異世界おじさんvs異世界TS娘   作:SEGA機未プレイお兄さん

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YouTubeでほんへの公式ボイコミなんか出しやがって⋯⋯
二期だろう? なあ二期だろうお前? 二期置いてけ⋯⋯!!(妖怪二期オイテケ)


ソウルライク・ゲームってすげえな⋯⋯ リフィア=カルネイアの軌跡4

 

 

「魔法が使えない、か……──《光輝在現(キライド・ガルラ)》」

 

 ダンジョンに入り、陽介が真っ先に道を照らそうすると、陽介の声が木霊して終わった。

 

「こっちもダメ。鎧に魔法が充填されてるはずなのに、何も起こらないわ」

 

 冒険者達が言うには、使えるのか使えないのか分からないと意見が分かれていた。

 

 ふむ⋯⋯少しアプローチを変えてみようか。

 

「────《記憶再生(イキュラス・エルラン)》」

 

 私が根源(精霊)魔法の中で最も得意とするのは、記憶操作魔法。

 

 通常なら、映像が目の前に現れるはずだけど⋯⋯お?

 

「チカチカ点滅してるな。⋯⋯得意な魔法だからか?」

「もっと出力上げてみるね」

 

 今は低画質設定だが、これを1080pの高画質にしてみると⋯⋯

 

「お、観れるぞ⋯⋯これは魔炎竜と初対峙した時のやつか」

「そうなんだけど、画質ひっどいよ。240pくらい。これを4Kくらいにすれば⋯⋯⋯⋯やっと720pの高画質かな」

「つまり、魔法は使えるけれど、高出力の魔法ですらカスッカスの威力にまで減衰する。だから、魔法の使い所を見極めて進むダンジョン、といった所ね⋯⋯」

 

 コンセプトは分かった。

 問題は出てくる敵だが⋯⋯

 

「オーク顔、リフィア!」

 

 エルフが注意を飛ばしてきた。

 

 吸血鬼族の夜目が、暗闇にいるスケルトン・ソルジャーを捉える。周囲には見た限り敵は居なさそうだ。

 

「フォウ、索敵」

「──《大地走査(バハマリオン・スラドラーチ)》。敵影は他に無い」

「じゃあ、あれを叩けば終わりね」

「待って」

 

 私が制止して、全員で骨の視界外であろう柱に隠れる。

 嫌な⋯⋯予感がする。

 

「どうしたって言うのよ」

「私のソウルライク・ゲーマーとしての勘が囁いてる。アレは見つからないようにコソコソ動くか、見つかった瞬間にバフ盛々で高威力スキルを叩き込んで消し飛ばした方がいい」

 

 最も考えられるパターンは、あの骨が中ボスクラスの敵を召喚する可能性だ。敵影は無いと言っていたけど、敵が一体という状況そのものが怪しすぎる。

 

 最悪なパターンは、あの骨もクソボスで、現れたもう一体と一緒にオンスモ*1が始まる事だ。片方を倒してももう片方がバチバチに強化されて、その頃にはとっくにエストが⋯⋯うう、背筋が震える。

 

「そんな事ってあるの?」

「いや、ここはリフィアを信じた方がいい。ゲーマーとしての勘なら、きっと間違いないはずだ」

 

 でも三人いれば、最悪何とかなるかなあ⋯⋯タゲ分散できそうだし、柱あるし、柱がある⋯⋯ああ柱、心の友よ⋯⋯

 

「⋯⋯ちょっと、うっとりした顔で柱に身体擦り付けるのやめなさい」

「⋯⋯ハッ! ご、ごめん」

 

 いかん、集中集中。柱には後で使い所さんがあるはずだ。存分に使わせてもらおう。

 

「先手は私がやってみる。神器は問題なく使えそうだから、一つぶちかまそう。しくじったら、カバーお願い」

 

 自分の吸血鬼としての膂力を発揮して、柱から飛び出し、一直線上に骨を見据える。

 引きずるように喰神剣を持ち、骸骨の眼前で飛び上がってから、頭上を捉えた。

 

「神威解放────喰らえ、喰神剣」

 

 喰神剣の機械じみたフォルムから肉塊が滲み出て膨れ上がり、竜の頭と化する。

 

 落下に任せて骨全体を喰らうと、身体が莫大な魔力で充溢する。まるで、帝位魔獣クラスの強敵を相手取ったときのように。

 

 そして、嫌な予感は的中する。

 

「リフィア、上だ!」

 

 ──エリック、上だ!

 

 突如、私の中に流れる記憶。それは、かつて戦地で華麗に散った戦友(NPC)の記憶だった。

 

 彼から、教えてもらったのだ。

 頭上を注意する事の、その重要さを。

 

「神()解放(バースト)……」

 

 ──闘技(ブラッドアーツ)、〝咢刈り〟

 

 自身の血液を喰神剣に伝わせながら、地面を蹴り上げる。

 

 天井から四肢を広げて落ちてきた骸骨に、鎌刃を振り上げて反撃する。

 

 だが、骨の頭蓋を叩き割るには至らなかった。転がった頭蓋は床を転がりながら一瞬で身体を形成し、さながら巨人のような体躯を獲得した。一時的に退却し、改めて情報を共有した。

 

「一撃で全身を粉々にしないと、再生するって訳ね……」

「でも、壊せなかったのは頭だけ。多分、そこが再生の核になってる」

 

 つまり、あの巨体を掻い潜り、頭を確実に吹き飛ばさなくてはならない。

 しかも、こちらは大規模の魔法が使えないときた。

 

「こういう敵は、姿勢さえ崩せば、すぐには復帰できないはずだ」

「なら、足止めは任せたわ。私は……この拳鍔形態で接近戦を仕掛ける」

 

 エルフが魔導剣を地面に突き刺すと、刀身だけ外し、柄を二つに分離させて、一対のナックルダスターに変化させた。

 レールガン形態といい、いくらなんでも詰め込み過ぎじゃなかろうか⋯⋯

 

 とはいえ、インファイターができたなら話は別だ。

 

「そういうことなら、良い作戦があるよ」

 

 と、一通り相談し終えてから、作戦通り三人で散開した。

 

 作戦は非常に単純だ。まず、私が表に出る。所定の位置に注意を引き付けてから……

 

「《縛動拘鎖(レグスウルド・スタッガ)》」

 

 骨の足に鎖を幾重にも巻き付けて、その鎖を自分の手で持ち上げる。

 

「……《牽操(スタッガマグナ)》!」

 

 足を引っ張られ、片足だけで自重を支えきれなかった骨が、片膝をついた。

 

 そうなったら、すかさず陽介が飛び出してくる。

 

「《烈斬(エバストルギド)》」

 

 皆の味方、柱の使い所登場である。根本を斜めに断ち切り、その大質量を骨の土手っ腹もとい肋骨部に衝突させた。

 

 それによって、骨は完全に地面へと叩きつけられた。そうなればもう、何も邪魔するものは無い。

 

「〝過速崩撃〟⋯⋯!」

 

 雷属性の魔法で加速したエルフが、重点的に頭蓋をタコ殴りにして、ついにそれは砕けた。

 

 そこに繋がっていた全ての部位が目論見通りに塵と化して、骨の巨人は消滅した。

 

 第一フロア、完全攻略である。

 

 ふー、と息を吐いたエルフに、陽介が魔道具の刀身を差し出し、それに応えるように柄を向けられる。

 

 おお、なんかやけに様になった事を⋯⋯

 

「やったわね、陽介!」

「上手いこと決まったな、(スイ)────あっ」

 

 喰神剣が手から滑り落ちた。

 

 ⋯⋯は?

 

「な、名前⋯⋯エルフにも、教え⋯⋯スイ? エルフの、名前? 陽介が⋯⋯え?」

 

 すると、陽介がストンと表情を消して、私の頭に手を置いた。

 

「すまんな⋯⋯《記憶消(イキュラス・キュ)──」

「ちょちょちょっとそれは流石にやり過ぎじゃないかしら!?」

「だが、約束が」

「⋯⋯リフィアになら、良いわよ」

 

 は、はは⋯⋯私には、「長いからエルフのままでいい」って言ってたのに……

 

 しかも、信用ならないと他人に名前も教えてこなかったはずの陽介が、まさか、エルフに名前を……

 

「……横に入っただけの私が、どうこうしようだなんてのが烏滸がましいよね。ごめん、二人とも。責任取って、記憶は消すから。《記憶(イキュラ)────んぐっ!?」

「ああもうっ、記憶操作魔法なんてポンポン使おうとするんじゃないわよ!」

 

 それからエルフにしこたま怒られて、すぐそうやって卑屈になって遠慮してたら、欲しいものも手に入らなくなるとだとか、陽介と仲良くできてるそっちの方が羨ましいから一発殴らせろとか、なんか結構散々に言われた。

 

「お前⋯⋯仮にも友達にそんな暴言は無いだろ⋯⋯」

「こ、言葉の綾っていうか⋯⋯か、喝を入れただけだわ!」

「出たな⋯⋯暴言暴力を喝とか言って正当化しようとする、理不尽な体育教師とやってる事同じだぞ? そういうのやめようぜ、なぁ?」

「どうして私が非難されてるの⋯⋯!?」

 

 しかし、エルフの言う事も理解はできる。私は自己肯定感というものがどうにも無いのだ。理由は幾つか思い当たるけど。

 

 こんな自分でいたら、いつまでも陽介に好かれるはずがない。

 もっと、自分に自信を持たないと⋯⋯

 

「⋯⋯それで、名前の件はどうする?」

「そうね。私達の三人の間だけで使いましょうか。あまり余所に広まりたくはないし」

「えっ⋯⋯私もいいの?」

 

 三人って事は、つまり私も含まれてるということのような。

 しなびてへにょへにょになっていた自信が、僅かばかりに水を得た。

 

「俺はいいぞ。最初からリフィアには本名教えてたしな」

「なっ、最初から⋯⋯くっ、これだからリフィアは侮れないのよ⋯⋯」

「じ、じゃあ! 陽介と、それから⋯⋯スイって呼んでも、いい?」

 

 確認を取るのは大事だ。下手に距離を詰めて、うわ、何勘違いしちゃってんの⋯⋯とか思われながら、顔を引き攣らせて、「えっと、○○君には言ってなくて⋯⋯ごめんね?」みたいな感じでさり気なく断られるのが一番恐ろしい。

 

「⋯⋯良いけど、渾名のようなものだから、ちゃんと本名も教えておく。一度しか言わないけれど、まあ、別に覚えなくてもいいわ────スザイルギラーゼガルネルブゼギルレアグランゼルガ=エルガよ!」

 

 ⋯⋯⋯⋯。

 

 よし、覚えた。

 

「スザイルギラーゼガルネルブゼギルレアグランゼルガ=エルガ⋯⋯だよね?」

「何で一発で覚えられるのよ!?」

「こういう名前覚えるの得意なんだ。えーと、フ○ンフランソワフランチェスカドブルゴーニュとか、テュオハ○ムメルケルイルルケリスナアモとか、ル○ズフランソワーズルブランドラヴァリエールとか⋯⋯」

「一体どこの王族⋯⋯!?」

 

 若干二名が王族に近しいのは確かだけど、一人は尻の素敵なただのオペレーターさんだ。

 ゲームとかラノベに出てくる名前って、やけに名前長いの多いから、暗唱してすぐに覚えようとしちゃうんだよ⋯⋯

 

 よし、もうこれで絶対に忘れない。

 

「こ、これでスイって呼んでもいいよね!?」

「そんな条件設定してないわよ⋯⋯まあ、他に人が居ない時は好きに呼んでちょうだい」

「やった⋯⋯やったよ陽介!! 私人生で初めて友達を渾名で呼べた!」

「お、おおおっ! 良かったな!!」

 

 いえーい、ハイターッチ。

 

 友達少なかったっていうか、高校の時なんて引き籠もってたせいで友達誰もいなかったから、何気にちょっと嬉しかった。

 気兼ねなく呼び合える名前があるって⋯⋯良いよね。

 

「⋯⋯雑談はここまでに、そろそろ探索を続けましょう。敵が復活でもしてこようものなら、かなり厄介になる」

「⋯⋯あっ、待って。ちょっとマップ埋めしていい?」

 

 まだ一本道部分しか見れてない。

 

 一旦感情を落ち着けて、最初の道まで戻る。

 

 壁沿いに進み、上を見上げる、なんか崩れそうな部分は取り敢えず⋯⋯

 

「えいっ⋯⋯とりゃっ」

「⋯⋯そんなに壁を叩いてたら、いつかダンジョン壊れるわよ」

「でも、大体ダ○ソシリーズだと、ロリしたりアクション起こしたら壁が消えたりして⋯⋯あ、隠し通路みっけ」

「嘘でしょ?」

 

 見つかっちゃうんだなあこれが。どこの人間も考える事は同じだ。もしくは、このダンジョンはフ□ム脳な転移者に作られた可能性がある。

 

「ソウルライクゲームってすげえな⋯⋯後でメガドラとサターンとかでオススメのゲーム教えてくれよ」

「えぇ⋯⋯ソウルシリーズすら無いのに⋯⋯デ○クリムゾンとか⋯⋯?」

「り、リフィアお前⋯⋯サタマガとかファ○通とか、色んな専門誌の散々な評価を見て購入を断念した、あのデ○クリをできんのかよ⋯⋯!」

「いやできないよ⋯⋯!」

「できないよなあ⋯⋯!?」

 

 私が知ってるのは精々オープニングくらいなものだ。名言の数々⋯⋯まあ主に二つしかないけど、オタクなら思わずニヤニヤして見ちゃうのがデ○クリのオープニングだ。

 

 隠し通路を進んでいくと、宝箱が一つで行き止まり。それを開ける前に回避態勢を取ってから、開けた瞬間後方にローリング⋯⋯!

 

「⋯⋯って、何も無かったか」

「今の儀式は何⋯⋯?」

「リフィアはよくやってるな。宝箱を開けた瞬間逃げるやつ」

 

 トラップ確認はこれが一番というか、これで避けられないなら強制系だ。もう潔く諦めるしかない。

 

 そして中身を確認。

 あーでも、これ私持ってるぽいなー⋯⋯

 

「陽介とエルフどっちかほしい? 私要らないからあげる」

「? 後で売ればいいじゃない」

「えー、売るなんて勿体無い。魔力増強系だよ?」

「じゃあいるわ!」

「俺には使えないな。魔力とか、そういうの持ってないし⋯⋯」

「ほい」

「やったぁー!! ありがとうリフィア、大事にするわね!」

 

 大はしゃぎのエルフを観ながら、ふと故郷を思い出す。

 

 そう言えば、発表されてたエ○デンリングの新作ってこういう感じなのかなぁ⋯⋯ちょっとだけやりたかったなぁ⋯⋯

 

 郷愁に浸りながらも、同じように壁を調べていく。

 

 すると、先程の戦闘場所に、特に隠されてもいない扉があった。

 しかも、扉の通路を抜ければ、骨が彷徨っていたと思われる場所の後ろに回り込めた。

 

「「「⋯⋯⋯⋯」」」

 

 ⋯⋯あー、なるほどそういうことね。完全に理解した。

 

「私達のレベルが高すぎたかもしれない」

「そっち?」

 

 序盤でも何とかなるけど、終盤に行ったほうが楽なダンジョンだ。敵を避けて通ると、どんどん迂回して時間が掛かる。

 

 魔法減衰デバフに、強力な敵と隠し扉⋯⋯このダンジョンのコンセプトは、最少の戦闘といった所なんだろう。

 

「でも、こういう無駄に強い敵って、避けられるとしても、大したドロが無くとも、全部一回は倒したくなるよね⋯⋯」

「だが、状態異常のせいで連戦は厳しい。先に進むか一旦戻るか、決めた方が良さそうだ」

 

 三秒考える。

 うん、一々引き返すの面倒だ。

 

「今日は行ける所まで行こう。攻略し終わった後に、また探索し直そうかな」

「一日で最後まで行けるといいな」

「そこは、私たちの実力次第ってところね」

 

 なんとも軽いノリで、地下階層に下りていった。

 

 ダンジョン地下第一層は、一気に空間が広がっていた。しかもその入り組んだ迷路を塞ぐように、骨が巡回している。

 

 感じ取れる気配だけで、五体は居る。さっきと比べても難易度はダンチだ。

 

 いざ進もうとすると、奥に人影が一つ。騎士甲冑を身に着けた、冒険者のようだった。

 その人はこちらを視認すると、こそこそっと合図を飛ばしてきた。

 

「おい、音を立てるなっ、ゆっくり来いっ⋯⋯!」

 

 コクコクと頷き、歩いて彼の元に向かった。

 

 そして、まずは初対面の人間と会ったらすることは⋯⋯

 

「あ、隣のこの人はオークじゃなくて人間だからね?」

「嘘だろう⋯⋯この顔でか?」

「そうよ。でも正真正銘人間よ」

「なにっ⋯⋯! だがエルフが言うなら、そうなんだろうな⋯⋯」

 

 グランバハマル人が抱くエルフへの過剰な信頼は一体何なんだろう。

 

「初めて見る顔だな? ようこそ地下階層へ。一階は一本道で簡単だったろうが油断するな。ここからはそうはいかない。何せ、通路が入り組んでいるからな⋯⋯」

「ち、ちなみに聞いてもいい?」

「ん? なんだ」

 

 あの一階を簡単に宣ったこの男に、一つ聞いておきたいことがあった。

 

「あの骨って⋯⋯倒した?」

「お、なんだ。お前らもちょっかい出したクチか? なら分かってるだろ⋯⋯無理だよ、あの無限進化する不死のバケモノを倒すなんて」

 

 無理だよ、という言葉で、私たち三人の身体がピシリと固まる。

 

「わずかにでも理性があれば、あれを倒すだなんて考えもしないはずだ」

 

 真っ先に骨に挑み、作戦を立案した私にクリティカルが入る。

 その場で崩れ落ちた。⋯⋯ぐすん。

 

「そ、そう⋯⋯へぇ〜⋯⋯ふーん⋯⋯」

「い、いやでも⋯⋯倒せる人がいるかも⋯⋯」

「いないよ」

 

 陽介の折角の援護も、彼が食い気味に否定する。

 

 そして、トドメの一撃が繰り出された。

 

「いたらバケモノだよ」

 

「ば、ばけ⋯⋯⋯⋯」

 

 骨にトドメを差したエルフも、もろにダメージを受けた。

 いや、その、なんていうか⋯⋯

 

「た、倒せるわけ、ないわよね⋯⋯はは⋯⋯」

「まったくだ」

 

 あの、これ以上死体蹴りするのやめてもらえせん⋯⋯?

 

 

 ○ ✕ △ □

side???

 

 

 召喚された時は⋯⋯どうだったか。あまりよく覚えていない。

 

 クニとクニとの戦が始まって、私はそこに巻き込まれた。

 家は焼かれ、畑を荒らされ、父と母は泣きながら殺された。

 

 ひたすら逃げた。逃げる最中、どうして何もされていない自分たちまで殺されなくてはならないのかと、豪族どもを呪った。

 

「⋯⋯かの氏は、何も守ってくださらなかった。私たちは、何のために税を納めていたというの? どうして、どうして」

 

 だが、ひ弱な子供に生き残る力などありはしない。

 私は、洞穴の中で眠った。

 

『汝、何を求むるか』

 

 夢だろうか。森の中で、光り輝くそれに問われて、私はこう答えていた。

 

「強きを挫き、弱きを助ける⋯⋯そんな力が、私にあったのなら⋯⋯正しく使って、皆を、家族を、守りたかった⋯⋯!」

『良いだろう。その志、しかと受け止めた』

「⋯⋯へ?」

 

 目が覚めると、私は一つの長大な剣を持っていた。子供には、とても持ち上げられそうにないというのに、まるで自分の半身かのように自在に持ち上げられた。

 

 その後、神の告げが示す方向に向かい、この世界は大和国ではないと知った。

 そして、王侯による圧政に苦しめられている王国で、それに抗う人々に出会うことになる。

 

「君が、伝説の転移者だって子かな?」

「えっと⋯⋯そうです」

「僕はこの国の第三王子だったものでね⋯⋯父上の圧政を止めるためにここにいる。気軽に、指導者(リーダー)と呼んでくれ」

 

 そうして、抵抗組織《新王国派》として、旧王国との戦争を始めることになった。

 

 戦場で掻き集めた死体を、指導者が名付けてくれた《邦神剣》の力で力を与えて対抗させ、強大な敵の魔法を吸収して立ち向かった。

 

 でも、殺生は限りなく控えた。私みたいに、巻き込まれた人が大勢いるはずだ。戦いを止められるのならと、自ら敵軍も交渉した。

 

 その時の敵軍の将軍として、人生を変えるキッカケをくれた彼女⋯⋯吸血鬼族の女王が現れた。

 

「そなたが、イレルラーズからの来訪者か。どこの国か聞いてもいいか?」

「えっと……大和国(ヤマトバハマル)と言います」

「東方の国か⋯⋯? 聞いたことがない。やはり世界は広いな。我はワラキアバハマルから来た、ヴラディスラウス⋯⋯⋯⋯いや、今はフィリア・ドラクリア・ダキアという」

「わ、わらきあ……? その⋯⋯さっぱり分かりません」

「⋯⋯ふっ。だろうな。御託はここまでにして、神剣の使い手よ。我と一戦交えろ。試してやる」

「え? ちょ……っ!?」

 

 力を喰らい、我が物とする《捕食解放》の喰神剣と、力を奪い、自由に分け与える《簒奪分与》の邦神剣。

 

 しかし、より奪う事に特化していた喰神剣に分があったため、辛酸を嘗めさせられた。

 

 結果は引き分けたが、あのまま力を喰われ続けていたら、負けていたのは我の方であっただろう。

 

「邦神剣だと? そんな矮小な器ではなかろう。その力……王が使うに相応しいとは思わんか?」

「王……?」

「そなたは、あんな俗物に仕えるべきではない。強きを挫き弱きを助くその剣の真名は────《王神剣》。さあ、自ら邦を導く王となれ⋯⋯少女よ」

 

 その言葉を、その時はまだ受け止めきれなかったけれど、戦いを通じて、私は徐々に覚悟を決めていった。

 

 新王国派として戦場で剣を振るい、屍を指揮し、旧王国の残党を可能な限り捕らえていった。

 

 そして、新王国派が首都を完全に掌握し、その祝宴が開かれる。見知った顔が何人かいなくなっていて、居たたまれず、私はその場を去った。

 

 ⋯⋯やっぱり、戦ごとは嫌いだ。

 

 私は墓地に赴き、戦死者たちに祈りを捧げていた。

 

「戦勝の祝宴にも出ずに、またお祈りかい?」

「⋯⋯はい。この戦いで散っていったすべての人たちの御霊が、安らかであらんことを」

「優しいね。でも⋯⋯この地を支配する悪辣な愚王を討ち取り、この戦いに勝てたのは、異世界から神様に遣わされた君のおかげだよ⋯⋯!」

「いえ、そんな⋯⋯」

「はは、謙遜しないで。〝過剰なる力〟のみを徴収し、〝皆を護る兵士〟を生み出す、『徴税』・『防備』の邦神剣⋯⋯! 豊かな邦を支え護りたいという、願いの顕現⋯⋯とても優しく清廉なる力だ」

 

 親しんだ人たちの亡骸を使い、死後もなお死地へと追いやる私は、あまりこの神器の力を好いていなかった。

 

 でも、この力で大勢を救った。そこだけは、誇りに思っているつもりだ。

 

「僕が王になった後も、その力で助けてくれるかい?」

 

 だから、必要とあらば、この剣を使い続けよう。何十年、何百年と⋯⋯

 

「は、はい! これからも⋯⋯⋯⋯!」

 

 しかし、歯車は一瞬で狂ってしまった。

 

 振り向きざまに、腹を剣で斬りつけられると、そのまま倒れ伏した。

 何が起こったのかも分からなくて、必死で指導者を見上げた。

 

「⋯⋯ごめん。得体の知れない余所者が功労者では⋯⋯その⋯⋯困るんだ。国がまとまらなくなる。これからはその剣だけでいい。君はゆっくり休んでくれ。そこに眠る、旧王国派の方々と一緒にね」

 

 何を、言っているのか。

 

 ⋯⋯いや、分かっていた。多分、ずっと前から。

 

 指導者は、私が活躍した戦いでも、私の存在は一切明かさなかった。元から、歴史の闇に葬りたかったんだろう。

 

 それは、いい。私がどうなっても、一度は終わった命なんだから、それでもいい。

 

 ただ⋯⋯

 

「約束⋯⋯は⋯⋯」

 

 奪い取られた神器の刃を握りしめて、指導者を引き留める。

 手からも血が流れて、酷く痛くとも、これだけは⋯⋯

 

「戦⋯⋯が、終われば⋯⋯降伏、された⋯⋯方々は⋯⋯新王国の⋯⋯国民として⋯⋯」

 

 そう尋ねるも、指導者の返事は無かった。目を伏せて、黙殺していた。

 

「⋯⋯⋯⋯まさか、あの子たちも⋯⋯⋯⋯?」

 

 いつかの私と同じく、戦に巻き込まれただけの人たち。

 同い年くらいの子もいて、絶対に、命だけは奪わないようにと⋯⋯

 

 降りしきる雨の中で、そんな私の願いは聞き届けられず、指導者はニッコリと微笑んでいた。

 

 そうか。

 お前も、そっち側か。

 

「大丈夫、苦しまず────」

「神威解封」

「は?」

 

 邦神剣の力は、こんなものではない。

 

 いや────王神剣。

 それが、私の⋯⋯我の、力の根源だ。

 

 奪い、与える。ただそれだけ。

 だが、それは王として君臨するに相応しい能力と言えた。

 

「我──森羅万象凶禍津事主(ありとあらゆるまがつことのぬし)と成りて、汝らに厄災をもたらさん」

 

 新王国は滅びた。だが、自分の国を作ろうとは毛頭にも思わなかった。すべき事をして、我は満足してしまったのだ。

 

 地下に迷宮を築いていると、吸血女王が訪ねてきた。

 

「民を率いて、王にはならんのか? その器はあろう」

「⋯⋯おいおい、どこに民草を根絶やしにする大王(おおきみ)がいるって? 一人とて国民の居ない、骸の国くらいがお似合いだとも」

「ふぅむ⋯⋯正論ではあるがな」

 

 吸血女王は喰神剣を片手で掲げて、その刃の先を見つめた。

 

「我は槍が好きだ。聖人をも殺す力がある。⋯⋯これは鎌だがな。しかし、我は容赦で国は成らんと思っている。絶対的な象徴が⋯⋯力が、必要なのだ」

「⋯⋯この神器みたいに、か?」

「そうとは限らん。我は、槍で貴族から農民まで平等に貫いた。生きるに値しない外道は、我からの制裁を加えるとな。つまり何であれ、象徴であれば良い。我はそうであり続けようとした⋯⋯最期など、見るに堪えんほど無惨だったがな」

 

 それは、転移する前の世界の話なのだろう。遠い目をして、クツクツと笑い始めた。

 

「そなたは間違えておらん。それに、善良な民は逃がしていただろう? 我の後継として⋯⋯どうだ? 国を護り、育ててはみないか?」

 

 血のような深紅の瞳に見つめられる。

 だが、我には、どうにも気力が湧かなかった。

 

「今は遠慮しておくよ⋯⋯千年か、二千年か。その時、我のダンジョンを攻略する者が現れたら、その身体を乗っ取り、地上に楽天でも築くとでもしようか」

「それは面白いな。それまで、我が生きていればいいがな」

「ククク⋯⋯なあに、吸血鬼なら座して待てども死なんだろう?」

「それもそうだな。楽しみに待っておくとしようか」

 

 

 

 ⋯⋯そう、約束を交わして幾星霜が経ったか。

 

「オートム⋯⋯シャリオン⋯⋯オークがお⋯⋯エルフ⋯⋯」

 

 並び立つ四人を睥睨しながら、手に入れた身体の感覚を味わう。

 

 多少の消耗はあるが⋯⋯⋯⋯まさに最高の肉体と言ってもいい。

 

「ズット⋯⋯見てタ⋯⋯君たちガこの城に入ってきてかラ、ズット⋯⋯ズット欲しかっタ⋯⋯女王のチカラ」

 

 変化の魔法を解くと、黒髪から色が抜け落ち、目が紅く染まる。

 口の鋭い犬歯まで隠蔽するとは⋯⋯女王はよほどお仲間に種族を知られたくなかったようだ。

 

 ⋯⋯しかし、王神剣の能力を知っておいてなぜ接触しにきた?

 

 全く理解できないが⋯⋯肉体をくれるというのなら、好都合ではないか。

 吸血鬼族の奥義たる根源魔法に加え、魔力を身体能力に転換する闘気と闘技、吸血による瞬間再生能力、エルフの継承級収納魔法⋯⋯

 

 そして、そこに仕舞われているであろう神器・喰神剣。

 

 笑ってしまうよ、こんな過剰な戦力が得られるとは。

 

「幾星霜ヲ経て蘇りシ我が名は、(かばね)の王マガツコトノヌシ」

 

「神より賜りシ神器・王神剣により────総てを奪イ凡てを与エ、永遠に君臨すルものなり」

 

 我が負ける可能性は、万一にも見当たらなかった。

 

 

*1
TIPS オンスモ

3DアクションRPGの死にゲーがソウルライクと言われた発端である、フ□ム・ソフトウェア発のゲーム、ダー○ソウル

その無印に登場する二体のボスキャラ、オーンスタインとスモウのコンビのこと

詳細は省くがゴミ○ス




今まで適当に書きすぎて、これまでの各話における時系列がぐっちゃぐちゃな事に今更気が付きました。
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