異世界おじさんvs異世界TS娘   作:SEGA機未プレイお兄さん

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前回までのあらすじ

おじさんハーレム、日本集結の巻


彼には72通りの名前があるから、なんて呼べばいいのか……

 

 

「そういや、お前らが日本語を話せるのっておかしいよな?」

 

 陽介が食事の場で、思い出したようにそんな事を言った。

 

 あー……そう言えば、日本語覚えさせたのって、陽介が帰った後の話だったっけか。

 

「日本語は学習させられたわ……リフィアに」

「嫌って言っても、リフィアに無理矢理……うう、完全にトラウマだよぉ。鬼、悪魔、リフィアだよぉ」

「鬼と吸血鬼の違いってなんだ……!?」

 

 まず私が悪魔と同列な事に突っ込んで欲しいな、敬文くん。

 確かに、強引だったのは認めるけど、あれが最善策だったんだよ……

 

「でも、本当に怖かったんですよ! メイベルが悲鳴を上げて昏倒して、次はお前らだとばかりに、リフィアの手が迫ってきて……!」

「ホラーだな!?」

「リフィア……お前、えげつないことを……」

「ええ……それで私も丸一日ぐらい眠らされたもの。気づいた時には、日本語をマスターしていたわ」

 

 陽介の視線が痛い。

 スパルタ教育でもさせられたと勘違いしているようだが、実情はもっと単純そのもの。

 

「一体どんな猛勉強させたんだ、リフィア……」

「違う違う。日本語の知識を焼き付けただけだよ」

 

 ぽかん? と固まる三人。

 

 いや、陽介は察せるでしょうが。

 

「ええっと確か──〝イキュラス・エルラン〟」

「あっ、もしかして……!!」

 

 おっと、敬文くんは早速気付いてしまったようだ。

 

 画面に目を向けると、そこでは腕を組んだ女性三人が、お通夜ムードで机を囲んでいた。

 

『……どうします? これから』

『決まってるじゃない! 陽介を追い掛けて、ニホンバハマルに……!』

『それができたら苦労しないよ。あーあ……虚しい初恋だったなぁ』

 

「……初恋?」

「ンミッ!? なっ、ななんでも、ナイヨっ!?」

「そうなのか」

「そうなんだよ!」

 

 あまりにも何でもありそうな慌て具合だというのに、陽介はコレを華麗にスルー。

 メイベルは赤くなった顔を手で覆った。

 

「う、うぅ……なんでカットしてくれなかったの……」

「えっと……あー、なるほど? 記憶の精霊さんの趣味なんですか」

「趣味ひどくない……!?」

 

 正確には、人間が醜くワチャワチャする様子が見たいだけなようだが。

 安全プライバシーで定評のある精霊さんも、己の欲望には勝てないと言うことなのか。

 

『どもー……ってあれ、皆どうしたの? そんな暗い表情して』

『リフィア……私達、これからどうすればいいんですか?』

『…………えっ、何事?』

 

 画面の中では、私は後から三人と合流したため、陽介がエルフ達を置いてさっさと日本に帰ってしまった事も知らなかった。

 今にも崖から飛び降りそうな三人に囲まれたお通夜ムードの中で、私は話を聞き、論点を整理した。

 

『オーク顔みたいな芸当は、どんな魔導具を使ったって無理。もう、ニホンバハマルに行く方法がないのよ……』

『いやあるよ?』

『あるんですか!?』

 

 でなければ、私は陽介に相談して、一緒に連れてってもらったことだろう。だって日本に帰りたかったし。

 エルフが一転して生気を取り戻し、真剣な様相で問いかけてくる。

 

『それ、本気で言ってるのかしら』

『勿論。私の神器、〝喰神剣〟は、万物を喰らいつくす。これには、あらゆる化け物の生き血を吸わせて、力を蓄えてきた。だから間隙の精霊に働きかけながらこれを使えば、空間ごと喰い破って、向こう側に渡るのも難しくない。というか今から行ける』

 

 エルフがガタッ、と席を立ち、メイベルとアリシアが唾を飲み込んだ様子が映し出される。

 実際には、猛獣三体に囲まれて威圧される恐怖映像なのだが、それは心の中に仕舞い込んで。

 

『だから、私が持っているニホンバハマルの言語知識を、三人に焼き付けようと思う。日本で最低限の暮らしができるようにね』

『……どうして、そこまでしてくれるの? 私なんて……エルフもアリシアも、邪魔なだけじゃないの?』

『心外だなあ。私だって、そんな鬼畜外道なつもりはないよ。それにね……』

 

 待ってましたとばかりのキメ顔で、私は言い放った。

 

『誰かを助けるのに、理由は要らないでしょ?』

 

 そこで、一旦映像を止められた。

 

 …………。

 

「へー、今のってF○9に出てくる名言なんだね」

「敬文くん、もしや人の心が無い……!?」

 

 さっすが敬文くん、私の事をよく理解していらっしゃる。

 いや最悪だよ。なぜバラしたし。

 

 これもう黒歴史でしょ。恥ずかしいなんてもんじゃない。

 

 ……いや、だってさ、人生で一度くらい言ってみたいじゃん?

 

 恋敵にすら手を差し伸べられる主人公に、なってみたいじゃん……!

 

「おっ、いいなこれ。俺も、こんな事を言える機会があれば良かったんだが」

「……ニホン人は、随分とそういう格言が好きなのね?」

「ゲームには素晴らしい名言が沢山あるぞ。まさに人生が詰まってると言っても過言じゃない」

「いや過言だよ、おじさん」

 

 そうこうしている間に、私はしれっと映像を進める。

 いつまでも自分のイキリ顔晒すとか、恥ずかしい以外の何物でも無い。

 

 次の場面では、私がメイベルに日本語の記憶を植え付けてさせている所だった。

 

『イキュラス・ガルラ』

『うわああああ────っ!!!!』

 

 記憶魔法はかなりリスキーな代物であるので、記憶を操作をすると、まあこんな風に大体失神してしまう。

 ただ、記憶を忘れさせる『記憶忘却(イキュラス・キュオラ)』よりも、記憶を書き込む『記憶生成(イキュラス・ガルラ)』の方がどうしても負荷が大きくなってしまうけども。

 

「いきなり恐怖映像なんだが!? リフィアさんが悪人面でメイベルさんの顔鷲掴みしてるとか……!」

「あ、ごめん藤宮ちゃん。メイベルったら大げさでさぁ」

「全然大げさじゃないもん!! 頭おかしくなるかと思ったもん!」

 

 テヘペロ、と謝っていると、メイベルがいきり立った。

 それに同意するように、二人の顔から生気が抜け落ちる。

 

 だ、だって、この方が早いんだもん。

 

『じゃ、次は二人まとめてやろっか?』

『『ひっ……いやあああああ!!』』

 

 後はエルフとアリシアもサクッと記憶を弄くって、はいおしまい。

 これほど短期間かつ効率的な日本語教育はあるまい。私が正しいはず。何も悪くない。

 

「あれは……痛いとか、そういう次元じゃないと思うんです」

「言葉にするとしたら、脳に直接雷撃を流される感じね。陽介は割と丁寧に魔法使うんだけれど、リフィアって結構ガサツだから、調整も雑な所が多くて」

「リフィアさんやっぱ怖ぇ……」

 

 陽介レベルを求められる方が酷ってもんだよ。

 陽介のは記憶の精霊によるサポートが強力だから、アフターケアもバッチリなのだ。本人に自覚は無いが、『万能話手(ワイルド・トーカー)』はマジモンのチートだと思う。記憶魔法は失伝して久しいから、そこら辺の感覚を分かってくれる人が居ないんだよね。

 

 数時間後、皆が気絶から目を覚ました。

 

『リフィア……できれば、もう二度とやらないでちょうだい』

『次やられたら、ただじゃ済まさないよ……』

『感謝はしてます、してますが……その、はい』

 

 なんという言い草だろう。私だって頑張ったのに。

 

 げっそりしている三人に向かって「日本語」で話す。

 

『じゃあ一応テストをするよ。──そんな装備で大丈夫か?』

『あーっと……大丈夫だ、問題ない』

『──神は言っている』

『こ、ここで死ぬ運命ではないと……?』

『……さっきからこれは何なの? バカみたいな記憶が頭に浮かぶんだけど』

 

「いやどんな確認の仕方してんの!?」

 

 日本語の知識の参照元は私であるので、純粋な日本語の知識のみに絞って焼き付けることには限度がある。

 特にこのエル○ャダイが流行し始めた時が、小学生だった自分のネットにのめり込んだ頃なのだ。付随した記憶として残っていた可能性は高いと睨んでいたのだ。

 

『さっきから頭の中に謎の金髪の男性が思い浮かんでくるんですが、この人は一体……?』

『彼には72通りの名前があるから、なんて呼べばいいのか……』

『その気色の悪い声をやめなさい』

『ごめん』

 

 しかし、私のサブカル知識は、どうやら骨の髄にまで浸透していたらしい。

 

『すごい、これが日本語……馴染む! 実に馴染むよ! ご先祖様の血によく馴染む!』

『リフィア! メイベルが最高にハイになっててちょっと怖いです!』

『……>そっとしておこう』

『ああもう、誰でもいいから収拾つけなさい!』

 

 その日、四人揃って宿を追い出された。

 私も久々に日本語を喋ったから、つい白熱してしまったのだ。

 

「動画だったら、これは飛ばし過ぎだね……」

「視聴者がついて行けない典型例だな。俺もついつい、自分の知識を語りたい欲が暴走する時があるから、よく分かるよ。ここは容赦なくカットだな」

「そうだね、もし動画の構成にするなら……」

 

 ブツブツブツと、まるで現実から目を逸らすかのように、二人が眼の前で繰り広げられているカオスを冷静に捉え始めた。

 さっきの恥ずかしさとは別種の居た堪れなさが私を襲う。

 

「日本語の習得を手伝ってくれた事には、本当に感謝してるの。……こんな荒療治じゃなければ、なお良かったけれど」

「あれが精一杯だったんだってばぁ……」

 

 ただの日本語習得の秘密話が、しょうもないオチで終わったことは大反省である。

 

 でもさ、女の子四人だよ? それぞれ別ベクトルの性格が集まれば姦しくもなるよね?

 決して、私だけの責任ではないと思う。

 

「んふふ、リフィアはすぐ調子乗っちゃうもんね〜。いつも冷静な私とは大違いだよ。私を見習って欲しいくらいだよね」

「いい年こいてピーピー泣いてるメイベルに、冷静さなんて微塵も無いと思いますよ……」

「アリシアが酷い! うわーんウルフ助けて!!」

「うおっなんだなんだ」

「んなっ、クロキから離れてください!!」

「ちょやめ……!!」

「なにドサクサに紛れて陽介に抱き着いてるのよ! 恥を知りなさい恥を!」

「ちょっと失礼するね…………かぷっ」

「ひゃんっ!? ちょ、血、吸わないでぇ……」

 

「いやデジャヴ…………お隣さんに怒られても知りませんよ、これ」

 

 案の定、隣とかから苦情が来た。

 藤宮ちゃんの忠告通りに。

 

 次やったら追い出すぞと大家さんに脅されてしまった為、陽介により、部屋に防音防振の結界を張られることとなった。

 

 幸い魔法の対価は無くて済んだものの、我が家の問題が浮き彫りとなる。

 

 陽介一人、嫁候補四人。何も起きないはずがなく……

 

 陽介を巡って、取り合うことが確定している中、人の家にお世話になっている以上は、節度ある行動が求められる。

 

「ねぇ、エルフ、アリシア、メイベル」

 

 大騒ぎで滅茶苦茶になったリビングを片付けながら、四人を集めて、こそりと内緒話を持ちかけた。

 

「明日、四人でカフェにでも集まってさ。皆で話そうよ。陽介のこととか、色々ね」

 

 互いに頷き合い、今日の所は平和に終わった。

 

 ……さて、明日はどうなるかな。

 

 




すったもんだしてるうちに凄い年月経ってた(丸一年)

もう一人のつわものが異世界おじさんの投稿始めてて、そっちばっか見てました。というか、あの人がおじさん布教してくれるなら、自分の存在は要らないのでは……?(確信)
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