異世界おじさんvs異世界TS娘   作:SEGA機未プレイお兄さん

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まだこんな展開にするつもりはなかったのに、筆が進んだら自然とこうなっちまった……

どうしよう(思考放棄)


セガのゲームは宇宙一ィィィィーーーー!!!!

 

 おじさんの異世界話に一旦小休止を挟み、四人でコーヒーを啜り合っている頃。

 

「はああ……」

 

 藤宮はスマホの画面を睨みつけたと思うと、大きな溜息を吐いて背もたれに寄り掛かった。

 何かあったのだろうか。

 

「そんな落ち込んで、何かあったの?」

「いやそれがさー……友達が、2.5次元? だっけか。なんかゲームが原作のミュージカルっていうか舞台にどハマリして、その演者さんにりあこしたんだよ」

「「……りあこ?」」

 

 珍しくおじさんと反応が被った。

 知らない新語……俺ももうジェネレーションギャップとか感じる世代になったんだなぁ。

 

「あー、ガチ恋って言えば分かるか?」

「がちこ……?*1

 

 それを聞けば、俺でも完全に理解した。

 今ってそんな呼び方もあるんだ。

 

 これが時代に取り残されていく気分……というか、俺もう二十歳だもんな。あんまり成人した気してなかったけど、そりゃ仕方ないか。

 

「リアコねぇ。個人的にあんまり良いイメージ無いけど、その友達はどんな感じなのかな?」

「情緒不安定になって、LINEが引っ切り無しに飛んでくる時がありますね……今みたいに。あ、見ない方が身の為ですよ」

「そう言われると逆に気になる吸血鬼の性……」

「それ吸血鬼関係無くないですか……?」

「テヘペロ」

「……リフィアさんって、未来から来てるのにちょっと古臭いですよね〜」

「…………へ、へへっ。所詮精神年齢38歳ですよーだ……ふぐっ、えぅ……」

「あっ、ご、ごめんなさい! こ、言葉の綾っていうか、単に知識が豊富だなーと!」

 

 にしても、リアコってそんなに手が付けられないのか。

 でも、考えてみれば昔のオタクもガチ恋勢が何かとやらかした事があったし……今でもそう変わらないってことか。

 

 ところで、ここにも恋愛事のせいで情緒不安定になってる吸血姫がいる訳だ。

 

 おじさんが絡まないリフィアさんって、ただの完璧美少女なのに。

 俺は二人を応援してるけど、当事者達の被害を考えるとやっぱり恋愛には碌な事が無いように思える。

 

 持つべきものは友。友達さえ居ればいい。

 藤宮のような素晴らしい友人が居ることに、俺は改めて感謝しなくてはならないのだ。

 

「ありがとう、藤宮……本当に藤宮が居てくれて良かったよ」

「いやたかふみテメー、感謝は嬉しいけどその暇あったら沈み込んだリフィアさんを慰めてくれ! ちょっと、手が付けられねぇ!」

「私なんて年増で元男で、何の取り柄もない喪女……陽介はエルフみたいな無い乳がいいんでしょ? こんなデカいだけのもの、ここで切り落とせばいいじゃん……ふへ、ふへへっ」

 

 リフィアさんはとっくに手遅れだった。

 どこにスイッチがあるか解らない爆弾なので、こっちが何やってもいつか爆発してしまう。

 

 ……ほんと、どれもこれもおじさんが悪いんだよなあ。

 

「……あの、俺はどうすれば」

「おじさんはちょっとゲーム部屋に引っ込んでて」

「え、ちょっ────」

 

 おじさんを押し込めて、リビングに三人になった。

 

 途端に、無言になった。リフィアさんは沈み込んで、テーブルで頭を抱えたまま動かなくなっていた。

 

「《記憶忘却(イキュラス・キュオラ)》……っふー……」

「なんかサラッと記憶消してる……!?」

 

 憑き物が落ちたような顔……というか記憶ごと失くなったから、実際そんなようなものなんだろうけど、流れるような記憶消去だ。異世界でやりまくったとしか思えない手慣れ具合だ。

 

「ヨシ、落ち着いた。次はメンタルケアっと……《イキュラス──」

「ち、ちょっと待ってリフィアさん! 流石にそれ以上記憶消したらヤバいですよ!!」

「そ、そうだよ! もっと自重しないと性格とか変わっちゃうかも」

「大丈夫大丈夫、消さないってば。これはこっち──《記憶再生(イキュラス・エルラン)》」

 

 ブオン、とテーブルに浮かんだディスプレイ。よく活用しているセガサターン音声の再生魔法だった。

 

 メンタルケアと言っていたけど、一体何を流すんだろう。

 

「あ、敬文くんと藤宮ちゃんは観たことないっけ、陽介と初めて出会ったその後の話」

「その後……あれの続きですか!?」

 

 あれの続き。

 つまり、リフィアさんがおじさんにカプチューし、よろしくしたあのシーンの続きということ。

 

 そう言えば、あの後どうやって別れたのかは聞いてなかったな……

 

「へぇ〜、その時の映像がメンタルケアになるんだ」

「あー、これはその一つだね。お宝映像的な? メンタルが著しく損耗した時に観る、陽介カッコいい!惚れちゃう!場面集みたいな」

「頭の悪いカップルがやりそうな奴*2ですねそれ……」

「頭悪い言うな、それは私に効く」

 

 それじゃ始めるよ〜、と再生ボタンを押すと、森の中が映された…………

 

 

 ○ ✕ △ □

 

 

『だ、大丈夫か!?』

 

 あの人が現れた時、私はどれほどの安心感を覚えたことか。

 正直、泣きそうになったよね。

 

 見慣れた、懐かしい平たい顔。

 この異世界では見かけない、日本人の顔をした人が現れたのは、もう誰一人として信じられる人の居ない私には、救いのようだった。

 

 その人、陽介に助けてもらって、しかも本当に日本からの転移者と聞いて、私は舞い上がった。

 ゲームの話がかみ合わないのがとても残念だが、それでも良かった。

 

 同郷で、命の恩人。

 私の好感度は一瞬にしてカンストした。

 

 ……そしてそこ、チョロインとか言わないの。

 

「全然そんなの言ってないよ……」

「寧ろ好感度低い方がおかしいです……リフィアさん、この頃三年も居るんでしたっけ? よく耐えてきたなって思うくらいです」

 

 あー、今にして思えば、異世界召喚って海外留学の難易度クリティカルみたいなもんだもんね。

 海外で日本人いたら、無性に話し掛けたくなったり友達になりたがったりするようなものだと思う、多分。

 

 海外行ったことないから分かんないや……

 

『こうして日本語で話すのも、何だか久しぶりな気がするな……』

『私もだよ。女にされるわ吸血鬼にされるわ、しかも言語もさっぱりで……』

『リフィアは男だったのか』

『ああ、うん。でも、この世界じゃあ姿が変わると心まで変わってくから、三年も経てば面影も無いよ。…………だから胸触らせてとか言わないでよ?』

『何でそんな事を言うんだ? いま女性になっているのなら、触られるのは嫌だろ』

『え?』

 

 こういう性転換を暴露したら、間違いなく「おっぱい揉んでいい?」って聞かれるものだと思ってたのに、いやー、やっぱり陽介だね。こういうの全然興味無いんだよ。

 

「リフィアさんこれまで何読んできたんですか……」

「外見が女性なのにそんな事できる人の方が少ないよ……」

 

 あれ、そう?

 ちょっとネット小説の読み過ぎかもしれない。

 

『陽介って、何で異世界に?』

『ああ……ドリームキャストを買いに行く途中で轢かれてな』

『ドリキャス……え? って事は2000年代……』

 

 ドリキャスの話を聞いて、生きている時代が随分違うのが分かった。なのに、こっちでは同じ時代に転移してるんだから、そこは神の匙加減だってことかな。

 血を飲ませて貰ったときに、ざっと肉体年齢は分かったから違和感には気付いたよ。見た目からして年上だと思ったんだけど、意外だったなぁ。

 

「あれで18歳ってやべぇよな……見世物小屋生活で皺増え過ぎだろ」

「過酷だったんだよ……話し相手も精霊しかいなかったんだし」

 

 ちょっと待って? あれより前ってもっと違ったの?

 

「最初は年齢相応だったよ……」

 

 うわぁなにそれ気になる……今度見せてもらおっと。

 

『なっ……気を付けろ、魔物が来たぞ。数も多い』

『陽介、丸腰だけど……』

『俺はコイツがある──《キライドルギド・リオルラン(光剣顕現)》』

 

 陽介がおなじみの剣を出して、ゴブリンみたいな小型の鬼の群れに向かって加速した。

 

 空を舞う肉片や荒れ狂う断末魔の中で、陽介はひたすらに剣を振るった。

 

 ……もうね、これが格好いいのなんのでね。ちょっとだけ、異世界もののヒロインの気持ちが分かる気がした。

 

 でも、陽介ばかりに任せっきりなのは気が引けたし、何より足手纏いと思われるのは嫌だった。

 

『っ……! リフィア、避けろ!』

『大丈夫──《ブルート:ツェペシュ》!』

 

 飛び掛かかろうとするゴブリン達を前にしながら、人差し指を噛んで、血を地面に数滴撒き散らす。

 

 すると、地面から幾つもの真紅の槍が突き出して、ゴブリンを全て串刺しにした。

 

「おおっ、カッコいい!! 吸血鬼限定の血流操作、みたいな!」

「血流操作とは、ちょっと違うかなあ。『身技』っていう、必殺技みたいなやつ」

 

 吸血鬼ならではの技だとは思うけど……お世辞にも強いとは言えないのが難点でね。

 他にも色々種類があるから、機会があれば見せるよ。

 

『うお……お前も強いじゃないか』

『これ使うと血液が無くなるから、あくまで護身用程度に考えてくれると嬉しいかな!』

 

 地面に生やした血槍を抜き取り、襲い来るゴブリン達を蹴散らしていく。

 

 何気に初めての共闘だったけど、ちょっと楽しかったなあ。

 

『──《バライブート・グラッカ(火炎斬刃)》!』

『──《ルガミバルド・バストール(雷蛇殲滅)》』

 

 まあ、こっちが必死で属性魔法撃ってる側で、陽介は根源魔法バンバン撃って圧倒してたんだけど。

 

 この頃私が使えた根源魔法って、《イキュラス・キュオラ(記憶忘却)》と《イキュラス・エルラン(記憶再生)》、あとは《クローシェシクト・リオルラン(闇鎌顕現)》ぐらいなもんだったから、実戦に役立つものでも無かったんだよね。

 

「お蔭で、おじさんが早いうちからイキュラス・キュオラを覚えてしまう羽目に……」

「えっ……あれってリフィアさんのせいなの!?」

 

 私のせいって言わないで。

 だって辛い時にはこれしか拠り所ないんだもん。必要経費だよ、必要経費。

 

『……陽介、ちょっと強過ぎるよね』

『そうか? 強さの比較対象が今の所お前しか居なくてな』

『今比較しても十分に分かるよ……』

 

 いつか独り立ちした時の為にってサリファに鍛えて貰ったし、シャレグの祠で戦いの経験はあった。それで陽介とトントンだったから、やっぱ強いよね〜。

 

「待ってリフィアさん、シャレグの祠って……」

「え? なんか異世界人に与えられるボーナスステージみたいな奴だよ?」

 

 《知識のドルド》、《身体のシャレグ》、《神秘のジャト》。

 

 それぞれの祠で、異世界で生き抜く為に必要な知識と戦闘経験と魔法技術を身に着けられる。

 これ行ってなかったら、真面目に死んでたよ。

 

「お、おじさん……!」

「見事に強化フラグ逃してるな……」

「あれ、陽介って行ってないの?」

 

 てっきり、私が会ってない時に全部周ってたと思ったんだけど。

 二回目にふらっと訪れてた時には祠壊れてたし。

 

「寧ろおじさんが壊してますね……入りもせずに」

「うっそぉ……」

 

 気になる場所があったら取り敢えず入れ。

 これ、RPGの鉄則ね。テイ○ズとか隠しダンジョンとかしょっちゅうあったし。

 

「でも陽介はサブイベとか消化しないもんねー……なんか納得」

「ほんとゲーム感覚でしか動いてないなぁ……!?」

 

 画面内では、未だに陽介と私がゴブリンの群れをひたすらに捌きまくっている。

 

 だが、そろそろ限界が近い。

 ゴブリンを突き刺し振り払うと、力が抜けてふらついた。

 

「わわっ」

「っ……大丈夫か」

 

 地面に倒れる前に、陽介はさっと手を出して、私の腰を支えた。

 

 ここ、ここ高ポイント!

 流石は陽介、紳士対応に定評のある男です。

 

『あっ……ありがと……』

『いや、大した事はないぞ』

『……重くない?』

『寧ろ軽いくらいだ。……HPは要るか?』

 

 コレでね、優しさに飢えてた私は更にコロッといくんだよね。

 

 チョロい、我ながらチョロいけど、でも陽介格好良いんだもん!

 あんなシチュエーションで「HPは要るか?」ってイケボで言われたら死ねるでしょ?

 

「いやいや、なんだその感性……ちょっとイケボっぽくてもそれは無くね?」

「前々から思ってたけど、リフィアさんも思考の大半がゲームに飛んでると思うんだ」

 

『……い、要る』

『分かった。もっと抱き着け』

『ピャッ!? ま、待って心の準備が』

『姿勢が悪いな……これでどうだ?』

『ふぁ、ふああ……!』

 

 あー、素晴らしい。首元が非常にえっちです、ブラボー。

 

 しかも真正面から抱き着かれて、覚醒した乙女心を完全に殺しに掛かってる。しかも安全のために二重の風の防壁を張って、外界から完全に隔離してくれている。

 陽介、恐ろしい子ッ……!

 

「リフィアさん、キャラ、キャラが壊れてるよ」

「完全におじさんに気をやられてるぞこれ」

「……ご、ごめん、ちょっと大興奮してた」

 

 こればっかりは陽介が若いのがいけない。

 10代なんて肌のハリツヤも違うし、カッコ良さも一段と……いや、今の陽介がカッコ良くないとかそんな事はないんだけど! ね!

 

「いや違い全く分かりませんけど……」

「だよね……」

 

 え、そうかな……

 

 ……ま、まあ気を取り直して、実況に戻ろっか。

 

 このゴブリンの軍団、実は軍勢(レギオン)クラスで、私達がチマチマ倒しても全然駄目だったんだよね。

 

「レギオンって、確かアリシアさんのパーティーが巻き込まれたっていう……」

「うん、それと同じ。でも今回のは突発的なもので、規模はまだ小さい方なんだ」

 

 なんとか血を貰って回復したはいいが、このまま戦い続けても、ジリ貧になってしまう。

 

『これはキリがないね……また血を使い過ぎちゃう』

『どうする、まだ来るぞ』

 

 バラバラと、粗雑な矢が飛んでくる。

 陽介が風で吹き飛ばしてくれるが、次には第二陣、三陣とゴブリンの戦士部隊がやってくるだろう。囲まれたら、いくら陽介と言えど傷を負いかねない。

 

 陽介の腕を離れると、私はふっと笑った。

 

 地面に膝を付き、両手を付く。

 

「えっ……まさか、降参とか?」

「そんな訳ないでしょ敬文くん。こういう時はね……方法は一つなんだよ」

 

 しかし、目線は真っ直ぐ、森の中に。

 そしたら、もう準備は完了。

 

『そんなの決まってるよ────逃げるんだよぉぉぉ!!』

『なっ、マジかよ!!』

 

 クラウチングスタートで人外の力のまま踏み切ると、最初から最高速のダッシュを決めた。

 風すら起こす速度で、ゴブリンの群れを飛び越え、森の外まで一直線に駆け抜ける。

 

 陽介は付いてきてるのかなと後ろを振り返ると、声が一つ。

 

 ──《機動纏身(レグスウィッド・ザルドーナ)

 

『いきなり置いてくとか、酷いじゃないか』

『何それ、凄い!!』

『ああいや、これは精霊さんの力を借りてだな……』

 

 全速力で森を駆け抜け、やがて草原に抜けた。数分待って、追手が来ないのを確認すると、思いっきり地面に倒れ込む。

 

『ふひゃー……疲れたぁ。こんなに焦りながら走ったのはカルナック城脱出以来かも』

『カルナック城? お前、城に入った事あるのか?』

『そうなんだけどね、この城、火のクリスタル砕けちゃったら爆発する制限時間付きで、それまでに全部の宝箱を回収しなくちゃいけないんだけど、途中宝箱から出てくるギガースがちょっとめんどくさかったり、どこの宝箱回収したか忘れる時もあるから嫌だったんだよね……』

『そうなのか……大変だったな』

『宝箱コンプ大変だったよ……』

 

「またおじさんが変な勘違いを……これってゲームの?」

「F○5だよ。これも中々名作でさ、よくW○iの移植版でやりこんだんだ」

「どっちもよくゲームの話するのに噛み合わねぇな……!」

 

 ジャンル違いはゲーマーには割と致命的だから仕方ない。

 しかもセガとソ○ーってだけでもかなり色々作品違うし……今となっては色々な作品に触れられて楽しいけどね。

 

『……そう言えば、この森を抜けたら一度お別れだったか』

『あ、そっか……』

 

 運命的な出会いをしたとはいえ、私は元々、目的があって旅をしている身だった。

 そこに行って、二人が遺していったものを集めなくてはならない。

 

 寂しくもあったが、わざわざ付いてきてもらうメリットも陽介には無い訳だから、こればかりは仕方無かった。

 

『陽介は、これからどうするの?』

『そうだな……人里を探して、生活の基盤を整えたい。転移してきたばかりで、この世界のこともよく知らないからな』

『人里かぁ……ちょっと待ってて』

 

 肩から提げていた小さなバッグの中から、キルロに託された地図を取り出す。

 

 陽介と地図を覗き込むと、目的地のバツ印から少し離れた所に、『チェナ』と地名があった。

 

 周囲で人里という人里は、ここしか無さそうだ。

 

『ここから一番近いのだと、あの方向……北西に行った先にあるチェナの街かな』

『分かった。まずはそこに行ってみよう』

『ち、ちょっと待って!』

 

 早速歩きだした陽介を一旦呼び止める……って、あれ。

 

 ここで解散してんじゃなかったんだっけか。

 

 だが、映像の私は地図を広げて、山のシルエットを指差した。

 

『あと、このドルドって山あるの分かる? チェナからさらに西にあるんだけど』

『うん? こいつか?』

『これだね。勾配がきつくて道程は厳しいけど、この遺跡でこの世界の最低限の知識は貰えるから、かなり楽になると思う。一回は訪れてみてね』

『分かった、覚えておこう』

 

 あっ……そうそう、そうだよ!

 私こんな事言ってたじゃん。いつもはここまで映像流さないからすっかり忘れてた。

 

 こんなに何回もチャンスがあったのに、漏れなく逃していくとは……さては陽介、縛りプレイ大好きだな?

 

「現実に縛りプレイとか、それどんなクソゲー?」

「あ、あはは……陽介って固有名詞覚えるの苦手だからねー。最初から強制縛りプレイだよ」

「冗談でも笑えないですよ、それ……」

 

 自業自得というか、なんというか……

 

 後になって全部の祠を壊したって聞いた時は、からっからの笑いしか出なかったよ。強化イベントだった事を伝えてもあんまり落ち込んで無かったのを見るに、陽介は縛りプレイヤーなのかもしれない。

 

 そんな陽介は苦手だと言っていたけど、突然の異世界転移の為にも、RPGゲーはやっておくに越したことはないと思うんだ。

 樽と壺は壊すもの、タンスとクローゼットは開けるもの、ダンジョンや遺跡は中を荒らすもの。レベルは最初の村でカンストさせること。これ常識ね?

 

『うん。……それじゃあ、またね』

『ああ。また会おうな、リフィア』

 

 こうして、私は密かに恋心を抱き、惜しみつつも別々の方向へ進み始めたのでした。

 おしまい、っと。

 

「どう? 好きになった経緯はこんな感じ。それから数ヶ月会わない間に熟成されてって、この通り、初恋拗らせちゃった」

 

 映像を観おえて、二人は一息とばかりにコーヒーを啜った。

 

「……やっぱり、おじさんは凄いよ。リフィアさんの話だけ聞いてたら、ただの格好良いヒーローみたいじゃん」

「やだなぁ、私にとってはヒーローだよ。間違いなくね」

 

 陽介には、いつも救われた。

 何回も、何回も……ピンチになったら、どこからかやってきて、私を助けてくれるのだ。物語のヒロインだってこうはいかない。

 

 そりゃ、好きになっても仕方ないと思う。

 エルフだってそんな感じで堕とされたっぽいし。傷心中の女の子に対する特効でもあるんじゃないかな。

 

「私も、リフィアさんがおじさんを好きになったの、凄い納得しちゃいます。一人になっちゃったリフィアさんにとって、おじさんは一番頼れる優しい男の人なんだって」

「ふ、藤宮ちゃん……!!」

 

 そうだよ、その通り!

 最大の理解者で、話も合って、同郷で、強くて優しい!

 

 これ以上の理由がいると思う!? いや、絶対に無い!! 世の中やっぱり顔だなんだとか言ってるけど、中身で脳みそ焼かれることだって普通にあり得るから! 人間なんてクソチョロだよ!

 

「リフィアさんも、初対面からアレってかなりチョロいですよね……」

「ふ、普段からそこまではチョロくないんだよ……陽介が例外だったんだよ……」

 

 もし、この陽介との出会いを感じ悪い人が聞いたとしたら、日本人の転移者なら誰でも良かったんじゃないか、とか口さがない事を言われるかも知れない。

 

 でも、私を助けてくれたのは陽介で、他の誰でもなかった。

 

 それが偶然であっても、その偶然に私は感謝したい。

 陽介という素晴らしい人に出会えた事は、偶然による巡り合わせだからだ。

 

 そして陽介が好きなのだと、そう思っている私が幸せなら、もうそれでいいじゃないか。陽介ではない誰かと出会ったら、みたいなIFなんて考えるだけで無駄だ。

 

 独り善がりだとしても私は、陽介が好きな私がいるこの現実が大好きだ。

 

 そう思って生きる事は、おかしいのかな……

 

「そんな事、全然ないって。リフィアさんがおじさんを好きになってくれて、本当に嬉しいよ。おじさんって、一緒にゲームできる仲間とか居なさそうだったし、リフィアさんとゲームしてる時が一番楽しそうで、生き生きしててさ……」

 

 私に改まった様子で体を向けると、四十五度の座礼をしながら声を震わせた。

 

「だから……おじさんを、どうか幸せにしてあげて下さい……!」

「おいたかふみ? それ完全に父親の台詞なんだが?」

「陽介は私が幸せにします……!」

「リフィアさんまで乗らないで下さいって……」

 

 陽介を幸せにしたいという気持ちは本当だ。それは、冗談でも何でもない。

 

 だが、幸せにすると言うのなら、私とのお付き合いや結婚が、本当に陽介の幸せになるかを考えなくてはならなかった。

 こればかりは、本人に聞いてみるしかない。

 

 ……怖くて、絶対に聞けないけど。

 

「リフィアさんには、頑張って欲しいです。絶対に報われて欲しい。全く、おじさんもこんな美人な女の子いつまで待たせるんだよって話ですよ。ノリで結婚しても、二人なら楽しくゲームして暮らす未来しかなさそうですし、早く告白しちゃいましょうよ」

「うっ……」

 

 そ、それは、ちょっと待ってほしいというか、ね?

 

 私にも、心の準備という奴が……って、これさっき画面の向こうでも言ってた気が。

 

「よし、たかふみ開けろ」

「イエス、マム」

「ひぇっ……!?」

 

 襖の向こうへと体を閉じ込められ、バタン、と閉められる。

 

 しかも、襖はびくともしない。何らかの魔法が掛けられて、私の力でも開けるのは難しいかもしれない。

 

 敬文くん、いつの間にこんな精霊とコンタクトを取ってたの……?

 本当に世界を掌握しそうで怖くなってきた。

 

「リフィアもゲームしに来たのか。今ソニックアドベンチャー2をやってるとこだが、どうする? 2pでやってみるか?」

 

 ……陽介。

 

 私の好きな人。

 

 目の前のゲームを真剣に見つめ、指を動かしている。

 どこまでいっても、陽介はゲーマーなのだ。

 

 その視線と注目を、一瞬でも私に向けてくれたらと、思わないでもない。

 

 でも、それは異世界で17年掛けてもできなかった。

 これからも、ゲームを通してしか私を見てくれないんだろう。

 

「……マルチあるの?」

「あるぞ。対戦形式だがな」

「うわ、絶対陽介が勝つでしょ、それ」

「俺が教えるぞ。……だからといって、手を抜くつもりはないが」

 

 それでも、陽介とゲームをするのは楽しくて、それでいいかなって思う自分もいる。

 陽介の幸せを第一に考えるなら、それは陽介が楽しくゲームができることだ。私は、陽介の相手として存在していれば、それでいいのだから。

 

「そう言えば、最近のお前はなんだか浮かない表情をしてる事が多いな」

「……そう?」

「ああ。まるでソニックに出会う前のテイルスみたいに、自分に自信を無くしている様に見えた。自分では何もできないと、今の状況を甘んじて受け入れている……そんな顔だ」

 

 ……大当たりじゃん。

 

 ズルいなぁ、ほんと。

 

 陽介は私の気持ちなんて、全然分かってくれないくせに。

 私の不満、全部言い当てられちゃったよ。

 

 こういう人誑しというか女誑しというか……気遣いに関して、陽介の右に出る人はそうはいない。

 

 本当に、この人はズルい。

 

「私には……無理だよ」

「無理じゃない。最初から無理だと決めつけたら、その時点で負けだ」

 

 むぐ……安○先生みたいな事を言いおって。

 

 でも、真っ当な意見で言い返せずにいると、嶋嵜先生はさながら監督の様にアドバイスを飛ばしてきた。

 

「リフィアは、もっと欲張っても良いと思うんだ」

「欲張る……って?」

 

 言葉の意味を測りかねていると、陽介は続ける。

 

「お前は他人の事ばかり考えて、自分を蔑ろにしがちだからな。ゲーム機も、俺は欲しかったものがかなり揃ってるが、リフィアのはP○3とか4くらいだろ。他にも、欲しかったソフトとかゲーム機もあるはずだ。自分には、できるだけ正直になった方が良い。ネガティブに考えるのも、何かを追い求める事に貪欲になれていない証拠だ」

 

 凄くもっともで、筋が通っている。

 

 確かに、私は陽介に告白する事に、本気になれていないのかもしれない。

 だってそれは、ともすれば私がこの家から出ていくかも知れないくらい、大事だったから……

 

「……まあ、そういうのとは関係無しに、リフィアが幸せそうな顔をしていた方が、俺も嬉しいってのもあるが」

「っ……!」

 

 こ、この……っ!

 真面目な話なのに顔がニヤけるでしょうが……!

 

 顔の筋肉を強張らせて、軽く咳払いする。

 

 ……私の一番の悩みは、まだ何も解決していない。

 

「……でも、正直になって欲張って、失敗しちゃったら? それが、もう取り返しのつかない事だったらどうすればいいの?」

 

 正直になる事への恐れ。

 全てを失う事への恐れが、告白という選択肢を奪い去った。

 

「それでも、お前はそうしたいんじゃないか?」

「……そうしたいよ、そうしたいけど」

「なら、自分の心に従うんだ。たとえ取り返しがつかなくても、そう思ったのならそうしてみるのが良いと、俺は思う」

 

 即断即決が基本な、陽介らしい考えだった。

 

 思えば、陽介だって、取り返しの付かないような事を何回も繰り返してきた。

 

 封印都市ルバルドラムの結界は直せたみたいだからまだしも、転移者の祠を全部破壊したり、吸血鬼の亡都を半壊させたり、遺跡破壊の回数はもう数えられないくらいだった。

 

 まぁ、陽介はあんまり遺跡の価値は分かってなさそうだけど……直ぐに行動を起こせるというのは、凄い事だと私も思う。

 

「『もし今宇宙人が攻めてきたら、君の役はひたすら逃げ惑う一般民衆か? それとも……!?』……という有名なキャッチフレーズがあるんだ。俺達は、宇宙人といざ遭遇したら逃げ惑う民衆になるのが普通だが、『エイリアンストーム』では、俺達がエイリアンバスターとして宇宙人と戦うんだ。だが、エイリアンバスターだって命懸けだ。民衆のように逃げた方が、生き残れるかもしれない。……でもな、エイリアンバスターは、なりたいからなるんだ。負けたら悔しいだろうが、やりたい事をして悔しがったほうが、やらずに悔しがるよりいい」

 

 ……喩え方はとても下手くそだけど、聞き覚えがあった。

 

 そんな励まし方を、私は何度も聞いたことがある。

 

 思い出したように、ぽつりと呟く。

 

「「やりたいことを貫く力が強さ」」

 

 顔を上げると、陽介が小さく頷いた。

 

「何を選んでも後悔するなら、自分に素直になった方がいい。俺はそう思ったから、学校での交流を捨てて、SEGAゲーマーとしてゲームを楽しみ切ろうとしたんだ。現状を維持したって、不満は燻り続けるだけだしな……」

 

 このまま過ごしても、陽介に想いを伝えられずに生きるのは辛い。

 もし告白に失敗して振られても、辛い。

 

 程度の差はあれ、どちらにしたって辛いのだ。

 

 それなら、一度は口に出して、伝えたいと思う。

 

 伝えられるなら本望……って訳じゃないけど、この想いは死ぬまで抱え続ける事になるんだから、どうせなら、伝えたい。

 

 ……ああ。

 

 こんなにも、好きという気持ちで溢れたのは、初めてかもしれない。

 

「……どうだ。成し遂げたいことへの踏ん切りはついたか?」

「……励まし方、世界一だよ」

「そりゃ畏れ多いな。セガのゲームと同列なんて*3

 

 でも、伝える前に、かな〜り重要な事を一つ確認しなくてはならない。

 

 場合によっては、告白できなくなる可能性大の、私の根本に関わることだ。

 

「私ね、ある人に想いを伝えたいんだ」

「お前のやりたい事、って奴か」

「そうだよ。でも、その人は男の人で……私が、元男だって知ってるんだ」

 

 最初に、そう打ち明けた。

 それでも、陽介は優しくしてくれて、友達として居続けさせてくれた。

 

「気持ち悪いって、思われないかな……元々男だったのに、その、男の人を好きになっちゃったこと」

 

 聞いてしまった。

 もう、後には引けない。

 

 ……陽介は、私が顔を俯ける間もなく言った。

 

「気持ち悪くなんてない。女性になって、価値観や感性が変わってもおかしくはないと思うが」

 

 陽介は、滅多な事では嘘を言わない。方便は使い分けるが、こういう事には、いつも本音で話してくれる。

 

 その正直さが、私に勇気を与えてくれた。

 

「ほ、本当に? 陽介から見て、私は立派な女性だと思う……?」

「出会った頃からな。お前の美しさと凛々しさは、七瀬楓にも負けないさ」

 

 私もよく知る、エリソルの七瀬楓……青春を賭けただけはあって、好きな女性キャラで断トツの一位だという。

 陽介の口から出る言葉としては、最高評価そのものだった。

 

 これなら、振られたって悔いは無い。

 

 陽介が、私を一人前の女性として認めてくれたのなら。

 

 もう、何も遠慮は無かった。

 

 

「好きです」

 

「……へ?」

 

 

 瞳が潤みだす。

 嗚咽で声が出なくなってしまう前に、全部言い切ってしまおう。

 

 

「嶋嵜陽介さん……私は貴方が大好きです。血を吸わせてもらって、助けてくれたあの日から、ずっと大好きです」

 

「私、リフィア・カルネイアは、嶋嵜陽介さんを……心から愛しています」

 

 

 ゲーム画面も点きっぱなしで、風情なんて微塵もない、家の中での告白になってしまったけど、いっつも部屋に籠もってる私達にはこれくらいで良いかもしれない。

 

 涙を拭って、陽介の驚き顔を眺める。

 

 

「宜しければ、私とお付き合いを、して頂けませんか」

 

 

 言った。ついに、私は言えた。

 

 十七年も恋い焦がれながら、ついぞ言えずに終わると思っていたというのに。

 

 振られても、ここに居させてもらえるのだろうか。

 気まずくなってしまうのは、分かっているから。

 

「俺は…………」

 

 悩む陽介が、口を開こうとして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────その告白、待ったをかけさせてもらうわ」

 

 

 引き戸が、大きな音を立てて開かれる。

 

 

 私を覗く翡翠の瞳には、紛れもない気品が宿っていた。

 

 

 

 


おまけ

 

 

「俺のチャンネルと『CHUNITHM(チュウニズム)』のコラボ……? なあリフィア、『チュウニズム』ってなんだ?」

 

 2023年8月31日。

 私は陽介を信じられないものを見る目で見た。

 

 彼は生粋のセガゲーマーだ。ありとあらゆるセガのアーケードをやり、メガドラミニなどを含めた全ての機器を買い揃えている。

 

 そんな陽介が、まさか、知らないと?

 

「セガの、アーケードゲームだけど」

「────うっそだろおい!?」

 

 なんで逆に知らないの!?

 

「ま、『maimai』も『オンゲキ』も……!?」

「知らない……」

 

 この五年で、陽介は一体何をやってきたのだろうか。

 

 はっきり言って、陽介には幻滅だ。

 ゲームセンター事業部門がなくなり、アーケードゲームも数を減らす中で残っているアーケードの稼ぎ頭も知らないで、セガゲーマーを語るなど烏滸がましいのではないか。

 

 呆れた奴だ、生かしておけぬ。

 

 陽介を引き摺り出して、私も外着にちゃちゃっと着替える。

 

「お、おい、どこ行くんだ?」

「どこって……決まってるでしょ。ゲーセンだよ、ゲーセン」

 

 陽介の手を取って、ベランダから身を乗り出す。

 電車で行ってたら、博多まではいちいち時間がかかって仕方ない。

 

 今回は、ショートカットさせてもらおう。

 

「《ワーグレント・スラドセルド(風の精霊よ、我が身を空に飛ばせ)》」

「なっ、《ワーグレント・スラドセルド(風の精霊よ)》!」

 

 空で飛んで一分。

 一瞬にして博多へと到着すると、人の居ない公衆トイレに入って透明化を解き、目的地を目指した。

 

 まあ、博多まで着いたらそこまでの距離じゃないんだけど。

 

「博多バスターミナル……ここか」

「この七階にnamc○があって、そこでチュウニズムができるんだよ」

「……ん? 博多には『SEGA』もあるだろ?」

 

 よくご存知で。

 確かに、博多店はあるにはあるんだけども。

 

「そっちはあんまり音ゲーが無くてさ……あと『GiG○』だから、間違えないように」

 

 おじさんの顔がスン、と真顔になった。

 毎回こんな反応するけど、変えなくちゃならないことなのだ。

 

 あの青い鳥(ツイ○ター)白黒十字(エ○クス)になったように、変革を受け容れられないと時代に取り残されてしまう。

 

「なぜSEGAのロゴを消したんだ……!」

「GiG○は元々SEGA傘下だったんだから許してあげよう?」

 

 昔の俺だった時も、かなり戸惑ったけどね。

 新年になってアキバに行ったらSEGAの文字が消えてて、物凄い寂寥感を感じたのはよく覚えてる。

 

「行こう、陽介。この先でセガが待ってる」

「ああ……行こうか」

 

 エレベーターを上がった先、そこに広がる広大なゲームスペース。

 

 福岡で数少ない、音ゲー筐体の置いてあるゲーセンだ。

 各地から人が集まっており、そこそこの人はいつもいる。

 

「チュウニズム……この金ピカなのか」

「試しにやってみよっか」

 

 陽介に、さっきそこで買ってきたAimeのカードを渡して、早速プレイさせてみる。

 

 ……といっても、チュートリアルはちゃんとしているので、陽介に教えるような事はそんなにない。

 

 最初は難易度もベーシックからやるだろうしね。

 私は私でやらせてもらおう。

 

 ……マップよし。チケットよし。イヤホンよし。速度よし。ジャッジメントよし。

 

 勿論、最初の一曲は我等がオープニング曲、『story』のMASTERを選択。

 

 この曲の難易度は13+。

 思ったより高かったけど、これくらいならいけるはず。

 

 さて。

 このゲームの面倒なところと言えば、EXPERTやMASTERで出てくるエアーとかいうに他ならない。

 

 降ってくるノーツを叩いた後、ある一定のライン上まで腕を上げなくてはならないという、初心者が高難度で待ち受ける難関だ。

 

 世の中には、これをヘッドバンキングしながら取る狂人もいるらしい……そこまでいったらWORLD'S ENDの話だけどね。

 

「さーて……頑張りますか」 

 

 

 

 

 

ALL JUSTICE(オールジャスティス!!)

 

 しめしめ、やってやったぜ。

 

 13+にしては妙に面倒くさい気もしたけど、無事にAJが取れて良かった。リズム感がよくないから、初回で取れないと沼ってフルコンボしか取れなくなるんだよね。

 

 次は……『セガサターン起動音[H.][Remix]』とかいうコレ。

 

 未クリアなので追加されてからやった事ないんだろうけど、ぶっちゃけ意味不明なんだよね。

 

 ウィーンって鳴るあの起動音、多分十秒もないと思う。

 maimaiのタ○モトピアノの如く、CMを無理矢理繋げて一分の曲にするとかなら許せるけども、セガサターン起動音はどうあがいても段々上がっていくウィーンしかない。

 

 それで13+って何……? どういう事……?

 

 嫌な予感を感じながら、プレイしてみる。

 

 やってみると、どうやらセガサターンの起動音やSEを使ったアレンジみたいなもので、ちゃんとした曲になっている。

 譜面も、最初は何ともない。というか、スコアが半ばに差し掛かっても12くらいの難易度だった。

 

 ……嫌な予感が、する。

 

 そしてその予感は的中した。

 

 

FULL COMBO(フルコンボ!!)

 

 

 ATTACKが、3。

 

 予感の通り、最後がクソゲーだった。

 擦りに擦るし、間に挟まるエアーのせいで片手で上手いことやらなくちゃならないのだ。

 

 あと、なんか一番最後に出てくる謎エアー。

 片手で押さえるの忘れて、咄嗟に頭で叩いてしまった。

 

 初見殺しにも程があるでしょ……?

 

「こ、こなくそ……!!」

 

 こうなったらヤケだ。

 百円は十分。まだ二曲目が終わったばかりだが、平日なのもあって後ろに人は並んでいない。

 

 ……片付けてやる。

 

 

『CLEAR』

 

 MISS、5。

 

 

『CLEAR』

 

 ATTACK、6。MISS、4。

 

 

『FULL COMBO』

 

 ATTACK、4。

 

「ま、マジか……」

 

 案の定、沼った。

 

 世の中には、○落ちAJとかを競争するゴリラが跋扈しているが、そもそもAJを取るのは普通に難しい。

 

 陽介も楽しげにやってるっぽいけど、流石にあと一回で一旦切り上げないと……

 

「ふぅー……」

 

 輸血パックで栄養補給してから、ノーツスピードを更に上げる。

 吸血鬼の身体能力、フルで活用させてもらおう。

 

「よし、行こう」

 

 最後の階段、どうにか両手で分けてみよう。

 あとは運を天に任せて擦る……!

 

 

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

 

ALL JUSTICE(オールジャスティス!!)

 

 ペンギン声と共に、無言でガッツポーズをした。

 

 10落ちAJなので、これなら中々の精度じゃないかな?

 でも世の中には人の身でこういうのの理論値を取るので、やっぱ人間っておかしいと思う。身体の構造どうなってんの?

 

「陽介、そっちはどう……って、まだやってるか」

「いや、この曲がラストだぞ」

 

 プレイしていたのは、『檄!帝国華撃団』。

 言わずとしれた『サクラ大戦』の名曲だった。

 

 まだBASICをプレイしていたようで、陽介は軽々と理論値を取って鳥プラだった。

 

 陽介は意外にも、リズム感覚はある。

 かなり前に『リズム○国』をやらせた事もあったけどすぐ慣れたし、『初音ミク project diva』シリーズもいくつかやらせてみたけど、星9あってもEXCELLENTが取れるようになった。化け物かな?

 

 リズム感の無い私よりよっぽど上手くなるに違いない。

 

「おっ、色々称号が手に入ったぞ。どれどれ……おっ、こいつは良いな! 『セガのゲームは宇宙一ィィィィーーーー!!!!』とか、俺向けに作られたようなもんじゃないか! SEGA様ありがとう……!」

「えっ」

 

 それ、さっき私が取ったばかりのプラチナ称号じゃ……

 

 後で調べてわかったけど、どうも『story』や『セガサターン起動音[H.][Remix]』といったセガの曲全てをAJすると取れるらしく、他の『檄!帝国華撃団』『In The Blue Sky '01』『Dreams Dreams:Kids Ver.』はとっくにMASTERをAJしてて、新曲二つをやって取ったのが私。

 

 称号の内容に大喜びしてたけど、まさかBASICでも取れるとは思わなかった。

 いや、うん……MASTERをAJできたからいいんだけどね。うん。

 

「早速称号を付け替えてみたが、いいもんだな……」

 

 ちなみに、チラッと陽介が使ってたキャラを見ていたが、手に入れたばかりのメイベルを使っていたようだった。

 

 マップ数的に、最初からメイベルを選択してないと取れない。

 私は速攻で陽介を取ったというのに。

 

 陽介と知り合って22年。同棲5年。付き合いも長いんだから、もう少し私を大事にしてくれても良いと思うな。ぷんぷんだお。

 

「メイベルにしたんだね……」

「ん? そうだぞ。キャラ選択画面みたいなので、使うなら誰がいいかなとちょっと考えてな。メイベルにしてみた。ああ見えて攻守兼ね備えてるし、結構万能型なんだ」

 

 メイベルを脳内で全力でボコボコにしていたら、そんな理由が聞こえてきて、勝ち誇るメイベルの顔が幻影のように消え去った。

 

 これ、完全にゲーム思考で選んでるじゃん。

 

「そ、そうかな……私とかどう?」

「リフィアはインファイターだしなぁ。突っ込む分回復も早いが、嵌め技には滅法弱いだろ? HPゲージも少ないから、多分一発K.O.だ。それに遠距離の攻撃手段にも乏しいし、安地からチクチクできないのがちょっと」

 

 その答えに、安心していいのやら、頭が痛いのやら……でも、誰が一番好きかとか、そういうので選ばれなくてホッとしたよ。

 

 脳内でボコボコにしたメイベルには、後でラーメンでも奢ってあげようっと……

 

 

 

 


 

 

 ……そういう訳で、現在も『CHUNITH SUN PLUS』にてイベント開催中の異世界おじさんコラボは、9月27日まで!

 

 リフィアさんやおじさんは熱心にゲーセンに通ってるっぽいけど、僕と藤宮はからっきしなので、折角のコラボですが、見送ることにしました。

 

 でも、選べるキャラクターにはエルフさんとメイベルさん、アリシアさんの三人に加え、僕や藤宮、そしておじさんも手に入る太っ腹なイベントです。

 

 ……しかも、貴重なプラチナ称号『セガのゲームは宇宙一ィィィィーーーー!!!!』が、一番難易度の簡単なBASICをALL JUSTICEでクリアするだけで貰えます。

 

 この機会に、アーケードを触ったことのない人も、是非是非プレイをオススメしたいと思います。

 ご参加、お待ちしております!

 

 

*1
TIPS

ガチ恋は2000年代、リアコは2015年頃に生まれたとされる。(諸説あり)

*2
※個人の感想です。

*3
TIPS

かつてサタマガ、ドラマガに掲載されていた、『セガのゲームはせかいいちぃぃぃ!』というセガゲームハード擬人化漫画があるとか。




次回で完結……しないんだよなぁ()

まだアリシアとの出会いも書いてないし、メイベルと仲良くなった経緯も、たかふみと藤宮の進展もなく、またヒロイン女子会開催予定につき……
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