Bullets of the Beast   作:リョウ77

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どうも。
気分転換に執筆してみました。
一応、リコリコを見てから温めてはいましたが、他の作品を投稿したり大学のあれこれで忙しくて手を付けていなかったものです。
なので、「ちさたきでいくか」とか「オリキャラとくっつけちゃおうか」とかまだ何にも考えていないような状態ですが、暇なときに気まぐれで投稿していく予定です。


プロローグ

誰かが言った。

人は獣か否か、と。

ある者は、人には理性があるから獣ではないと言った。

ある者は、人には本能が残っているから獣であると言った。

だが、自らを獣であると認められるような人間は少ない。

だからか、粗暴で狂暴で自己中心的な人間は、往々にして獣だと揶揄される。

ならば、()()()()()()は、果たして人と言えるのか。

その答えを持っている者は、おそらく世界のどこにもいないだろう。

 

* * *

 

日本。

そこは世界で最も治安の良い国であり、犯罪率0%を実現している、まさに楽園とも言えるような場所だ。

だが、犯罪の芽はどこにでも芽吹こうとするもの。

そのため、それらを極秘裏に排除する組織が存在した。

その名は“DA”。正式名称“Direct Attack”の略であり、孤児を養成して殺人技術を身につけさせることで犯罪者を暗殺させる治安維持組織。

政府に協力する公的秘密機関でありながら、警察と違い独立した特権を持つ、いわば日本の暗部。

そんなDAの実働部隊は、主に2つ存在する。

一つはリコリス。彼岸花の学名を冠したその名は、マーダーライセンスを与えられた少女によって構成される暗殺部隊であり、女子高生の姿で紛れながら犯罪者を暗殺することで日本の秩序を守っている。

もう一つはリリベル。スズランの英名を冠したその名は、主に少年によって構成された実働部隊であり、リコリスと違い正面戦闘を想定して編成されている。

DA内でも詳細を知っている者はわずかしかいないが、秘匿事項となっている役割故にDAでの立場は大きかった。

だが、とある事件によってリリベルは大きく弱体化し、入れ替わるようにリコリスの立場が強くなった。

だからこそ、と言うべきか、あるいは必然的と言うべきか。リリベルの中にはリコリスに対して思うところがある者も存在する。

舞台は、リコリスとリリベルが交わる、そんな場である。

 

 

 

「異動、ですか。虎杖司令」

「そうだ」

 

DA本部のとある一室。

そこでは、1人の赤い服を着た黒髪黒目リリベルが封筒を手に目の前の上司に問いかけていた。

 

「理由は?」

「そこに書いてある通りだ。目を通してみろ」

 

そう促されたリリベルは、封を開けて中の辞令を確認した。

 

「・・・最強のリリベルとコンビを組め、ですか」

「お前もファーストになったが、他と比べれば実戦経験は浅い。我々が動く機会が減った弊害でもあるな。そいつの下で学べ・・・というのが建前だ」

「建前、ですか。それは言っていいのですか?」

 

情報と言うのは、与えればそれでいいというものではない。

下手に情報を与えるだけでは余計な混乱を生む可能性がある。

だからこそ、わざわざ建前だと念を押す意図が理解できなかった。

 

「別に機密が絡むわけではない。その男は、我々とは別で独自行動権を持っている。要するに、手綱を握る人物を近くに置いておきたい、というのが上の考えだ。今までも何人かいたが、長続きしなかった」

「でしたら、自分である必要はないのでは?ファーストとしては新人の自分よりも、先輩方が適任だと思われますが」

「それはその通りだが・・・」

 

そう言うと、虎杖司令は椅子に深くもたれかかって大きなため息をついた。

 

「奴は、DAでは異端とも言える男だ。仕事はこなす男だが、他とは異なる価値観を持っている」

「異なる価値観、ですか?」

「なんだ、知らないのか?噂程度なら聞いたことがあると思ったが・・・」

「いえ、他のリリベルと任務以外で話すことはなかったので」

「だからこそ、だ」

「?」

「お前は、他からクソ真面目だなんだと文句を言われる程度には孤立していて、だが優秀だ。リリベル内の状況で言えば、あの男と似ている部分がある。だからこそ、他と比べれば役割として適任というわけだ。まぁ、あれは真面目とは程遠いが」

 

つまりは、周りからすれば左遷にしか見られないような状態ではある、ということだ。厄介払いと言われても否定はできないだろう。

 

「そういうわけだ。基本的な情報はその資料にまとめてあるが、人となりは自分の目で確かめてくれ」

「わかりました。ですが、せめて司令の印象を教えてもらえませんか?」

「そうか。これはあくまで、他の人物の評価だが・・・」

 

僅かに間を空けて、虎杖は口を開けた。

 

「あれをスカウトした奴は、『まるで理性を得た獣のようだ』と、そう言っていた。そして、それは私も同意見だ」

 

* * *

 

指令書には、例のリリベルが住んでいる支部の場所が記載されていた。

少年はリリベルの制服ではなく私服を着て、地図とキャリーバックを持った状態で目的地へと向かっていた。

名目は東京支部の一つということになっているが、支部と言うには規模はあまりにも小さく、あるマンションの一室程度しかない。ほとんど個人のセーフハウスのようなものになっている。

 

『実際の所属は本部だが、他のリリベルに変なことを吹き込まれても困るということで隔離されている』

 

とは虎杖の弁だが、いったいどのようなことをしたらそんな扱いを受けるのか。特別扱いと言うには危険物に対するそれに近い印象を受ける。

その辺の情報をまったく渡してくれなかったことに不満を覚えつつ、地図を見ながら目的地へと向かう。

 

「ここですか」

 

目的のマンションにたどり着いた。

そこは特別豪華な高層マンションというわけではないが、他と比べれば明らかな高級マンションで、最上階は丸々スイートルームになっているという贅沢っぷりだ。

目的の支部は、そのスイートルームだという。

立派なマンションを前に気後れしそうになりつつ、意を決して中に入った。

マンションはオートロックになっているため、目的の部屋番号を入力してインターフォンを鳴らした。

反応はすぐに返ってきた。

 

『ほいほーい、どちら様?』

「どうも、本日よりこちらに所属することになりました。ファ・・・」

『あーなるほどね。お前さんが例のあれか。わかった、話は中でしよう。入ってくれ』

 

自己紹介をする間もなくインターフォンが切られ、エントランスの扉が開かれた。

いきなり失礼とも言える態度をとられ、たしかにこれは問題児だと納得した。あるいは、虎杖が言っていたのとは違うかもしれないが、詳しいことは直接会ってからだと息巻いてエレベーターに乗り込んだ。

そしてエレベーターが最上階に到着して開くと、そこはすでに玄関になっていた。

どうやら、エレベーターが直接部屋に繋がっているらしい。

そこで、奥から人影がやってきた。

 

「お前さんが、今日から配属になるリリベルか」

 

やってきたのは、ぼさぼさとした赤っぽい茶髪と黄金の目が特徴の男だった。

それを見たリリベルの第一印象は、やはり“獣”だった。

パッと見は好意的に接してきているが、奥底には一瞬でも気を抜いたら喉笛をかみちぎってきそうな気迫が宿っており、思わず体が強張ってしまう。

 

「おいおい、そんな怯えなくてもいいと思うんだが・・・」

 

緊張が表に出ていたのか、男は少しがっかりしたように軽くうなだれた。

リリベルも失礼な態度をとってしまったと気づき、すぐに口を開こうとした。

 

「ふむ、資料でも顔は見たが、向こうで見たことはなかったな。となると、新入りか?見た感じ俺よりも年下っぽいし、俺が出ていった辺りでリリベルに所属したとなると、所属したのはおおよそ8年・・・いや9年くらい前か?それでファーストになれるのは大したもんだな。いや、あの事件でリリベルも年中人手不足だし、優秀なら早い段階でファーストに押し上げられてもおかしくないか」

 

何も言ってないのに、どんどんと自分の情報が筒抜けになっていく。

所属した時期もあっている。おそろしいことに、経緯も間違っていない。

たしかに、このリリベルは人手不足の中で優秀だったこともあって、指揮能力に目をつむった上で早い段階でファーストに推薦された。

だからこそ、目の前の男から学ぶための異動という名目も成り立ったわけだが・・・

 

「・・・それは、司令から聞いていたのですか?」

「いや?そういうのは教えてくれんかった。もらった情報は名前と写真、あとはお前がファーストってことくらいだ。経歴や事情はおろか年齢すら教えてもらえなかった。司令も不親切だよなぁ。そういうのは教えてくれてもいいと思うんだが・・・まぁ、そういうのは手前(てめぇ)らで勝手に確認しとけってことか。どうせ、俺とお前の2人しかいないんだもんな」

 

恐ろしいことに、目の前の男は写真で見た顔と一目見た情報だけで、今の推測を導き出したのだという。

頭の回転が速いにしても、明らかに普通ではない。

思わず呆然とするが、ふと先ほどの対応を思い出した。

 

「・・・それはそれとして、さっき一方的にインターフォンを切りましたけど、ちょっと失礼じゃなかったですか?」

「いや、お前リリベルの名前とファーストの身分を言おうとしただろ。このマンション、インターフォンのやり取りは全部記録されてんだよ。一応DAの管理下にあるとはいえ、一般人も利用してるんだ。周囲に人がいなかったとしても、迂闊なことは言わないでくれ」

 

至極真っ当に反論された。

このマンションはDAによって管理されており関係者の宿舎としても利用されているが、怪しまれないように表向きは普通の賃貸としても運営しているらしく、数は多くないが一般人も利用しているらしい。

そのため、このマンションでは普段よりも人の目に気を付ける必要があるそうだ。

 

「まぁ、とはいえだ。ここで立ち話もなんだし、中に入ってくれ。部屋も用意してある」

 

ふと玄関で立ちっぱなしになっていることに気付いた男は、リリベルを中に入るように促した。

リリベルもそれに素直に従い、靴を脱いで部屋に入る。

部屋の中は、広いながらもシンプルにまとまっていた。

生活感はあるが、調度品の類のものはなく、代わりにソファやテーブルなど、日用の家具は良さそうなものを揃えていた。

 

「こっちは普段の生活で使うスペースだ。好きに使ってくれ。あ、散らかしたら自分で片付けろよ」

「わかってますよ・・・って、()()()?」

 

妙な言い回しをした男にリリベルは怪訝な表情を浮かべる。

すると、男は悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべた。

 

「おう。荷物を置いたらこっちに来てくれ」

 

男にそう言われたリリベルは、自分にあてがわれた部屋にキャリーバックを置くと男の後を追った。

男が向かったのは、男が使っている寝室。そこのクローゼットを開け、奥の壁を押すと、壁が回転して下へと続くポールが現れた。

そこを下っていくと、上の階層とはまったく異なる作りになっていた。

灯りは最低限で薄暗く、壁にはおびただしい数のリボルバー式拳銃がかけられていた。

中央には大きめのデスクが置かれており、その上には資料が散らばっている。

 

「これは・・・」

「こっちが本当の支部ってことだ。奥には射撃場もある。完全防音だから夜でも撃てるぞ」

「・・・一つ聞きたいのですが、なぜ拳銃しかないんですか?」

 

リリベルは正面戦闘を想定した編成された。そのため、メイン武装はアサルトライフルになっている。

そのため、拳銃はサブ武装で持っている隊員ですら少ないのだが・・・

 

「あぁ、全部俺の。俺は小銃よりもこっちの方が戦えるんだ」

「でしたら、オートマチックの拳銃でいいのではないですか?」

「いや、一回弾込めればリボルバーの方が使いやすいし」

 

なんというか、常識が通用しない。

本当に、この男の面倒を見なければならないのかと、リリベルはげんなりした。

 

「まぁ、そういうわけだ。ということで・・・ようこそ、DA東京第零支部、もとい俺の城へ。改めて、赤城カゲロウだ」

「・・・櫻木切矢です。よろしくお願いします」

 

こうして、リリベルもとい切矢は、『リリベルの獣』であるカゲロウとコンビを組むことになった。

 

* * *

 

「なるほど。ファーストのリリベルとして俺から学ぶという名目で監視に送り込まれたわけか。新入りファーストのはずなのに、そりゃあご苦労なことだ」

「えぇ、まぁ・・・」

 

自己紹介を済ませたと言うことで、改めて今後のことを話し合うことになったのだが、切矢はテーブルの方に座らされ、代わりにカゲロウがキッチンに立ってコーヒーを淹れていた。

容姿は粗暴な男にしか見えないはずなのに、一定のリズムでお湯を回しいれる姿はなかなか様になっている。いっそ喫茶店のマスターと言われても納得してしまいそうなレベルだ。

ちなみに、第零支部に来ることになった経緯は建前の方しか話していないはずだが、わかっているかのように本題の方も当ててきた。

とはいえ、司令も前任が何人かいたかのような口ぶりだったため、いつものことなのだろうとそこまで驚くことはなかった。

 

「そんじゃ、せっかくだ。俺のことについておさらいしておくか。あの司令からある程度情報はもらってるんだろ?」

「えぇ。それに、元々あなたは有名ですからね。現役最強にして史上最強のリリベルということで」

「その言い方はやめてくれ。()()()と被ってる」

「そうですか・・・」

 

カゲロウが言うあいつが誰のことなのかは切矢もわかっていたが、あえてそれには触れずに自分が知る赤城カゲロウについて話し始めた。

 

「赤城カゲロウ。最強のリリベルでありながら、独自で行動することができる権利を有している特別な存在でもあります。経歴として、DAに拾われた孤児ではなく、元々はとある犯罪組織のメンバーだったと聞いています」

「正確に言えば、結果的に犯罪組織扱いされた、が正しいけどな。あそこはあそこで『悪人はぶっ潰せー!』ってところで、やってることはDAと大差はなかった。いわば、政府非公認のDAと言ったところか。ただ、内容はだいぶ大雑把な上に現場を隠す気が皆無で、事件が表ざたになりそうなことも多々あったからDAに目を付けられた、ってのが正しい情報だな」

「なるほど。ともかく、そのような経緯でDAからリリベルやリコリスが派遣されましたが、リリベルからファースト3人を含む5部隊、リコリスからファースト2人にセカンド8人の被害が出たところで、方針を殲滅から懐柔に変更。組織もDAとは利害が一致している部分があったため、DAのエージェントを残らず返り討ちにした張本人を引き渡すこととDA専属の情報屋として働くことを条件にDAから手を引かせました。そして、DAに引き渡されてリリベルに所属することになったのが、当時7歳だったあなた、というわけですね」

「その通りだ。今は19だから、もう12年も前か。そろそろ引退も考えといた方がいいんかね」

「リコリスであればともかく、リリベルならまだ現役でいられるでしょう」

 

リコリスの役割は暗殺部隊であり、日本で最も警戒されにくい女子高生を装っているため現役はもっぱら18歳までだが、リリベルの役割は正面戦闘のため、リコリスと比べれば任期は長くなる。とはいえ、元が少年部隊であるため、それでも20代前半で引退することが多い。

 

「DAに所属してからは、およそ1年でファーストになり、隊長を務めることになりましたが、8年ほど前に急遽東京第零支部を設立、一人で異動することになった、ということですが・・・何があったんですか?」

「ん~、その辺はまた後で話そう。長くなる。ほら、コーヒーだ」

 

話している内に、コーヒーが出来上がったらしい。

 

「あ、砂糖とかミルクはいるか?」

「いえ、大丈夫です」

「大人ぶる必要はないぞ?」

「そういうわけではないので、結構です」

 

切矢はカップを手に取り、淹れられたコーヒーを口にした。

 

「・・・美味しいですね」

「だろ。豆がいいからな」

 

苦みの中に爽やかな風味が吹き抜けるこのコーヒーは、今まで飲んだどのコーヒーよりも美味しかった。

ちなみに、カゲロウはガッツリ砂糖とミルクを淹れて飲んでいた。

 

「それで、一つ聞きたいことがあるんですが」

「なんだ?」

「司令から、あなたは異端な価値観を持っていると聞きました。どのようなものなのですか?」

「あ~、聞いてなかったか。いや、あの司令が自分の口から言うようなことでもないか」

 

勝手に1人で何かに納得したカゲロウに切矢は訝し気な表情を浮かべるが、次の瞬間に全て吹き飛んだ。

 

 

 

「DAがやっていることをな、『ゴミがゴミを掃除している』って言ったんだよ」

 

「なっ・・・!」

 

DAへの侮蔑としか思えない言葉に、切矢は絶句する。

だが、カゲロウは当然のことを言ったまでだと言わんばかりに、悪びれずに平然としていた。

 

「まぁ、そもそも前提が違うからな。リコリスにしろリリベルにしろ、元々は孤児だったのをDAが拾って育ててるんだ。そりゃあ感謝の一つや二つはするだろうさ。だが、俺も孤児出身とはいえ、育ちは根っから裏社会だ。その辺の価値観が違うのは当然だろうさ」

「ッ、ですが、あなたの組織もやってることはDAと同じだと聞きました。なら、その言葉は自らへの侮辱にもなるんじゃないですか?」

「言っただろう、前提が違うと。向こうじゃ、自分たちがやっていることを同じように認識した上でやってるんだ。自分たちもまた、殺している相手と同じゴミであることを忘れるな、ってな」

「・・・理解できません」

「理解しなくてもいい。してもらうつもりもないしな」

 

それだけ言って、カゲロウはこれ以上言うことはないというようにコーヒーを口にした。

このまま追求するべきか、それとも今はまだ放っておくべきか、切矢は迷ったが、結論を出す前にさっさとコーヒーを飲み干したカゲロウが立ち上がった。

 

「うしっ!外に出るぞ」

「えっ、リリベルは不要の外出は禁止されているんじゃ・・・」

「司令から聞いてなかったか?俺は他よりその辺のことは緩いんだよ。それに、別に不要ってわけじゃねぇからな」

「はぁ・・・?」

 

なんのことを言っているのか分からず困惑する切矢を尻目に、カゲロウはさっさと外出の支度をする。

 

「ほら、お前もさっさと準備しろ。あ、もちろん私服でな。武器の携帯も無しだ」

「それはわかりましたけど・・・どこに行くんですか?」

 

そう尋ねると、カゲロウはニヤッと笑って答えを言った。

 

「なに、普段から世話になってる喫茶店にお前を紹介しに行くんだよ」

 

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