イコさんっているやん?   作:猫又猫々

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続きました。


第3話 禪院龍人は気付かない

 

 

どうもみなさんこんにちは!

ゆっくり龍人です。

今日は、俺が所属する禪院家について解説していくよ!

 

何で解説するかって?

やっとこの家について色々知る事が出来たからだよ!

聞けば何でも答えてくれる先生には感謝だね。

愛してるよ。

うるせえ、もっとまともな訓練施しやがれ。

 

さて、まず禪院家とは何か。

これの答えはとっても簡単。

この呪い溢れる世界に於いて、1000年以上昔から代々続いてきた大一族である。

何でも、人々を守護する事を生業(表向き)とする事で昔から栄え続け、呪術界においては高い地位についているのだとか。

 

他人を救けて食べる飯は美味いか!?

さぞかし美味いだろうな!

出来れば俺もそんな飯が食いたい!

 

そんで、裏では政府──過去に於いては朝廷──と繋がってるらしく、お金をガッポリズッポリ貰ってるらしい。

まあでも、呪いの脅威から人々は守護(まも)ってるし、俺は良いと思うよ?

 

そんな裏の世界で莫大な発言権を有するうちの家だが、最近ではライバルの五条家にとんでもない神童が産まれた事や、不幸な禪院家壊滅未遂事件が起こったなどで、そこまで盤石って訳でもないらしいよ!

攻めてくるなら今がチャンスだよ!

フリじゃねぇからな!?

 

んで、まあ禪院家って呪術界では御三家ってやつの内の1つとして数えられてるらしく、他の2つのお家──加茂家と五条家とはライバル関係であるらしい。

自分達の手は汚したくないから手出しはしないけど、潰れてくれたらハッピーうれぴーって感じの様で、互いに牽制し合ってるんだって。

 

直毘人の爺ちゃんも、他の家との話し合いは疲れるって言ってた。

頑張ってくれ爺ちゃん。

飯奢ってくれたから、俺は爺ちゃんの事だけは応援してるぞ(クソチョロ並感)

 

さて、話は次のステップに行く。

この禪院家、なんか普通にド畜生の家らしく、「禪院家に非ずんば呪術師に非ず。呪術師に非ずんば人に非ず」とか云う格言があるくらいにはヤバいのである。

しかも、この家に生まれてまともに呪術が扱えないと召し使い──物として扱われる事になるのである。

オイラ知ってるよ。

だってオイラの同年代の子がそうだもん。

オイラ見ちゃったもん。

 

そんな禪院家だが、悪い所ばっかりって訳でもない。

俺はぼっちだけど、優しくしてくれるおっさんは居るし。

俺はぼっちだけど、オタクで映像について詳しい直毘人の爺ちゃんも居るし。

俺はぼっちだけど、家の女の子達みんなかわいいし。

俺はぼっちだけど、家で食える飯は美味いし。

俺はぼっちだけど、俺はぼっちだし、ぼっちぼっちぼっちぼっちぼっちぼっちぼっちぼっちぼっちぼっちぼっちぼっちぼっちぼっちぼっちぼっちぼっちぼっちぼっちぼっちぼっみぼっちぼっちぼっちぼっちぼっちぼっち。

 

悲報、転生してもぼっちだった件。

 

なんでやねん!

転生したら、自分の欲しいチート貰って無双して、俺すげぇええええとか、俺つえええええとかして、女の子とか周りの人からチヤホヤされるんちゃうんか?

なんで俺生まれてこのかた母親と、側使以外の女の子と関われてないん?

俺が関わるやつ基本おっさんか爺ちゃんやし。

 

ふざけんなや!

神は死んだ。

そうだ、そうしよう。

かのアリストテレスもそう言ってたしな。*1

神なんか最初からおらんかったんや!

だからこの転生も偶然かなんかで、俺がイコさんになる為に与えられた折角のチャンスなんや!

 

さて、なんか気が逸れた様な事もない様なある様な気もするけど、話を戻そう。

 

この禪院家はとにかく広い。

それはもう広い。

とんでもない大豪邸である。

そんで、人もバカみたいに居る。

親戚もみんな一緒に暮らしてるし、召し使いさん達も居るから尚更多い。

 

なので、この馬鹿でかい家を巡って行こうと思う。

 

最初のスタート地点は俺の暮らす離れである。

これ思うんだけど、俺隔離されてるよね?

しかも、腫れ物扱いまでされてるよね?

確信犯だよね?

良いのかなぁ。

ぼっちをそんな風に扱っても。

後で泣く事になるよ?

主に俺が。

 

さて、離れから外に敷かれた石畳に沿って進めば、見えてくるのがでっけぇ母屋である。

禪院家の者は基本的にこの中で暮らしている。

なので、何の躊躇いもなく自分を母屋へシュート!超☆エキサイティン!!

 

「じゃまするで」

 

…………。

無視である。

何の返事もない。

本家の人俺の扱い厳しくないっすかぁ?

まあ、もう慣れたからイイけど。

 

まあ、気を取り直して。

色々なお部屋がズラリと並んでます。

壮観です。

匠の粋な技を感じられますね。

まあ、ごく普通の日本家屋ですけど。

 

特に面白味もないので次に行きましょう。

 

お次は地下にある、忌庫です。

そうですね。

俺が術式の性能確認の為に連れてこられた訓練場のすぐ隣です。

 

忌庫は良い。

沢山の呪具があって、俺の厨二人をくすぐってくれる。

呪いの武器とか男の憧れだよね。

でも、ごめんなさい。

俺には弧月という、心に決めた相手がいるの。

なので、忌庫は謂わばゴミの詰まった部屋と同義です。

それに、俺の術式で全部再現できますしお寿司。

 

さて、お次にとってもお綺麗な庭のご紹介、と思って外に出てきたのだが、そこでとんでもない光景を目にしてしまった。

 

「お姉ちゃん上手だね!」

 

「真依が下手なだけだろ!」

 

そう、俺と同年代にして召し使いとしてこき使われている、姉の真希ちゃんと、妹の真依ちゃんの2人が、ボールを蹴って遊んでいる光景であった。

 

可愛い女の子が2人、楽しそうに遊んでいる光景はええなぁ。

癒される。

 

いや、待てよ?

これは初のお友達を作れるイベントなのではないか?

神がそう言っている。

これは間違いない。

そうと決まれば、即行動!

俺は友達を作る為なら、百合の間にだろうと、薔薇の隙間だろうとヌルりと入り込むぞ!

 

Q.友達となる為の第一歩。何をするべき?

 

A.大胆且つ冷静に攻める!

 

相手の思考の、さらにその上を行く様な行動を取れば良いのだ!

そうすれば、ファーストインプレッションはパーフェクトだ。

 

イクゾー!デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ!

 

 

────────────────────

 

 

「あぁ?龍人について教えてくれだぁ?」

 

「うん」

 

その日、姉妹校交流会から帰ってきた乙骨(おっこつ)憂太(ゆうた)は真希に対して、とある人物についての疑問をぶつけた。

御劔(みつるぎ)龍人について教えて欲しいんだけど…」という、彼の言葉が余程突飛なものだったのか、真希は些かその目を見開いた後に、苦渋の顔を浮かべた。

 

「んだよ。バカ目隠しから聞いたのかよ。私と龍人が知り合いだって」

 

「ううん。五条さんに聞いたら真希さんに聞けって」

 

「ったく、結局あのバカの所為じゃねーか!」

 

「……真希さんは、その龍人さんが苦手なの?」

 

最初に浮かべた真希の表情が気になった乙骨は不安げな表情で問う。

彼は、マズいことを聞いたのではないか、と内心冷や冷やであった。

 

「苦手だな。同時に馬鹿だとも思ってるけど」

 

「ええ!?」

 

毅然と答える真希。

その様子から、彼女の発言が嘘でない事が察せられてしまった乙骨は愕然とする。

なんなら口をあんぐりと開けて驚いていた。

 

(まともそうだったけどなぁ……)

 

「あのバカゴーグルは馬鹿で鈍感だからな。私が馬鹿にしてる事にも気付いてねぇんじゃねぇの?」

 

「そんなに馬鹿だったかな……。何だか泰然自若って感じで、まともそうに見えたけど」

 

真希の言葉に嘘はないし、乙骨が感じた事も間違いではないのだ。

御劔龍人──旧姓禪院龍人を初めて見た人間は、皆口を揃えてこう言うのだ。

冷静で動じない毅然とした人間だ、と。

それも、彼の言動を知らないのだから無理もない。

 

「それじゃあ、真希さんと龍人さんってどんな関係なの?なんか知り合いって感じだし」

 

「ただ私達にとって初めて出来た友達で、あのクソみたいな家で味方してくれただけの関係だよ」

 

「へぇ、真希さんがそんなに言うなんて良い人なんだね」

 

真希の言葉を聞いた乙骨は微笑みながら、そう言った。

対して、それを聞いた真希は恥ずかしそうにそっぽを向く。

 

「……うるせぇ」

 

彼女──禪院真希にとって、禪院龍人は初めて出来た友人と呼べるものだった。

 

自分達の事を物扱いする"人間"しかいなかった禪院家で、彼だけが自分と真依の事を肯定して、受け入れてくれた。

認めてくれた。

1人の人間として扱って、友達になってくれた。

彼だけが対等な相手となってくれた。

たったそれだけで、幼少の2人がどれだけ救われたのかを、あの日の出会いを今でもたまに夢に見る事を、当の彼は知らない。

 

だって彼は──

 

──自分の事しか見てねぇもんな。誰かさんの気持ちにも気付かねぇし……ホントに馬鹿だよ、龍人の野郎は!」

 

禪院龍人は気付かない。

何故なら彼は自分の中で全てが完結してしまっている。

彼が目指すのはたった1人の漢だけであり、それしか見えていない。

だから、他人と友達にはなれても、他人と話す事が出来たとしても、根本的な所で相手の事など考えてもいないし、見てもいない。

本質的なところで自分本位で、自分勝手だ。

禪院龍人とはそういう人間なのだ。

 

だから、真希は彼のことが少し苦手だ。

自分達に餌の取り方を教えるのではなく、餌を与えた癖に、それがたったの数度だけ。

自分達はそれだけでは足りなくなってしまったというのに、それ以上の餌の得方を知らない。

それなのに、本人はそんな事つゆも知らずに平気な顔で絡んでくる。

 

「うわ!? ちょっと!急に大声出さないでよ。 びっくりするじゃん」

 

「うるせえ。もう少し付き合えや、アイツの事考えてたらムカついてきたわ」

 

「げッ!? 理不尽だ……」

 

「ったく……私はいつからこんなに強欲になっちまったんだよ……」

 

苦手だ。

それ以上を欲してしまう様になった自分自身でさえも。

彼に出会わなければ、自分自身の意思だけで周りの奴等を見返そうと思えたのに。

でも、今の自分は彼を理由にしている。

 

それがどうしようもなく、自分自身をイラつかせる。

 

「なんか言った?」

 

「なんでもねぇよ! たく、あのバカゴーグルは今度とっちめてやる」

 

「ふふ。僕も付き合うよ!真希さん」

 

「棘もパンダも呼んでボコボコにすんぞ」

 

「そうだね」

 

これは、ほんの一夏の青春の一コマ。

たった1人の存在がもたらした2人の関係の変化。

たった1匹の蝶の羽ばたきによって起こった、別の世界とは違った結果。

だが、それを引き起こした本人──龍人は気付かない。

 

だってその場にいなかったし。

なんなら彼に別の世界での出来事の記憶などある筈もない。

彼は生駒達人になりたいだけの一般人なのだ。

未来など見えないし、原作知識など持ち合わせていない。

それでも、彼の行動は未来を変えてゆく。

その果てにあるのは──。

 

後に、東京校一年生4人に1発ずつ頭をぶん殴られる上級生の姿が、確認された。

殴られた本人はたん瘤を四つ作りながらもテヘペロをして、更に殴られていた。

 

彼はホンモノの馬鹿なのかもしれない。

 

 

 

*1
それを言ってたのはニーチェ。





普段強気に振る舞ってても、心の奥底では依存してるの良いよね…。

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