異世界おじさんvs異世界TS娘 作:SEGA機未プレイお兄さん
六十三歳おめでとう、セガさん……
『……お父様は、お亡くなりになられました』
『死因は、循環器系の異常でしょう。やれる事は尽くしましたが、抗体が無かった事で、病状は一向に治まりませんでした。新型コロナウイルスのワクチンや治療薬の開発も始まったばかりでしたので……』
『あの様な密閉空間では、感染も避けられなかったでしょう。あのイベントでは、数百人規模の感染が起こってましたから』
『……偏に、コロナウイルスの危険性について、十分な周知ができていなかった事も、症状を助長していた』
『……医師として、避けられたであろう犠牲に、悔やんでも悔やみきれません』
父親は、突然亡くなった。
俺が高校に入学する、少し前の事だった。
父はとあるゲームのイベントの手伝いに出ていた。ただ、その会場の中に、噂になっている新型コロナウイルスに罹っていた人がいたという。それで急速にその場で広まった。
クラスター、という言葉を知ったのはその時のこと。
父は、それに巻き込まれていた。
母は看護師で、父が担ぎ込まれた病院が勤務先だった。
時折、母自ら父の世話をしていたが、それでも死んでしまった。
それからというものの、母は忙しくなり、俺は一人暮らしのようになっていた。
そこまでは、まだ良かった。
『……母さんは、まだ帰って来れそうにないか』
『はは、大丈夫だって。その内きっと収まるよ。それまでの辛抱だから……晃輝も無理しないで』
『分かった。……あんまり働き過ぎないでよ、母さん』
……そう言った二ヶ月後ぐらいに、母親が亡くなった。
過労死だと聞かされた。寧ろ、ここまで持ったのが奇跡というレベルだという。
こんなスパンで両親を失って、学校に行く気力なんて起きるはずもなく、間もなく俺は引き篭った。
居なくなると、その有難みに気付くというのはよく聞くが、それを身をもって体感した。
居なくなってからでは遅いというのに、本当に皮肉だ。
ただ、叔母と従兄弟がよく様子を見に来てくれて、それが少し助けになった。
でも、俺はもしかしたら、家族という存在に飢えていたのかもしれない。
『来たぞ、サリファ、リフィア』
『おっ、キルロ。いい獲物でも捕まえられたか?』
『まあな。早速厨房借りるが……』
『あー、薪は右にあるのを使ってくれや。そっちしか乾いてねぇんだ』
『了解。……《
薪を入れて火を点けると、捕まえたという小竜を丁寧に捌いていく。
それを、私は淡々と見ていた。
『何、作ってる?』
『気になるか? 小竜は味にクセはあるが、下拵えをしておけば美味い肉に変わるんでな。道中で調達した薬草と合わせて湯掻くんだ。後は酒で焼けば、臭みも消えていい感じになる』
『……そんな事、サリファはしないよ』
『アイツはガサツだからな。適当な男料理で済ませるんだ。お前も同じ飯を食ってるんだから、健康には気を付けろよ。血を飲まなきゃ、吸血鬼は人間と大差ないんだからな』
早くてあまり聞き取れなかったが、なんか、注意しているのはよく分かった。
すると、最近覚えた言葉が脳裏を走る。
正に、この事かと。
『……キルロはオカン?』
『おいお前、どこでそんな言葉覚えやがった』
『サリファが、キルロはオカンみたいな奴だ、と言ってました』
『後で一発殴っておくか……』
……そうやって二人と一緒に暮らすのは、とても楽しかった。
男だった頃、もっと両親と沢山話をしておけば良かったと後悔していたから、余計にそう感じたんだろう。
『毎度ながら、キルロの作る料理は芸が細かくていいなあ』
『食べる前に一発殴らせろ。お前、リフィアにオカンなんて言葉覚えさせただろ』
『──リフィア!? それ間違ってもキルロの前で言うなって言ったよなぁ俺!』
『……ごめんなさい、それは聞き取れてなかったかもしれない』
『うっそぉ──ぐべっ!?』
……まあ、それすら、たった二年しか許されなかったんだけど。
現実は残酷そのものだった。
世界が、全力で私を絶望させにきてるんじゃないかと思うくらいには。
いや、サリファとキルロのことに関しては、全面的に私が悪い。
吸血鬼という存在なのに、ああまでして匿ってくれて、言葉も教えてくれるとか
本当に、お人好しで……大事な家族だった。
「はぁー……」
山が崩れて発見されたという遺跡の調査を終えて、宿屋に戻った私は、そんなことを考えていた。
家族。
そんな単語が頭から離れてこない原因は、先の調査の最後に、オートムとシャリオン*1があんな事*2を言ったせいだ。
「いいなぁー……」
しかし、肝心の陽介は、エルフとベタベタしまくっていやがった。
道中の馬車で、陽介にあ~んさせてもらったりとか、私が見てる前でイチャイチャと……ムカついたから、途中で御者台をひったくって、陽介にあ~んさせてもらった。
あの時のエルフの顔は見物だったな〜。フハハ、愉悦愉悦。
そうしたら何を思ったのか、私が吸血する時みたいに陽介の首をカプカプハムハムして、味わいやがったのだ。
私がいつも吸血してるから、首の左あたりの部分は、実質性感帯の一つと言っても過言ではないんだけど、まさかそこを執拗に狙うなんて。
私が引っ剥がさなかったら、いつまでもカプカプしていたに違いない。
なんて羨まけしからん話だ全く。
陽介の首は私が開発したというのに。親友と言えど、許可なく勝手に使わないでほしい。
不幸中の幸いとして、今日は一回も陽介に吸血していなかったから、エルフは私との間接キッスを免れている。
後で……いや今から入念に陽介の首拭いておかないと、吸血できなくなる。私とて、エルフとの百合百合はごめんだ。
そうと決まれば行動あるのみ。
陽介もそろそろ風呂に入る頃合だろうし、今は建物が壊れてるから、一部はまだ混浴のままになってる。
着替えと桶を脱衣場に置いてきて、タオルを身体に巻き付け、いざ突入。
……してみたは、良いんだけど。
「あれ、いない……」
湯けむりに紛れているだけか、それともまだ来ていないのか。
陽介は一度入ると長いから、この時間に温泉から上がる事は無い。
……他の客の気配も無さそうだし、一度呼んでみよっと。
「……陽介ー、いるー?」
「俺なら居るぞ」
背後から声が聞こえた瞬間、ヌルりと、煙の中から不気味な顔が────
「ひぃっ!?」
あ、陽介じゃん、と気づいた時には、視界は斜め上に傾いていた。
ここは温泉。水気が多い場所だ。
そんな所で慌てて足を踏み出せば、起こることは一つ。
「あ……」
「リフィアっ」
ぼすん、と鈍い衝撃が伝わった。
眼前には陽介が居て、直に温もりが伝わってくる。
わざわざ庇って、下敷きになってくれたのだ。
それに気付くと、血の気が引いた。
「大丈夫!? け、怪我は……!? 頭打ってない!? いま神聖魔法かけるから!」
「いつつ……いや、怪我はしてない。それよりお前の方こそ……」
神聖魔法で癒してみると、少し背中が内出血してただけで、怪我という怪我はしていなかった。
あ、焦ったなぁ……
神聖魔法があっても、風呂場で転倒は日本人として恐怖のイメージしかない。ここが異世界で良かったよ。
「おまっ、リフィアっ! それは……っ」
「ん?」
バッと顔を背けて、陽介があたふたとし始めた。
そう言えば、ずっと陽介に馬乗りになりっぱなしだった。
「あ、ごめんね。今降りるよ」
「違う……お前、タオルが……」
「タオル?」
タオルならここだけど、と胸を触れば、もちもちつるつるの、触り慣れた感覚が返ってくる。
そして、直に肌を触られる感覚も。
…………。
「全部、見えてた……?」
体勢が体勢だから、髪ブラなんて奇跡も起こるはずもなく。
腕で隠し、覆いかぶさったままそう訊ねると、陽介は顔を横に倒した状態で目を瞑り、額に手を当てた。
「……済まない、リフィア。責任を取って、イキュラス・キュオラを」
「それはやらなくてよろしい!」
陽介の腕をぺしっと弾く。
眉を顰められたけど、記憶を消されたら、私だけが恥ずかしい思いのままじゃん。
見られ損なんて不公平だ。
「取り敢えず、タオルを着けてくれないか」
「わ……取っててくれたんだ。ありがと」
あと、ずっと馬乗りしててごめん。
私がどくと、陽介は一人でお湯を浴びに行った。こっそりついていって、自分で体を洗い流そうとする陽介に声を掛ける。
「なんか、ずっと助けてもらってて申し訳ないし、私が背中流すよ」
「そんなの気にするなよ」
「私が気にするからいーの」
「無茶苦茶だなあ」
ここで陽介に背中流しを断られないのは、偏に私の人徳ゆえにだ。
もしエルフが提案してたら、
『せ、せっかくだから、私が、その……よ、陽介の背中、流してあげても、別に構わないんだけど……?(洗いっこ♪ 洗いっこ♪)』
『え、いいよそんなの……(こいつの事だから、何かしてくるに違いない……)』
とか思われて、絶対に嫌がられただろう。陽介も見てないので、大きくガッツポーズした。気分はまさにコロンビア。
石鹸を泡立てて、肩甲骨のあたりから塗りたくっていく。
異世界で生き抜いて来たからだろう。そこそこに筋肉があって、しっかりした体だった。なんで顔だけちょっと骨ばってるのかは謎だけど。
……それに、相変わらず傷の絶えない体だ。
仕事柄こうなるのは仕方ないけど、これくらい回復の呪符で治せばいいのに。
傷にそっと指を這わせてみると、肩がビクッと跳ねた。
そう言えば、傷痕が性感帯になるって、どこかのエロ同人で見たことがあるような……って、いかんいかん。
最近油断すると、すぐそっちに思考がいってしまう。
エルフみたいになったらおしまいだよ、私。
「人に洗ってもらうと、なんだか不思議な気持ちになるな」
「ん〜?」
首の左側をゴシゴシと洗っていると、そんな事を聞いた。
「懐かしい、って言うにも違うか。なんだろうな……ガーヒーをやっていると、ふとこんな気分になる。そう、例えば、ストーリーモードでアンデッドヒーローを味方にした時の気分だ」
……『ガーディアンヒーローズ』。
ちょくちょく陽介の口から語られる、セガサターンのベルトスクロールアクション系のゲームだけども、プレイした事が無いから実態はよく分かっていない。
そもそも、ベルトスクロールアクションなんて、私の時代にはとっくに廃れてた。
個人的に、アクションゲーと言えば、『ラチ○クラ』とか『ラチ○クラ2』とか『ラチ○クラ3』が思い浮かんでくる。
インソ○ニアックさんには頭が下がります。
「アンデッドヒーローは、ストーリーモードなら無敵のキャラなんだ。しかも伝説の剣を持っているから強くて、怒らせれば、MPを全部消費して画面に映る範囲全部を攻撃する、ジェノサイドクラッシュを使えるんだ」
「なにその爆裂魔法……」
もしくはマダ○テ。
どちらにせよ、普段使いには余るロマン砲だ。
でもオーバーキルって……いいよね、凄い分かる。最強攻撃とか、効率無視でついやりたくなるもんよ。
主に私がそうだった。スーパーハイテンションになってからトドメ差したい気持ち、分かるかなぁ……分かるよね?
「あ、ごめん。話の腰折っちゃった」
「いや……アンデッドヒーローはこの通り、頼れる仲間なんだ。いざとなれば、戦闘を全部任せて回避に専念したりもできる。バルガの技も格好良いが、アンデッドヒーローは、やっぱり愛着があるんだ。周回プレイする度、お世話になってるからな」
最初に入れたキャラはあんまり外したくない、という気持ちは分からないでもない。
『ク□ノクロス』で言えば、離脱までキ○ドをずっと使い続けたり、『ゴ○ドイーター』なら第一部隊のメンバーだけ任務に連れてったり、『F○X』だったらワ○カを使い続けたりするようなものだ。
……あ、いやワ○カは普通に強いし、第一部隊はリンクバーストしてくれるア○サが居るし、キ○ドは序盤の貴重なぬすむ要員だ。ダメだ、例えが悪い。
まあ、それと同じだと考えれば、愛着が湧くのも自然だった。
「……俺は、いつもソロプレイだったからな」
「……それって、ゲーム?」
「ゲームも、現実もだな」
うぐ、と息が詰まった。
陽介が日本にいた頃の話は、大抵ゲームの事になって、日本にいた頃の話はあまり聞くことができない。
ただ、話の断片を掻き集めれば、ある程度予想はつけられた。
『セガなんてダッセーよな!』
『プ○ステの方が面白いよなー!』
『帰ってプ○ステやろうぜ!』
……そんな幻聴が聞こえてくるぐらいには。
セガがゲームハード業界の覇権を握っていたのが、ほんの一部の時代だったのは私ですら知ってる。
ス○ファミは言うまでもなく、Nintend○64やらPlayStati○nが勃興しだして、メガドラにセガサターン、ドリキャスが敗北していったのは、ニコニコでよく見たことある*3。
そんな、周りが『F○7』だの『マ○カ』だの『マ○オ64』だのやっている間に、陽介は『ガーディアンヒーローズ』とか『エイリアンソルジャー』をやっていたのだ。
……まあ、なるよね。ボッチに。
マイナーとは言わないけど、陽介の友達にやってる人は居なかっただろうなぁ。
「俺は、ずっと一人でいいと思っていた……ゲームでも、地球でも、異世界でも。一人でいても、不便は無かったからな」
「そうなんだ……」
「だが、今は違う。背中を預けられる仲間がいる有難みを、俺は忘れていた」
キリッとした真面目な感じで私を見てくると、片手で私の肩を掴みながら言った。
「リフィア。お前が俺にとってのアンデッドヒーローなのかもしれない」
「…………」
強いて言うなら、私はアンデッドヒロインじゃなかろうか。
吸血鬼だし。
……あーもー! すっごいモヤモヤしてくるなぁ!
背中を預けられる仲間だとか、そうやって言われたら絶対嬉しい言葉なのに、全然嬉しくない。
アンデッドヒーロー、許すまじ。
「そっかあー、いやー嬉しいなあー」
「ちょっ、リフィア、あまり爪を立て……」
ぶすり。
あっ、まずい、と思った頃には、吸血用に伸びた爪が、深々と背中に突き刺さっていた。
「っ────!?!?」
「よ、陽介ぇぇぇ────!!」
急いで神聖魔法して、汚れた床を洗い流し、結局各々で身体を洗う事になった。
……あの、本当、最近迷惑ばっかでごめんなさい。
○ ✕ △ □
2018年 9月29日
そろそろ9月も終わりを迎えようとしているこの頃ですが、俺は元気でやっています。
動画の再生数も順調で、今の所収入は潤ってるし、そろそろ本格的に、アバターを使ったVtuberでもやってみようかなと考えています。
機材はさておいても、アバターなんて誰に作って貰えばいいんだろう……とか、まだ準備すら危ういので、当分先になりそうです。
まぁ、こんなこと母さんにはどうでもいいかもしれませんけどね。おじさんとは元気にやってますから、あんまり心配しなくていいですよ。
近況報告はこんなところです。それじゃ、また三ヶ月後に。
「……ふぅー」
そんな風なメールを送ると、ノートパソコンを閉じた。
Vtuber。
その呼び名は、元を辿っていくと2016年に誕生したとあるYouTuberから来てるらしい。
今までは、おじさんエルフやリフィアさんを使って、リアル系Vtuberなんてイメージで動画を作ってきた訳だけど、そろそろファンの人達も、『生放送はよ』とか『他Vとのコラボまだすか』とかのコメントが多くなってきて、本格的なバーチャル化を望む声が広がりつつある。
ウチのTw○tterにも、なんか見知った名前がチラホラと出没している。に○さんじとかホ□ライブとか、企業のライバーさんにまで目を付けられてる気が……
いやいや。まだ考える時じゃない。登録者数もようやく10万を超えたばかり。もっと慎重に考えよう……
「ただいま帰りましたよ」
「ああ、おかえりリフィアさ──」
ガラガラ、と引き戸が開いたから、後ろを振り向いてみれば、そこにはゴスロリチックな女の子が。
リフィアさんによく似た、白髪赤目の十歳くらいの少女は、目をパチパチさせて、首を傾げていた。
「……どうしたのです、敬文さん。私の顔に変なものでもくっついてますか?」
「…………え、ええと。何してるの、リフィアさん」
少し前、おじさんと見た記憶の中で現れた、リフィアさんのちっちゃいバージョン。
自在に体の年齢を操れるという能力を活用して、吸血鬼として活動している姿らしい。
その少女モードになっているリフィアさんは、むっと顔を顰めると、何故か室内で日傘を開いた。
「リフィア、ではありません。私がフィリア=ドラクリア=ダキアと知っておいででしょうに」
「……いや、知ってるけどさ。眼の前でやられるのは初めてだし、リフィアさんはリフィアさんだからなあ……」
遠慮がちに答えると、リフィアさんはやれやれと短く溜息を吐いた。
「……敬文さんは、オンラインゲームとかできないタイプですね。ロールプレイ中のリア友にそんな事したら最悪ですよ」
「……なんか、ごめん」
「全くです」
でも頑なにロールプレイは続けるんだ……と思っていると、突然、お菓子入れをガサゴソと漁り出した。
何を取ったかと思えば、チュッ○チャッ○スだった。
おじさんが懐かしがって買ってきたやつだ。
それを咥えて、口の中で転がし出す。
なんだろう、このロールプレイの本気度……相応の子供っぽさがあって、なんだか無性に撫でたくなる。
フィリアさんで動画撮っても、全然いけるな。
「ところで、どうしてフィリアさんモードなんかで出かけたの?」
「ん……そんなの、映画を子ども料金で観る為に決まってるでしょう」
一瞬、俺とリフィアさんの間に沈黙が流れた。
……ええと、なんだって?
「今日、夏○友人帳の劇場版の公開日だったもので」
「それ普通に大人料金で観れば良かったでしょ……!」
4DXとか、高いので観るなら時なら……まぁ分かる。おじさんもレディースデーの割引をエルフに変身してやってたくらいだ*4。
でも、『夏○友人帳』ってアニメだし、別にバトルものとかじゃないから、映画館も普通だろうし、料金も1500円とかそこらだ。
リフィアさんがうちに来てから、かなりお金が貯まるようになったから、全然使ってもらって構わないんだけどな……
ちょっと胡乱に思っていると、リフィアさんが傘を収納魔法に乱雑に放り込んで、あわあわと俺に縋りついた。
「いや、その……た、たまには……そう! 子供気分で観ようかなって! ほら、久し振りに使ったよあれ! 座高高くするクッション!」
何を言うかと思ったら、涙目でそんな無理を通して来た。頑として保っていたお嬢様ロールは何だったのか。
「リフィアさんロール、ロール崩れてる」
「それは今はいいの! 敬文くん、私別にケチ臭くなんてないから! ね!?」
「今はいいんだそれ……」
ケチ臭いとは一ミリも思ってないよ……
なんだか急に面倒くさくなりだしたな、この人。
「そんな事思ってないって。まあ、とりあえず安く済ませたいって気持ちは分かるよ」
「だ、だよね! 敬文くんもそう思うよね!」
適当に流すと、ぐいぐいと服を引っ張って、キラッキラするくらいに目を輝かせている。
この妙なまでの押しが強さはなんなんだろう。
分からない、リフィアさんの情緒が全然分からない。
「……コホン。それならいいです。では、私はこれで」
結局、何がなんだかもわからないまま、飴を咥えたリフィアさんはおじさんの所に行ってしまった。
あぐらを掻いてゲームをやろうとしていたおじさんにのまたぐらに入って座り込んだ。
「おっ、フィリアの方か」
「ん」
おじさんは特に気にした様子もなくカメラを起動させた。
まさか、フィリアさん入れたまま撮るつもりなの……?
おじさんにあらぬ被害が及びそうで怖い。
「お〜じぷ〜ぺぽ~ん! おじさんで〜す! 今日は獣王記やりまーす!」
タイトルが出てきて、ドドンと『獣王記』と表示される。
「このゲームは、かつて神ゼウスに封印された種族、獣人族の主人公が封印を解かれ、魔神に拐われた女神アテナを助けに行くよう命じられるというストーリーで、皆大好き横スクロールアクションになってまーす。それじゃゲームスタート」
『
あ、出た。あなたの墓から立ち上がれ*5。
「この石像が封印された主人公ですね。ここにゼウスが落雷を落とし、封印が…………」
『デ──────────────!』
まさに封印が解かれようとしたその時、画面がカラフルなドットになって崩壊した。
おまけにBGMも同じ音を出し続けている。
……昔のゲーム特有の、謎のフリーズ*6だった。
「あれ、固まりましたね」
リフィアさんが物珍しそうに、縦にループする画面を眺める一方で、おじさんはそれを見るや、無言でメガドラを再起動させた。
対処が早い所に、そこはかとなく昔のゲーマーらしさを感じる。
現代人、こういうフリーズには滅多に出会わないしね……
「仕切り直して……っと。はい、改めてやっていきまーす」
それから、おじさんはフィリアを撫でつつ、楽しそうプレイしていった。
『
「お、スピリットボール。これは白い狼からドロップするもので、なんと三つ集めれば獣人に変身できるんですよ。また、初期設定だと五ステージそれぞれ変身できる獣人が決まっていて、例えばこのステージ1だと……フサフサのウェアウルフに変身できます! いやー、いつ見てもカッコいいですねー。っと、もうボス戦です」
『
「一面のボスはハガー。顔面を千切って投げてくる、ちょっと気持ち悪い奴で、どうにか避けながら攻撃を仕掛けていかないと……」
普通に攻略を進めていって、十分くらいで獣王記をクリアすると、今度はフィリアさんと二人プレイを始めたり、ウェアドラゴンで無双したりと、途中から実況プレイですらなくなっていたけど、撮れ高は良さそうだったので、投稿することにした。
そしたら……案の定、プチ炎上していた。
『ヴァンパイアちゃんの娘現る』
『失望しました。ヴァンパイアちゃんのファン辞めます』
『アッ……(脳死)』
『結婚したのか、俺以外の奴と……』
『相手はおじさんかぁ』
『ヒ○ッマンリスペクトやんけ』
『完全にパパっ子だな、撫でられてる時にメスの顔してた。俺でなきゃ見逃しちゃうね』
『ヴァンパイアちゃんが人妻……いいと思います』
『はえー、たまげたなぁ』
フィリアちゃんでコメントが埋め尽くされ、血涙を流している人が続出していた。
なんか変なの混じってるけど。
でもまあ、視聴者が踊らされている様子はとても面白かったので、やり過ぎない程度に勘違いさせてみるのもアリかな、と思う俺でした。
おじさんは愛を手に入れられるのか?
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友情こそ全て。愛など要らぬ。
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エルフ以外ありえないんだが?
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メイベルたん可愛いよメイベル
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やっぱそこはアリシアちゃんだろJK
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たかふみ、藤宮の計画再始動。
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ハーレムなんて選択肢はありません。