イコさんっているやん?   作:猫又猫々

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大雪で休校の為、初登校です。


第4話 突撃!隣の五条さん!

 

 

実績──『初めてのお友達大作戦!』を獲得。

 

という事で、前世からの因縁であった"ぼっち"との決別を遂に果たす事が出来たRTA、はっじまーるよー。

 

前回は、やっとの事で2人のお友達をゲットしたところだったね。

え?2人がどんな子達だったか忘れちゃった、だって?

仕方ないなぁ、の○太君は。

テメェの海馬に情報をブチ込んでやるよ!

(情報を)孕めオラァ!

 

禪院家(うち)での扱いも含めて紹介していこう!

1人目は、双子姉妹の姉である禪院真希(まき)ちゃん。

この子は禪院家風に言えば、術師ですらない猿なんだとか。

天与呪縛とかいう、天から与えられた"縛り"によって、一般人程度の呪力と引き換えにとんでもない身体能力を持って産まれた、フィジカルギフテッドちゃん。

俺、この子めちゃ攻撃手(アタッカー)適正あると思うんだよな。

将来俺が作る予定の、隊に攻撃手として入れたいね。

俺と真希ちゃんのダブルエース体制でガンガン呪霊をブチ殺して(はらって)いこうね!

 

そういえば、過去にも真希ちゃんみたいな人が1人居たらしいんだけど、その人は家で暴れ回った後に放逐されて、失踪したらしい。

生きてるか、死んでるか誰も知らないらしいとか、ナニソレ怖ッ、戸づまりすとこ。

 

そんでお次は、妹の真依ちゃん。

構築術式っていう、呪力で物体を1から創る術式を持ってる凄い子なんだけど。

この子は、うーん……。

なんでこの子、不遇な扱いされてんだ?

分からん。

呪力は並だけど術式持ってるし、そこまで酷くないと思うんだけどなぁ。

なんだっけ、術式で創れるのが1日に弾丸1発が限界だからなんだっけ?

そんなん関係ねぇよなぁ!?

 

最近は狙撃の訓練してるし、真依ちゃんは狙撃手(スナイパー)だね。

パッと見た感じ呪力の隠蔽が上手いし、何気に隠れんぼ最強だし、呪術界のシモ・ヘイヘになってもらおう!

でも、ビビりは治してね!

 

という感じで2人の紹介は終わり!!

因みに、2人とも召し使い見習いとして、俺と一緒に離れで暮らしてるよ!

こんな幼い少女を物扱いだなんて、この家は頭がおかしいね!

 

これでみんなも俺のお友達がどんな子達か分かってくれたかな?

分かってくれたよね?

うんうん、良いお返事だね。

 

さて、それで突然なんだが。

実は初の友達が出来てからもう、3年が経ってんだよね。

え?お前の年齢が分かんない?

俺は9歳だよ!

絶賛小学3年生の年齢だよ!

 

6歳辺りから薄々気付いてたけど、この家の人間小学校に行かせてくれねぇ!

なんでやねん!

俺ホントやったら、今頃小学校で無双してる筈やったやん!

前世から持ち越した知識無双は、転生者の特権ちゃうん!?

出来んとかおかしいやん!

そんなん先言っといてや!

 

はい。

俺小学校に通ってません。

義務教育ェ……。

まあ、側使さんから勉学についてはしこたま仕込まれてるから(激ウマギャグ)大丈夫やろ。

俺の懐はイコさん並やからな。

めちゃくちゃ広いんや!

 

んで、9歳になって大分強くなってきて、最近だと結構危ない呪霊討伐の任務とか連れてかれるようになって、思ったんだけどさ。

俺、このまま言ったら呪術高専入れなくね?

俺、このまま禪院家の術師として使い潰される未来しか見えてないんだが?

俺の副作用(サイドエフェクト)がそう言ってるんだが?

 

て事で、高専に入る方法について調べ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──ました。

最初は誰にもバレない様に書物とかで調べてたんだけど、そんな情報どこにもねぇ!って事になって、先生に聞いたら1発でした。

いやぁ、やっぱり先生こそ教師の鑑だと思うんすよ(掌スリスリ)

 

それで分かったのだが、どうやら高専には普通に自分の意思で入れるらしい。

保護者と本人の承認は必要らしいけど、高専の存在さえ認知してれば、結構簡単に入れるっぽい。

まあ、俺の場合は直毘人の爺ちゃん次第だな。

 

で、ですよ。

話はここから何ですね。

なんとこの高専、スカウト枠が存在するんですよ。

分かります?スカウトですよ、ス、カ、ウ、ト。

この存在を知っちゃったら、もうコレ一択でしょ。

イコさんがスカウト組だったという事は、イコさんになる予定の俺自身もスカウトで入るのは、マストな訳ですよ。

それに、なんかスカウトされて高専に入ったってだけで才能ある強キャラ感あるし。

 

と、こんな経緯もあって、俺の当分の目標は誰かに高専へとスカウトしてもらう事になった訳なんですが……。

誰も来ん。

なんでや、なんで高専関係者が来ないねん。

禪院家が高専上層部と、裏で繋がってた話は嘘やったんか?

なんでやねん……。

 

「なんでやねぇえええん!!!」

 

その恨みを晴らす為、俺は模擬戦相手のおっさんに木刀を叩き付けた。

それも思いっきり。

 

「年下、それもこんなガキに負けるなんて……びっくらポンだぜ……」

 

何が「びっくらポンだぜ……」やねん。

ちゃうやろ!

そこは「す○ざんまい」とか別チェーンやろ!

ふざけんなや!

高専関係者早よ来いやぁ!

そんなに待たせてええんか!?

人手不足の高専が、喉から手が出る程欲しがってる、期待の大型新人やぞ!

あんまり待たせると、いじけて母方の実家帰るぞ!?

 

「おい、聞いたか? 五条家の御曹司が昼から此方に来るって話」

 

「ああ、聞いた聞いた。甚壱様が訝しんでおられた。直毘人様が独断で決定を下したとか」

 

「……決定?」

 

「なんでも、五条家から、当主同士での話し合いがしたい、との主旨の手紙が届いたとかで、それの決定を直毘人様が周りの反対を押し切って勝手に為されたと」

 

「五条家の当主と言えば、かの五条悟殿か。彼と1対1は御当主様が危険では?」

 

「だから怪しいのではないか」

 

………。

へぇー?ほー?ふーん?

チャンスじゃん。

これ紛れもないチャンスだわ。

 

五条家の当主ってアレでしょ?

高専で学生やってる人だよね。

バリバリ高専関係者じゃんか。

これ、リーチです。

五条悟からスカウトして貰えれば俺の目標達成や。

これは逃せん、次いつ高専関係者が来るか分からんし。

一か八かの勝負に出るしかねぇな。

 

「すしざ○まいや」

 

チャンス三昧の3連単だ。

いくぜ!

俺は断然、く○寿司派だ!

 

待ってろよ五条悟!

あ、でも話し合いの前に突撃するのも良くないしな。

終わった後を狙うか。

そうだな、ちょっとお話でもしようや。

本当にちょっとだけだからさ。

お茶一杯くらいの時間よ。

その短時間で、自己アピールを成功させてみせる!

 

取り敢えず、気合い入れる為にナスカレー食うぞおおおおお!

 

 

────────────────────

 

 

「五条さん、禪院家に到着しました」

 

「お、ありがとねー」

 

そんじゃ行きますか。

そんな軽い声と共に、呪術界御三家が1つ──五条家の現当主である五条悟は車から降りると、ゆるりと地面に足を付ける。

その一挙手一投足の全てに隙は無く、それでいて彼は何処までも自然体であった。

 

この日、五条は自身の我儘を押し通す為に禪院家へと訪れていた。

 

「いやー、禪院家の皆々様勢揃いで怖いね〜」

 

その我儘とは1人の少年と1人の少女の身柄についてであった。

 

禪院家の面々を見て真っ先に五条の脳に浮かぶのは、最強である自身を1度殺してみせたとある男の姿。

そして、その男が遺した少年の姿であった。

 

「んー、あんまし似てる人いないんだね」

 

「ふん、戯言はよい。話は聞いてやるわい」

 

「お、話が早くて助かるよ。なんせ、僕ってば結構忙しい身でさ」

 

「大広間を使う。他の者は入ってくるなよ。フルダテ、他の者が聞き耳を立てぬ様見張っておけ」

 

直毘人はいつにも増して真剣な顔付きで、他の人間に当主として命令を下す。

 

「了解しました、直毘人様」

 

フルダテと呼ばれた直毘人の側使が恭しく一礼して答えれば、直毘人は1度頷き歩き出す。

目指すのは、大広間であった。

 

「行くぞ、五条悟」

 

「おっけー」

 

真面目な直毘人とは正反対に、五条はヘラヘラと薄気味悪い目隠しと共に笑う。

それが、余計に周囲の禪院家の人間の不興を買うのだが、そんな事気付きもしなければ、気にも留めないのが五条悟クオリティであった。

 

(誰かに見られてるね)

 

そんな巫山戯た態度でも五条はしっかりと自身が何者かから見られている事に気付いていた。

周囲の人間ではない、別の第三者。

獲物を付け狙うかの様な鋭い視線に、五条は気付いていた。

 

 

────────────────────

 

 

「いやー、アレすんごいな真希ちゃん」

 

「こんな遠くから見てるだけでいいのかよ?」

 

「フッ、ええねん。俺は自分の都合で他人の邪魔はせえへんからな」

 

「でも私達が遊んでるところ邪魔してきたよね」

 

「……そんな事あらへんで」

 

「なんだよ今の間は」

 

その第三者の視線こそ、遠くの木の枝の上から五条を見ていた、バカもとい龍人であった。

 

どうして遠くから離れて見ているのかと聞かれれば、それには3人の禪院家での扱いが関係してくる。

1人は腫れ物扱いされ、他2人はそもそもまともに人として扱って貰えてすらいないのだ。

3人とも、禪院家の人間と関わる気などさらさら無いのである。

 

「てか、なんで木の上から見てんだよ」

 

「そんなん、狙撃手と煙は高い所が好きやから以外にないやろ」

 

「馬鹿が何言ってんだか」

 

「お兄ちゃんは剣士じゃなかった?」

 

「あんまし真面目に対応しなくていいよ、真依」

 

いつも通りに巫山戯た龍人の物言いに、真希は呆れ、真依は真面目に対応する。

これがいつもの3人のやり取りであり、日常の風景であった。

そんないつも通りの3人は、妙に殺気立っている禪院家の人間達とは真反対であった。

 

「なんか、こっちの事気付いてへん?」

 

「そんなんあるか?結構な距離だぜ?」

 

「五条悟って、六眼持ってるんでしょ?それで私達なんてバレバレなんじゃない?」

 

「リクガンってなに?リアス海岸の仲間?」

 

「龍人……」

 

「お兄ちゃん……」

 

「え?え?」

 

現代最強の術師である彼を目の前にして、いつも通りで居られる人間は限られる。

五条悟とは、それほどの大物なのだ。

だが、その存在すら認知していないバカなど、たった1人に限られるのかもしれない。

 

龍人にとって五条悟とは、自身をスカウトしてくれる予定の高専関係者、という認識でしかなく、彼の持つ特殊な眼も、五条家相伝の術式も、龍人にとっては特に価値の無いものであった。

それが関係してか、龍人は六眼について何も知らないし、自身の教師に質問するなんて殊勝な事もしていなかった。

 

そんな、五条悟の凄さすら知らない龍人の事を、呆れと憐れみをたっぷり込めた2人の視線が突き刺すのだった。

 

 

────────────────────

 

 

(呪力量がとんでもないね、巨大な貯水タンクみたいだ)

 

「面白い子が居るね」

 

「知らんな。お前から見て面白い存在などこの家には居らん。それよりも、さっさと用件を話せ」

 

「釣れないねぇ……。 それじゃあ本題。伏黒恵くん、譲って欲しいんだよね」

 

「ほう、甚爾の息子の存在をどこで?」

 

伏黒恵の名前が五条の口から放たれた瞬間、直毘人の空気が変わる。

先程までの訝しげな表情は一転し、面白いものを見つめるかの様な、愉快げなものに変化していた。

 

「任務でちょっとね。 伏黒甚爾。彼、とんでもない性悪だね。僕もビックリしたよ」

 

「貴様に襲撃でも仕掛けたか?」

 

「おー、正解だよ。任務中に襲われてね、まあ最終的には殺したよ」

 

「そうか、死んだか」

 

死んだ。

その言葉を受けても直毘人の顔色が変化する事はなかった。

冷徹、なんて訳ではない。

伏黒甚爾と禪院は無関係だ。

禪院家を追われている以上、その事実は覆らないし、覆すつもりも毛頭ない。

他人が死んだ事に一喜一憂する程の柔な人間性など、禪院家当主にとっては不要なものである。

ただ、それだけの話だった。

 

「そ。それで息子の事を言われちゃってね。その子、高専(うち)に欲しいんだよね」

 

「10億だ」

 

「良いね。話が早くて助かるよ」

 

そこから2人は、さらに話を詰めていく。

納金の期限、これから伏黒恵とその姉である津美紀に対して手を出さない事、2人を高専で預かる事など、色々な事が話し合われた。

 

そうして、30分程経った頃。

直毘人は一度沈黙し考え込んだ。

 

「……貴様から見て甚爾はどうだった?」

 

そうして、直毘人から放たれたのはそんな言葉。

死んだ甥に対しての疑問だった。

 

「強かったよ」

 

最強の男から放たれた言葉に、直毘人は嘲笑する。

それは自身へのものだった。

 

「そうか」

 

五条と直毘人の間に奇妙な沈黙が満ちる。

禪院家本邸の大広間は、不気味な雰囲気に包まれていた。

 

「……そうか」

 

しみじみと呟かれた直毘人の言葉。

そこに、どんな意味が込められていたのか。

それは、神のみぞ知るものであった。

 

 

────────────────────

 

 

「あー、疲れた。帰って甘い物食いたいな」

 

会談が終わった五条は、1人で大広間から玄関に向かっていた。

木の床を歩き、外へと視線を向けながら歩く。

そんな彼の脳は、今まさに糖分を欲していた。

 

(なんか居るんだよね)

 

五条が知覚したのは、曲がり角を曲がった先に待つ龍人の存在であった。

 

五条からしてみれば、知らない人間が何故か廊下で突っ立っているのだから、なかなか不思議な光景である。

目的不明、正体不明。

しかし、その呪力量は特級レベル。

五条から見た龍人が、まさにそれであった。

 

そうして、特に気負う事も無く五条は廊下を進んでいく。

 

件の少年の前を通り過ぎるのだが、特にこれといった絡みがある訳でもなく。

何のために居たのか五条は理解できないままに、歩いていく。

 

そうして、五条が彼の前を通り過ぎて、5歩程進んだ時であった。

唐突にその少年が動きだす。

 

「なあなあ、俺に言うことなんかないん?」

 

「は?」

 

腕を組みながら、柱に背を預けていた彼が、五条の方へ向きながら発した第一声がそれであった。

 

意味が分からない。

五条は堪らず呆気にとられる。

何かしてくるとは思っていた。

それが、こんな形で予想を上回るとは、五条をして驚かされていた。

 

初対面、それも年齢も一回り以上違う人間に発する言葉が、俺に言う事は何かないのか、である。

誰が予想できるだろうか。

誰だって無理に決まってる。

 

そうして振り返った五条が見たのは、伏黒甚爾にそっくりな少年の姿であった。

顔はそっくりであり、似過ぎているレベル。

強いて違う所を上げれば、短い髪をオールバックにしている事と、服装、それから年齢くらいであった。

 

「うげ」

 

あまりのそっくりさに、思わず呻き声が漏れる五条。

その顔は物凄い顰めっ面であった。

 

(恵君もそっくりだったけど、こっちはもはやドッペルゲンガーでしょ)

 

あまりにも似過ぎている。

もはや同一人物だろ。

五条の脳裏にはそんなツッコミが過った。

 

「……それで、何かって何さ?」

 

気を持ち直した五条は、目前の名も知らない少年に訊ねた。

彼が何を求めて話しかけてきたのかを。

 

「え?スカウトせぇへんの?」

 

「いやいや、僕スカウトマンじゃないし」

 

「でも高専関係者やろ?俺強いで」

 

本当にこの少年は何なんだろうか。

五条は理解不能なバカに出会い困惑していた。

何が悲しくて禪院家の人間をスカウトする高専関係者が居るというのだらうか。

分からない。

五条悟には目の前の存在(バカ)の事が分からなかった。

 

「君、名前は?何歳よ?」

 

「禪院龍人、9歳。『龍ちゃん』て呼んでや」

 

「へえ。君は高専に行きたいの?」

 

「せやで。 あ、そうや、此処で話すのもアレやしな。あっちで少し話さん?」

 

五条は将来の為に、強力な駒を欲している。

強く、聡い仲間達。

もしかしたら、この少年がそれになるのかもしれない。

そんな勘に突き動かされるかの様に、五条は龍人の言葉に頷き着いて行く。

 

そうして連れて来られたのは──

 

「此処やで。俺みんなから除け者にされてんねん。せやから此処に住んでんねんで。みんな酷ない?まあ、俺気にしてへんけど」

 

──離れであった。

 

朗々と自身の境遇を語る龍人。

そんな彼に五条は、チグハグさと共に身近さを感じていた。

 

(誰かを気にしている様で、全く気にしてないのかな?言動に反して自分本位というか。なかなかどうして──)

 

「──君、面白いね」

 

「せやろか?まあ、イコさん()やからな」

 

うんうん、と頷く龍人を見ながら五条は笑う。

鋭い目付きと、無愛想な表情とは違い、なかなか愉快な言動をしている事が、五条のツボに入ったのか、彼は終始楽しそうに龍人の話を聞いていた。

 

離れに着いてからも龍人の語りが止まる事は無く、居間に通され側付の女性に頭を引っ叩かれるその瞬間まで止まる事はなかった。

 

「あいたたた。これ以上叩かれたらアホなってまうわ」

 

「それで、君はどうして高専にスカウトして欲しいの?禪院家の人間なら別に自由に来れるよね」

 

「スカウトの方が強者感あって強そうやん?」

 

「それだけ?」

 

「せやで」

 

「マジで?」

 

「マジマジ」

 

訂正。

見た目に反してただのバカっぽい。

五条は心の中で、彼への評価を訂正する。

常識の通じないバカから大馬鹿野郎へとグレードアップしていた。

 

「因みに、高専でどうしたいの?」

 

「面接はもう始まってる感じなん?」

 

「何でもいいから言ってみてよ」

 

「高専で人助けがしたい」

 

龍人のその言葉に、五条の目が細められる。

その瞬間、部屋の中の空気が一変する。

五条から溢れ出る呪力と威圧感。

それが、一気に部屋を呑み込んでいく。

 

「それは何のために?」

 

それは、五条自身が担任から受けた試験に近かった。

高専で術師としてやっていけるのか。

その確認であった。

 

「俺がイコさん()である為や。誰が何と言おうと関係ないねん。俺は俺の矜持の為に生きる。これは曲げへん」

 

普通の人間なら気絶する程の威圧。

それをものともせず、微風でも吹いているかの様に動じずに話す龍人。

そもそも威圧されている事にすら気づいていないのだが、それを五条が知る筈もなく。

五条は龍人の胆力を完全に勘違いしてしまっていた。

 

そうして、龍人の話を聞いた五条は威圧を解くと、ニヤリと笑って一言告げる。

合格、と。

 

「良いね、君みたいな子は滅多に居るもんじゃない。そうだね、高校生になったら呪術高専東京校に来ると良い」

 

「マジで!?俺やっちゃったやつやん。大成功やん」

 

「君、ホントに小3?」

 

「小学校には行っとらん」

 

「良いね、ロックじゃん」

 

「え、今の誉められるん?」

 

こうして、禪院龍人の「チキチキ!スカウト貰っちゃおう大作戦!」は成功のまま終了するのだった。

 

「お、このお菓子美味しいね。何処のやつ?」

 

「俺の自信作やで」

 

「マジ?」

 

という龍人の作ったお菓子を五条が誉めるという、やり取りがあったりなかったりするのだが、それはまた別のお話。

 

 

────────────────────

 

 

「お兄ちゃん私達を置いて出ていっちゃうのかな?」

 

「そんな訳ねぇだろ。アイツが言ったんだぞ、いつも一緒だって」

 

「そ、そうだよね?お兄ちゃんは約束破らないもんね」

 

「そうだぞ。だから安心しろ真依。私達3人はいつだって一緒だ」

 

龍人は気付かない。

双子が龍人と五条の会話を聞いていた事など。

本人はそれどころではなく、ましてやスカウトされた事にウキウキだったのだ。

周りに気を配る余裕などなかった。

だから、2人は知ってしまった。

龍人が禪院家から居なくなる、という事を。

 

日常というものは、脆く壊れやすい。

そんな事、この当時の双子が知る筈もない。

何故ならそれを知るのは、別れが訪れた時なのだがら。

 

3人での楽しい日常。

その崩壊の時は、刻一刻と近付いていた。

 

 





びっくらポンだぜおじさん、正直結構好き。


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いつの間にやら評価バー赤くなっててびっくらポンや。
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