異世界おじさんvs異世界TS娘   作:SEGA機未プレイお兄さん

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日間ランキング最高二位とか馬鹿げてやがる……!

この流れのままに、異世界おじさんもっと流行れ


変な意味は無い……ただ、幸せになって欲しかっただけだ

 

 

 

 翌朝。

 

 おじさんの所で寝かせていたリフィアさんが起きてきた。

 リフィアさんは今、家も金も無い。追い出すのも気が引けるので、いつか国籍などを獲得するまでは、ここに住まわせるつもりでいるのだ。

 

 ……よし。今日はこのラインナップでいこう。

 

「……何してるの? 敬文くん」

「おはようございます、リフィアさん」

「敬語はいいよ。一々付けるの面倒でしょ?」

「あ、いい? 良かった。家に暮らすのに、敬語もどうかなと思ってて。……でも、呼び捨てはアレなんで、リフィアさんのままでも?」

「別に構わないよ。……で、これは?」

 

 リフィアさんがそう聞いて、PCの画面を覗き込む。

 

「これは、今日の動画の構成をどうしようかなと。リフィアさんももちろん、生活費の為に働いてもらうから、そこの所はよろしく」

「それは良いけど……へぇ! YouTuberで生計立ててるんだ! しかもチャンネル登録者数三万人。最高再生数500万……って、エルフさん人気高っ」

「おじさんシリーズも、シュールで面白いって事でそこそこ人気あるけど、ぶっちゃけると収入源はこっち。可愛いは正義なんだ……」

「それには同意。私出たら人気上がるかな?」

「間違いなく上がるんで、準レギュラーとして出て下さい」

「はいはい、分かりましたよ」

 

 そうは言いつつも、マウスをいじっておじさんのチャンネルを見漁り始めた。

 

「しかし、流石はツベだ……2022年とかでも、YouTuberって小学生に人気な職業だから、今の内に知名度稼いでおくと、ガッポリ稼げるかもね」

「み、未来スゲーな……本当に職業として成立してるんだ」

「それ、敬文くんが言っちゃう?」

 

 そうだ。

 この人、未来から来てるんだ。

 

「あのさ、先に聞いておきたいんだけど……未来、ヤバいこと起きますか」

「起きるよ。ヤバいこと」

「……例えば?」

「戦争とパンデミック。戦争で物価上がったり、六百万人が新型ウイルスで死ぬ。日本も六万人くらい死んで、後遺症で苦しんでる人もいるくらい。あ、あと安◯総理がショットガンで殺される」

「……何が起きたかの記憶消せる?」

「それ聞いといてズルくない? ──《記憶の精霊よ、彼の者の記憶を忘却の彼方に消し去れ》」

 

 ……ふぅ。

 

 とりあえず、何かしらヤバい事があるって事が分かって良かった。

 今の内に備えられる。

 

「って言うか、記憶忘却、リフィアさん何気に使えるんだね」

「あれも私が教えたものだから。ただ、あそこまで乱用されるとは思わなかった……無闇にやるなって言ったのに」

「……もう手放せなくなっちゃってるよ、おじさん」

「手遅れだね。……また私が直接精霊にお願いするって手もあるけど、まーそこまでしなくてもいいか」

 

 「じゃ、朝ごはん(吸血)がてら陽介起こしてくるー」とすっ飛んでいったリフィアさんを横目に、今回使用する魔法をリストアップしていく。

 

 おじさんがどれくらい並列使用できるかに掛かってくるけど、多分問題ないはず。

 

 フハハハッ……俺の作戦は完璧だ。

 

 待っていろ、広告収入……!

 

 

 

 

 午前。

 

 近くの公園にリフィアさんとおじさんを集め、今回の収録を説明した。

 

「えーっと、おじさんにはエルフさんになって、ゲストのヴァンパイアちゃんもとい、リフィアさんと戦ってもらいたいんだ」

「ここで?」

「うん、ここで」

「またエルフになるの……!? ええー、なんでまた? 嫌なんだけど」

「だってリフィアさんと戦うのに、おじさんじゃあちょっと……」

「なら企画を変えよう。ガーヒーの動画part2だ!」

「それはちょっとなぁ……」

 

 おじさんの動画は、魔法を使ってやる奴以外、視聴数が稼げないのだ。

 そうなると、本当にこちらの金銭問題も絡んできてしまう。

 

「陽介、それくらいなら許せば? ザックトーラ・キャトルフは三十分以内なら大して影響は無いし。……あ、それでも不安なら、こんなのあるけど」

 

 スゥーッと、収納魔法から不思議な八面体を取り出した。

 

 ……収納魔法!?

 

「リフィアさんも使えるの!?」

「あ、うん。エルフのを見た事あったし、継承級と言っても、結局は間隙世界の精霊と対話できればいいからね」

 

 はいこれ、と、手に持っていたそれをおじさんに手渡した。

 

「それ、千年前の吸血鬼の都にあった魔導具なんだ。貌の精霊のご機嫌取りアイテムとかなんとかで、心への影響を減らしてくれる」

「そうなのか……いやでもなぁ、うーん」

 

 これでもまだ渋るんだ!?

 

「う、うーん……でも、なぁ?」

「あと、正直さ……言うのもあれだけど、おじさんの姿で出たら、リフィアさんと釣り合わないよ」

「「!?」」

 

 二人がギョッとした。いや、おじさんは分かるけど、リフィアさんは何で…………あっ。

 

「そっか……釣り合わないんだ。うん、そうだよね、おじさんじゃ釣り合うわけないよね、ハハッ」

「ち、違っ……!? 違うんだよ、そういう意味じゃなくて!」

 

 目が死んでやがるっ……!

 

 マズった、リフィアさんがメインヒロインである可能性は十分にあったのに!

 

 今、俺がそれを潰してしまったんじゃ……

 

「陽介ほら、とっととエルフになってよ。釣り合わないんだって、ほら、早く、早く」

「あ、あのー、その目は……あっ、はい、ごめんなさい」

 

 おじさんは、ハイライトの消えたリフィアさんの気配にやられて、エルフさんになった。

 いくらおじさんと言っても、唯一の友人からそういう目をされるのは堪えるらしい。

 

 おじさんが変身すると、例の魔導具は吸い込まれるようにおじさんに吸収されていった。

 本当に効果があると良いんだけど、どうなんだろうか。

 

「……おっ、変身する時の妙な感覚もない。これなら強く変えてもいいかもな」

 

 そう言うと、おじさんが着ていたパーカーなどが形を変えて、よく見るエルフさんの装備の姿に変わった。

 

「うわ、ここまでやって反動ないとか、リフィアの魔導具の性能バグってないか……?」

「あ、エルフさんだ! おおー、久しぶりに見たかも」 

 

 リフィアさんは、あっちの世界にいた時の、黒くてヒラヒラした服に身を包んでいた。

 

 この二人でやったら、さぞ凄いものが撮れるだろう。

 

 しかし、このまま公園で魔法をぶっぱなしていたら、絶対に周りの人にバレる。

 そこで、魔法で隠す。

 

「おじさん、そしたら周囲から俺たちだけ隠す魔法と、公園の中の背景を、ただの草原にできる?」

「ハードル高いなぁ……なんで内側も魔法で背景隠すの?」

「決まってるじゃん。俺の家の住所がバレるからだよ」

 

 ネットで特定されたら、たまったもんじゃない。

 いつカメラで撮られるかビクビクしながら生活するなんて、そんな有名人みたいな暮らしは嫌だ。

 

「……ただのどこにでもある公園なのにな」

「そうも言ってられないよ、陽介。特定班ってのは、背景が道路でも、写ってる電信柱とか地面のマンホールで住所を割り出せるから。……中でもTwitterは特に恐ろしいから、要注意だね」

「怖っ。ネット怖っ!」

 

 ネットの怖さでやる気を出したおじさんが、手を上にやって、魔法を唱える。

 

「光と結界の精霊よ。我らを包み隠す幻となれ」

 

 お、おおお……! 凄い、本当にただの平らな草原になってく!

 

「オッケー。じゃあ撮り始めるから、こっち来て」

 

 じゃあ、録画スタート。

 

「はいはーい! どうもー、エルフのおじさんで〜す! 今回はですねー、なんと、友達のヴァンパイアちゃんに来てもらいましたー! じゃじゃーん!」

「あははー、どうもー。って、こんなノリでいいのかな? 動画とか初めてだから、分かんないや」

「まあ、そのままでいいんじゃない? ええと、今回のお題は……ヴァンパイアちゃんと戦うって事でいいのかな?」

「久しぶりに会って言うことそれ!? 傷付いたなー。代わりに、エルフの血もーらいっと、ガブッ」

「ギャッ!?」

 

 うーん、撮れ高が素晴らしい。

 

 リフィアさん、些か動画慣れし過ぎじゃないかな。

 もしかして、前世でYouTuberやってない?

 

「痛い……ヴァンパイアちゃん酷いよ、それは!」

「うん。美味しい。エルフの血が一番」

「このままだと、その内私がミイラになって死にそう……って、主旨忘れてた! 戦おう!」

 

 はい、ここ編集点っと。

 

 二人を向かい合わせて、丁度いい位置にカメラを置く。

 

 と言っても、このカメラで撮る映像は、多分殆ど使わないけど。

 

「じゃあ、先攻は私が頂くよ。……《クローシェシクト・リオルラン(闇の精霊よ、不可視を断ち切る鎌を顕せ)》」

 

 リフィアさんが生成したのは、黒紫の禍々しい鎌。

 

 吸血鬼に大鎌……! これ以上に合う組み合わせは他にあっただろうか!

 

 それを肩に担ぐと、片脚をつま先立ちにするように曲げた。

 非常にカッコイイ。カッコ可愛いとはこの事だったらしい。

 

 そのまま前屈みになって……姿が消えた。

 

 思わず、自分でも声が出そうになったが、おじさんの方に目を向けると、斜め上の空に、鎌を大きく振り上げたリフィアさんがいた。

 

 異世界の人間……超人過ぎじゃない?

 

「ハァッ!!」

「このッ──」

 

 エルフさん(おじさん)が、光の剣を作り出して、鎌を迎え撃った。

 

 だが、闇の精霊の力は、エネルギーを断ち切るというもの。光の精霊の純粋な力では対抗できない。

 

 エルフさん(おじさん)もそれを分かってか、離脱を試みる。

 

「《レグスウィッド・ザルドーナ(動態の精霊よ)》!」

 

 今度は、エルフさん(おじさん)の方が姿を消した。離れた所に出現したおじさんは、左手をリフィアさんに向けて、新たな魔法を放つ。

 

「《バライブート・ガルラ(火炎在現)》──《エバストウィッド(烈激)》!」

 

 エルフさん(おじさん)の背後に、十数の火球が出現して、それぞれからレーザーが放たれた。

 

 迫り来るレーザーの雨を、リフィアさんの鎌が断ち切る。

 

 その隙に、エルフさん(おじさん)が《クローシェルギド・リオルラン(闇剣顕現)》で闇剣を作って、立ち向かった。

 

「ははっ、久しぶりだね。こんな戦うのは」

「ヴァンパイアちゃん……本気出し過ぎだからね? 私、さっき死に掛けたんだけど」

「エルフなら余裕だったでしょ?」

「……へぇー。そんなに私を本気にさせたいんだ〜?」

 

 エルフさん(おじさん)の声、一回り暗くなったな。

 ガチで怒ってるのかもしれない。

 

「いいよ、そっちがやる気なら。……私、全力で行くから」

「そうこなくっちゃあ……ねっ!」

 

 エルフさん(おじさん)が加速して、光の剣を繰り出した。上から来た剣を、くるりと鎌を回していなすと、続けざまに、間を縫って突き技で闇の剣が肉薄してくる。

 今度は、鎌の柄で剣の軌道を逸らし、突いた勢いのままのエルフさん(おじさん)を、後ろから魔法で反撃する。

 

「行け! 《キライドザスト・リオルラン(光の精霊よ、全てを穿つ槍を顕せ)》!」

「《レイベリオン・ザルジェリオン(氷の精霊よ)》!」

 

 瞬く間に氷の壁が出現して、光の槍は中を屈折して空の彼方へ消えていった。

 凄い。光という速い攻撃への咄嗟の魔法選択にも関わらず、対応してみせている。

 

 エルフさん(おじさん)が氷の壁を突き抜けて、死角からリフィアさんに突進した。僅かに反応が遅れて、どうにか鎌の柄で両手の剣を抑えていた。

 

 これが、異世界のバトル……!

 

「……こんな、程度で!」

「んなっ──」

 

 足を踏ん張って、二刀を押し退けたリフィアさんは、後方にバックジャンプして鎌を振り上げ、白黒の剣とぶつかり合い……

 

 その後は、一種の剣舞のような戦いっぷりが続いた。

 

 軽快かつ大胆な動きで攻撃をあしらいカウンターを放つフィアさんと、豪快でやや直線的だが一撃の重さに比重の傾いたエルフさん(おじさん)

 

 プレイスタイルの差とでも言うんだろうか。それぞれの性格がよく出ていて、先の展開が全く読めない。

 

「ちょっとエルフ、剣の腕落ちてるんじゃない?」

「そっちだって、ポール捌きに昔のキレがないぞ。年食ったからか?」

「私はもっと長生きだっての!! 吸血鬼舐めんな!」

「うおっ、危なっ!」

 

 思い思いに戦っている二人は、とても楽しそうに笑っていて、それがこっちにも伝わってきそうだった。

 

 

 

 

 

 それから、計20分程度撮影して、荒れ果てた地面を魔法で直した。

 

 エルフから戻ったおじさんはと言うと、元の体になってから、感嘆の声を上げていた。

 

「結局、最後まで心に違和感が出ることが無かったな。まあリフィア、これは貴重な物だろうし、お前に返して……」

 

 おじさんの手に、例の魔導具は無い。

 

「あれ、どこいった」

「なんか、変身した時に体に吸収されてったけど」

 

 俺はてっきり、変身から戻った後に手元に戻って来るものだと思っていたんだけど、どうやら違かったみたいだ。

 

「あ、陽介。言ってなかったかもだけど、それ、使用者が死なない限り、その魔導具が返ってくることは無いよ」

「まさかの消費アイテム……!?」

 

 消費アイテムというか、単に呪われたアイテムだと思うよ、おじさん。

 

 と思っていると、今度はハッとして空に顔を向けた。

 

「!? あ、どうもどうもこんにちは貌さん! 本日はお日柄もよく……」

 

 あ、平社員トークになった。

 

 でも、珍しく貌の精霊だ……この人?が出てきたとなると、さっきのご機嫌取りと言ってた魔道具絡みとしか考えられない。大丈夫なんだろうか……

 

「はい、はいはい……え、ええと? あの魔導具をよく使ってくれた? あ、それはこちらこそ……え、提案、でしょうか。どんな内容で…………えっ」

 

 精霊の提案。

 

 いつぞやの、氷の精霊の時の要求を思い出した。精霊の価値観が人と掛け離れてるって初めて分かった時だけど、今回もそんな感じなのだろうか。

 

「ま、毎週三回、一時間以上の使用……? な、なぜ……暇だから? そ、そうですか……ちなみに断る事は『コロス』──あ、はい、受けます、提案……」

 

 なんか、おじさんが断ろうとした瞬間俺にも殺気が伝わって来たんだけど!?

 これって提案じゃなくて、むしろただの脅迫なんじゃ……

 

「はい、はい……では失礼させて頂きます……」

 

 げんなりした様子で、虚空との会話を終える。

 

 向き直って、肩を落としながら告げた。

 

「……変身時の症状の任意解除と、途中解除無効化を条件に、一週間にエルフ化三回、それぞれ一時間以上だと。良かったのか悪かったのか分からない」

「凄いよ、おじさん! 実質変身使い放題じゃん!」

「そうなんだが……何とも言えない気持ちがあるな。どうしてエルフを強制させられるんだか」

 

 心の中で、貌の精霊にグッジョブと言っておいた。

 

 ──動画を投稿して、我の余興とせよ。

 

 そして、そんな声が聞こえてきた……気がした。

 

 

 

 

 さて、ここからは俺の仕事だ。

 

 あんな大迫力異世界バトルだが、俺の定点カメラで撮影しても、肝心の迫力は欠片くらいに薄まってしまう。まともに撮れてはいないだろう。

 

 そこで、俺のちっぽけな頭脳は天才的なアイデアを思い付いた。

 

 記憶の精霊の力を借りることである。

 

 日本の記憶の精霊さんにお願いして、最高画質の《イキュラス・エルラン》の映像を、カメラで撮影するという暴挙だったが、これが思いの外上手くいった。

 

 あの立体的に動かせる映像を駆使して、三人称やら二人称やら、鍔迫り合いで顔を突き合わせるシーンなど、戦闘を様々な視点で観察し、最適なシーンを厳選。

 サムネもここから、カッコ良さそうな構図のを選んでいる。

 

 まるで、短編映画のような出来に仕上がりだ。

 制作時間は五時間。自分でも、これはやり過ぎかなと思うレベルになっている。

 

 記憶の精霊さんの力を駆使したこの大作は、結局、初の一千万再生を突破したのだった。

 

 コメント欄には、「惚れました」「ヴァンパイアちゃんカッコ可愛い」「エルフさんの素の口調が好き過ぎる」「なんだこのフルCG」「お前つべやってないで映画作れ」「感動しました」「制作期間教えて下さい」などなど、大反響。

 チャンネル登録者数は、五万を超えることになる。

 

 なので、おじさんとリフィアさんに、何か好きな物一つを買ってあげる事になった。

 

おじさんはドリキャス、リフィアさんはP○4proを買った。

 リフィアさん容赦無い……

 

 お互い、これで遊び合うらしい。

 楽しそうで何よりだが、やはり出費は重かった……

 

 

 

 

 

 

「いやー、CAPC○Mも進化したなぁー。アーケードかバ○オのイメージしか無かったが、まさかこんなやりごたえのあるゲームを作るとは……敵の行動パターン、行動誘発、予備動作、入念に作り込まれている。つうか倒した敵の素材で装備を強くするって狩りゲー最高かよ。しかも、3Dのオープンワールド……ドリキャスのシェンムーのCMを思い出すな。転移する一ヶ月前に販売されていて、高校生ながら気になっていたが、まさかこんな形でその一端に触れる機会があるとは……」

 

 今年の一月に発売したばかりのモ○ハン最新作。

 

 おじさんはノリノリで、DUALSH○CK4を素早く動かして、電気をビリビリするフサフサなトカゲ?と戦っていた。

 

「……おじさんが今戦ってる敵って強いの?」

「ん? コイツか? 今の所、苦戦はしてないな。ただ、コイツを倒さないと、装衣とやらが貰えないんだ。……おっとー、ビリビリモードになったぞー。この時は攻撃が苛烈だからな。頭を殴りたいハンマー使いとしては、慎重にならざるを得ない。──だが今だ! 溜めて坂道滑走からのー、大・回・転! くぅ〜っ、決まったぜ〜!」

 

 らしい。

 

 ……モ○ハンか。暇があったら、ちょっとやってみようかな。

 

「──ただいま〜」

「あ、リフィアさんだ」

 

 お買い物から帰ってきたみたいだ。

 

 ちょっと手伝ってこようっと。

 

「特売どうだった?」

「そこはバッチシだとも、敬文くん」

 

 サングラスを外しながら、ニヤリと笑った。

 

 大鎌という振り回す武器で戦うからか、様々な状況における足運びの上手いリフィアさんは、スーパーを回らせると最強だ。

 人混みの中、最短距離で必要なものをカートに入れていく、非常に有能な力を持っている。

 

 なので最近は、俺じゃなくてリフィアさんが行く事が多くなった。適材適所である。

 

「でも、今日はいつもより遅かったね」

「あー、そうだろうね。実は、さっき私のファンに会ったんだ」

「……ファン? それって、あの動画の?」

「そうそう。あのバトった奴、見てたんだって」

 

 ビニール袋の片方を渡しつつ、そんな事を知ってくる。

 

 こちらとしては、微妙な顔にならざるを得ない。

 

「住所バレ……」

「……は、大丈夫だと思いたいかな。女の子だったし、口止め料もあげたから」

「口止め料?」

「うん、壁ドン」

 

 ……?

 

 壁ドンが、口止め料?

 

 どういう事なんだ、それ。

 

「これでも、前世の頃から壁ドンクオリティが高いって言われててさ。至近距離でサングラスちょい上げしたら、顔真っ赤にしてコクコク頷いてたね」

 

 ああいう反応、見ていて可愛いんだよねー、なんて言っている。

 

 ……前世、この人かなりのスケコマシだったのではないだろうか。

 

 壁ドンして、至近距離でサングラスに隠されていた赤い目で見下ろしてくるとか、一体どこの乙女ゲーだ。

 今のリフィアさんなら、男前過ぎて女の子でも普通に落とせるだろうし。

 

「ああでも、グランバハマルに居た時……一回だけ、私の方が壁ドンされた事ならあるかな」

「何それ気になる!」

 

 キャベツを仕舞っていたら、急にそんなワードが飛び出してきた。

 

「……壁ドンしてきたのって」

「そりゃあ、陽介だよ。陽介以外にされたら、速攻でアッパーカット決めてる自信あるけど」

 

 ……この人、なんて事ないように言うけど、おじさんの事かなり好きだよね。

 

「なんか呼んだか〜、リフィア〜」

「ふふ、なんでもなーい!」

 

 ちょっと待って。

 そんな、嬉しそうな声で「なんでもなーい!」って、デレ過ぎじゃないんだろうか。

 

 アニメのキャラでも、このレベルはそうそう無い。

 おじさんの思わせぶりな態度で、いつか心壊さないといいんだけど……

 

 冷蔵庫にものを仕舞っていたり、そうこうしていると、ピンポーンと鳴った。

 

 多分、藤宮だろう。

 丁度いい所に来てくれた。電話しようかと思ってたから、その手間も省けたよ。

 

 ドアを開けると、「お邪魔しまーす」と入ってくる。

 

「よし、じゃあ早速リフィアさんの記憶を見に行くぞ、藤宮!」

「えっ、ちょっと! ……いきなり、繋いでくるとか……」

 

 藤宮の手を掴んで、リフィアさんの下へ。

 

「藤宮さん、こんにちは。今から陽介に壁ドンされた時の観るけど、観たい──」

「何言ってるんですかそんな面白そうなの観るに決まってますよ」

 

 超早口で捲し立てて、席に座った。

 本音がダダ漏れで、若干リフィアさんが引いていた。俺もたまにこうなりかけるから、人の事は言えなかった。

 

「えーっと、どこら辺だろ……《イキュラス・エルラン》」

 

 いつもの画面が表示されて、シークバーを動かしていく。

 

「いつぐらいの時なんですか?」

「うーんと、出会ってから三年ぐらい。この頃は何があったっけな……そんな大したことは無かった気がするけど」

 

 お、ここかな、と指を止めて、映像が流れる。

 

 リフィアさんは魔法を使っているのか、目が青くなっていて、周りの人達は、彼女が吸血鬼族とは気付いていない。

 

 ただ、その隣のおじさんを見て顔を顰めまくっているが。

 

『……私の依頼に付き合ってくれて、ありがとう。お蔭で助かった』

『いや、こういうのは友達と協力するものと相場が決まってるからな。……まあ、メガドラのアイラブミ○キー&ドナ○ド ふしぎなマジックボックスって協力プレイのゲームは、二人プレイ専用で、友達が居なかったから足で2Pを操作してたんだけど……』

『……日本帰ったら、一緒にやろうか』

『ハハッ。リフィアとなら楽しくやれそうだ』

 

 不憫……ッ!

 

 画面のリフィアさんも、凄い優しい目になってる。

 おじさんの青春、セガに費やし過ぎてるから……友達、居なかったんだろうな。

 

 と、仲良く二人で歩いていると、不意におじさんが止まった。

 

『……? どうかした?』

『っ、すまない、リフィア!』

『ふぇっ────』

 

 リフィアの手を引いて、近くの建物の壁に駆け寄って、リフィアさんを覆うように道に背を向けた。

 

 どういう事だ、と思うと、後ろから声が聞こえてくる。

 

『はぁー。この町に吸血鬼の末裔がいるとか本当かよ』

『そのようだ。司祭殿の話によれば、ここに邪な気配を感じたそうだ』

『ったく、三年も見つかってねぇんだぞ? どっかで野垂れ死んでんじゃねぇか』

『どうだろうな。吸血鬼族について記した文献でも、奴らはあのカサカサする奴らくらいしぶといとある。汚物はこの手で消毒するに越した事は無い。それに我らは────』

『あーハイハイ、展開読めた。スーコーなる目的とか、もう耳腐るほど聞き飽きたんで。ったく、聖十字騎士団は司祭サマの雑用係じゃねーってんの』

 

 そんな会話をする二人を先頭に、ぞろぞろと白い甲冑の騎士が行列を成して進んでいく。

 

 聖十字騎士団。

 名前からして、吸血鬼絶許みたいな組織だな……

 

「この人達は、教会お抱えの神聖魔法のエキスパート集団。まぁ、またいつか話す機会があるよ」

 

 それより、こちらだった。

 

 三人称で、二人の様子がはっきりと見えている。

 

 おじさんが聖十字騎士団の方に視線をやっている間、リフィアさんは縮こまって、手が胸元にあるまま固まっていた。

 

『は、はぅ……!!』

 

 しかも、魔法で隠していた筈の目が、赤く爛々と輝いていて、吸血鬼と一発で分かってしまう見た目になっていた。

 

『あ、危なかった。ようやく行ったか。……リフィア。大丈夫だ。今の内に、目の色を変えて……』

『はうぁ……!!』

 

 おじさん、ここでようやく自分の体勢に気付く。

 片腕を壁につきながら、近距離で見つめ合う、このポーズ。

 

 だが、何の問題もないよなと、再度リフィアさんに向き直した。

 

『ん? どうしたんだ、リフィア。早くしないと怪しまれるかもしれない。ほら、早く』

『きょのまみゃっ……!?』

 

 盛大に噛んでる。これにはお隣のリフィアさんも、自分の痴態に目を覆っていた。

 

 ……壁ドンが流行った理由は覚えていないが、こっちの意味での壁ドンが台頭してきたのは、確実に2010年代の頃。

 

 おじさんが壁ドンという概念を、恋愛方面で理解なんてしていないだろう。

 

 あわあわし始めたリフィアさん。

 絶体絶命かと思いきや、きょろきょろとして、今度は壁ドン状態のおじさんの腕を掴み、路地裏に引き込んだ。

 

 目が赤いまま、人の居ない仄暗い道を通り抜けていく。

 そして、かなり奥まで来たところで止まった。

 

『はぁ、はぁっ……! こ、ここなら、誰も来ない……』

『お、大袈裟というか、流石に逃げ過ぎだ。わざわざこんな所まで来なくても良かったぞ』

『…………』

 

 諌めるようなおじさんの声を無視して、壁に背中を合わせたリフィアさん。

 

 おじさんが首を傾げると、

 

『……やって』

『え?』

『さっき、私を隠す時にやったやつ……やって、ほしいんだけど。……できる?』

 

((可愛い……!!))

 

 殺人級とはこの事か。上目遣いなのも最高だ。

 

「あ、あれ……私、こんな……だっけ……?」

 

 リフィアさんがプルプルしだした。記憶と随分食い違っているようで、見ていられないと顔を覆っている。

 

 さて映像の方は、おじさんがリフィアさんの要求に応えている最中となっていた。

 

『さっきの……確か、こういう感じの……』

 

 左腕をついて、至近距離で見つめ合う。

 

 なんでだろう。普通おじさんがやっても恐怖映像にしかならないだろうに、リフィアさんで中和されて、恐ろしいほど違和感が無い。

 

『あ、あと……あごを、右手で持って』

『こうか?』

 

 自分の顎を持った。

 

「「ブフォァっ!!」」

 

 壁ドンなのに、考えるポーズ。

 俺と藤宮が噴き出すのに、そう時間は掛からなかった。

 

『そ、そっちじゃない! 私の!』

『あ、すまん。じゃあ……こうか』

 

 やっとの事で、壁ドン顎クイが成立した。

 

 これをさせる為だけに、路地裏に引き込んで、人目の付かない所に来たという事なのだろう。

 こっちのリフィアさんは、見も聞きもしないとばかりに机に突っ伏してしまっていた。それでも見せてくれるあたり、優しさの塊だと思う。

 

 映像の中のリフィアさんが目を閉じる。

 おじさんが首を傾げる。

 

『…………』

『…………』

 

「……察せて、ない! おじさん、キスも分かってないよ!」

「恋愛知識小学生以下かよ……!」

 

 藤宮が絶望したように言い放つ。

 

 これだけされて分からないとか、どうなってんだおじさんの頭の中……!?

 

『…………よ、陽介?』

『えー……っと。これからどうすればいいんだ?』

『こっ……このっ』

 

 来ないんなら、いっそ自分から、と唇を近付けた。

 

 おじさんの背中を、青と紫の弾丸が突き抜けた。

 

『!? なんだっ』

『あっ……』

 

 惜しくもキスができず、しかもおじさんは戦闘態勢に入ってしまう。

 

 っていうか……

 

「……あのレーザー、見覚えしかないんだけど」

「奇遇だな、私もだ」

 

 暗闇から覗く、あの二対の瞳は。

 

『……また会ったわね、オーク顔。今度はなに? 人目の無いところで、いくら吸血鬼族とはいえ、女の子を手篭めにしようって訳?』

『あ、ウルフくんにリフィアじゃないですかー。お久しぶりでーす』

 

 やっぱり、エルフさんに、メイベルさんだった。

 

 まさか、こんな所まで追っ掛けているなんて。

 

「……これって普通におじさんをストーキングしてるだろ、二人」

 

 藤宮の冷静なツッコミが入った。

 寧ろそうじゃないと、路地裏のこんな場所で出会う事は無いだろう。

 

 さすがに、これはリフィアさんも怒るだろうなぁ……と思って観ていると、リフィアさんは、何やら目を大きく見開いて、二人を見つめている。

 

『え、ええと? リフィア? じ、邪魔したのは謝るわ、でもね、私達も……』

『……それ、何で、エルフが持ってるの?』

『……それ?』

 

 リフィアさんの視線の先を拡大していくと、左手の指に輝く、それを見ていた。

 

 エルフさんも、ああ、と気が付いて、見せびらかすように手の甲を向けた。

 

『オーク顔から貰ってるのよ。世界で七つしかない、天聖石の指輪らしいわ』

『私もこの前二つ目もらったよ!』

 

 エルフさんとメイベルさんに付けられた指輪。

 

 対して、そんなものなどない、リフィアさんの左手。ポタリ、と鼻血が地面に落ちた。多分それは、記憶消去魔法の警告だ。前にも、この指輪を見掛けて記憶を消したのだろう。

 

 鼻と口を真っ赤に染めて、ギギギ……と、油の切れたロボットみたいに、後ろのおじさんを見た。

 

『……なんで、なんでなの?』

『前にも言ったと思うが、変な意味は無い……ただ、幸せになって欲しかっただけだ』

 

 リフィアさんは、俯いた。

 表情は見えなかったが、俺は思った。

 

「言葉のチョイス、クッソ最悪……ッ!」

 

 誰がどう聞いたって、結婚の意味に捉えるしかない。

 

「おじさん、一回頭丸ごとイキュラス・キュオラしておけばいいと思う。そしたら、私が再教育してやる」

「今、俺も本気でそう思いかけた」

 

 フラグクラッシャーのおじさんだが、現在確実にメインヒロインな人のフラグも断ち切ってやがった。

 

 というか、リフィアさんなんだから天聖石の一つや二つ渡せば良いだろ! 今も指輪なんて着けてないんだけど!

 

 そんな、空気を読む能力がおじさんにある訳もなく、画面の中で、所在なげに立っているだけ。

 

 リフィアさんは、もう一度相手と自分の手を見比べて……目から輝きが消えた。

 

『は、ハハッ……』

 

「ほらヘラってるよ! おじさん最悪だよ! ワールドなんかやってないで、まず謝った方が良いでしょ!」

「ヤバいよ……人間としてどうなの、これは。この遺伝子がたかふみにもあると思うと怖い……」

「ちょっと、俺も巻き添えにしないで!?」

 

 思わぬ方向からの攻撃を食らった。

 やめてくれ、俺は違う! おじさんとは違う……よね?

 

『あ、あの……リフィア? これは……その、そういうんじゃなくてね? 単にオーク顔が、お金の為にって渡しただけで……』

 

 リフィアさんのことを思って、弁解しようとするなんて……

 何だかんだでエルフさん、恋敵にも優しいらしい。

 

 ……隣の引きニートは除いて。

 

『え、私もお金の為って宣言しなきゃいけない……? 虎の子とは言ったけど、やっぱりこのまま結婚指輪って事に……』

『……あなた、ずっと前から思ってたけどかなりクズよね』

『く、クズ……!? クズじゃないもん! 普通にまったりニートしたいだけだもん!』

『それをクズって言うのよこの駄メイベル!』

『だ、駄メイベル……!? ひ、ひどいよエルフぅ……』

 

 そうして、二人が口論している内に、リフィアさんは、暗闇の方へと進み始めた。

 おじさんが声を掛けるも……

 

『リフィア? どこに行くんだ?』

『……私なんて、所詮友達枠……恋愛対象ですらないんだ。フヘッ、ヒヒヒッ……』

 

 どこかへと、消えてしまった。

 

「壊れてるよ……! 壊れちゃってるよ……!」

「そうだね……この頃の私は、確かに壊れてたね、うん」

 

 あれ、と横を向けば、リフィアさんは起きていて、映像を早送りしだした。

 

 そして、リフィアさんが宿の部屋に帰ったところだった。

 

 道中、魔法で目を青くはしてたらしく、特に何事もなく部屋に入り、ベッドに倒れ込んだ。

 

 膝を抱え込んで、丸くなる。

 

『……私じゃ、駄目だったんだ』

 

『……話の合う、ただ都合の良い友達としか思われてないんだろうな』

 

 ヒュッ、と息を呑む音がした。

 

 見てみると、藤宮の目が小刻みに揺れていた。

 

『……ひっ、うっ、うぇっ……! んぐっ……! いっ、イギュ、ラス……キュオっ、ラ……!』

 

 そこで、リフィアさんは映像が切った。

 

 ……これは、もう、なんというか。

 

 他人事じゃないから、心にずっしりと来る。

 

 異世界で生きている人達を、どこか遠い存在のように考えていたから、余計に。

 

「……また、思い出しちゃったなあ。もう何回指輪で鼻血出したんだか」

 

 鼻血をティッシュで拭くと、しみじみとそう言う。

 

「……陽介は友達で、それ以上なんて無い。私が十七年間、一人で旅をして、やっと出せた結論だった」

 

 そんな、言い方をするなんて。

 

 まるで、おじさんを諦めてるみたいじゃないか。

 

 今もこんなに近くにいるのに。

 

 言葉に出せなかった俺の代わりに、藤宮が激昂した。

 

「そんなの……言えば良いじゃないですか! あのおじさんの事だから、言葉にしないと伝わりもしないと思うんです! それなら……」

「気にしなくていいよ。見せたこっちも悪いけど、私はこの関係が一番だと思ってるから。陽介とゲームができて、敬文くんと藤宮ちゃんがいる。それだけで、じゅうぶんに楽しいんだ」

 

 不思議なほど、スッキリした笑顔だった。

 前々から、そう割り切っていたとしか思えないくらいに。

 

「私が告白しても、陽介を困らせるだけだし、この気持ちは墓場まで持っていくつもり。……言うまでも無いだろうけど、陽介には内緒でよろしくね?」

 

 人差し指を自分の口許に持っていって、ふふっと微笑むと、おじさんの部屋に入っていった。

 

 ……。

 

「たかふみ」

「……分かってる」

 

 こんなのは……あんまりじゃないか。

 

 誰も救われないし、誰も喜ばない。

 

 元はと言えばおじさんが悪いんだ。

 それで、リフィアさんが悲しむなんて、許せるはずが無い。

 

「俺、絶対おじさんとリフィアさんをくっ付けるよ。……藤宮も、協力して欲しい」

「そんなの、当たり前だって。……私みたいなのは、二人も要らないっつうの」

「? 藤宮みたいな……?」

「っ、なんでもない!」

 

 ……兎も角。

 

 リフィアさんに幸せになって欲しいと、俺は本気で思っている。

 

 おじさんが、リフィアさんを異性的な意味で好きになってくれれば、問題は解決するんだけど。

 

 ……あれ、これやっぱ無理ゲーじゃね?

 

 早くも、俺と藤宮の間で、暗雲が垂れ込めてきた。

 

 

 

 

 それから、予想通り特に計画も立てられず、四日が経過していた。

 

『up down right down chu! chu! chu!』

「アップダウン、ライダウン、チュチュッチュッ」

『down,dodown right right up right up!』

「ダウン、ダダウン、ライライ、アプライ、アップ!」

 

 そして、おじさんはドリキャスの画面を前に奇声を発していた。

 

 タイトルは、『スペースチャンネル5』。

 どうやら、音ゲーのようだ。相手の踊りに応じて踊り返すという、リズ○天国の先駆けみたいなものだった。

 

「……俺、もしかして結構リズムゲームいけるのか!?」

「おおー。でも驚きはないかな。陽介、あっちでもキレッキレな踊りしてたし」

「おじさんがキレッキレのダンスって何!?」

 

 一体どんな理由で踊ってたんだ、おじさん。

 

「あー、あれね。実は、アレ……安○ちゃんの踊りなんだ」

「──何故安○ちゃんチョイス!?」

 

 いや俺も聞きたいわ!

 

 え、おじさん、安○ちゃんのファンだったとか……?

 SEGA全く関係ないのに、意外だ。でも1990年と言えば、俺でさえ知ってるア○ラーの時代。おじさんがちゃんと流行に乗ってたなんて!

 

「いや、俺は安○ちゃんのファンじゃないんだよ! ただ、その……サターンで買ったソフトに、こう言うのがあって」

 

 床にノートPCを置き、打ち込んだものを見せてくる。

 

「「デジタルダンスミックス 安○奈○恵……?」」

「そう。3000円もしない、お手頃価格なソフトなんだ」

 

 バリバリセガ関係じゃんか!

 

 おじさん、逆にセガに関係してたら何でもアリなのかよ!

 

「近くのコンビニで買えるってのがキャッチフレーズで、あの頃も話題になってた。俺もCMを見て、その値段に釣られて買ってみたら……」

 

 おじさんが、盛大にぷるぷると震え出した。

 顔面がかなり酷いことになっている。

 

「これ、曲が二つしか入ってないし、しかも、ゲームというゲームは収録されてない……! ちょっとしたミニゲーム程度! 俺は泣きながら安○ちゃんのダンスを練習したんだ……値段分の価値はプレイしなくちゃ、それはセガゲーマーとしての敗北だと悟って、な」

 

 信念曲げずにやり遂げるとか……それは素直に尊敬する。

 

 ただ、おじさんが安○ちゃんのダンスを踊ってる所だけは見たくない。視界の暴力にも程があるよ。

 

 でも、そうか……安○ちゃん、そういえば今年(2018)で引退するんだよなぁ。

 

 何の興味もなかったのに、凄く悲しくなってきた。

 俺も、そろそろセガに洗脳され始めたのかもしれない。

 

「……あ、そうだ敬文くん! 陽介のキレキレダンス、動画にして投稿してみたら──」

「博打要素が強いので却下」

「えー」

 

 おじさんのキレキレダンス、と言うだけでインパクトはあるが、折角の視聴者が逃げる気がする。

 それなら、エルフ姿で踊ってもらった方がまだ稼げる。

 

「えー、ええー? ぶーぶー」

「なんでリフィアさんが駄々こねてるの……今日の収録は別のやるつもりだから、別の」

「それってゲーム?」

「うん。と言っても、お金の都合で買えそうだったのがUNDE○TALEしか無くて……」

 

 リフィアさんの目付きが変わった。

 

「やる。今から撮ろう。直ぐにでも撮ろう! あ、勿論私は陽介の隣でアドバイザーとして……」

「どんだけおじさんのメンタル壊したいんだよ!?」

 

 Gルートに最初から進ませる気満々だこの人!?

 

 平成初期(エリソル)なら平成後期(UNDE○TALE)で対抗してやると言わんばかり。

 

 おじさん、リフィアさんの恨み買いすぎじゃないか。

 

「おーい、たかふみ、リフィア、何を話してるんだ?」

「早く、早く♪」

 

 ……この時ばかりは、リフィアさんの笑顔が、ただの悪魔の笑みにしか見えなかった。

 

 

 

 

 

「どうも〜、エルフで〜す! 今日は、友達のヴァンパイアちゃんと一緒に、UNDE○TALEという最新レトロ?ゲームをやりまーす、パチパチパチ〜!」

「イェーイ。前回の反響にビビりにビビってるヴァンパイアだよー。ちなみに、アンテを勧めたのは私だったり。なので、今回は私が手取り足取り教えていこうかなーと思ってます」

 

 

「わ、ドット絵なのに最近のゲームなんだ! 楽しそうだな〜」

「うんうん、じゃあ、まずは歩いてみて……」

 

 

「えっ、ちょっ、お花さんんん!? 何これ、もうゲームオーバー!?」

 

 

「ト○エルさん優しい……素敵……!」

「そしたら、道中の敵とエンカウントしまくってね。……誰も来なくなるまで」

「ほほー、レベリング? じゃあ頑張ろう」

 

 

「ト○エルさん優しい……人の鑑……もしや私のママ……?」

「そうだね……決意。も、したね……?」

 

 

「ちょっ、ト○エルさんとバトル……!? まあいっか! えいっ」

 

 

「(呆然)……え、何この五桁、と、ト○エルさん……!? え、寧ろ、みんなを守っていた……?」

 

 

「……お花さん野郎の、同類……そんな……馬鹿な……」

 

 

「はいっ、じゃあ遺跡編が終わったところで、今日はここまで! 次からは、UNDE○TALE Gルート実況プレイ スノーフル編でいきたいと思います。じゃあまたね〜!」

「ト○エルママを、殺した……私が……」

 

 

 そんな内容で終わった今回の動画は、まともなゲーム実況にも関わらず、一週間で再生回数200万を越えることになる。

 

「ヴァンパイアちゃんは悪魔だった……」「無垢なエルフちゃんを唆す悪魔現る」「ヴァンパイアちゃんのファンやめます」「生配信しろ、スパチャしてやる」「エルフちゃん可愛い、好き」「二人組バーチャルYouTuberとか豪華過ぎやろ……」「企業無しでこれは変態」「おじさんの登場待ってます」と、コメントの嵐となった。

 

 チャンネル登録者数、八万。

 順調過ぎて、そろそろ俺の頭がどうにかなってしまいそうだった。

 

 

 

 




書きたいことはまだ書けてない気がする。

続けば続くかも。
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