この素晴らしい世界に炎人間を   作:夕凪時雨

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ハーメルン初投稿!pixivに載せるかは分かりません

pixivで主に作品を投稿してるので以下のURLから興味のある方は飛んでください

https://www.pixiv.net/users/53262696


転生と大きなカエル

 

 

目を覚ませば背中まである水色の長い髪をした神々しい女性がいた。辺りは暗いようで明るい、明るいようで暗い不思議空間だった。おかしい、まずそれが頭に浮かんだことだった。

 

僕は小学4年生の時に白血病を患った。すごく苦しく辛い治療を終えたのが小学校を卒業する年だった。今時ではリモート授業ができたり、映像と音声を切ることができるので嘔吐する際も相手に迷惑がかからないように配慮することができた。

 

閑話休題

 

そして高校1年生の夏、僕は白血病を再発した。治療は困難で、できたとしても数年の延命だけ。なら治療無しにできるだけ楽に死にたかった。家族にも迷惑がかかってしまうから。それを聞いた両親と妹は泣きながら怒ってきた。仕方のないことだ。家族に負担をかけたくない僕と、何としても無事に生きて欲しい家族。意見が食い違うのも仕方ないことだ。

 

しかし、時の流れは残酷で。運命の奔流は悪辣で。気づけばもう虫の息、冬になる前に僕は死ぬ。これでも長生きした方だ。最後に家族と交した言葉は

 

「愛してくれて、ありがとう」

 

某海賊王を目指す少年漫画の主人公の兄のセリフだった。僕は病院から出ることができない不自由な生活を送っていたためか、自由を愛し家族を愛するこの漫画が大好きだった。特に主人公の兄の思いに感情移入することができた。そして、妹に主人公と同じ苦しみを背負わせてしまった。兄バカになるが我が妹は優秀で小さい頃から医者になって僕を助けると言っていた。

 

それを有言実行し、日本屈指の名門中高一貫校に入学した。飛び級制度を採用している私立校であったため既に高3まで修学していた天才であり秀才だった。だが、夢は叶えられず僕が先に息を引き取った。その後のことは分からないが強く生きて欲しいと願う

 

「山本(こう)さん、残念ながらあなたは若くしてお亡くなりになられました。そんなあなたには3つの選択肢があります」

 

昊「選択肢、ですか…?」

 

「はい、まず一つ目は記憶を無くしてもう一度転生すること。二つ目は天国へ逝き何も無い空間で過ごすことです」

 

昊「…三つ目はなんですか?」

 

「三つ目は私たちから一つだけ特典を受け取った上で漫画やライトノベルでよくある異世界への転生です」

 

昊「その高待遇は怪しいですね。異世界に転生して何をすればいいのですか?」

 

「行っていただく異世界には魔王が存在しています。そして魔王軍による蹂躙を経験した死者が同じ世界への転生を拒み人口が減っているのが現状です。なのであなたのような若くして亡くなった方に特典を渡し転生してもらっています。魔王を倒したのならば願いをひとつ叶えて差し上げます」

 

昊「なるほど…では三つ目で構いません。ただ一つだけお聞きしたいことが」

 

「なんでしょうか?」

 

昊「僕の妹…(そら)はどうなったのでしょうか?」

 

「天さんですね。少しお待ちください……えっと、天さんはあなたの死後、より努力を重ねて世界一の医師と呼ばれるほどの女性となりました。しかし、生涯独身を貫くつもりのようです」

 

昊「そ、そうですか…」

 

生涯独身、これを聞いてまさかとは思っていたけど極度のブラザーコンプレックスを拗らせていたとは…そのように映る行動や言動はしばしば見受けられたがまさかと思い流していたことが仇となったか…

 

「それでは転生の特典を選んでください」

 

昊「それならもう決めています」

 

「そうですか。お聞きしましょう」

 

昊「ONEPIECEの火拳、ポートガス・D・エースのメラメラの実の能力と、鷹の目ジュラキュール・ミホーク並の見聞色の覇気、武装色の覇気の素質です。複数個のようになりますが大丈夫ですか?」

 

「その作品の中で個人が持ち得る才能に含まれるので問題はありません。ではそこの魔法陣の中へ立ってください」

 

昊「ありがとうございます」

 

言われた通りにサークルの中に立ち水色髪の女性は高らかに声を上げる

 

「勇者よ。願わくば魔王を討ち取り世界に平和をもたらさんことを。武運を祈っております」

 

昊「ありがとうございます、最後にお名前を聞いてもよろしいでしょうか?」

 

「私の名前はアクア、水を司る女神です」

 

アクア様、よし覚えた。名前を聞いた後、間もなく視界いっぱいの眩い光に包まれ目を閉じる。再び開くと辺りは中世ヨーロッパくらいの時代にありそうな建物が乱立していた。そこそこ道路も整備されている。ポケットには硬貨が数枚と紙切れが入っていた。あと、服装が高校の制服だった。

 

紙切れには

 

『あなたにはこの世界の通貨、2000エリスを渡しておきます。まず始めに冒険者ギルドにて冒険者登録をしてください。登録には手数料として1000エリス必要です。そこからは依頼を受けて達成し資金を得てください。あなたは魔王討伐以外は自由に過ごしてもらって構いません。また、生前の病などには二度とかからないように体の構成を変えさせてもらいましたのでご安心ください』

 

とあった。アクア様、本当にありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

「冒険者ギルドならこの通りを真っ直ぐ行って3つ目の角を左に曲がると着くよ」

 

昊「ありがとうございます」

 

「にしてもあんちゃんは珍しい格好してるんだね」

 

昊「少し事情があって故郷の国から出てきたんですよ」

 

「そうかい…苦労してんだねぇ」

 

昊「いえ、道を教えていただきありがとうございました」

 

「気にしなくていいよ。頑張りな」

 

昊「はい」

 

道を訪ねて30分。そこそこにこの街は広いらしいが全く疲れない。さすが健康体、すごく楽しい。聞いた道を行けば一際大きな建物があり中に入ると中はカウンターがある受付のような場所と机と長椅子が並べられた飲食店のような場所で別れていた

 

「いらっしゃいませ!ギルドへの用事ならカウンターに、食事ならこちらへどうぞ!」

 

案内された通りにカウンターへ行こうとするが数人の赤い顔をした男たちに遮られ足を止める

 

「おうおう、テメェみたいなもやしが冒険者ギルドに何の用だ?」

 

「坊ちゃんにここは早いからさっさと帰んな」

 

目の前の光景に少し気分が高揚してしまう。実にテンプレートなイベントだ。すごくいい

 

「……なんで目を輝かせてんだ?コイツ」

 

昊「あ、すみません。何かの物語に出てきそうなほどに丁寧で定番化されてそうなノリとセリフだったのでつい」

 

「なっ…!ナメてんのか!?ああ!?」

 

昊「いえ、そういう訳ではないですよ。というか、いいんですか?」

 

「あん?何がだ」

 

昊「ここは冒険者ギルドなのでしょう?余所者が来たからと威圧的態度をとれば何らかの罰が与えられるのではないですか?」

 

「はんっここでは力が全てだ。俺らに手を出せる奴なんざいやしねぇ」

 

昊「そうですか、それは凄いですね。ではこの辺で」

 

「おう、またな…………じゃねぇよ!何サラッと行こうとしてんの!?」

 

おお、ノリツッコミ

 

昊「いや、だって用事ありますし…」

 

「だ!か!ら!お前みたいなもやしに冒険者ができるかってんだよ!」

 

昊「はぁ…」

 

「ため息ついて俺らを見下してんのか!?」

 

昊「いえ、屈強な体に生まれたあなた方が羨ましいなと思いまして」

 

「……は?」

 

昊「僕は今でこそこのように立って歩いていますが、以前…それもほんの少し前まで歩くどころか座ることすら難しい状態だったんです。だから、あなた方が言うように僕には冒険者はまだ早い」

 

赤ら顔は既に元に戻り、酔いが覚めて真剣な顔をする男たちに苦笑いしてしまう。本当に僕を心配、というか無茶をしないようにもっと実力をつけろと言外に伝えてくれたのだから

 

昊「ですが、僕の適正を知ってから長所を伸ばし短所を克服するためにも冒険者ギルドに登録をする必要があると思い今日、ここへ来ました。先輩として、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」

 

綺麗に頭を下げればどうしようかと顔を見合わせる男たち

 

「……すまねぇ、最近やたらと張り切る若いのが多くてな」

 

「死に急ぐ馬鹿を止めるのも俺ら年配の役目だからな。言い方が良くなかった、すまん」

 

「坊主みたいにテメェの命の大切さを知ってりゃ俺らも文句はねぇんだ。悪かった」

 

昊「ええ、わかっています。心配していただきありがとうございます。これからあなた方を頼る時はお世話になります」

 

「いいってことよ!じゃ、頑張れよ!」

 

なんの問題も起きずに男たちと別れ、ようやくカウンターにたどり着く

 

「いらっしゃいませ、本日はどのようなご要件でしょうか?」

 

昊「冒険者登録をお願いします」

 

「かしこまりました、登録料として1000エリスをいただきます」

 

昊「…はい、これで」

 

「確認します。はい、ピッタリ1000エリスいただきました。ではこの水晶に手をかざしてください」

 

言われた通りに差し出された水晶に手をかざすと、水晶が輝きだす

 

「体力値が少々高く、敏捷や力といった基礎ステータスは平凡、魔力は皆無…ですか。適正としてソードマン、ファイターなどの前衛職に向いているステータスですね」

 

昊「参考までに聞きたいのですが、他にどのような職業がありますか?」

 

「はい、ソードマンやファイターの他には盗賊、モンクがあります。あとは…特殊職業として剣豪?というものがありますね。剣技を極めるためだけの職業のようです」

 

剣豪…つまり僕が願った特典に関係するかもしれない。ならこれ一択だね

 

昊「では剣豪でお願いします」

 

「かしこまりました。剣豪で登録させていただきます少々お待ちください」

 

登録作業を手早く済ませてくれた受付嬢は1枚のカードを持ってきた

 

「これが冒険者カードとなります。紛失、破損した際は再度10000エリスを払っていただき再発行することができます」

 

昊「登録料の10倍なんですね」

 

「はい、冒険者カードを渡すということはそれなりの信頼を寄せるという証にほかなりません。これを破損ならまだしも、紛失するようなことがあれば我々ギルドの信頼を裏切ることと同理。なので高い価格設定となっております」

 

昊「説明ありがとうございます。気をつけます」

 

「はい、我ら一同あなたを心より歓迎いたします」

 

綺麗な笑顔でそう言われると少し照れてしまう

 

「俺らの新しい仲間に乾杯!」

 

「「「乾杯!」」」

 

先程の男たちも祝ってくれるようで尚更嬉しいような恥ずかしいようなくすぐったい感じだ

 

昊「早速ですが新人でもできそうな簡単な依頼はありますか?」

 

「この時期だとジャイアントトードの討伐が多いですね」

 

ジャイアントトード…巨大なカエル?どのくらいの大きさかによるけど、メラメラの実の能力の確認にちょうどいいかな

 

昊「ではそれをお願いします。あと武具を売ってる店と剣術の師範に相応しい人材の紹介をお願いできますか?」

 

「依頼の受理が完了しました。人材及び武具店の紹介は無償で行っております。ですが少し時間がかかるので夕方頃に再度来ていただけますか?」

 

昊「わかりました。何から何までありがとうございます」

 

「いえ、ご武運を」

 

受付嬢や酒場にいた人たちに見送られてギルドを出た。それから大通りを抜けて門の外へ出る。見渡す限りの平原とかなり遠くに山がある。目測40kmくらいかな?すごく遠い。

 

暖かい陽気にあてられのんびりとしていたら地響きがしてきた。その方向を見ると4mはあるカエルと目が合った

 

昊「まずは周囲の安全確認だな」

 

辺りを見回し、誰もいないことを確認する。方向も街がなく、森もない平原が続く方であると確認した

 

昊「じゃ、遠慮なく…火拳!」

 

右腕を赫々と燃ゆる炎の巨腕と化してそのままカエルに向けて突き出す。炎は射線上を焦がしながら進みカエルを焼き尽くす。炎が消えると通った道が炭化して所々、火が燻っていた

 

昊「思いのほか強力だな…これをも焼くマグマグの実って一体…」

 

海軍大将赤犬ことサカヅキの悪魔の実の恐ろしさ、というか能力に引きながらカエルを狩り自分の能力の調整に時間を費やした。あと形を残して討伐することで売ることができ、更なる収入になると前もって聞いていたので最後の3~4匹は売ることができた。その他は全て炭となって風に流された。そして夕方、再度ギルドに訪れていた

 

昊「すみません、依頼達成の報告に来ました」

 

「はい、冒険者カードを確認します」

 

昊「お願いします」

 

「……確認しました。確かに4匹討伐されていますね。そして総討伐数15匹、売却4匹を確認しました。よって成功報酬に加えて討伐報酬と売却額を合わせた12万6000エリスをお渡しします」

 

12万6千!?多くない?いや、僕が普通じゃないのか…

 

昊「確かに受け取りました。ですが大金を持って歩くのは怖いので4万エリスほど貰ってあとは預けることはできますか?」

 

「かしこまりました、ギルドが責任を持って預からせて頂きます。では次に剣術の師範候補となる人物の紹介ですが、アクセルでは3人おります。繊剣のレイシア、この人はレイピア使いで主に刺突を使いこなす剣士です。次に剛剣のドリトン、この人は両手剣の使い手でその名の通り力任せに剣を振るう人です。最後に基剣のトウテツ、大陸では珍しい曲刀使いで草木を斬らず鋼鉄を斬り裂く達人です」

 

最後の人…斬るものを自分で選ぶことができている。ということは武装色の覇気どころか流桜も扱える可能性がある。鍛えるのに良き指導を受けられそうだな

 

昊「基剣のトウテツさんにお願いしたいです」

 

「かしこまりました、ギルドより紹介状をしたためますので少しお待ちください」

 

昊「わかりました、酒場の方で食事をしてからまた来ます」

 

「はい、ごゆっくりどうぞ」

 

受付から離れ、酒場の方に行くと登録前に会った男たちがいた

 

「おう坊主!初依頼を達成できたのか!?」

 

昊「ええ、危なげなくできました」

 

「そりゃすげぇ!期待の新人だな!」

 

昊「煽てないで下さいよ。調子に乗っちゃうので」

 

「頭が固そうな坊主にゃ調子乗るくらいがちょうどいいさ!」

 

「そうだそうだ!だからって命を粗末にするのはダメだぞ!」

 

昊「心得ておきます。ところでオススメありますか?」

 

「オススメか!なんと言ってもこのシュワシュワは手放せねぇな!」

 

昊「お酒はまだ用事があるので控えておきますね」

 

「なんだぁまだ飲めねぇってのか!」

 

「お前と一緒にすんな飲んだくれ!」

 

「そっくりそのまま返してやるよ!」

 

豪快に笑い冗談を言い合う仲の良さ。本当にいい人たちなんだな、信頼しきっているからこその言い合いだ

 

「酒以外だと食い物か?トードの唐揚げとかどうだ?」

 

昊「ジャイアントトードの唐揚げ、ですか?」

 

「おうとも!安い、大量、美味いの三拍子が揃ったメニューだぞ!あとは野菜スティックだな」

 

昊「では水とその2つを頼みましょうか。ありがとうございます」

 

「なんなら一緒に飲むか?」

 

昊「……いいですね、ぜひともご一緒させてください。あと1杯奢りますよ」

 

「景気いいじゃねぇか!こいつに水と野菜スティック、トードの唐揚げを頼む!俺らにゃシュワシュワ1杯ずつだ!」

 

「かしこまりましたぁー!」

 

料理を頼み、運ばれてからもこの辺りの情勢や暗黙の了解などについて教わることができた。それ以外にも娯楽についてや噂なども知ることができた。サキュバスの娼館だけは避けたい。行ったら僕の何かが終わる予感がする。

 

それから料金を払って受付に行き、紹介状を受け取ってから服屋で普段着と下着を買って、公衆浴場で汗を流してから安宿にチェックインして初日を終えた。武器については指導を受けてから決めようと思っている。

 

今日だけでもすごく濃い時間を過ごした。でも、これからはもっと大変なんだろうなぁ…天はどうしてるかな…両親とも大丈夫だろうか。心配事は尽きないが過ぎてしまったことだ。どうにかして立ち直っていることを願おう。

 

様々なことを考えているうちにいつの間にか眠ってしまった。そして翌日、朝餉をとってから地図に沿ってトウテツさんの家に向かった

 

昊「ごめんくださいギルドからの紹介で来ました。昊といいます」

 

「聞こえていた。入れ」

 

扉が開くこともないまま返事が来た。驚いたが言われたことに従い扉を開けて中に入る。これから文字通り死にかけることになるとも知らぬまま、この扉を開けてしまったことを僕は後に悔いるだろう

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