味方である。
市民を守るのもまた、ボーダー隊員(違う)としての務め。
これからの被害を減らす為にも、誠心誠意呪霊を祓わせていただこうではないか。
さあ、任務の情報も一通り頭に突っ込んだし、心意気もヨシ!
てな訳で、そろそろ件の遊園地へと入らせて頂こう。
「よし。ほんなら磐田さん、帳頼んます」
「はい」
磐田さんは頷くと、呪力を全身から迸らせた。
「"闇より出でて、闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え"」
夜が遊園地を覆い尽くす。
俺達術師を隠し、呪霊を炙り出す為の結界である帳が展開された。
何時も思うけど、帳の呪詩かっこよ過ぎんだろ。
帳を考えた奴はとんでも無いセンスの持ち主なのだろう。
敬意を表そうじゃないか。
ありがとう名も知らぬ過去の術師よ、貴方のお陰で今日もクソかっこいい呪詩を聞くことが出来る。
感謝感謝。
「お気をつけて下さい、龍人さん」
「ほんなら行ってくるわ」
心配しないで磐田さん。
俺は別に、死にそうになったら勝手に帰ってくるから安心してくれ。
俺は死なん!
緊急時の脱出手段であるベイルアウトがあるからなぁ!
ガッハッハッハ、勝ったな。
餅食ってくるわ!
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御劔龍人の肉体に刻まれた術式の名は『再現呪法』。
その能力は"再現"。
術者本人の記憶の中にある物体などを術式対象とし、その対象を呪力で具現化し再現する術式。
この術式には欠陥とも言うべき、欠点があった。
構築術式がゼロから莫大な呪力によって物体を構築するのに対し、再現呪法は術式対象を記憶から写し取り具現化する。
それは領域展開における結界内での具現化に近いが、結界で区切る事なく具現化を行う為、難易度が高く相応の呪力操作と出力、消費を必要とする術式であった。
もしもそのまま術式を行使しようとすれば、条件を満たしていない術者はまともに発動すら出来ないのである。
たった一本の刀を再現するにも刀に対する理解、そして高度な呪力操作と出力を必要とするというクソ術式なのであった。
その事に当時6歳であった龍人は気づき、術式に縛りを設ける事にした。
一つ、予め設定しておいたモノ以外を術式対象とする事の禁止。
二つ、11種以上のストックの禁止。
三つ、並行して同時に3種以上の再現を禁止。
四つ、日に4時間以上の術式の使用禁止。
この四つの縛りを結ぶ事で龍人は、扱い物にすらならなかった術式を自身でも扱えるレベルにまで落とし込んだ。
また、再現呪法によって物質や物体を再現するには、
1.記憶から再現したい対象を選別
↓
2.それを術式対象に設定
↓
3.術式対象の情報を術者の記憶から読み取る
↓
4.読み取った情報を元に呪力によって具現化
という4つのプロセスを要し、術式発動から具現化までに若干のタイムラグが発生するのである。
しかし龍人には、そのタイムラグが殆ど存在しない。
何故なら彼は、一つ目の縛りによって予め情報を術式にストックとして保存出来る様になっており、さらにそのストックの中から術式対象を選ぶ為、
1.ストックから術式対象を選択
↓
2.術式対象を呪力によって具現化
という風に『記憶からの選別』と『術式対象の情報を記憶から読み取る』の2つの工程を省く事が出来るからであった。
現代に生まれた、別の世界での知識を持った異端者。
御劔龍人は自身の能力を
────────────────────
──シールド
俺がそう念じると同時に、術式によって再現された結界が現れる。
大きさにして1辺20センチ程の正六角形状のシールドと、右側方から飛来したナニカが衝突する。
バンッという窓ガラスに物体がぶつかったかの様な衝撃音が鳴り響き、俺の胸の前で呪霊の尾による叩き付けが停止していた。
よしよし、シールドの硬さも申し分ないな。
というか、硬過ぎるくらいだ。
硬さの基準が呪力量ではなく出力に左右されてしまうのは呪術である以上仕方ないにしても、である。
この硬さだと旋空孤月すら防いでしまうかもしれない。
いや、発想の転換だ。
アマトリチャーナの集中シールドとか固定シールドなら旋空孤月防ぎそうだし、まあ許容範囲としようじゃないか。
シールドは優秀な防御用トリガーだからね、仕方ないよね。
ほんなら次は勿論──
「──旋空孤月」
横薙ぎ一閃。
今回は起動時間を1秒程に設定した旋空孤月によって、俺の前方15メートル程の位置に居た呪霊4体が真っ二つになる。
地面と遊具さえ壊さなければ良い、という指示があったので、好きな様に暴れさせて貰う。
勿論やり過ぎない様にある程度セーブはするので、あしからず。
でもやっぱり、旋空孤月気持ち良過ぎだろ!
何だろうこの爽快感。
たまらない。
たまらなく気持ちイイ!
「おっとッ」
危ない危ない。
とんでもない速度で飛んできた魚型の呪霊が、顔面に当たるところだった。
勿論シールドで瞬時に防ぎつつ、孤月で切り裂く。
低級呪霊ならば何の抵抗もなく、スパッと切る事が出来てしまう孤月。
流石だ。
これからも愛用させて頂きます!
「次で最後やな」
ここら一帯の呪霊を祓い終わったので、残りの北側にあるステージゾーンへと向かう。
ここに来るまでに既に14体程祓っているが、レーダーを見た感じ恐らく残りの数もあと少しだ。
反応からして23時の方角160メートル先に一体と、200メートル先にいる2体で終わりだろう。
今俺が見ているこのレーダーは、俺の呪力感知を視覚的に再現したものだ。
レーダーに映る呪力反応も、レーダーの探索範囲も全て俺の探知能力準拠であるので、そこまで広範囲が見えるという訳ではない。
精々が半径250メートルの円状の範囲だ。
まあそれでも、この範囲内ならどんなに小さな呪力の反応でも気付ける自信はある。
後は呪力の反応が自分のいる位置より上なのか、下なのかもしっかりと表示される様になっている。
「ピエロみたいなん居るやん」
レーダーを頼りに、ボロボロになったステージが設置された広場に着いた俺が見つけたのは、口の裂けたピエロの顔が阿修羅像の様に四方にくっついている呪霊だった。
上半身はブクブクに太っており、下半身には蜘蛛のような8本足の生えたキモい見た目をしており、胴体から生えた6本の腕にはベッチャリと人間の血が付着している。
しかもご丁寧に生首まで手に持っているではないか。
「どう見てもお前が主犯やん。」
これは今回の件の主犯確定ですね。
遺体が首から上しか無いのを見るに、恐らくだがこの呪霊に食われた可能性が高い。
呪霊の中には人を食うものもいる。
呪力の大きさ的に見ても、残りの2体は目前のコイツよりも弱く、此方に近付いて来ない事から考えるに、このピエロ呪霊の近くには寄りたくないのだろう事が予想される。
だとすればピエロ呪霊に食われた可能性が高かった。
来るのが遅くなって申し訳ない。
助けてやれなかったのは悔やまれるが、取り敢えずこのクソピエロをさっさとぶっ殺すとしよう。
これ以上被害者を出す前に祓うのが、俺の仕事なのだから。
「旋空孤月」
抜刀一閃。
横薙ぎに振るわれた孤月が、呪霊を真っ二つに切り裂く。
抜刀が終わると同時に加速。
接近して、さらに切り刻んでいく。
最初の一撃だけで祓えるなんて考えていない。
相手は呪力量からして恐らく1級レベル。
何らかの術式を持っているかもしれない。
或いは既に術中なのかもしれない。
だからこそ──
「──速さでゴリ押しや!」
呪霊は人間と違って肉体の再生に反転術式を必要としない。
呪力を消費する事で自己補完を行う。
だからこそ、人間に比べて呪霊は肉体の再生が容易だ。
だが、再生なんてやらせやしない。
このまま切り続けて祓う。
ガッハッハッハ!
スピードで負けてる奴は、何しても勝てないんだよぉ!
そんなもんポケモンじゃあ常識なんだよ(そんな訳ない)。
「シールド」
俺の方を向いていたピエロ呪霊の口から、呪力の塊が発射される。
恐らく此方と距離を空ける為であろう反撃の一撃を、余裕を持ってシールドで防ぎつつ、呪霊の肉体を切り刻む。
無駄無駄無駄無駄無駄ァ!
その程度の反撃で俺の攻撃の手が止まる訳ないんだよぉ!
8歳頃から鍛えてきたこの料理の腕を以てして繰り出される、高速の微塵切り。
オマエ如きに耐えられるかな!?
10回目の斬撃を喰らわせた所で、呪霊の右腕だけが再生する。
高速の右腕による振り下ろし。
それを回転する事で回避する。
今更攻撃を喰らってやる程柔じゃないのだ。
大人しく斬られてくれ。
「よっ」
回転しながらの最後の一振り。
呪霊の顔面を一刀両断した所で、消失反応が発生する。
時間にして3秒程。
俺の圧勝であった。
「気付いとるで」
呪霊の消失と共に俺の背後に現れた、2体の2級呪霊。
恐らくだが、漁夫の利を虎視眈々と狙っていたのだろう。
だが、詰めが甘かったな。
俺は、隠密に長けた風間さんとも夢で戦った事があるのだ!
その程度の奇襲、無駄無駄無駄無駄ァ!
振り向き様に俺の背後に居る呪霊を切り裂く。
呪力を込めて放った一撃は、2級呪霊を綺麗に消し飛ばした。
「よっしゃ、一件落着や。さっさと帰って飯食べよ。アレやな、そろそろカレーが食べたいわ……」
全ての呪霊を祓ったからだろうか、帳が上がる。
レーダーを確認しても呪霊の反応はゼロ。
任務完了だ。
あとは遺体を回収するのみだ。
皮が剥がされ、性別の区別すら付かなくなってしまった二つの生首を、手袋を装着し遺体回収用の袋に入れる。
ここまで凄惨な遺体は珍しくはない。
なんなら遺体が残っている時点で御の字ってレベルだ。
残虐さで言えば呪霊は凶悪過ぎる。
だからこそ、俺達
さて、結構疲れた。
呪霊も祓い終わったし、遺体も回収したし、俺の仕事は終了だ。
さっさと撤退しよう。
「拡張術式──『
術式を発動した次の瞬間、景色が一変する。
先程まで真っ暗闇の中ボロい遊園地にいた筈の俺は、磐田さんの居る車の中に戻って来ていた。
よしよし、緊急脱出も上手く発動出来た。
今回の性能実験は大成功だ。
全て俺の想像以上の性能と言っても過言ではない。
これだけ強力なら、イコさんとして生きていくのに何不自由ないだろう。
たしかなまんぞく……。
「なっ!?」
「戻って来たで磐田さん。遺体も回収したし、呪霊も全部祓った。任務完了や」
「そ、そうですか」
「御劔邸まで頼んます」
驚いてる驚いてる。
まあ、いきなり人が瞬間移動して来たら普通はビビるよな。
俺でもビビる。
てか五条さんにやられてビビった。
許さねえ、五条悟。
いつか絶対ぶん殴ってやる。
何が、龍人が驚く顔が気になった、だ。
無表情だったわ、ボケナスッ!
「了解致しました。それにしても、どうやって戻って来たんですか?」
「トリガーやで」
「そ、そうですか」
「なあなあ、磐田さん。夜飯なんやと思う?」
取り敢えず、家まで暇なので雑談に講じようじゃないか。
俺の無駄な話に付き合ってくれ。
役目でしょ。
「レパートリーが多過ぎて予想ができませんね」
「俺はカレーやと思っとる。てかカレーがええ」
「えぇ……」
うるせえ!
こちとらナスカレーが食いたい気分なんだよ!
夜飯が何かじゃなく、何が食いたいかで自分を語れよ!
ご丁寧にも、磐田さんはそのまま御劔邸に着くまで雑談に付き合ってくれた。
ありがとう磐田さん。
運転お疲れ様です!
尚、夜ご飯は卵カツ丼だった。
美味すぎて泣いた。
それと同時に、俺の料理人としてのプライドがズタボロにされた。
悔しい…!
でも…(美味しく)感じちゃう!
・再現呪法:その能力は"再現"であり、術者本人の記憶の中にある物体などを術式対象とし、その対象を呪力で具現化し再現する術式。領域展開における結界内での具現化に近しいが、結界で外界とを区切らない為、相応と呪力操作と出力を必要とする術式。出力の低い者や呪力操作の拙い者ではまともに扱う事すら出来ない。因みに、龍人くんが初回で孤月を具現化出来たのは呪力と出力でゴリ押ししたからだったりする。
お気に入り登録、評価、感想ありがとうございます。
アニメの出来が凄すぎて、モチベが上々です。