異世界おじさんvs異世界TS娘 作:SEGA機未プレイお兄さん
え? この三つのどれも分からない? 早く履修してくるんだよォ!(脅迫)
追記
途中のアンテの奴は特殊タグなんで、クオリティはともかく使いたかったら誤字報告とかここすきから適当にパクってって……(なお需要)
リフィア──その名が付けられる前の少女にとって、外の世界は全てが地獄に等しかった。
吸血鬼であるというだけで、人々から石を投げつけられ、冒険者に追われ、教会がそれをダシにして住民から租税を巻き上げる。
そんな、地獄の世界を目の当たりにしてしまった。
この世界に来て一年。
サリファの言いつけを破って、少し遠くの街に行った結果がこれだった。
ふとした拍子にローブがめくれてしまい、銀髪と紅眼が露わになったのだ。
吸血鬼だ、と騒がれるのは時間の問題だった。
それを受け、千年来となる、聖十字騎士団の討伐隊が動き出す事態にまで発展。どうにか追っ手を撒いて、住んでいる隠れ小屋に駆け込んだ。
当然、そこから場所を変えることになり、現在は商業都市にあるサリファの拠点に身を潜めながら、外に出るのは間違いだったと、今更後悔していた。
「おれが、みんな、不幸に……」
「そんな自罰的になるんじゃねぇよ。でも、お前にも分かっただろ。この世じゃ、吸血鬼は人類を家畜にしようとした悪しき生き物なんだ。これくらい、子供でも知ってるぜ」
「外……おれ、だめ、ですか?」
「できればな。その赤い眼でも隠す方法がありゃあ、普通に生きてはいけるだろうが、そんなこと、禁断の変身魔法でもなきゃ使えねぇよ」
単語しか聞き取れなかったが、少なくとも、解決策があるのだとは、ニュアンスから分かった。
「……魔法? 使えますか? おれに?」
「あん? 変身魔法は、まぁ無理だろうが、属性の習得魔法なら訓練すりゃ使える奴はいる。適性があればの話だが」
「……えっと、おれ、何しますか?」
「そいつはだな……」
魔法の師匠も、親代わりであるサリファだった。
習得魔法だと、火の属性が使えるという。
いつでも火が起こせて、遺跡探索で重宝するが、攻撃にも使えて万能なんだと自慢していた。
鬱屈としたこの気持ちを晴らすような出来事に、興味を持たない少女ではなかった。
すぐに、練習を始めた。
「『ファイア、ファイラ、ファイガ! ギラ! ベギラマ、ベギラゴン! フォイエ、ギ・フォイエ、ラ・フォイエ! ファイアーボール! バーンストライク! ブレイジングハーツ! にゃーん!ゴルドカッツ!……うーん』」
知ってる魔法を日本語で唱えてみるも、反応は無い。
サリファが、訝しげな眼で見詰めてきた事に気が付いて、少女が顔を赤くする。
「お前、何叫んでんの?」
「さ、サリファ。うんと……異世界、日本、魔法、的な、です」
「ほぉ、ニホンバハマルの魔法かぁ。……そりゃ無理だろうな」
ただし、ゲーム内の技だとは、あまりの羞恥故に言えなかった。
特に、にゃーん、なんてのは。誰が作ったんだあの術は……
「いいか、よく聞けよ。魔法を唱える時の呪文ってのは、言わば式なんだ」
「……? 式?」
「あー、式ってのはあれだ。1+1とか、そういう奴」
ノートに書かれて、少女はようやく理解した。
「正しい順番で言葉を発していくと、魔法は完成する。学者共は、世界の理が規定しているとか言っててな。魔力を持つ者が発する古言語の音の並びが四次元方向に力を働かせて……とか、何だか小難しい事を並べていてな。詳しい事は何も分かってねぇんだ」
「……? ?? 意味、分からなかった。もう一度、言えますか?」
「あー、スマン。変な単語が多かったな。まあ、そういうルールなんだ。俺は納得いってないけどな」
「……納得?」
「周りの奴らは信じちゃくれねぇけどよ。俺の親父は、魔法は、精霊が行使者に力を貸すと発動すると考えていたんだ」
精霊。
少女が前に見たお伽話にも、その名前があった。
この世界が生まれた時から存在し、この世の全ての事象を司る伝説の存在。
内容はかなり簡潔で解りやすくされていたが、概ねその様な意味なのだろうと少女は理解していた。
「呪文は全部、古代語で作られてる。単語の意味を知り、その上で魔法を行使する必要があるんだ。だが、それはなんでだ? どうして古代語じゃなくちゃならねえのか。単語の意味を知っていないと発動できないのは何故か。……俺も、親父の話を聞いてから、そう考えるようになってな。居るかどうかも分からない精霊の謎を解き明かしてやろうとしてるんだ。途方もねぇくらい、時間はかかるだろうけどな。それでもやってみせるさ」
サリファは少女の頭に手を乗せて、ゆっくりと撫でた。
「……ま、そんな俺の想いを継げって訳じゃねぇが、お前にも、沢山考えて、知って、学んで欲しい。この世界は、まだ分からない事ばかりなんだ。俺の次は、お前が解き明かしてくれる事を願ってるぜ」
サリファの手は、少女には、とても大きなものに感じた。
いつしか失ってしまった、両親の手のように……
『はいどーもー! エルフのおじさんで〜す! 今日はこの、Unde○tale Gルート攻略パート4! やって来たいと思いまーす! そして、今日もお友達を一人連れて来ました〜! 入ってきていいよ〜!』
エルフが手でちょいちょいと招くと、画面内に、ベージュ系のミディアムボブの少女が入ってきて、エルフの隣に座り込んだ。
『は、はい。皆さん初めまして。エルフちゃんのお友達の勇者です。ヴァンパイアちゃんが用事で居ないので、今日は私がGルート指南をしていきたいと思います』
宜しくお願いします、とぺこりとお辞儀した。
まさかの新キャラに、この視聴者は唖然とした。
エルフ、ヴァンパイアに続き、このチャンネルは一体何人のVTuber……もとい美少女を抱え込んでいるのかと。
これが画面に映るアバターとかなら、まあ分からなくもない。
しかし、目の前に居るのは、恐らく現実でも存在しているのだろう美少女だ。
VTuberは方便と分かっている視聴者でも、あまりに現実味の無い話だった。
すると画面では、エルフが突然コントローラーを手放して、死んだ目で勇者を見ていた。
『……おじさん、もう前回でめげました。Pap○rus君、何も考えずに殺しちゃって、しかも、死に際にあんな……七瀬楓をこの手で倒した時の虚しさが蘇ってきて……』
『……あれは、中々悲しい結末でしたもんね。最後まで主人公を信じてましたし。後でS○nsのしっぺ返しが怖いですよね』
『弟を殺してごめん、S○ns……!』
涙ぐむエルフに、勇者がそっとコントローラーを持たせた。
『どちらにせよ、このルートをクリアしない事には、次のルートも攻略できませんよ。今は耐えて、これの攻略に専念しましょう』
『……うん、頑張る』
勇者がそう言うと、メガネを外して目をゴシゴシと拭き、胡座になってゲーム画面と向き合った。
動画にはプレイ映像が映り込み、エルフと勇者のプレイ風景が左端に追いやられる。
エルフ初登場回以降、ちゃんとゲーム画面が表示されるようになったが、エルフファンらにとってはゲーム画面など寧ろ邪魔なものであったりする。
尤も、この視聴者もその一人ではあったが、完全初見プレイの筈のエルフが見せる好プレーにも惹かれてしまったのだ。
特に、道中の敵と戦闘する時、大抵ノーダメでクリアしている。Unde○tale以外のゲームをかなりやり込んでいたと窺わせる熟練さを見せつけてくるのだ。
『いきなり槍投げつけてきた!? このゲームやだ……誰からも敵対されるんじゃん……早く他のルート行きたい』
『このUn○yneさん、どのルートでも槍投げてきますよ』
『えっ』
自機に向かって放たれる槍を、上手いこと回避して先に進んだ。
その後も、バレエシューズを拾ってひたすら敵を殺戮していくエルフ。
すると、モンスターと遭遇することが無くなった。
『あ、終わった?』
『ぽいですね。それじゃあ先に進みましょうよ』
『……次のボス、あいつなんだろうなぁ』
その先で、一旦セーブをする。
進んで行くと、恐ろしいプレイヤーに立ちはだろうとして、モンスターの子が現れる。
それに対して、邪魔だ。と言う主人公のなんと酷いことか。
視聴者も、このルートを見るのはあまり好きではなかった。
『待って、この子、殺すの?』
『あはは……そういう、ルートですし』
気まずそうに勇者が答えると、エルフは『こうどう』から『*ぶんせき』を選んで、調べ出した。
* いい カモだ。
この一文のせいか、プレイヤー達からは経験値呼ばわりされることが多い。
視聴者も、ニ○ニコではそう呼んでいるクチだ。
『……いいカモなんだなぁ』
『見ての通り、攻撃してきませんからね……』
『んー……まあ倒すか。えい』
やる時はあっさりやるんだな、と思った。
だが、モンスターの子に与えたダメージは、なんと、突然現れたUn○yneに庇われ、全てUn○yneに吸われる事になる。
『あっこれ、おじさんが完全に敵役じゃん! えー、こういうの本当に、異世界だけで十分なんだけど……』
『あー、あれも大概……って、もう始まっちゃいますよ!』
『あれ? この人、中々死なない……って、生き返ったな! ザ・ハウス・オブ・ザ・デッドだって、頭何回か撃てば敵倒せるのに……』
『そこの喩え、バ○オじゃないんだね……』
『BGMがなんか壮大に……! ええい、こうなったら何がなんでも倒してやる』
『が、頑張って……?』
そして、エルフは触った事も無い盾操作を迫られた。
『え、どうするのこれ?』
突然飛んでくる槍。咄嗟に十字キーを動かすも、高速でくる矢を受け切れず、ダメージを貰う。
『……十字キーで矢の方向に盾。よし、理解した』
エルフが画面に食らいつき、微動だにしなくなった。
本気の目をしているのは、視聴者からしても明らかで、この時ばかりは、エルフは実況者ではなくゲーマーだった。
回復アイテムを使い、再チャレンジ。
続く二回目の左右に立て続けに来る矢、そして遅く受けるタイミングの難しい三回目の矢を全て受け切り、着実にダメージを与えていく。
盾で受けるもの以外は、エルフの得意とする自機操作だ。
危うげもなくノーダメで通ると、バレエシューズでクリティカルを出す。
視聴者も、この操作の上手さには思わず唸ってしまう。
『硬いな……』
続く八回目で、反対側にワープしてくる黄色の槍という見なかった攻撃を食らう。
冷静に回復し、回転しつつ囲むように迫る槍を潜り抜け、次の12ターン目で攻撃。1726のクリティカルを与える。
『っ、来たか』
例の黄色の槍を見ると、コントローラーを構え直す。
『アップ、ダウン、レフライレフ!』
この前ドリキャスでやったのを引っ張ったか、そんな事を言いつつ、矢から身を守る。
結局二発被弾したものの、次ターンの黄色槍は難なく防御して攻撃。
エルフの執念のごとき集中力は、Un○yneの攻撃を全て見切るまでに至った。
【クソ……これほどの力をもってしても、敵わないというのか……?】
今度こそHPを全て失った彼女が倒れ伏す。
ボスへの勝利を告げる、LVの上昇音さえ全く聞こえてこない。
【そろそろAsg○reに、六つのソウルを取り込むよう伝えた頃だ。その力によって……この世界は、生き続ける……!】
シュン、と塵となって消えた。
その静けさのまま、フィールドに返される。
『…………こういうの、あと何回ある?』
『三、四回くらいです。……自分も見ていて辛いです』
『…………やりごたえがあるゲームなのになぁ』
やりごたえがあるからこそだろう、と視聴者は思う。
ゲームの世界に引き込ませるのは、やはり人の想像力なのだ。
それすら出来ない薄っぺらな物語とでは、やはり、ゲームへの入れ込み方が違うのだと。
『Un○yneを倒した所で、今回はここまでです。次回、ホットランド&コア編も観て下さいね?』
絶対観よう。
……視聴者は、美少女からのお願い事に弱かった。
「黒い風が、体を吹き抜けた……」
リフィアが玄関を開けると、なんだか地獄に招かれている様な、嫌な気分に襲われた。
地獄……ラン○ングヘル……にくまる……うっ頭が。
嫌な記憶を思い出しそうになって、かぶりを振る。
「いや、やっぱり黒い風が泣いてるのかな……それはそれで嫌だな」
なんか、誰か死にそうだし、と内心冗談をかましながら、靴を脱いで上がる。
「ただいまー」
……返事が無い。
リフィアの背筋に、冷たいものが走った。
ずっと纏わりつく嫌な予感は、気のせいではなかったのだ。
「ッ──陽介! 敬文くん!」
リビングの引き戸を開けると、テーブルの上で、上体を倒れ伏したままの二人が……
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙────」
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙────」
……真っ白に燃え尽きて、小さく呻いていた。
これには、リフィアもスンと真顔に戻る。
「……なんか悪いものでも食べた?」
ふるふると首を振る。違うらしい。
そうとなると、疲労が伴う行為と言えば……
「あ、動画でも撮ってた?」
「「はい……」」
敬文は言うまでもなく数時間の変身によるもので、陽介はゲームによる精神的ダメージと、エルフの能力全開でゲームにのめり込んだ反動による身体的疲労だ。
一体どんな体を張った動画なのかと、テーブルの上に放置されていたノーパソを開く。
既にその動画がアップロードされており、再生数がジワジワと伸びていた。
「……ほほぉ〜? 新キャラの勇者ちゃん、ね」
アリシアになった敬文が、自分の代わりにGルートの案内役をしているというもの。
リフィアのスタイルと違い、ちょっと申し訳なさそうで、辛いところはちょっと涙目になっている。
アリシアの精神に引っ張られているからこその芸当と言える。
「ふじみのアン○イン、一回も死なずに倒してるし……でも陽介がガチれてるっぽくて良かった。やりごたえ抜群だったでしょ?」
「まあな……ゲームとしては、満足している。ただ、ストーリーが……ストーリーがなあ……」
「それが良いのに。敵を倒す楽しさと後悔の板挟みになりながら進むのがGルートの醍醐味だよ」
ニタリ、と美しいながらも悍ましい笑みで言うリフィアに、陽介はそっと目を逸らす。
稀に、陽介の理解の及ばない
「でも、エルフのあんな目見ると、なんだか懐かしくなるなぁ。初めて会った時とか、こんな風に睨んできたし」
「へぇ、そうなんだ! 聞かせてよ、その話!」
「……相変わらずだね、敬文くん」
さっきまでの燃え尽きていた姿は何だったのか、ゾンビが一瞬で人間に変貌を遂げたような敬文くんに、クスりと微笑む。
「エルフとは……そうだね、陽介が居なかったり、寝てる時にバチバチやってた感じだよ。ほら、お互い譲れないものが……ね?」
何やら含みのある言い方だが、言わずもがな。
そんな事があったとは露ほども知らなかったおじさんが、不貞腐れながら言う。
「お前ら、魔物の襲撃とか言いながら、こそこそそんな事やってたのか。野宿の後に俺が起きたら、毎回周りの地面が抉れてて驚いてたんだぞ」
「そんな寝る度に魔物が襲ってくる訳ないでしょ」
「寝る度にバトルしてたんだ……」
全くもってその通り。
それこそ、最初に会った時から三年近くも拳で語り合い続けている。
少し顔を赤くしたリフィアが敬文の隣の椅子に座ると、手を翳した。
「……《
満月の南中する、澄んだ夜。
闇夜に佇むエルフは、その翡翠の瞳の中に妖しい光を秘め、携えた魔導具に紫雷を閃かせている。
『私の前に自ら姿を見せるとは……吸血鬼族最後の生き残りは、随分と不用心なようだな?』
『心配には及ばないよ。……だって、君が私に勝てる要素なんて、一つも無いから』
エルフの目が細められる。
挑発に乗るような仕草もせず、逆に警戒を強めてくる様子を見て、リフィアも表情が引き締まる。
(ただのツンデレエルフかと思ったのに、中は意外としっかりしてる。……陽介への態度がブラフとは思えないけどなぁ)
数日の観察で、エルフのあまりに損な性格っぷりは呆れるほど目撃している。
古典的なまでのツンデレが、純粋な陽介にはただの悪口にしか聞こえていないという事実も含め、かなり憐れみを持っていたというのに。
『それは大言壮語……と言ってやりたいがね。その絹の如き銀髪と紅い瞳、ダキア王族直系のものにしか現れない証だろう。加えて、聖十字騎士団による侵攻の最中で失われたはずの神器、喰神剣まで持っているとなると、此方としても油断ならない訳だ』
『へぇ……よくそんなの分かったね?』
『私もエルガ王族の端くれなものでな。昔話を知るのが趣味なんだ』
「リフィアさん、王族だったんですか?」
「あー……そこはこう、色々事情があって。その時になったらまた詳しく話すよ」
「凄い気になる……」
「でも、私この頃何も知らなかったから、『いや何それ知らねー』って思いながら話合わせてた」
『へぇ……そんなのよく分かったね?』などと言ってはいるが、内心は知らない話を切り出されて焦燥気味になっている。
それが顔に出ていなかった事だけが幸いだった。
「めっちゃ知ったかぶってるじゃん!」
「それで話切ったら、エルフに恥掻かせるみたいで気まずいでしょ……」
自信満々に言ったのに、自分の早合点の上に相手が知らなさそうだったら、どんな人間でも恥ずかしくて火が出る。
『それで? 君も私を殺そうとするの?』
『私とて、そこまで野蛮ではないよ。ダキア王国とは、過去に我が国とも国交が樹立していたから、エルフは吸血鬼に偏見を持たない。私がこうして武器を構えていたのは、有り体に言えば為人を見ていただけだ。先日、隣国で騒ぎになっていたものだからな』
『…………』
リフィアが苦虫を噛み潰したような顔で押し黙ると、エルフは失言を自覚した。
エルフは、二年ぶりの吸血鬼騒ぎという情報を耳にしただけで、何が起きたのかは具体的に知らなかった。だがそのリフィアの顔を見れば、耐え難い出来事があった事は明らかだった。
『あ、その……気分を害したのならすまない』
『……大丈夫。自分の中でケリはつけてるから』
はぁ、と小さく溜息を吐くと、大鎌を変形させて、コンパクトにしてから腰に提げた。
『で、エルフさん。君に一つ質問があるんだけど』
『ん、なんだ?』
『君は何でよう──フォウと一緒に居るの?』
「え? これ誰の事?」
「陽介の偽名だよ。この時は、二人の時しか呼んじゃダメだったから」
「まだ偽名あったんだ!?」
「因みに、フォウ・ミサキはエリソルの主人公、イプシロン2の本名なんだ。我ながら、主人公気取りはちょっと恥ずかしいな……いやぁ、若気の至りだ」
「このままだと、エリソルのボス全部名乗ってくんじゃないの……?」
敬文が知る限り、ウルフガンブラッド、黒木天魔、亀頭万作、ラブペンギンと増えていっている。
早くもネタが尽きるのではと危惧していた。
『オーク顔なら……その、私が魔毒竜ヴェノムドラゴンと戦っている時に、戦いに入ってきて、トドメを……』
『横入り!? うそ、アイテムルートされなかった!?』
エルフの肩をガシッと掴んで、妙に炯々とさせた紅眼が視界を覆い、恐怖のあまり、ヒッと声が出ていた。
『きき、吸血鬼殿……?』
『幾らなんでもそれは非常識だって……陽介叩き起こして謝らせないと』
『いや違うわよ! そうじゃない! 私がやられそうだった所を助けて貰って……』
『え、あっ、違った……?』
エルフがなんとか訳を説明すると、リフィアが安心したように息を吐き出した。
そこまで見たところで、おじさんが映像を止めた。
「横入り、ルートか……駄目だ、さっぱり分からないな。俺、何かマズイことしてたのか?」
「あれ、MMORPGの用語だもんね。おじさん、ラグ○ロクオンラインとか知らないでしょ? 『お兄ちゃんどいて! そいつ殺せない!』とか、結構有名なんだけど」
「超物騒だな!? MMOって!」
「あ、陽介知らないんだ。もう、しょうがないにゃあ……」
「リフィアさんがそれ言うと洒落にならないからやめて」
ラグ○ロクオンライン、2002年サービス開始である。
2022年には20周年記念して四次職も登場し、まだまだ現役のネトゲだ。
『……リフィア=カルネイア』
『うん?』
『私の名前。吸血鬼殿って言いづらいだろうし、リフィアって呼んで』
『ああ……じゃあ、そうさせてもらうわ。あなたとは、何だか長い付き合いになりそうだし』
『あはは、そんな気がするね。君のことはなんて呼べばいい?』
『……エルフで構わないわ。私以外、国外に出てるエルフはいないから』
『そっか……よろしく、エルフ』
かくして、二人の交友は、リフィアが異世界を旅立つその日まで、保たれる事になったのだった……
正に、これで話が終わりそうな所で、敬文が、いやいやと突っ込んだ。
「あの、これって、リフィアさんとエルフさんが毎晩のように戦う話なんじゃ……」
「まぁまぁ、見てなよ」
ここから一体何が……と思って映像に向き直ると、ヒェッと恐怖した。
妖しい翠光を湛えた眼が、どアップで映し出されていたのだ。
『……リフィア? あなた今どこに行こうとしてたのかな〜?』
『どこって……フォウのテントだけど』
『……へぇ?』
『……ふぅん?』
お互い、全てを察した。
目の前のこれが敵であると。
『美形揃いの吸血鬼族の癖に、オーク専門なんて趣味が悪いんじゃない?』
『……オーク顔は言い過ぎかな。それに私、これでも元男だから。男同士でなら、一緒に寝たって間違いなんて起こらないでしょ?』
『元男なんて、どうせ関係無いでしょうに』
『……君も同類なのによく言うね』
腰の大鎌に手をかけた。
収納魔法から魔導具を取り出した。
『勝負しようよ。勝ったらフォウと添い寝の権利。これでいい?』
『上等じゃない。殺す気でかかって来なさい』
「あ、ここから凄く長いから飛ばすね」
「一体どれだけやってたんだ……」
あと、敬文的に戦闘シーンはかなり観たかったので、ちょっとしょんぼりした。
画面では、曙光が穴ぼこだらけの荒地を照らしていて、ボロボロで隣合って寝そべる二人の姿があった。
つまり、早朝である。
「いややり過ぎでしょ!? どんだけ負けたくなかったんだよ!」
「敬文くん……女にはね、譲れないもんってのが有るんだよ。これは仁義のない戦いなんだよ」
「仁義あったら堪らないでしょ……」
とどのつまりは、男の取り合いであるからして。
エルフが、大きく溜息を吐き出しながら文句を垂れる。
『……結局、引き分けのまま女同士で添い寝してるじゃないの』
『うーわ、それ言う? まったく、本気で戦い過ぎて血が足りないんだけど……ちょっと分けてよ』
『痛っ……な、何するのよ!』
『ん〜……あれ、おいしい。もっと飲んでいい?』
『わー! わー! やめなさいってばこの変態!』
『うぎゃっ!?』
……かくして、二人の戦いは、リフィアが異世界を旅立つその日まで、続く事になるのであった。
「はい、おしまい」
「……うん。知ってた」
多分、そんな事だろうとは敬文でも予想がついていた。
どちらも、陽介に対する愛情がカンストなのは、これまでの映像でまざまざと見せられていた。
この衝突もごく自然な流れと言えよう。
「……え、何? お前ら罰ゲームにするほど俺嫌いなの? この頃リフィアまでそう思ってたとか、俺かなり傷付いたんだが……」
「今の見てどうしてその解釈になるの、おじさん……!」
「私は添い寝好きだけどな〜。人肌って良いよね、温かいし」
「……リフィアさん、もしかして寝ながら血が吸えるからとか思ってたりしてないよね」
「あ、バレた」
「待って、俺そんなに吸われてるの? 最近、朝に身体が重いと思ったらそういう事だったのか……」
「大丈夫だって。毎日食事は鉄分多めにしてるから、血が無くなる事は無いよ」
「お、お前なあ……」
「ていうか、リフィアさん自分で血は作れないの?」
「流石にご飯を食べてれば作れるけど、それだと需要と供給が釣り合わないし……それはそれとして、血は飲みたいから……ね?」
「おじさんが嗜好品にされてる……!」
コーヒーを飲みながら、雑談に興じる日常。
「……あ、ピンポン。藤宮ちゃんかな?」
「おっ、そろそろ講義も終わった時間か。早いなぁ」
「俺行ってくるよ」
2018年9月初頭。
陽介が帰還して、もう直ぐ一年。
リフィアが住むようになって、早くも三ヶ月が経とうとしていた。
「お邪魔しまーす」
「……あ、そうそう、さっき、藤宮が居ない間に、リフィアさんとツンデレさんが初めて会った日を見てて──」
「敬文お前、抜け駆けして見やがったな!?」
「もっかい見せてもらえばいいでしょ……」
……来たるべき決戦の日は近い。
収入も潤ってきたこの頃。
俺ことたかふみは、日常を謳歌していた。
動画の再生数が十万以上をキープするのも当たり前なくらいになってきて、ネットでは売れっ子YouTuberとして話題になっている。
正直、ここまで稼げるようになるとは予想外だった。
リフィアさんが来てから顕著だ。あの人、お金を引き寄せる招き猫か何かじゃなかろうか。
おじさんもウキウキでセガのゲームを買って遊んでいる。
高校生だと、買えるソフトにも限りがあるから、どうしてもできなかった物もあるのだとか。
だが、そんな経済的余裕がもたらす効果を、俺はまだ、実感していなかったらしい。
「あ、そーだ敬文くん」
「んー?」
「藤宮ちゃんから恋愛相談受けたんだけどさ」
「詳しく」
皿洗いを一旦放棄して、リフィアさんに詰め寄った。
「それで、相手は? 今はどういう関係……」
「えーと、ちょっと顔が近いかな」
「あ、ごめん……」
……まずいな。
藤宮の事になると、つい我を失ってしまう。
落ち着け、高丘敬文。お前は強い子優しい子。もっと冷静になって聞こうじゃないか。
「……それって、俺に話していい事なの? 個人的にはかなり気になるけど」
「本人には、言うなとは言われてないから。それに、こうしなきゃ多分、何も始まらないと思って」
俺の耳元に口を寄せると、そっと囁く。
「藤宮ちゃん、敬文くんが好きだから、異性として意識して貰えないのが悲しいんだって。……だから、少しは意識してあげてね?」
とんでもない爆弾を残していくと、ふらりとおじさんの部屋に消えていった。
……え?
……はい?
頭の中で、リフィアさんに言われた事を何度反芻しても、その現実は中々受け止められるものじゃなかった。
ノートとペンを取りだして、状況を書き出す。
藤宮は、たかふみが好き。
たかふみは、藤宮を友達として大事に思っている。
藤宮は、たかふみに意識して貰いたいと思っている。
たかふみは、そんな事を思った事が無い。
「え、嘘だろ……?」
そろそろ、自分の頭がバグり始めた。
リフィアさんは、冗談でこんな事を言う人ではない。
異世界で17年も一緒にいて、ずっとおじさんが好きなのに、おじさんを困らせたくないからって気持ちを打ち明けなかったような人だ。
あの人以上に、恋愛に真摯な人を俺は知らない。
本気で、俺や藤宮の為を思って言っているのだとすれば、それは……
「〜〜っ!!」
いや、いやいやいや。
だって、藤宮はただの友達で、ましてやそういう目で見るとか、性欲盛んな男子大学生じゃあるまいし……
いや、待って。でも、藤宮がそういう目で見て欲しいなら、俺もそういう目で見なくちゃならないのか……? いやその理屈はおかしくないか……?
でも、藤宮と俺がそういう関係になるなら、やっぱりそういう事は必要で……でも、俺が藤宮をそういう目で見るなんて……
あれ? ……あれ? どうすればいいんだ?
訳が分からなくなって、椅子にどかっと座った。
目の前には、整理された二人の相関図が、やたらと存在感を増して居座っている。
……そもそも、藤宮がそんな素振りを見せてきただろうか。
『そういう風に見られて……私は、むしろ嬉しい……よ?』
『……っ私はたかふみに着替え見られても、嫌でもなんでもない!』
……あれっ。
今まで、完全に友達っていうフィルター越しで見てたから、純粋に優しさでそう言ってくれたんだと思ってたけど、客観的に見たらこれ、どう考えてもそっち系にしか取れないよな?
前に、なんか水着の写真送ってきた事もあったし……
いや、でも考えるんだたかふみ。
この前温泉に誘われた時だって、男女で温泉行くのはちょっとって渋ってた俺に、友達だろって念押しされて、やり込められた気が……
その後、コソコソ、おじさんに向かって毒って連呼してたな*2……
ずっと前に、エロマンガ媚薬の話*3を聞かされた時にも、おじさんに何か強請ってたような……
「いやいやいや、飛躍し過ぎだろ。まさかあいつが毒を盛るとか……」
「──こんにちはー!」
聞こえてきた声に、心臓がドキッと跳ね上がる。
咄嗟に置いてあった紙を丸めてゴミ箱にシュートした。我ながらナイス判断……
「あれ、たかふみ。リフィアさん達は?」
「……多分、そっちでゲームやってるよ」
「あー、いつものか。毎日よく飽きないよな〜。私もあれだけ熱中できる事があったら良いんだけどなあ」
「……うん」
やる気のない返事に、藤宮が不審がって覗き込んだ。
「たかふみ、お前なんで死にかけみたいになってるの?」
「……いや、大丈夫。平気だよ」
「本当に大丈夫? マッサージでもしてやろうか?」
「いや、本当に大丈夫だから……!」
そう言って、俺が勢いよく立ったのが悪かったんだろう。
藤宮の姿勢が崩れた。
「ぁっ!?」
「危な──ッ!」
足がもつれ、倒れかかる藤宮。
手を伸ばして、力強く引っ張った。
今度は俺の胸元に倒れ込んだものの、そこはしっかりと抱え込められた。
「ご、ごめん! 怪我はしてない?」
「……多分、右をちょっと捻った」
「分かった、今ソファまで運ぶから」
「待って」
藤宮が、顔を埋めたまま、もごもごと言ってきた。
「もう少しだけ、このままで……」
「……!!」
そう言われると、俺はどうする事もできなくて。
藤宮に触れてる部分が、急に熱を持ってくる。
触れただけで、こんな事になるなんて、今まで一度も無かったのに。
「今おっきな音したけど…………あっ」
引き戸から顔を覗かせたリフィアさんが、こっちを見て、顔を赤くした。
「……し、失礼しました〜」
「あっ、いや! ちょっと、藤宮が、右足捻っちゃって!」
俺が必死に事故だと伝えると、リフィアさんが表情を険しくさせた。
「そうなの? なら氷を……あ、待って。そのままで居て」
「「……はい?」」
リフィアさんが藤宮の足元に屈むと、右足首に手を当てた。
目を閉じると、リフィアさんの手が光り出した。
五秒くらいして手を離すと、これでよしと立ち上がって、藤宮に微笑んだ。
「神聖魔法で治癒したから、歩けると思うよ」
「……わ、凄い! もう痛くなくなってる」
俺から離れて、右足で普通に歩いていた。
足を捻っていたとは思えない軽快さで、驚いてしまう。
というか、リフィアさん……
「神聖魔法、使えたんだ……」
「まあね。神聖魔法使う集団に、日がな一日襲われてた事もあったから。乱用はできないけど、腕や足の一、二本くらいならすぐ治せるよ」
「マジですか。リフィアさん凄いですね……」
すると、リフィアさんが、俺にだけ分かるようにサムズアップしてきた。
……あの、藤宮を怪我させた元凶、俺なんだけど。
罪悪感やら何やらで、非常に反応に困るサムズアップだった。
そのまま、顔だけ出してたおじさんと共に部屋に引っ込むと、また二人だけ取り残される。
「……さっきは、その、本当にごめん。藤宮にあたっちゃって……」
「いいのいいの、気にすんなって。それに、ほら……」
何やら言いどもると、口もごにょごにょとさせて、小さく呟く。
「……たかふみに、抱きつけたし」
「んな……!?」
何かと思えば、自爆攻撃だった。
お互い、カッと赤くなって、そっぽを向いた。
まるで、中学生同士のやり取りかなと、心の片隅でそう思う自分が居るが、こればっかりは仕方がない。
俺なんて、まともな恋愛経験はこれっぽっちも持ってないのだから。
「…………コーヒー、飲もっか」
「…………うん」
……そんな事を考える俺は、いつの間にか藤宮が恋愛対象内に入ってきた事には、全く気付きもしなかったのだった。
共通ルートであるたか×ふじに突入……
個別ルートはアンケートから皆様の手で決めるんだよォ!(露骨なアンケ数稼ぎ)
おじさんは愛を手に入れられるのか?
-
友情こそ全て。愛など要らぬ。
-
エルフ以外ありえないんだが?
-
メイベルたん可愛いよメイベル
-
やっぱそこはアリシアちゃんだろJK
-
たかふみ、藤宮の計画再始動。
-
ハーレムなんて選択肢はありません。