黒歴史3話「こんなもん定期にするな」
「おおぉぉぉぉぉぉ!!!!??」
傍から見れば頭のおかしいやつ認定されるであろう雄叫びを上げながら、両手両足、特に足を必死に動かしているヤベー奴がいた。何を隠そう自分、小鈴陽向である。まあ何をしてるかと言うと。
「お〜!すごいよひな兄!」
「はえー。あんなガムシャラなのに、しっかりリズムキープ出来てんのすごいな。うるさいけど」
「すごいわね……、うるさいけれど」
「ええ、すごいです。うるさいですけど」
「おぉ〜、すごいね!」
「そ、そうですね……。すごい、です」
なぜかRoseliaの人達と愛斗くんの前で、ツーバス使ってドラムを叩いてた。
うるさいのは許してほしい、だってツーバスなんかやんの初めてなんだもん!左足を必死に制御してリズムを崩れないように必死なんだよ?!?!てか愛斗くん、あんた暴れてる時もっとうるさいかんな??……あとで新しい暴れてる動画まりなさんに渡しといてやる。というかすごい以外の感想がないのが悲しい。
さて、なんでみんなの前でドラムを叩いてるかと言うとだ。簡潔に言うと、全部愛斗くんのせい。
詳しく説明すると、バイトの休憩中暇だったからまりなさんにお願いして空いてるスタジオでドラムを触ってたわけですよ。それでですね、ふと気配を感じたんでドアの方を見るとですね?……いたんですよ、ドアに張り付いてる茶色い髪の毛した見た事ある野郎が。
なんでもRoseliaにコーチングする日だったらしくて、ちょうど休憩に入った時まりなさんから自分がドラム触ってるってのを聞いたんだと。自分がドラム叩けるの知らなかったらしくて、いつものお返しにってことで見に来たらしい。そんでもってドアに張り付いてる愛斗くんが気になってRoseliaの人たちも見に来たと……。あれ?元凶まりなさんじゃね?許すまじクソ上司。
それからなんかよくわからん流れで、叩いてるとこをもっと見たいとかほざきよった茶髪野郎のせいでみんなの前で叩くことになった。ツーバスに関しては、あこちゃんからの頼みだ。純粋な笑顔で頼まれたら断れるわけなかろう……、ロリコンではないです。
「あぁー……疲れた」
「まあbpm高めだったし、そりゃあんだけドコドコやってたら疲れるわな」
「あこちゃんあれ毎回やってんのすごいな……、尊敬するわ」
「ひい兄もすごかったよ!!どこどこするの初めてだったんでしょ?」
「ガチで初めて、左足あんな動かすの滅多にないから明日筋肉痛かも」
本気で足ちぎれるかと思った、マジで。でもやりようによっちゃ誤魔化せる。1番簡単なのだとフロアタム使う方法かな?ワンバスでもあら不思議!ツーバス見たいな音が出せるぞ!でも腕1本がフロアに度々呼ばれてちょっと不自由になるから大人しくツーバスやるかツインペダル置いといた方がいい。あとは単純に誤魔化してるだけだから聴く人によっちゃ即バレる、そりゃそうだ。
「やっぱ、陽向って叩き方上手いよな」
「まじ?愛斗くんに褒められるのは嬉しいな〜」
「マジマジ、大マジよ。多分、アクセントの付け方が上手いんかな? 知らんけど」
「あ〜ね、めちゃくちゃ簡単な小技?みたいなもんだよ」
ほんとにただの小技だ、なんなら愛斗くんは無意識でやってる気がするくらいのほんの些細な叩き方。じゃあ例えば8ビートで叩くとする、均一な叩き方じゃリズムは合っても抑揚がない。じゃあアクセントを入れよう!どこに入れる?ってなる。
力強い音がいいなら、ハイハットだけの部分、2、4、6、8のタイミングを少し弱めに、1、3、5、7のタイミングで強めに、それとスネアとバスの音を強調したらそれっぽく聴こえる。まあ簡単に言えば、4ビートっぽく聴こえる8ビートやね。
逆にハイハットゴリ押しで、ゴーストノート入れたり細かい音を入れたりしたらあら不思議、8ビートが強調されてなんか早く感じるって寸法だね!簡単だろ?
「って感じ。もし無意識でやってたなら、意識してやるともっとそれっぽく聴こえるからおすすめ」
「メリハリが出るもんな……まぁ、あんまり頭で意識したことなかったけど、読解できると気持ちいいもんだなぁ……いやー、有識者がいると助かるべ」
「ええんやで」
「あこもやってみるね!!」
「がんばってね、じゃあ自分はそろそろ休憩時間終わっちゃうからこの辺で」
「そっちもバイトがんばるんば」
「あんがと、あこちゃんたちも練習頑張ってください〜。じゃね」
そう言ってカウンターに戻ると、さっきの自分が雄叫びあげてツーバスしてた動画をまりなさんが笑いながら見てたので、速攻データを奪って消した。自分の暴れてる動画見られるのってこんな気分なんだな……。愛斗くんにちょっとは優しくしてあげよ、と思った。
後日、消したはずの動画とクソ腹立つスタンプが愛斗くんから送られてきたので優しくするのは無しにしようと決意した。あとまりなさんに問い詰めてちゃんとデータ消してもらった。