Bullets of the Beast   作:リョウ77

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今回でアニメ1話分終わりです。


最強と最強の共演

「ちっ、標的が離れていくぞ」

「おい、護衛っぽい奴らもいたし、まさか気づかれたとかじゃないだろうな」

 

沙保里の後ろを気づかれないように尾行している車の中で、作業着にサングラスの男たちが声を潜めながら揉めていた。

男たちは件の銃取引で銃を受け取った側の下っ端で、銃取引の現場が映った写真のデータを消すために数日前から沙保里を尾行していた。

だが、ちょうど準備を終えて決行しようとしたタイミングで謎の護衛が現れたため、男たちの中に焦りが出ていた。

 

「いや、男の方はともかく、女の方はガキだぞ?気づくわけねぇ」

「くそっ、どうする?」

「このまま尾行して、寝込みを襲うしかないだろ。どうせ2人しかいねぇし、数は俺たちの方が上なんだ。力づくでどうにでもなる」

 

もし切矢が聞けばため息が出そうになるほど楽観的だが、男たちはDAのことを知らないため普通の反応と言えなくもない。

だが、護衛についている2人、その女の方であるたきなが普通でないことを、すぐに思い知らされることになる。

 

「おい、ガキの女はどこにいった?」

「は?まさか・・・グアッ!」

 

沙保里の尾行を続けようとした矢先、たきなが自身の愛銃であるM&P9にサイレンサーを取り付けて発砲した。

男たちは慌ててしゃがんで弾丸を躱そうとしたが、抑制された銃声とともに放たれた弾丸はフロントガラスを貫通して運転席に座っていた男の肩を撃ちぬいた。

男たちが車で射線を遮ってからも、たきなはライトやタイヤを撃ちぬきつつ銃を乱射し続ける。

 

「取引した銃の所在を言いなさい!」

 

「おい、めちゃくちゃ撃ってきてるぞ!」

「なんで取引のこと知ってんだ!?」

「まさか、武器商人を皆殺しにした奴らじゃないすか?」

「あんなガキがかよ!」

 

突然の事態に男たちはわめくが、たきなは射撃の手を緩めない。

切矢には足止めをするようにと言われたが、この程度であれば自分1人で制圧できる。

そう判断したたきなは、空になったマガジンを取り出してリロードし、再び銃口を向ける。

 

「そこまでだ」

 

次の瞬間、背後から首根っこを掴まれて後ろに引っ張られた。

たきなは掴んできた謎の人物に対して銃口を向けようとするが、すでに銃を持っている手が押さえつけられていたためそれもできない。

というより、その必要がなかった。

 

「何やってんのたきな~!」

「まぁ、見ればだいたいわかるが・・・」

 

首根っこを掴んだのはカゲロウで、その後ろには千束もいた

 

「尾行されていたのでおびき出しました」

「まさかとは思うが、篠原さんを囮にしたとかじゃないよな?」

「そのつもりでしたが、その前に櫻木さんに止められました。沙保里さんは今は櫻木さんと一緒にコンビニに行っているはずです」

「そうか・・・」

「あ~、よかった~・・・」

 

考えていた最悪の可能性が現実にならなかったことに千束とカゲロウは安堵の息を吐き、内心で功労者である切矢にリコリコで奢ることを決めた。

 

「ですから、その手を離してください。あなたが止めなければ終わっていました」

「あぁ、それもそうだな」

 

そう言われて、カゲロウもたきなの首から手を離す。

そして、先ほどまでの行動について指摘した。

 

「だが、『終わっていた』ということは、あいつらを()()()()()()()()、ということか?」

「全員ではありません。尋問を行えるように最低でも1人は生かしておくつもりでした」

「ちょいちょい、それはダメだって。命大事にって言ったでしょ」

「どういうことですか?」

 

千束の言うことに、たきなは疑問を覚える。

別れる前に言っていた『命大事に』という言葉は自分たちに対してのものだと思っていたが、まさか敵に対しても同じなのか。

そのことを尋ねようとする前に、カゲロウが口を挟んだ。

 

「こいつの戯言はいったん無視しとくが」

「おーい、戯言とはなむぐっ、もがもが!」

「無視しとくが、誰が情報を持っているかもわからんのに当てずっぽうで殺すのはまずいだろう。というか、そうやって失敗してんのを忘れたのか」

「あれはっ・・・」

「後は俺と錦木でやる。もし射撃に自信があるなら、7時方向のドローンを撃ち落としてくれ」

「ぷはっ!あ、音は出してね」

 

カゲロウのオーダーに、途中から口をふさがれながらも脱出した千束が注釈を入れた。

そこでたきなも指示された方角から3人を監視しているドローンの存在に気付いた。

たきなも意識を研ぎ澄ませてドローンの位置を把握し、サイレンサーを外してから振り向くとほぼ同時に発砲してドローンを撃ちぬいた。

 

「うおっ!ま、また撃ってきやがっ・・・」

「やぁ、取引したいんだけ」

「う、うわぁ!?」

 

男たちが銃声にひるんだ間隙に一気に近づいた千束が一人に取引を持ち掛けようとするが、軽く錯乱した男は千束に向けて発砲した。

 

「どっ・・・」

 

だが、至近距離で放たれた弾丸を千束は首をひねって躱し、ムッと顔をしかめてお返しと言わんばかりに発砲した。

 

「お、おい!」

「ちょいと眠ってろ」

「ぐぁ!?」

 

車の後ろで様子を見ていた男が慌てて助けに向かおうとするが、いつのまにか背後に回っていたカゲロウに当身を喰らわされて気絶した。

 

「なっ、てめぇ!!」

 

傍にいた男もカゲロウに向けて発砲するが、カゲロウもまた当然のように銃弾を躱してあっという間に接近し、鳩尾と顎に掌底を叩きこまれて気絶した。

 

「ふぅ、他はいるか?」

「車ん中に1人いたけど、肩撃ち抜かれてる。今治療してあげるからね~」

「ひぃっ!嫌だ、殺さないで・・・!」

「だぁいじょうぶだって。ほら、大人しくして」

「いでででで!」

 

怯えるテロリストに構わず、千束は荒っぽい手つきで撃ち抜かれた肩を止血した。

 

「これ、非殺傷弾ですか・・・?」

 

その横で、たきながしゃがみこんで千束に撃たれた男に残っていた粉末の塊を手に取る。

撃たれた時に見えた赤い飛沫は血液ではなく、非殺傷弾が炸裂した際の粉末だった。

たきなの疑問に、テロリストたちを拘束し終えて暇を持て余したカゲロウが答える。

 

「あぁ、そうだ」

「まさかとは思いますが、『命大事に』って敵もですか?」

「それもそうだな」

「よしっ、これでおっけ!あ、そうだよ~」

 

止血を終えてバシンッと強めに肩を叩いてから、千束もたきなの問い掛けに答えた。

 

「それじゃ、こいつらは俺の方で引き取るから、お前らは沙保里さんのところに戻れ」

「え~、クリーナーに頼むからいいって。赤城君に任せたら最終的に殺されちゃうでしょ」

「あれバカみてぇに金がかかるし、ミズキさんから文句言われるぞ。それに、連中の拠点も知りたいからな。殺すより泳がせた方がいい」

「なるほど。そう言うことなら任せた」

「おう。んじゃ、さっさと行ってこい」

「よろしくね~。さっ、たきなも行こう!」

「は、はい・・・」

 

困惑するたきなの手を掴んで、千束はコンビニがある方角へと走っていった。

その後ろ姿を見届けてから、カゲロウは携帯を取り出して電話をかけた。

その連絡先は蘆屋だ。

 

『おう、こんな夜更けにどうした』

「今から俺がいる場所に来てくれ。例の銃取引をした組織の構成員らしき4名捕らえた。見た感じ下っ端しかいなさそうだが、できるだけ情報を吐かせてもらいたい」

『わかった』

「それと、付近にドローンの残骸が落ちているはずだ。そいつが俺か錦木、もしくは両方を監視していた。テロリストと直接関わりがあるかまではわからないが、解析にまわしてほしい」

『それについても了解した。今お前の居場所を把握したから、10分くらいで着くぞ』

「助かる」

『それで、千束ちゃんもいるってことは、俺たちの方で殺さない方がいいか?』

「どうせなら、GPSとかを付けて放流しとけばいい。拠点の1つや2つは探れるはずだ」

『なるほど、それについても承知した。尋問結果は後で知らせよう』

「頼んだ」

 

頼みたいことを言い終えたカゲロウは、通話を切って壁にもたれかかった。

 

「うぅ・・・」

 

その視線の先では、未だに千束に撃たれた男が呻き声を漏らしている。

千束が使っている非殺傷弾はミカ特製のもので、当たり所や数によるが対象を殺さずに無力化できる威力を実現している(なお千束曰く「死んだ方がマシなくらい痛い」らしいが)。

欠点としては、製作コストがバカみたいに高いことと、射撃精度がこれ以上ないほど劣悪なこと。

特に射撃精度が致命的で、数m先であってもまともに狙った場所に当たらないという、もはや欠陥品と言っても差し支えないほどのものだ。そのため、千束も非殺傷弾を当てるために必ず当たる距離まで近づいてから発砲している。

果たして、そこまでして銃弾飛び交う戦場で非殺傷主義を掲げる必要があるのか。

カゲロウの中では『絶対にない』と結論付けているが、それでも見ている分には面白いため千束の主義をどうこう言うつもりはない。

そして、そんな千束と行動を共にするたきなにどのような変化が表れるのか。カゲロウの中に新たな興味の対象が生まれる。

 

「・・・少なくとも、お前に獣の性は似合わんなぁ、井ノ上」

 

そんなカゲロウの呟きは誰にも聞かれることなく、夜闇へと溶け込んだ。

 

 

* * *

 

 

翌日、沙保里の護衛が終わったということで、カゲロウと切矢はリコリコで情報を共有していた。

 

「ったく、いちゃついた写真をひけらかすから、こんなことになんのよ!」

 

そんな中、ミズキは今回の事件の原因となった沙保里の彼氏とのツーショット写真を恨みの眼差しと共に見つめていた。スマホを握る手には力がこもり、軽くミシミシと音が鳴っている。

これ以上は自分のスマホが危ないと判断した千束は、ミズキからスマホを取り上げてミカに渡した。

 

「ひ~が~ま~ない。スマホ壊れちゃうでしょ~」

「ひがみじゃねぇよ!ネットへの無自覚な投稿がトラブルを招くって言ってんのよ!」

「いえ、さすがに今回は特別運が悪かっただけでしょう。こんな極端な事例が何個もあるはずがありません」

「っつーか、どちらかと言えばミズキさんも男を捕まえるためにひけらかすタイプだろ。んでドン引きされて婚期が遠ざかっていると見た」

「好き放題言ってんじゃねぇよ!ってかひけらかしてねぇし!ちょっと見栄えを意識してるだけだし!」

「つまり、盛ってると」

「ぶふっ!」

「ウガァアアア!!」

 

カゲロウの流れるような罵倒に思わず千束が噴き出し、ミズキが発狂しながら立ち上がってカゲロウに襲い掛かった。

掴みかかろうとするミズキの腕をひょいひょいとかいくぐるカゲロウを横目に、切矢は銃取引について言及した。

 

「銃が消えた、なんて報告にありましたが、実際はすでに取引が終了していたということですね」

「3時間前だってね。楠木さんニセの取引時間掴まされてたんじゃなぁい?」

「そうか、DAも焼きが回ったな」

「それで、沙保里さんを襲った連中は赤城君のところが持ってったんだよね?何か進展があったりした?」

「ここに来る前に連絡がありましたが、襲った連中は下っ端も下っ端だったようで、銃の所在もそうですが、具体的な目的すら知らされていなかったようです。GPSを取り付けて逃がしはしたそうですが、拠点が見つかるかは怪しいところですね」

「そう簡単にはいかないか~」

 

すぐに事件が解決しなさそうな気配を感じた千束は、気だるげにカウンターに突っ伏した。

その横で、切矢はまだ千束たちには伝えていないもう一つの情報について思考を巡らせた。

それは、リコリコに向かう前に蘆屋から情報を聞いていた時のことだ。

 

『・・・期待はしてなかったが、収穫はなしか』

『悪いな。だが、ドローンについてはある程度収穫があった』

『というと?』

『ドローンに印刷されていたロゴは“ウォールナット”のもので間違いないそうだ』

『・・・となると、やっぱラジアータをハッキングした犯人はウォールナットで確定か?』

『篠原さんじゃなくて赤城さんと錦木さんを監視してたのも、ラジアータから抜いた情報を元にしていたと考えれば辻褄は合いますね』

『ドローンがなりすましでない限りは、そういうことだろう。だが、俺たちが犯人を受け取った直後の時間帯にマンションの一室が爆破された。表向きはガス漏れによる事故と報道されているが、爆発物によるもので間違いない』

『まさか、クライアントに消されたとかか?』

『そこまではわからんし、そもそも死亡確認もできてない。だが、ウォールナットが銃の売り手に目を付けられたのは間違いなさそうだ』

『なら、できるだけ早くウォールナットを見つけて、こっちで保護した方がいいか』

『情報はこちらでも集める。あとは運に身を任せるんだな』

 

最後の最後でいい加減な言葉を残したが、実際ウォールナットが生き残れるかどうかは当人の生存能力にかかっている。

仕方ないとはいえ、自分たちだけでは何もできない事実が切矢にとって少しばかり歯がゆかった。

そんな切矢の内心を知ってか知らずか、千束は明るく話題を変えた。

 

「でもさ、DAもこいつらを追ってるんでしょ?私らが先に見つければ、たきなの復帰が叶うんじゃない?そう思わない、たきな~?」

「やります!」

 

千束に呼びかけられるとほぼ同時に、店の奥で従業員服に着替えていたたきなが飛び出した。

たきなの従業員服はリコリスの制服と同じ青を基調にした和服で、髪をストレートからツインテールに結んでいた。

 

「うぉっほ~!可愛い~!!なになにちょっとなになにやばいちょ~似合うじゃーん!」

 

それを見た千束は目を輝かせながら立ち上がってたきなに抱きついてからたきなの腕を引っ張り、たきなも為されるがまま千束に連れていかれる。

 

「ほらほら、ミズキもそれくらいにして、たきなと写真撮るよー!あっ、赤城君はカメラお願い!」

「店のSNSにアップするなら自撮りの方がそれっぽくないか?」

「おぉ、言われてみれば!それじゃ、先生も寄って寄って!」

「あ、あぁ」

 

ミカも後ろからカメラの中に入ったのを確認してから千束はシャッターを切り、撮った写真をSNSに投稿した。なお、写真が縦なのに対しSNSでは横向きになっているため、ミカの顔は上がほとんど見切れていた。

 

「さっそくお店のSNSにアップしたわ」

「キミはさっきの私の話を聞いてたのかね?無自覚な投稿が・・・」

「大丈夫だって。ここには向かいのビルもないよ」

「まぁ、リコリスがSNSをしてる時点で今さらではありますが」

「櫻木、それを言ったら野暮ってもんだ」

 

切矢の至極真っ当な意見にカゲロウが茶々を入れると、ドアベルが来客を知らせた。

 

「ほらお客さん!たきなも練習通り!」

「はぁ・・・」

 

たきなの初めてとなる客が来たということで千束もスマホをしまい、2人で並んで姿勢を整えた。

 

「やぁ、ミカ」

「っ!!」

「いらっしゃいませー!」「いらっしゃいませ」

 

店に入ってミカの名前を呼んだスーツの男を、千束は満面の笑顔で、たきなは仏頂面で迎えた。

だが、そんなたきなの初めての接客を見てカゲロウと切矢の印象に残ったのは、千束とたきなではなく客の姿に驚いているミカの姿だった。




最近、アクションとかバトルシーンが全然書けなくて軽く頭を抱えてます。
去年くらいはまだ書けたと思うんだけどなぁ・・・。
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