ピカブイとかダイパリメイクはどちらかと言えば1人プレイ向きな感じだったんで、BWリメイクも同じ感じなら任天堂オンライン加入してない自分でも楽しめるし。
でもなぁ、すれ違い通信がないBWもそれはそれでどうなんだろうと思わなくもないってのがなぁ。
「トリカブト、ですか?」
「そうだ。俺も詳しいことを知ってるわけじゃないが、150年前から存在していたと聞いている」
「150年前・・・明治時代からですか」
「そうだ。そして、その正体はDAからの離反者によって組織された、いわばもう一つのDAになろうとした集団だ。いや、成り代わろうとした、ってのが正しいか」
カゲロウからもたらされた情報に、切矢は少なくない衝撃を受けた。
DAの歴史はリリベル・リコリス共に基礎知識として教えられるが、今までそんな話は一度も聞いたことがない。
だが同時に、トリカブトと呼ばれる協力組織の存在を教えられなかった理由も理解できた。
かつてDAから離反者が生まれたという事実も、その離反者の集団から協力を受けているという現状も、DAからすれば汚点以外の何物でもない。
あるいは、そんな集団に属していたカゲロウによって多くのリコリスとリリベルが殺されたともなれば、先のラジアータのハッキングに匹敵するほどのDA存続の危機だっただろう。それこそ、トリカブトがDAに成り代わる可能性すらあった。
そうならなかったのは、トリカブトが政府にとって敵対する犯罪組織であったこと、カゲロウは当時はまだ子供で国家戦力と戦い続けるのが難しかったことから、トリカブト側から譲歩したのだろう。同時に、DAに貸しを作ることで組織の目的の足掛かりにした。
そこまで考えて、思っていたよりも自分はやばい状況でやばい人間のところに送り込まれたことに気付いたが、泣き言は言っていられないと吐きそうになったため息を飲み込んだ。
そんな葛藤も、すぐに見抜かれてしまったが。
「ははっ!まぁ安心しな。俺といる限りは、取って食われるようなことはねぇよ。DAからも古巣からも、な」
「それは・・・安心できるようなできないような・・・」
逆に言えば、カゲロウから見捨てられれば危うくなる、ということでもある。
だからと言って、カゲロウに気に入られるためにすり寄ろうとすれば、カゲロウは即座にそれを見抜いて「共に行動する価値なし」と切り捨てるだろう。カゲロウならそうするという確信が、切矢にはあった。
幸い、そのことを知る前から上手くやれているため、今まで通り過ごしていれば大丈夫だということがわかっただけでも救いだった。
「それに、犯罪組織とかテロリストって言われても、まぁ否定はできないんだよなぁ、これが」
「そうなんですか?」
「そもそも、トリカブトがDA、当時の八咫烏から離反したのは、いくつか理由がある」
八咫烏とはDAの前身となる影の組織で、明治以前より陰から日本を守ってきた。
組織図として、『八咫烏』をトップとして、その下に『金鵄』と総称される3つの部署があり、リリベルの前身である男系暗殺部隊『君影草』を指揮下におく『鴉』、リコリスの前身である女系暗殺部隊『彼岸花』を指揮下におく『雅』、影武者部隊の『花葵』を指揮下に置く『鵶』、そして各部隊を指揮する3人のトップ『大烏』が存在する。
トリカブトは、その中から大烏の一つ下に存在する指揮官級の人間が離反し、その流れに同調した何名かをそれぞれの部隊から引き抜いたことで結成された。
「きっかけは、開国と明治維新。黒船襲来によって当時の自分たちでは敵わない技術力を持った国が存在することを知った一部の指揮官は、東京奠都とそれに伴う政治改革の際に八咫烏を秘密組織ではなく政府公認の組織にするよう直訴した」
「それは、なぜですか?」
「さて、どうだろうなぁ。その辺の資料は残ってないんだが、全員が同じ理由ではないはずだ。出世欲から表舞台に立とうと画策した奴もいれば、諸外国を牽制するために公表すべきだと国のことを考えた奴もいただろう。だが、最終的に政府や八咫烏の上層部はその嘆願を却下し、提案した指揮官やそれに同調した連中を処分しようとした。とはいえ、その時は改革やら何やらでごたごたしていた時期でもあるし、離反した連中の中には今でいうファースト相当の猛者もそれなりにいた。結果として処理は失敗し、生き残りが八咫烏を引きずり下ろすために結成したのが、問答無用で悪を殺す毒花『トリカブト』というわけだ」
最後に少しだけ芝居がかったカゲロウの説明を聞いて、今度こそ切矢は盛大にため息をついた。
そのため息の向く先はDAだ。
さすがにずっと放置していたというわけではないだろうが、それを差し引いても150年もの間根絶できなかった組織の存在を秘匿するというのは、切矢にDAに対する不信感を植え付けるのに十分だった。
「だがDAと比べると、治安維持組織としての機能はまったくと言っていいほど持ち合わせていない。それこそ、犯罪組織と言った方がしっくりくる場合も多い」
「そうなんですか?」
「組織としてけっこうシャレにならない欠点があってな。その時のトップによって、方針が180度変わるんだよ。元々は政府公認のDAを立ち上げるために結成された組織だが、DAへの対抗心が強かった都合上、DAのことが気に入らない奴が組織に入ることも珍しくなかったし、トップになることすらあった。その時はそれはもうひどかったらしくてな、リコリスやリリベルを殺して回るのはまだマシな方で、治安維持組織を目指してるくせしてテロを画策したりもしたらしい」
「・・・良くもまぁ、今まで組織が生き残りましたね」
「そういう時は、トップと賛同者を殺して雲隠れしてから組織を再結成する、なんてこともあったらしい。俺も良くもまぁと感心するよ」
「それで、現在のトップは?」
「かなりまともだ。頭も切れるし、俺の親代わりでもある」
「そうなんですか」
つまりは、カゲロウをDAに送った張本人でもある、ということだ。只者ではないというのは間違いないだろう。
改めて、切矢に緊張が走る。
トリカブトに関する説明を受けながら、カゲロウの先導で裏路地を進んでいく。
その道中でも、切矢はあらゆる場所から絶え間なく視線を感じた。一部からは敵意のようなものも向けられたが、カゲロウが近くにいるからか殺意は感じなかった。
「ここだ」
「ここですか」
そうしてたどり着いた場所は、一見孤児院にも見えるコンクリートの建物だった。運動場にいる子供たちは、全員遊んでいるのではなく格闘術の訓練をしていたが。
2人が敷地内に入ると、建物の前で立っていたスーツの男が走り寄ってきた。
「カゲロウさん、お久しぶりです」
「おう。あの人はいるか?」
「はい、司令は部屋でお待ちしています。それと、こちらの方は?」
「俺の今の相棒だ。今までと比べりゃ聞き分けがいいから、問答無用で殺す真似はすんなよ」
「分かりました。では、案内します」
そう言って、スーツの男は2人を建物の中に入れた。
中に入ると、一見は外見と同じようなコンクリートの建物だが、いたるところに罠が仕掛けられていた。あからさまなものから意識の死角を突くように配置されたものまで、細かいところに殺意を感じられる。現在は作動していないようだが、もし罠を起動すれば中を攻略するのは骨が折れるだろう。
それは、この建物に至るまでの道中でも同じだった。裏路地は迷路のように複雑になっており、行き止まりや正しい順路に関係なくすべての場所に見張りが存在した。しかも気配から感じる戦闘力は、リコリスで言えばファーストまではいかずともセカンドに匹敵している。衛星カメラから構造を確認しようにも、シートによって路地の中は遮られ、障害物によって絶え間なく迷路が様変わりする。
ここまで徹底しているのであれば、伊達に150年間DAから逃れ続けたわけではないというのも納得できる。
「ここで司令がお待ちです」
「案内ご苦労」
スーツの男に案内されたのは、扉に『司令室』と書かれた看板がかけられた部屋だった。
だが、その看板は木の板にマジックペンで書かれたもので、手作り感満載の代物だった。
「・・・この看板は?」
「ここ、貧乏だからな。節約できるところは節約しねぇと。紙じゃないだけマシだ」
なんとも悲しい話だ。先ほどまでの感心とのギャップがひどい。
スーツの男もなんとも言えない表情を浮かべながら、ドアをノックしてから開けた。
「蘆屋司令、失礼します。赤城さんとお連れの方が来られました」
「おぉ、来たか!」
中にいたのは、ボサボサに伸ばした茶髪に無精ひげを生やした、みっともない風貌の男だった。備え付けられている机やソファには手作業で修復した後もあり、どうにも貧乏人という印象を強く植え付けられそうになる。
だが、体は服越しでもわかるほどに鍛えこまれており、みすぼらしいという雰囲気を感じさせない。
「どうも、蘆屋さん」
「久しぶりだなぁ、カゲロウ!ここに来たのは何か月ぶりだ?用が無くても帰ってきていいんだぞ?」
「そうしたらDAからの干渉が鬱陶しくなるだろ。帰るのは仕事目的で十分だ」
「うぅ、カゲロウも大人になったな・・・」
「こんな仕事やってるし、今年で20だ。当然だろ」
「それもそうか。それで、彼は?」
「あぁ、こいつは今の俺の相棒だよ。監視役とも言うが、今までで一番うまくやれてる」
「そうかそうか!」
そう言うと、蘆屋は切矢の両手を強く握ってブンブンと振り始めた。
「いやぁ、カゲロウと仲良くしてくれてありがとう!今まで連れて来てくれた相棒もどきは碌な奴がいなかったが、君なら大丈夫そうだ。名前は?」
「さ、櫻木切矢と言います」
「切矢くんか!これからもカゲロウのことをよろしく頼むよ」
「変に親ムーブをかましてんじゃねぇよ。あと髪切ってひげも剃れ。鬱陶しい」
ようやく蘆屋から解放された切矢だが、握られた手をまじまじと見つめる。
蘆屋の手は、虎杖司令のようなデスクワークを主とした人間のものとは違う、兵士として鍛えられた手だった。
試しに、切矢は装備してきたレミントンに手を伸ばそうとするが、すぐにやめた。
カゲロウや秘書と思われるスーツの男が牽制していたのもそうだが、蘆屋から一切の隙を感じ取れなかった。この2人が手を出さなくても、切矢がレミントンを抜いて発砲するよりも早く距離を詰められて組み伏せられるか、発砲が間に合っても室内に存在する机やソファを盾に防がれる未来が見えた。
この男、見かけはただの浮浪者にしか見えないが、実際はファースト級の戦闘力を持ち、同時に頭も切れる、非常に優秀な指揮官だ。もしカゲロウがいなくても、彼を暗殺するのは困難を極めるだろう。
そんな蘆屋は、ドカンとソファに腰を下ろしてカゲロウと切矢にも座るよう促し、2人もそれに従ってソファに並んで座った。
「それで、仕事という話だったな。DAからの依頼か?」
「いや、俺個人の頼みだ。まぁ、DAからの依頼ってのも間違いではないが。これを見てくれ」
そう言って、カゲロウは蘆屋にタブレットを渡した。
蘆屋は画面を操作し、偶に「ふむ・・・」と呟きながら渡された資料を流し見る。
今カゲロウが渡したタブレットに入っている資料は、虎杖から送られてきたものではなく朝食中と道中でカゲロウが作ったものだ。そのため、切矢は資料に何が書かれているか知らない。
内心でどんな情報が流出するか冷や冷やしながら待っていると、蘆屋がニヤリと笑ってタブレットをカゲロウに返した。
「事情は理解した。消えた1000丁の銃に、ラジアータのハッキングか。ずいぶんと面白いことになっているようだな」
「ちょっ、ハッキングの情報を渡したんですか!?」
切矢は蘆屋が言った内容に思わず突っ込んだ。
あくまで憶測に過ぎないとはいえ、ラジアータのハッキングはDAの機密になっているはずだ。それをなんのためらいもなく蘆屋に渡したカゲロウに、元の所属組織が違うとはいえ思わず指摘せずにはいられなかった。
対するカゲロウは、軽い調子で返答した。
「まぁ、ぶっちゃけDAにもトリカブトにも特に思い入れはないんだが、蘆屋さんには個人的に拾ってもらった恩もあるしな。それに、DAからもらった情報を渡したわけじゃない。あくまで俺の推測だ。ただの推測を共有するのに問題があるか?」
「それはそうですが・・・」
「言っておくが、DAが治安維持を担おうがトリカブトが治安維持を担おうが、俺はどっちでもいい。そこのところは履き違えるなよ」
「・・・あーもう、分かりましたよ!」
そう言われて、切矢はガシガシと頭をかきながらヤケクソ気味に納得した。
というのも、ついさっきDAに軽く不信感を抱いたのもそうだが、カゲロウと過ごす中で切矢も少しずつだが考え方が変わってきている。
カゲロウの言うことはだいたい極論だったり暴論だったりするのだが、それでもまったくの的外れというわけでもないのだ。そのため、切矢はそういったカゲロウの意見を受けいれることができるようになっている。
DA本部にいる面々から見れば『毒されている』と映るかもしれないが、本当に国のことを考えるなら、治安維持という名目が変わらない以上DAでもトリカブトどちらでも問題はないのだ。
現在は政府とDAの方針が一致しているからこそ協力関係にあるが、もし何らかの問題が発生してDAが使い物にならないと判断されれば、代わりにトリカブトをたてる可能性も十分ある。
少なくとも、蘆屋にはその代わりを務めることができるだけの能力がある。
そして、現在起こっている事件がどれだけ影響を与えているかまではわからないが、DAが築き上げた基盤が僅かでも揺らぎ始めているのは間違いない。
そうなると、自分も最悪の事態に備えて身の振り方を考える必要がある。
つまり、DAとトリカブト、どちらをとるか。
そして、自分にカゲロウを相手取ることができるだけの実力がない以上、カゲロウが選んだ組織についていくしかない。
であれば、今のうちにトリカブトという組織と蘆屋というトップについて見定めなければならない。
そう自分に言い聞かせて、無理やりにでも納得せざるを得なかった。
そんな切矢の様子を見て、蘆屋は満足げに頷いた。
「なるほど、たしかに相性がいいようだな。真面目かつ合理的でありながら、環境に順応できるだけの柔軟さもある。カゲロウとパートナーを組んだことが余程刺激になったようだな」
「おかげで、DAとの板挟みで頭が痛くなりましたよ」
「安心しろ、もしおDAに見捨てられても、お前が望めばうちで引き取ってやる」
「・・・可能性の一つとして考えておきます」
カゲロウが蘆屋のことを慕っている理由が、切矢にも分かったような気がした。
この男、人材の拾い方が絶妙に上手い。
的確に弱みを握っておきながら、こちらに対して利益を提示することで多少強引にでも引き込む。そして、豪快かつ人当たりのいい態度についつい心を許すようになり、最終的には心から信頼するようになる。
まさかカゲロウも同じような手口で篭絡されたとは思いたくないが、それはそれとして2人の会い初めが気になるところではある。
とはいえ、この場では関係ないため、好奇心は心の奥に押しとどめた。
「・・・自分から中断させてしまっておいてなんですが、話の続きをしませんか?」
「おぉ、そうだな。それで、依頼内容は消えた武器とラジアータをハッキングしたと思われるウォールナットの捜索ってことでいいんだな?」
「あぁ。できればウォールナットの捜索を優先してほしい。DAは殺す気満々だからな」
「わかった。とはいえ、期待はするなよ?うちにもハッカーはいるが、見つけられた試しがない」
「すでにそっちで探してたのか?」
「いや、うちのハッカーがウォールナットのファンというか、信者なだけだ」
「あー、うん、そうか」
まさかすでに個人的な理由でウォールナットを探しているとは思わなかったが、それはそれで心強いというものだ。
だが、なんとなく事態が飲み込めない切矢が尋ねた。
「あの、そんなにウォールナットって人気なんですか?」
「まぁ、生ける伝説だからな。一部のダークウェブでもある種の信仰対象になってる。あいつもかなり優秀なんだが、『それでもウォールナットの足下にも及ばない!』って言って聞かねぇんだよ」
「そうですか・・・」
これ以上は何を聞いても理解できない話になる予感がしたため、カゲロウと切矢はそれ以上の詮索をやめることにした。
「まぁ、そういうわけだから、頼んだ」
「わかった。他ならないカゲロウの頼みだからな。俺らも気合を入れるとするさ」
「助かる。そんじゃ、何か分かったら俺の方に・・・」
prrrrrr
カゲロウが立ち去ろうとすると、不意にカゲロウのポケットから着信音が鳴り響いた。
「・・・あー、ちょっと待っててくれ」
画面を見たカゲロウが非常に微妙な表情を浮かべながら部屋の隅に移動して電話に出た。
カゲロウの携帯の画面が見えたわけではないが、それでもこの場にいる全員が通話相手が誰なのか察していた。
「錦木さんですか」
「千束ちゃんだろうなぁ」
その予想は当たっていたようで、時折カゲロウの口から「あのなぁ、錦木」という話声が漏れていた。
しばらくして、電話を切ったカゲロウが顔で戻って来た。
てっきりげんなりとした顔で戻ってくるものだと思っていたが、その表情はいつになく真面目なものだった。
「おう、悪かったな」
「いえ。それで、何でしたか?」
「錦木が仕事を手伝えとかほざいてきやがった・・・が、俺たちの件と無関係というわけでもなさそうだ」
「そうなんですか?」
「あぁ。なんでも、例の銃取引の現場の写真を手に入れたんだとさ」