異世界おじさんvs異世界TS娘   作:SEGA機未プレイお兄さん

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お久しぶりです
就活時も一段落したと思ったら全然暇じゃなくて本当に申し訳ない……


ストローで吸うみたいにやるといいらしい リフィアカルネイアの軌跡6

 

「オートム⋯⋯シャリオン⋯⋯オークがお⋯⋯エルフ⋯⋯」

 

 並び立つ四人を睥睨しながら、手に入れた身体の感覚を味わう。

 多少の消耗はあるが⋯⋯⋯⋯まさに最高の肉体と言ってもいい。

 

「ズット⋯⋯見てタ⋯⋯君たちガこの城に入ってきてかラ、ズット⋯⋯ズット欲しかっタ⋯⋯女王のチカラ」

 

「幾星霜ヲ経て蘇りシ我が名は、屍(かばね)の王マガツコトノヌシ」

 

「神より賜りシ神器・王神剣により────総てを奪イ凡てを与エ、永遠に君臨すルものなり」

 

 さて、肝要の吸血鬼族の神器は何処に⋯⋯あの鎌さえあれば、我には最早敵は居ないというのに。

 

「⋯⋯リフィアさん?」

「もう違うわ! アレは⋯⋯リフィアは、恐らく悪霊の類に乗っ取られた」

「ゴースト系⋯⋯それを、よりにもよって唯一の神聖魔法使いがかよ!」

「やられたわ⋯⋯! 私なら、魔導具と神器の判別くらい付いたはずなのに⋯⋯!」

「今更後悔しても仕方ない! それよりどうする、エルフ、フォウ・ミサキ──おい、フォウ!?」

「ら、フォウさん⋯⋯正気を失ってます⋯⋯!」

「⋯⋯⋯⋯オーク顔には、何か秘策があるみたいよ」

「えっ⋯⋯こ、この顔でか!?」

 

 作戦会議か。まあ、好きにやらせてみるか。

 

 それより、喰神剣の行方だ。

 

 《スキッドラーズ・ガッドトリア》という、エルフの継承級魔法。その詠唱節と効果だけは昔から有名だが、女王が使っていたのを見るに、根源魔法でも使用可能なのだろう。

 

「スキッドラーズ、ガッドトリア⋯⋯やハり駄目か。エルフ君、君なラ、知っていルだろう?」

「はっ⋯⋯誰が教えるものか、屍の王め」

「君でハ我に勝ち目が無いというのニ、随分と大口を叩けるものだネ?」

「そうかな? エルガの名も見縊られたものだな」

「⋯⋯⋯⋯エルガ?」

 

 エルガ王族。

 我も知るエルフ氏族が一つだ。穏健派の武闘派気質と聞いているが、その末裔か。

 

 そういえば、最初の方で長ったらしい名前を言っていたような⋯⋯まあ、どうでもいいか。

 

「それデ、魔法ノ効かぬ我ニどう挑厶と──」

「──〝過速崩撃〟」

 

 拳撃が我の腹を撃ち抜いた。魔法の影響はギリギリで奪った。しかし、これは⋯⋯

 

「ごはっ!?」

「魔法が効かないなら、斬るか殴るかすればいいんだろう?」

「くっ⋯⋯おい、たわけ! お前の友人の身体だろう!?」

 

 エルフの腕力はバケモノか⋯⋯!!

 しかもこうも容赦無く殺しに来るとは、これは評価を改めざるを得ない。

 

「殺しても殺し切れないとの本人のお墨付きなんだ! 少し心が痛むぐらいで敵を倒せるならば、遠慮は要るまい!」

「この蛮族めが!! ────分与(や)りませ!」

 

 骨を一本、王神剣で斬りつける。瞬く間に増殖したそれを、エルフ君に叩きつける。

 

 だが、寸前でそれは割り込んで来た。

 

「──〝鮮赤衝角発動(レッドラム・ドライブ)〟!!」

「──《ザックトーラ・キャトルフ》!!」

 

 骨の壁を突き破り、我に目掛けて一直線か。仲間への情の欠片でも見せてくれれば良いものを。

 

「《疾風駆送(ワーグレント・スラドセルド)》」

 

 シャリオン君にまずは目標を定める。魔斬竜セイバードラゴン⋯⋯その力は非常に厄介なんだ。先に墜ちていてくれ。

 

 変化した爪と王神剣が衝突すると、王神剣はその場から魔法で形成されたそれを吸収し、刃が生身の肉体を斬りつける。

 

「シャリオン!! チィッ⋯⋯」

「おやおや、我の力を忘れたのかな? ぼけが早いな、君達は」

「一旦⋯⋯黙っとけ!」

「おっと」

 

 だが、物理剣を扱うオートム君も十二分に脅威だ。しかも生体由来の、鎧型の魔物を使って自己強化とは⋯⋯我の対策にはお誂え向きが過ぎるな。

 

 シャリオン君を回収され、回復術が行使される。今は気軽に神威解封もできない。面倒な事になったな⋯⋯

 

「エルフさん、いけるか!」

「援護するわ、好きに動きなさい!」

「あいよ!」

 

 オートム君の隙間を縫って、魔法の一撃が我の頬を掠める。鞘を展開した、新型魔具でこちらに狙いを定めるエルフが、自在に動き回りながら魔法を収束し、撃ち込んできたのだ。

 

 超重穿孔形態⋯⋯我の時代には未だ研究中との事だったが、実用化されていたか。あれは欲しいな。

 

 ⋯⋯そら、一つこちらも真似事といこう。

 

「分与りませ──」

 

 頭蓋を一つ手に取り、それを剣で斬り飛ばす。エルフ君が頭蓋を撃ち抜くが、巨大化したそれを止めることはできない。

 

 我の設定した時間通りに、頭蓋は爆発を起こす。なんてことはない。過剰な魔力による暴走だ。

 

 しかし、収納魔法の絡繰を聞き出せそうにはないか。エルフ君の継承級なだけはある。面倒な手順を踏むのだろう⋯⋯

 

 ⋯⋯待てよ。継承級と言えば、吸血鬼族の継承級があるじゃあないか。

 

「どこ見てんだ、よっ!!」

「煩いな。生憎、君に構ってる暇は無いんだ」

「オートム殿!」

 

 王神剣と鍔迫り合いをするオートム君の背後から、骨でグサリ。やはり自律機動はいいね。闇討ちのしがいがある。

 

「て、め⋯⋯⋯⋯!」

「オートムッ!!」

「ダメよシャリオン! あなたじゃ、すぐに魔法を吸われてしまうわ」

「う、ぐう⋯⋯!!」

「正しい判断だね。⋯⋯では、指を咥えてみていたまえ」

 

 ──《記憶走査(イキュラス・スラドラーチ)》

 

 ⋯⋯⋯⋯ふむ?

 

 出てくるのは我の記憶ばかりで、女王の記憶がまるで読み取れないな⋯⋯まさかこの魔法、魂を参照しているのか?

 

「弱ったな⋯⋯頼みの綱も使えんとは」

 

 エルフ君に近接戦を仕掛け、この魔法を使えればいいが、リスクが大きい。

 

 仕方あるまい。地道にやるしかないか⋯⋯⋯⋯

 

「では、根源魔法の実践といこう────《炎凰殲滅(バライブートフォルグ・バストー)──」

「間隙の収納魔法は、こちらではなく間隙世界⋯⋯異空間に対して唱える。心の中で古言語、《間界開扉(スキッドラーズ・ガッドトリア)》だ」

「なっ⋯⋯フォウさん!?」

 

 思わず詠唱を中断する。

 ずっと黙っていたと思えば⋯⋯小賢しいな、オークがお君。

 

 どうせ時間稼ぎの嘘だろうが、乗ってやるとするか────《スキッドラーズ・ガッドトリア》と。

 

 ⋯⋯えっ。開いた。

 

 あれ? おいおい、〝まじ〟だったのか。

 

 〝喰神剣〟をイメージして取り出すと、己の手にそれは宿った。

 剣とは似ても似つかぬ大鎌。我より遥か以前より、この世界に顕在する、史上最古の神器⋯⋯

 

「お、おお⋯⋯!?」

「そして、喰神剣の神威解放⋯⋯その効果は、捕食対象とその範囲の拡大、捕食したものの能力の、自己への一定時間の付与だが、そのかわりに膨大な血液を消費する」

「フォウさん!?」

「それが、喰神剣が吸血鬼族にのみ振るうことを許された理由か⋯⋯!」

 

 しかし裏切りか⋯⋯クククッ、絶体絶命の土壇場では、人間の本性が現れるものだ⋯⋯これだから、人はつくづく面白い。

 

「良い事を聞かせてもらった。では早速、君達で味見と洒落込も────」

「よし、マガツコトノヌシ。俺のHPを飲め」

「「は?」」

 

 我とエルフくんの声が重なる。いや、HPという単語の意味は血の事だと、君らの行動を見て察しは付いているが、ちょっと何を言っているのか理解できなかった。

 

「⋯⋯いや待て、待てよオークがお君。君は我の軍門に下ると、そう言っているのではないのか?」

「? 違うぞ?」

「??」

 

 もしかして、コイツは阿呆なのか? 頓智も過ぎればただ滑稽なだけだ。 

 

「お前を倒す。だからHPを飲め」

 

 だから?? 〝だから〟の使い方間違ってるだろ、君。

 全くもって論理が破綻していると言わざるを得ないが?

 

「⋯⋯⋯⋯なあエルフ君。君、これを翻訳できるか?」

「⋯⋯⋯⋯まあ、恐らくは、敵を万全な状態にして、全力でやり合おう、という意思表明、かも⋯⋯?」

「⋯⋯そうなのかい? オークがお君」

「そうだ」

 

 そうなのかよ!! くっそ、せめて否定して欲しかった⋯⋯!

 

「ま、まあ、私とオーク顔は以心伝心みたいなものだから!」

「戦いでのろけるなよ、エルフ君⋯⋯」

「首が一番吸いやすいそうだ。この辺りに歯を突き立てて、ストローで吸うみたいにやるといいらしい」

「それと君は本当になんなんだ! ああもう、調子が狂わされっぱなしだ⋯⋯」

 

 こうして疲弊させるのが君らの戦略というのなら、大成功だよ畜生め!

 

 もう何も考えたくない⋯⋯もう口車に乗って吸うか。魔法は封じたようなものだ。刺されたとして、神聖魔法だってある。万が一ここで何をされても、我には完封できる。

 

 とにかく、コレの意味不明な発言を止めたかった。

 

「ああもう、文句言うんじゃないぞオークがお君!」

「いいぞ、来い」

「じゃあ、その⋯⋯失礼する」

 

 首に手を回し、鋭くなった歯を立てる。

 

 溢れ出す血液を、舌で転がす。血の味など、戦いの最中さんざ噛み締めてきたが⋯⋯⋯⋯

 

「ん⋯⋯っ!?」

 

 なんだ、この味は。

 

 グランバハマルで一度口にしたことがある、甘露にも似た甘い味わい。少しのしおはゆさがあるが、それが血の甘みを引き立てて⋯⋯血の甘みとはなんだ!?

 

 だが、美味い。我の生涯で、この血以上の味わいは無かった。

 吸血鬼族は、こんなものを毎日糧にして生きてきたのか⋯⋯!

 

「く⋯⋯ごく⋯⋯」

 

 目が冴える。身体に力が充溢する。死中に活を見出すような、そんな快楽が押し寄せてくる。

 

 ⋯⋯⋯⋯いや、快楽だと?

 

「は、はっ⋯⋯ぁむ⋯⋯んく、んっ⋯⋯」

 

 それを意識した途端、自分の身体の異変に気が付いた。

 身体は熱く、息が荒くなる。加えて、下腹部に未知の感覚が走った。でも、この至高の美味しさには抗いがたくて⋯⋯

 

「マガツコトノヌシ! 正気に戻りなさい! オーク顔が干からびちゃうわ!」

「⋯⋯⋯⋯ハッ!?」

 

 エルフ君の叱責で、我に返った。見るとオークがお君の骨張った顔が、さらに骸骨のようになって、まるで骨に皮を張り付けたような⋯⋯

 

「おおおオークがお君!? まずい、血を抜き過ぎた! あーええと、オートム君! 君とっくに回復したろう! 回復術を⋯⋯!」

「いやどういう状況だよ、これ⋯⋯」

「な、なんか、フォウさんが、屍の王に血を飲ませて⋯⋯」

「なんだそれ、訳がわからねぇ⋯⋯!」

 

 ああそうだ、我も神聖魔法使えるんだったな。詠唱は確か…………

 

 何ゆえにそう考え始めたのか、なぜ慌てているのか、それは我にも不思議だった。

 

 先程まで殺し合いをしていたとは思えぬ緊張感の無さだ。

 

 宿主の影響、ではないのだろう。王神剣の理は、貌の理とはまた別のものだ。器が自身に影響する事は無い。

 

 だというのに⋯⋯⋯⋯ハァ。

 

「⋯⋯おい、ねぼすけ。とっとと起きろ」

「ぐっ⋯⋯すまん⋯⋯リフィアはいつも、神聖魔法を使いながらHP吸収していたから、すっかり忘れていた」

「それなら血を抜き過ぎる前に申告したまえ」

 

 オークがお君が立ち上がると、何度か体を跳ねさせたり、体を伸ばし、変な動きを繰り返してから、拳を握り込んで

 

「よしやるぞ! マガツコトノヌシ!」

「⋯⋯今日はもう帰ってくれないか。やる気がしない」

「ええー」

「ええー、じゃないが?」

 

 オークがお君を除き、全員すっかり腑抜けてしまっている。

 ある意味で叩きやすくなっているとも言えるが、我も今一つ気乗りしない。

 

 骨の玉座に座って溜息を吐いていると、エルフ君が呆れ顔をやめて、目を鋭く細め、我を指差した。

 

「なら、リフィアの肉体はどうするつもり?」

「そこを譲るつもりは無いなぁ。折角の女王の肉体なんだ、みすみす手放すような愚行はするとでも?」

 

 まだ、我は何も為せていないのだからな。

 手始めに、この喰神剣をもってダキアの王となり、そこから吸血鬼族を従え東大陸を統一する。それが我の思い描く筋書きだ。

 

「⋯⋯なら、答えは一つね」

「全く⋯⋯やる気がしないと言ったのだがな」

「おお、やる気になったか!」

「オークがお君はもっと自重したまえよ⋯⋯だが、その心意気には応えようとも」

 

 右手に王神剣、左手に喰神剣。二つの神器が共鳴する。

 

 神喰らいの力と、王となる為の力。二つが合わさり、最早我に死角なし……と言いたいところではあるが。

 

「ったく、結局こうなるのか⋯⋯」

「でも、リフィアさんを取り戻す為ですから!」

「ああ。ここが正念場だ。後は⋯⋯死力、尽くすぞ」

 

 シャリオン君には神威解封を切るしかない。オートム君も物理的対処が必要だ。エルフ君はあの新型魔具の形態変化を見極めれば難しい敵ではない。

 オークがお君は未知数と言わざるを得ないが……ダンジョンでの様子を見る限り、魔法に頼った戦い方だ。対処は他三人より遥かに楽だろう。

 

 ただこの四人が合わさるとなると、一人で相手するのも容易ではない。ダンジョン内にいる臣下を総動員し、圧倒的な数の暴力で圧し潰す。これが、この戦いの答えだ。

 

「我は屍の王、マガツコトノヌシにして⋯⋯真祖の女王、フィリア=ドラクリア=ダキアである。汝らが、我が神威を打ち破れるか⋯⋯この目でしかと見てやろう」

 

 その作戦は、上手くいった。

 

 ……途中までは。

 

「全員離れろ!! 《光剣顕現(キライドルギド・リオルラン)》、《闇剣顕現(クローシェルギド・リオルラン)》」

「なっ……! 〝神威解封〟────よろづ喰いませ喰神剣!」

 

 臣下の固まっていた場所に、オークがお君が光と闇の混成魔法で天井を崩壊させたのだ。我も予想外の事態に、思わず神威解封を使ってしまった。

 

 崩落により、臣下の大半が埋まり、エルフ君やシャリオン君もこちらに絡む余裕が出来る始末。

 となれば、各個撃破がやはり重要だ。

 

「な────エルフさんっ!」

「え?」

 

 喰神剣の《捕食解放》は、食らったものに応じて自身を強化するという仕組みだと、オークがお君は語っていた。

 つまり、王神剣の《簒奪分与》で他者に与えた力を、《捕食解放》で喰らうことで、我はさらなる強化が見込めるということだ。

 

 生き残った臣下を喰神剣で喰らうことで、我は更なる飛躍を可能とする。

 

 エルフ君は我が後ろに回り込んだとは知らず、喰神剣の一撃をもろに受け、吹き飛んでいった。

 まずは一人。

 

「〝鮮赤衝角発動(レッドラム・ドライブ)〟……フォウ、合わせろ!」

「支援しよう────《機動纏身(レグスウィッド・ザルドーナ)》」

 

 ふむ、咄嗟にしては考えたな。

 だが、我には王神剣もあるのだぞ?

 

 臣下に力を分与してから、それを防具にして纏う。オートム君の物理剣が砕け散ったところで、左手で喰神剣の柄を巧みに転がし、上から振り下ろす。

 

 ……まあ、そう上手くはいかないか。

 

「ドラゴンネイル……ナイスだシャリオン!!」

「ぬぐっ……!」

 

 竜変化魔法による器の転変により、壊れた剣に竜の爪を模した刃が生える。

 簒奪すべく王神剣を振るうと、爪が掻き消えた。だが、幻のように消えた中から、半ばから折れた物理剣が現れ……

 

「すまんなリフィアッ!!」

「っ……あぎぃっ!?」

 

 顔に強烈な痛みが走り、左の視界が消滅する。してやられた。

 そこまで織り込んでいたか、オートム君。

 

「ちいっ⋯⋯」

 

 王神剣の神威解封の射程は我の認識の範囲内にのみ限られる。つまり視界の喪失は王神剣の弱体化に同義……知ってか知らでか、彼はやってのけたのだ。

 

 とすれば、警戒すべきは……

 

「《光剣顕現(キライドルギド・リオルラン)》、《烈斬(エバストルギド)》」

 

 王神剣が手から弾き飛ばされた。やはりこれが狙いか……!

 

 間隙を縫って、エルフの〝超重穿孔〟の魔力弾が動きを抑制する。

 くっ……姑息な真似を。それ如きで女王の身体を傷つけられると思うなよ。

 

 喰神剣は直接接触により物理、生体、神秘問わず全てを喰らい尽くす。

 魔力弾を斬れば漏れなく捕食だ。この身体能力ならそれも可能だ。

 

「……いきなさい、シャリオン!」

「はいっ! ────斬竜変、《ザックトーラ・キャトルフ》」

 

 全身竜変化による、広域殲滅攻撃。

 この範囲は、王神剣を得意とするもの。だが、弾き飛ばされた王神剣は遥か彼方、オートム君に押さえつけられている。言霊に呼応して此方へと飛んでくるが、そうなってしまえば、自力で回収するしか無い。

 

「〝神威解封〟……!」

『────グルアアア!!!』

 

 両翼に両脚、鱗一つ一つさえもが凶器である魔斬竜セイバードラゴンの攻撃は、掠るだけでも肉を抉り取られる。並の防御で防ぎ切れるものでもない。

 

 よって……逃げるに如かず。

 

「────《ブルート・ドラキュラ》」

 

 吸血鬼族が持ちうる闘技、《操血(ブルート)》が型の一。

 

 これにより、身体を自在に変化させられる。

 例えばそう……子供のように小さくなり、刃を掻い潜るような芸当も、決して不可能ではなかった。

 

 続けて血煙を撒き散らし、喰神剣から生えてくる竜頭を囮にして逃げ回る。

 

 だが、そろそろ喰神剣の神威解封に頼るのも限界に近い。

 血液のストックが残り僅かだと、本能が警鐘を鳴らしてくる。

 

 血液が無くなるにつれて、この身体も徐々に疲労が始まっている。

 決するならば、須臾のうちに。それが我に残された時間だ。

 

 よって、我の半身(王神剣)の奪回が最優先……!

 

「王たる証を踏み付ける愚かな行い、万死に値するよオートム君────《烈槍(エバストザスト)》」

「あまり舐めるなよマガツ……!!」

 

 剣が肥大化して、我の炎槍と拮抗した。

 剣の器が魔斬竜の爪と化している……あの竜変化使いめ、魔法の適用対象をズラしたな!

 

「オートムは、傷付けさせないっ!!」

「少々君を侮ってたよ、シャリオン君……!」

 

 魔斬竜の変化魔法を自分に適用後、その魔法の効果時間分を他に押し付けるという小手先の技術だ。

 しかし実行には高等な技倆を必要とする。それが最高難度の一種たる竜変化ならば、殊更と言えよう。

 

 思わぬ挟撃に苛立ちながら、喰神剣をぐるりと一閃し、牽制する。

 思わずつんのめったオートム君の足を払い、ついでに払った脚で王神剣も蹴り上げ、我が手許へ。

 

 ……すかさず、解封状態の喰神剣に、王神剣を近付ける。

 

「〝神威解封〟喰神剣──〝神威解封〟王神剣」

 

 これは、伸るか反るかの博打だ。

 

 喰神剣の《捕食解放》の能力で、他の神器を食らった場合、神器の力をも喰らえるか……もし可能ならば、我は真に無敵の力を手にすることができる。

 

 喰神剣の竜頭が王神剣を丸呑みし、妖しくも神々しき光輝が迸った。

 その圧力、魔力の密度、存在感、全てが我の未知の領域。

 

 ……勝った。

 

 我は賭けに勝ったのだ。

 

「〝神威、融合〟!

 いざや来ませ、神喰らいの王剣、〝喰王神剣(しょくおうしんけ)〟────」

 

 ズパァッ。

 そんな鈍い音が、我の顔から響いてきた。

 

 乗りに乗った口上が言い切れぬまま、我は容赦なく顔面を殴りつけられていた。

 

 我を見下ろすエルフの姿。オートム君を援護していた時、まだかなり距離があったはず。

 

 あの一瞬で、ここまで……! つくづく苛立たせる……!

 

 これはあまり使いたくなかったが、詠唱破棄────《炎凰殲滅(バライブートフォルグ・バストール)》。

 

 手の中で一瞬にして膨れ上がった鳳凰の炎で、エルフの驚愕がありありと照らし出される。

 

「陽介!!」

「《水蛇拘縛(レイミバルド・スタッガ)》」

 

 革袋から水を宙に投げてぶちまけると、それを水魔法で蛇に変えて拘束。だが、とっておきの拘束も我に触れた時点で即簒奪。

 

 それと融合の儀を阻まれたが、まあ子細なし。こうして王神剣と喰神剣は我が手にある。次の一手を模索し、今度こそ〝喰王神剣〟を大成せねば……

 

「オークがお君もとうとう手札が尽きたかな!?」

「──氷嵐在現(レイベリオ・ガルラ)」

「……なっ!?」

 

 それは、明確な弱点だった。

 魔法の作用する範囲の問題だ。水に関わる魔法は、物理的な水分が必要になる。 つまり、魔法の影響が打ち消されても、水は残ってしまう。それを凍らされたのだ。

 

 まさか、どこで勘付かれた……?

 

 チッ、王神剣を収納したはいいが、喰神剣はさっきの神威解放の直後で使用は困難。

 

「よし、次はこれだ。毒竜変──《形貌変躯(ザックトーラ・キャトルフ)》」

 

 毒竜……それ単体では、無論我に効くはずもなし。

 だが、毒の影響を受けた物体であれば……

 

「……この『毒に侵された肉』なら、効く」

「待て待て待て!!!! この身体が死んでも構わないのか!? 貴重な、吸血鬼族の生き残りだぞ!!」

 

 吸血鬼族とて、毒は厄介だ。再生する側から毒にやられる。

 血は無くなっていくし、消耗は尋常ではない。それは分かっているだろうに。

 

「救うよ。吸血鬼に魔毒は、効く」

 

 正気の沙汰ではない!!

 チッ、この身体は惜しいが、一旦離脱しなければ……!

 

「《神威、解封》!!」

 

 オークがお君の髪の毛に、我の剣が触れる。

 そう、王神剣が我とオークがお君の間で触れたのだ。つまり……

 

 憑依の条件を、満たした……!

 

「ルンルンルン♪ もらったァ!! ふはっ、ふひっ、フハハハハハ!!」

 

 我の、勝利だ。

 




おや、オーク顔くんが精霊と交渉をしていないような……?
大丈夫なのか……?

https://x.com/higa_noborun
あと最近ついったで、とある野望の為にお絵描きを始めました。今後おじさんとかリフィアとか描くかも?
誰もフォロワーいないので覗いてくれると嬉しいです……
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