Flos qui in fine vanitatis floruit 作:霜山美月
バレイベで3回くらい絶命しました
あと2周年SP、やばかったね…………これからもよろしくブルーアーカイブ…………
ブラインドが開けられたままの窓の外はすっかり夜の帳が降りており、けたたましかったカラスの鳴き声も今や一切聞こえない。
しかし真っ暗なのかと言われればそうではなく、むしろいくつものビルがそこかしこに聳え、隙間を縫うようにあちこちを車が行き交う街は、人工的な星空であるかの如く煌びやかに瞬いていた。
私はまだ先生が常駐しているこのフロアにしか来たことがないが、シャーレのビルは雲よりも高く聳え立っているとの話だ。入口前から見上げても屋上が霞んでよく見えなかったくらいだから、案外過言ではないのかもしれない。もし最上階から見下ろしてみたら、その眺めはどう変わって見えるのだろうか。
まだ見ぬ景色に想像を膨らませながらも私は最後まで針を通し、玉止めをして糸を切る。少し久しぶりだったけれど、我ながら上手くいったのではないだろうか。
スカートの裾の左右にふたつ、名前の知らない紫色の綺麗な花。やっぱり、アズサにはこの色がよく似合っている。
「終わったよ、アズサ」
「……ありがとう。この飾り、結構気に入ってたんだ」
アズサは椅子から立ち上がり、スカートを両手で摘んで持ち上げながら微笑した。
元々アズサの制服には花の意匠をあしらっていたのだが、新調したことでそれもすべてなくなってしまっていた。
刺繍は誰にでもできるとは言い難い。事実、私も習得するのに多少の時間は要した技術だ。昔それを覚えた腕が、アズサの新品に戻った制服を前にするといてもたってもいられなくなって、また針と糸を手に取っていた次第だった。
「ごめん。アツコは病人なのに……」
「気にしないで。私が勝手にやっただけだもの。それに、アズサと話せて少し楽になったから」
申し訳なさそうに眉を落とすアズサに私はそう返しながら、使った道具を裁縫箱へ戻す。道具も造花もすべて勝手にオフィスから拝借したものだが、後で先生に言えば怒られはしない、と思う。
裁縫箱をベッドの横によけてふと掛け時計を見上げると、時刻はもう十九時を回っていた。認識した途端に、作業に集中して忘れていた空腹感が顔を出す。
……それとほぼ同時だった。スカートの裾とともに揺れる紫色の花をじっと見つめながら慎ましい笑顔を浮かべていたアズサが、ぴくりと動きを止め、そしてそのまま静止する。
「……アズサ?」
「遠くから音が聞こえた。……誰か来たみたいだ」
「ミサキたちじゃないかな。随分遅かったけど」
「いや、セキュリティは内側から解除していないのにこっちに向かって来ている」
「なら、先生――」
「さっき何時頃に戻れるかモモトークを送ったけど、まだ返信は来ていない。足音は複数人――注意して、アツコ。……むぅ、『シャーレのビル内にトラップ仕掛けるな』なんて言われていなければ……」
アズサは何やら物騒なことを呟きながら、壁際に立てかけていた自前のアサルトライフルを手に取り、弾倉の装弾数を確認してから胸の前に構えた。
部屋の入口と私の位置を結ぶ直線を遮るように身体を開いて立ち、息を殺して照準を合わせる。
彼女は言い聞かせて簡単に止まる性格ではないし、経験上、彼女の選択が正しいことの方が多かった。故に私も押し黙っていたのだが、仮眠室に隣り合うオフィスのドアが開いたことにより明瞭に聞こえ始めた話し声が、彼女でも間違えることがあるのだと、この場をもってして理解させてくれることになった。
『あの人、病人ひとり残してロックも掛けないってセキュリティ意識どうなってんの……』
『もし誰かに襲われていたらと思うと……いえ、相当の命知らずじゃなきゃそんなことしませんよね……』
『……まぁ、道には迷うし変なのには追いかけ回されて疲れたし、ここで足止め食らわなかっただけ助かったけど。……ったく、どうして自称トリニティ自警団が自治区外まで取り締まろうとするんだか』
『うわぁん! もう足が限界です、今日はここで暖かくして休まなきゃいけないんですね……いっそのことそうなってしまうならシャワールームをお借りして美味しいご飯も分けていただいてデザートなんかも付けちゃってふかふかのベッドで休んでから帰らせてください……!』
『私たちまで施しを受けるわけにはいかない。今日のところは姫を預けて引き上げるよ』
『そんな……もう終わりです……』
間違いない。日常的に聞いている悲痛な叫びとそれを冷たくあしらう声。自らもよく知るものと気付いたらしいアズサが無言のまま銃を下げかけた時、仮眠室のドアは開かれた。
「姫、食べ物と風邪薬買ってきたけど――」
スーパーのレジ袋片手に現れたミサキが、私たち――正確にはアズサの姿を見て、言葉を失った。その瞳は鋭さを保ちながらも、困惑の色が見え隠れしている。
私たちとアズサは、ついこの前まで敵対していた者同士。自分の行いに非を感じていた私は、アズサの優しさに触れて和解することができたけれど、ミサキやヒヨリがどう考えているかまではわからない。そんな当たり前のことを、今この瞬間まで失念していた。
「……ご飯の準備してくる」
やがてミサキは伏し目になりながら、そう言い残して踵を返した。
訪問者を通すことなく閉じたドアの機械音に続いて、アズサのため息の音が漏れる。届かない言葉を抱えて落胆している彼女の表情が、背中越しに見えたような気さえした。
ミサキもアズサも、私にとって大切な友達であることに変わりはない。あれほどの時間を一緒に生きてきただけに、溝ができてしまうのは辛いこと。アズサはそれを覚悟してあの時の行動に及んだのだろうが……私は納得したくはない。
「ごめん、アズサ。ミサキには私から――」
「いい。ミサキは誰よりも慎重で堅実な子だってことは私も知っている。彼女にはもう少し時間が必要なんだ、きっと」
「……」
「私はもう帰るよ。アツコ、ふたりにはよろしく伝えておいて。……じゃあ、お大事に」
振り向いたアズサは眉を下げて小さく笑いながら、ベッド脇の本棚の上に乗せていたリュックを手に取った。アサルトライフルのスリングと一緒にそれを背負い、部屋を出ていこうとするアズサを見て、私の口はひとりでに動いていた。
「待って、アズサ」
彼女は振り返りながら首を傾げる。呼び止めたはいいものの、無理に動いてミサキたちと険悪な雰囲気にしたくはないし、そもそも仲を取り持てるほど面白おかしいエピソードを私は持ち合わせていない。
……アズサの言うことは正しい。一昨日のミサキも言っていた、私たちには持て余すほど時間があるのだと。なら、焦らずに待つこともひとつの答えなのかもしれない。その結論まで至らず、短絡的な思考で反発しかけた自分の無力さを反省しながら、私は口をもごもごさせていた。
「えっと……」
数秒言葉に詰まり、アズサが不思議そうに私の顔を覗き込む中、私は……誤魔化すように、ふと思い浮かんだことを、口に出す。
なんでもない、と一言付け足すのは簡単だけれど、こうして会えたのだから、それくらいの相談は許されるだろうと思って。
「もしアズサが先生にプレゼントをあげるなら、何がいいと思う?」
「プレゼント……?」
アズサは困惑したように鸚鵡返しすると、しばらく顎に手を当てて考え込む仕草をする。咄嗟に出た言葉だったが、自然な話題の転換には成功したようだ。
せっかくなので、その方向に話の舵を切ることにする。その問いの真意は、発案したばかりの計画の礎作りを、彼女にも協力してもらおうというもの。
名付けて、私も形あるものを先生に贈って、もっと親密になろう大作戦。今、彼女を引き止めてまでする話かと言われれば微妙なところだが、私の友人の中で、最も先生との付き合いが長いのは他でもないアズサだ。だから、今はそのヒントを得る絶好の好機とも言える。
……などと見込んでいたものの、アズサの反応は芳しくない。やがて彼女は視線をこちらに戻すと、小さく首を横に振った。
「……わからない。急にどうしてそんなことを?」
「先生にはいつもお世話になっているから、何かお返ししたくて」
「お返し……」
逆に問い返してきた彼女に、私は正直に答える。数ヶ月の付き合いになる彼女とてそういった経験はないらしく、表情は幾分か曇っていた。
「意外と、先生の好きなものを知らなかった。……ちなみに、予算は?」
「……あ」
立て続けに飛んできた質問に、私は返す言葉がなくなる。
答えずともアズサは察しているはずだ。アリウスを脱退し、住所不定の逃亡生活を続けている私たちに、安定した収入などあるはずもない。
贈り物はお金ではなく気持ちだなんて言うけれど、先生の印象に残るようなものを渡したいなら、ある程度の出費は覚悟すべきだ。いつものように花を渡すのもいいけれど……相手は生徒たちに人気なあの先生だ、それだけじゃ物足りない。どうせなら、実用的で、他の生徒にも差をつけられるようなものを贈りたかった。
「……アズサ、何か稼げる仕事は知らない?」
「そんなものは……いや、なくもない、かもしれない……」
わがままな私が駄目元で訊き返すと、一瞬視線を床に落としたアズサは、何かを思い出したように顔を上げ、予想外の返答をした。
「これはヒフミからの聞き伝だ。最近、アビドスの友達といる時に、偶然その子と面識のあるゲヘナの生徒と会って話す機会があったみたいで、彼女の話なんだけど。そのゲヘナの子は仲間内で会社を経営しているらしい」
「会社? 高校生なのに、大人みたい」
ヒフミというのは――確かあの時、アズサを連れ戻しに来た、お下げ髪の少女の名前だ。本人の印象は些か地味に感じるが、背負っていたモモフレンズのキャラクターグッズであるリュックのインパクトが強烈で、今でも記憶に強く焼き付いている。つい数十分前までアズサが語ってくれた思い出の中にも繰り返し登場していたから、その憶測は間違っていないはず。
しかし、トリニティ総合学園にアビドス高等学校にゲヘナ学園とは、彼女は見かけによらず交友関係が広いらしい。今のように笑うことがほぼなかったであろう転校したばかりのアズサと打ち解けられたのも頷ける。
ともかく、私にその会社で働けということだろうか。採用基準は調べてみる必要がありそうだが……と考えているうちに、アズサは淡々と話を続ける。
「彼女がいる会社自体は小さいところなんだけど、つい先週くらいにある人物と請負契約を交わしたみたいで」
「うん」
「ヒフミが聞いた内容によると、その人はいつも
「……うん?」
思わず、相槌に疑問符が付いてしまった。
アズサがそこで話を止めたのは、恐らく意図が伝わったと私の表情を見て悟ったからだろう。
「私、その人にすごく心当たりあるかも」
「同感。ヒフミもそう確信した上で私に教えてくれたから、間違いないと思う」
くすりと笑いが漏れ出る。
最近連絡もくれないと思っていたら、彼女は彼女でそんなことをしていたのか。いつも陰で努力しているあの子らしくて、環境こそ違えども根っこは本当に昔から変わらない。
「彼女の紹介なら……可能性はある、かな」
「……わかった。ありがとう、アズサ」
アズサはこくりと頷くと、今度こそリュックを背負い直して仮眠室を後にした。
まだ何を贈るかは決まっていないけれど、思わぬ形で別の課題の解決の糸口が見つかってしまったらしい。
「し、失礼します……あれ、アズサちゃんは?」
「もう帰ったよ。ふたりにはよろしくだって」
「なるほど……ひ、姫ちゃん? 何か、いいことありました?」
「ふふっ、何でもない」
「……?」
複雑な表情を見せていたミサキの代わりなのか、食器と水の入ったコップ、風邪薬をお盆に乗せて現れたヒヨリが小首を傾げる。私がそれ以上答えずにいると、彼女はわかりやすく頭の上に疑問符を浮かべていた。
詮索を諦めたヒヨリは軽く部屋を見回し、ベッドから少し離れた位置に丸テーブルが置かれているのを確認すると、そこにお盆を置いた後、ベッドの真横まで近付けてくれた。
新雪のように真っ白なお粥の中心には赤い梅干しがちょこんと乗せられており、立ち上る湯気とでんぷん質のほのかな甘い香りが食欲をそそる。
今週もまともに食事を取れていなかったから、これほど贅沢な誘惑に勝てるはずがない。あからさまな不摂生を続けていればそれは風邪菌にも魅入られるわけだと苦笑しながら、私はプラスチックのレンゲを手に取った。
闇の中から意識が浮上し、自然と開いた瞼の先にあったのは白い天井だった。
ぼーっとしながら見つめてみる。間違っても廃屋の朽ちた木材や、廃校の教室のような薄汚れた大理石模様のボードではない。現実感が薄れていくほど、一面どこまでも清潔感のある白が広がっていた。
窓の外からは雀の囀りが聞こえてくる。よく耳を澄ませてみれば、音色は複数あるようだ。彼らも私たちの知らない言語で会話しているのだろうか。
タオルケットを両手でよけ、上体を起こして辺りを見回す。
奇妙な顔つきをした鳥型マスコットのぬいぐるみ、猫の形を模した掛け時計、甘い花の香りがする芳香剤、ハンガーに掛けられた私のパーカー、ベッドの脇に置かれたままの裁縫箱、袋に小分けされたドーナツの詰まった平べったい箱、飾りっけのない上下白のパジャマを着ている私。
……そうだ。私、シャーレに一晩泊まったんだっけ。
時計の針が示す時刻は午前八時。昨日は早い時間に寝付けたおかげか、二度寝しようとも思えないほどすっきりした朝だった。
ブラインドの隙間から差し込む光は、仮眠室の入口へ向かって伸びている。私はベッド横に置いてあったスリッパを履いて立ち上がった。
昨日感じていた頭痛と倦怠感はどこへやら、今からでも走り出せそうなくらい身体が軽い。あー、と小声で発声してみればまだわずかに声が掠れている気がするが、起き抜けのせいであればじき元に戻るだろう。
人差し指で入口のセキュリティを解錠し、オフィスの中へ足を踏み入れる。歩みを進める先はただ一点。上着を着たまま、水色のソファに横たわっている先生のもとへ。
「……先生?」
小声で呼びかけてみても返事がない。昨日も帰りが遅かったから、相当疲れているはずだ。
眼鏡を外した先生の寝顔は、いつもより一層幼く見える。化粧水にでも気を遣っているのだろうか、女子高生顔負けの玉のような肌は目に見えて柔らかそうで、つい頬をつつきたくなる。聞く限りではとても褒められるような生活習慣をしていないはずなのに、どうやってこの容姿を保っているのだろう。
ソファの前に屈みながら少年のような可愛らしい彼の寝顔を見ていると、なんだか悪戯してみたい衝動に駆られるが、理性ある私はそれを心の中に押し留めようとする。先生は疲れているのだ、自分で目覚めるまでは寝させておいてあげよう、と。
でも、してはいけないと意識するほどしたくなるのが人間の性。これはスリルか罪悪感か、心臓がどくどくと騒々しく脈打つ。
そしてついに私は、右手の握り拳から人差し指だけをピンと立て、ゆっくりとその白い頬に触れた。
ふに。ふにふに。
見慣れない物体に前足を伸ばす猫の如く、一度ならず二度三度と右手を前後させる。
もちもちしていて、気持ちいい。不思議と、病みつきになってしまいそうなくらいには。
十分な食事や暖かい寝床とは比べ物にならないほど、この感触こそが精神を安定させるのに相応しいのではないかと危険な悟りを開きそうになった時――、んぅ、と先生が小さく呻き、その瞼をゆっくりと開いた。
「…………アツコ……?」
「……あ」
私は先生の頬に触れたまま、ぴくりと動きを止めてしまう。先生は私の顔、右手、その人差し指が伸びる先と順番に視線をなぞらせると、最初に戻って私の顔を見る。やはり眼鏡がないとよく見えないのか、長いまつ毛を主張するかのように目を細めていた。
「……おはよう、先生」
「ああ……おはよう、アツコ。起こしてくれたのかな。ありがとね」
「……うん」
「身体の調子はどう? 少しはよくなった?」
「……もう大丈夫」
「そう、よかった」
先生は気付かないふりをしているのか天然なのか、そのままソファの肘掛けの上に置いてあったケースから眼鏡を取り出し、いつも通り掛けて目をしぱしぱさせてからふにゃりと笑った。
私の頭をさっと一撫でし、立ち上がって伸びをした先生は既にもういつもの顔つき。私がしていたことなど気にも留めず、「ちょっと寝すぎたかな……」などとぼやきながら携帯画面に指を走らせている。
悪いことをしてしまった自覚はあるから何を言われるのだろうと身構えていたのに、こうも無視されるとかえって気に食わない。だから私は、仕方なく悪戯を続行する。
「先生」
「ん?」
「おはようのちゅーは?」
「……はい?」
「おはようのちゅー、結婚した男女がするものだよ」
「……アツコ、もしかして寝ぼけてる?」
「先生、どうしたの? いつもはしてくれるのに」
「い、いつも……っ!? ま、待って、いや、これは夢……? とはいえ私はついに自分の生徒に……!?」
青ざめながらあたふたし始める先生を見て、私は堪えきれず笑みを零す。先生をあまり困らせたくはないけれど、困った顔も可愛い先生が、私を軽くあしらおうとする先生が悪いのだ。
よって、今回は私の勝ち。その行為に果たして意味はあるのか、携帯画面と予定が書き込まれたカレンダーとをしきりに見比べている先生の袖を引っ張り、その焦げ茶色の瞳と視線を交わした。
「ふふっ……先生、冗談。そんなに困らないで」
「だよね!? よかった、いや現実っていうのもそうだけど、仮に夢だったとしても大事な生徒に手を出すなんてことは……」
「ところで、おはようのちゅーはしないの?」
「しないしない! 私をからかわないでってば」
「……こっちは冗談じゃないのに」
「はいはい、朝ご飯用意するから顔でも洗ってきなさい」
……ちょっとやりすぎただろうか。水道のある方へ肩を押されながら、少しだけ反省する。
先生は私たちに対して滅多に怒った顔を見せない――それこそ、アリウスを支配していたゲマトリアのひとり、ベアトリーチェと対峙した時を除いて、彼の怒った表情は見たことがない。その優しさに甘えてしまうことが常だけれど、それが彼を不快にさせていないか気になることも時々あった。
「先生、怒ってる?」
「いや、怒ってはいないけど……」
私が振り向いて問いかけると、彼は至って平常通りの態度でそう答える。きっと彼の中で納得しているのだ、どこまでいっても結局は、可愛い生徒とのじゃれ合いに過ぎないのだと。
だからこそ、私がいくら背伸びをしたところで、彼に手が届くことはない。
この高鳴る鼓動が意味する感情の正体を、彼が教えてくれることはない。
……不満がないと言えば嘘になるが、今はそれでも構わない。
私はまだ子供かもしれないけれど、いつかきっと自分の力で、彼の横に並んでみせるから。
「なら、一回、ちゅーしてほしい」
「しないって」
「じゃあ……朝ご飯のあーんは?」
「そらくらいなら……って待った、騙されないからね……!?」
ただ、今この瞬間の私としては。
久しぶりに旧友と会えて感傷に浸ったせいか、それとも風邪で自覚なしに弱っていたせいか。
ちょっぴり、先生に甘えたい気分だった。
公式のアズサ×アツコの供給を望んでいるとは言ったけど、アズサが敵対しても自分を気にかけてくれていたアツコを不本意にも殺してしまって放心しているシーンをよこせとは言ってないんだよ……でも最高のPVだった悔しい…………