ゴウン、ゴウンと低い稼動音。溶接音と視界に入れれば目を焼くアーク光。整備兵達の活気ある声と技術者が議論を交わし、殴り合いに発展する場所。
完成を急がれている宇宙要塞ソロモン。
そのモビルスーツ工廠である。
独りぽつんと立ち、タラップからその情景を見る青年。
彼が目立つのは上下左右を行き来する整備兵の作業着でもなくジオン公国軍第二種戦闘服、通常時の軍服だからだ。
やや乱れ灰色の混じった黒髪に憔悴した灰色の瞳、物憂げな表情で何をする事なくその場に居た、メルティエ・イクス大尉は視点を工廠内に転々と移し、最後に一つのモビルスーツデッキで止めた。
MS-05B、ザクI。
開戦以降の、後に区切りされ一週間戦争と称される期間。
その内のブリティッシュ作戦まで共に駆けた、彼の愛機である。
激戦を巡った彼の機体は、無事な箇所なぞ一つもない。
頭部はモノアイレール以外焼け、特徴的なモノアイスリットの正面に存在した支柱がいまは無い。胴体部には弾痕と凹凸で損傷したコクピット・ハッチ部が完全に開かなくなっており、背部の回るとバーニア
「ここまで機体を使い潰すパイロットは稀だ」
ソロモン勤務の技術士官にそう言われ、機体の戦闘データを受け取る際。
「よくも壊したと怒ればいいのか。よくぞ使ったと喜んでいいのかわからない」
と、コメントを残していった。
メルティエは微妙な表情で彼を見送ると、最早自ら立つ事も叶わないザクIを見続けていた。
工廠の中では幾つかのザクIとその倍に及び、主力機に変わった機体MS-06C、ザクIIが並ぶ。
開戦前のU.C.0078年の時点で、ザクIIは既に存在、生産されている。
ベテランパイロットに多く搭乗され、戦果を挙げている現行主力機だ。
ザクIに抱えられた問題の動力伝達系統、冷却機能の改善が図られ、装甲強化を施されたザクIIは正に改善要求通りの性能を発揮。
軍上層部、特にキシリア・ザビがこれを推したと聞くが一介のパイロットであるメルティエには預かり知らぬ話であった。
彼に理解できたのはザクIの呼称が旧ザクに、ザクIIがザクと呼ばれ差別化がなされている事。
一線級任務、つまりは今後の戦線を担うのはザクII。ザクIは徐々に二線級任務の補給作業に回されていくだろう。
しかし、ザクIIに搭乗するパイロットに選民意識でも植え付けるやり方なのだろうか。
兵器の改良・強化を推したのはキシリア少将だったが、名称にはギレン大将が関わっていそうだ。
いや、まて。
都合が悪い流れになるとザビ家を連想するのは一体いつから――。
「まだ、ここに居たんだね」
靴音に振り返れば、アンリエッタ・ジーベル
彼女は少尉から中尉に昇進した事で少し変わった軍服で、蜂蜜色の髪は工廠内の換気の為に風の向くままに踊り、円らな碧瞳はやや細められ、メルティエの姿を収めている。
「昇進おめでとう、アンリ」
口元に笑みを
「ありがと。隣いい?」
「どうぞ、閑散としているがね」
「また減らず口を……ま、いいかな」
手摺にもたれかかった彼の隣、握り拳分の隙間を残して彼女は寄った。
「随分と頑張ったんだね、この子」
メルティエの愛機、ザクIを見上げての感想。
機械を子と喩えるのに、彼は
「ああ、自慢の奴だ」
男らしい野生味のある笑顔に、アンリエッタがこちらを眺める。
じっと見つめられ、さすがに照れが生まれたのか顎下を掻きながら口を動かした。
「そっちは、ここに来るのは珍しいな」
「うん。実戦データを提出して、機体を預けただけだから」
「まだ動くのだろう? 同じ区域で戦って、こっちは大破でアンリは小破。まったく、大した腕だ」
平静を保とうとする彼に、
「無茶な動き、するからだよ」
何事か孕んだ声色が伸びる。
メルティエは返す言葉が見つからず沈黙した。
無茶、とアンリエッタが言ったが。技術屋から言わせれば、異常の一言に尽きる。
オートモーションは機体に最小限の負担で、最適に動くよう各
基本的にモビルスーツは両手の操縦桿と二つもしくは三つのフットペダルで機体を操作する。
ソフトウェアに事前入力、登録された中で状況に応じてメインコンピュータが姿勢を作り、サブコンピュータによりOSの制御の下、微調整を行う。その過程の改善点を
メルティエはモビルスーツの操縦に先述の操作方法と操縦桿に格納、備え付けられた入力キーを併用する。主体の運動を操縦桿。細部の動作を入力キーで調整、もしくは
結果は、目の前の機体を視ればわかるだろう。
ザクIの機体構造、耐久性の限界。
その壁に突き当たり、かつ無理に酷使したツケが今の愛機の姿。
アンリエッタのザクIは消耗品の交換と、流れ弾に被弾した脚部の補修で事足りたと報告を受けている。
まだ任命されて十日も経過していないが彼はこれでもフェルデナンド・ヘイリン
エスメラルダ・カークス
彼女の反射神経、動体視力と相まってとんでもなく回避率が高く、更には命中率も高い。
部隊中メルティエ・イクスの機体だけ、大破という結果だ。
いや、正確に述べれば、この工廠内で解体が決定されたものは、この一機だけ。
改修、補強作業よりも組み立てた方が早いと判断。内部にも損傷が確認されたようで、解体処分が決定された。
思うところがないわけではない、命を預けて駆けた機体だ。
しかし、兵器は消耗品。いずれは朽ちる。
それが、他のパイロットの機体よりも早かった。
それだけ、であった。
「必要だったからそうしただけで。あとの事は気にしてないさ」
相棒を失うのが寂しくて。彼はここに居た。
そうでありたかった。
「僕は気にするよ、あの扱いを聞かされたら」
彼女が漏らした声は、暗いものが秘めていた。
ブリティッシュ作戦後、ズムシティに於いて受勲式が行われた。
記者や一般の民間人が見守る中、デキン・ソド・ザビ公王、ギレン・ザビ総帥と続くジオン公国の重鎮達が一堂に会しての、演出と趣向を凝らしたもので随分と華やかだったそうだ。
宣伝目的なのもそうだろうが、命懸けで戦った将兵に報いるという意味も見て取れた。
ヘイリン隊の面々も出席し。違いはあれども全員が昇進、褒賞を得た。
ただ一人、メルティエ・イクス大尉の席だけは設けられてなかった。
それだけだ。それだけの話だ。
ランバ・ラル大尉。メルティエが父と慕う軍人。
彼はダイクン派とザビ家に目された人物。
それ故に、彼は出世の芽を摘まれている。
戦場で大活躍をしても音沙汰がないのが、その証拠だろう。
彼の保護を受け、養育されたのがメルティエ。経緯から見てもラルとの繋がりは強い。
今回メルティエは多大な戦果を上げ、作戦遂行に貢献したのは誰の目からみても明らかではある。
同パイロットのアンリエッタ、エスメラルダに比べても頭一つ以上抜きん出ているのだ。
しかしながら、ダイクン派。
そう捉えられたのか、特に音沙汰なく過ごしたどころか、受勲式にも出席は許されなかった。
優秀な軍人のランバ・ラルが大尉止まり。
そして、武勲を上げたその後継と目される、メルティエ・イクスもまた昇進なく大尉のまま。
不満がない、と言えば嘘になる。
ただ、彼は上昇意識が薄い。
元々企業入りを目指していた程度なのだ。
士官学校に至るまでひと騒動がありもしたが、ランバ・ラルの背を見て育ったからこそ今は軍人という職業に忌避感はない。
メルティエ・イクスという人間は素直だ、良くも悪くも。
昇進よりも、よくやったと労いの言葉をかけるだけでも戦えた。
彼は単純で、扱い易い部類の人間だ。
しかし。
何も与えられず、言葉もかけられなかった兵士は、何を強請って戦えばいい。
鬱屈した想いに、表面上は荒れていないだけ彼は自制が効いていた。
「あの場所で、何度も思ったよ。どうして活躍した人
一級ジオン十字勲章、二級ジオン十字勲章、ブリティッシュ作戦功労章。
これらは受勲式で一等武勲の軍人へ授けられるもの。
そして、それを受け取ったのは――。
「アンリ、それ以上は不味い」
「でも、僕は!」
「ほら、行こう? まだ頭がぼうっとするし。疲れが取れないのかな、部屋に戻るからさ」
「あっ」
彼女の手を取り、心配してくれる彼女に心の裡で感謝して工廠を後にした。
握った体温がメルティエの
だから、その火種が消えない内に。
彼女の憤りを純粋に嬉しいと感じたメルティエは、自分を酷い男だと胸中で
心配を掛けさせて、挙句に探しに歩かせた。
付き合いも長いが、こういう事は初めてであった。
アンリエッタの言葉に嘘はない。
その通りの心境だったが、口から出して良い事と悪い事は把握していた。
しかし見つけた時の彼は、まるで公園に独り佇み迎えを待つ童子のようで、見ていられなかった。
だから彼女は、表情を読まれないように前を向いてこちらを引っ張る彼の様子に、笑っていた。
照れ隠しで急く彼の様子が、本当に童のようであったからだ。
◇
「連邦政府との講和、か」
久方ぶりにズムシティに帰還したメルティエは、街頭モニターに映る内容にこれからどうなるのかと考えたが、戦術はともかく戦略を組み立てるのが元来苦手な性質であったので、脇に捨てた。
彼はランバ・ラルと、その内縁の妻クラウレ・ハモンから大尉昇進の折に贈られた、カーキ色の多機能ロングコートを羽織る。その下に黒のワイシャツにチノパンという出で立ちで街を闊歩していた。
日付は1月20日。
世界はコロニー落としから、十日以上過ぎた。
結果だけをみれば、ブリティッシュ作戦は失敗に終わった。
ジオン軍工作部隊によって大気圏突入の衝撃に耐えられるよう補強工事が行われていたバンチコロニー、アイランド・イフィッシュは連邦軍宇宙艦隊の阻止攻撃で、相当なダメージを受けていた。
攻撃が最も集中したコロニー後部の熱核ロケット推進器群が相次いで爆発。
アイランド・イフィッシュはアフリカ上空で大気圏に突入するも、アラビア地区上空で前後二つに瓦解し、予定軌道を大きく外れる。コロニー後部は更に三つに分かれ、北米大陸の北東部、南部、西海岸の沖合に落下。コロニー前部は、オーストラリアの最大都市シドニーに落着してしまう。
当初の、地球住民に絶望と恐怖感を与えることには成功したものの、最終目標であるジャブロー壊滅は阻止された結果となった。
更に過日の1月15日に一年戦争最大規模の艦隊決戦とも云えるルウム戦役が勃発したのだが、メルティエは搭乗するモビルスーツがなく、また所属するラクメルもブリティッシュ作戦時の損壊に加えて物資不足の為、サイド5ルウムに進軍する友軍とは別れて帰還していた。
ちなみに、この時に高速戦闘が無理と判断したメルティエはラクメルの艦砲上に擱座、接近する戦闘機を相手に自らを迎撃砲台として出撃した。
敵戦艦はアンリエッタとエスメラルダの二機が肉迫、見事撃墜している。
決戦結果を先に述べると、ルウム戦役は敵味方共に多大な被害を与えた。
ジオン軍は敵対したサイド5、ルウムを制圧、再びコロニー落としの準備に取り掛かるが、到来した連邦軍はコロニー奪還を断念してジオン軍撃破を
コロニーを取り囲むように陣形を組むジオン軍に対し、連邦軍は戦列を横に広く展開、大艦隊を擁する艦砲の密度を上げ、徐々に距離を詰めていく。ジオン軍ごとコロニーを破壊する手段を執ったのだ。
こうして、連邦軍のジオン軍半包囲陣形を完成しつつあった。
対するジオン軍はコロニー工作を放棄し、盾にするようにして艦隊をサイド中央へ移動後、モビルスーツ隊を投入。艦船と宇宙戦闘機を囮に出撃したモビルスーツ隊は高い機動力で連邦軍艦隊の中央を突破、そして反転すると背面に展開、連邦軍の後背から襲いかかった。
モビルスーツ隊の突破後の強襲、艦船と宇宙戦闘機の粘り強い継戦とで連邦軍は前後から挟撃される形となり、潰走。ジオン軍は逃す事無く艦隊をまとめ、追撃を開始する。
敵味方交錯する大混戦の中、連邦艦隊の旗艦アナンケが大破、行動不能に陥った。
宇宙艦隊司令官代理レビル将軍はカプセルで脱出しようとしたところをジオン軍の誇るエース部隊、黒い三連星に捕獲される。残された連邦軍宇宙艦隊は司令塔を失う状況に追い込まれた。
以降は艦隊次席指揮官が立て直しを計るが、戦線の崩壊を食い止めることができず全艦隊潰走に至ってしまった。
他にも様々な要因があるのだが、ここでは割愛する。
コロニー落とし、ルウム戦役で保有する戦艦の八割を失った連邦軍はジオンとの講話を模索。
多数のモビルスーツと優秀なベテランパイロットを失い、宇宙戦艦、航宙機の五割を失ったジオンは捕虜としたレビル将軍をサイド5、ルウムを破壊した戦争犯罪人としてサイド3に送致。宣伝に利用している。
以上が街頭モニターに流れる内容と、メルティエが数少ない軍部の知り合いから得た情報を統合、想像した話だ。
街中に居る気が早い人間なぞ「ジオン万歳!」やら「ジーク・ジオン!」等と乾杯を交わす有様である。酒を飲める気配を感じたので、という事だろうか。
妻に尻に敷かれる旦那は大変だな、そう感じさせる一面である。
「――んん? 何か寒気が」
びくり、と背筋が冷えた。
何事だろうか。快適な気温に調整されたコロニー内なので体調を損なうほど寒い、と感じるものではない筈。
「メル」
「む?」
呼びかける声に辺りを探す。果たして探し人は見つかった。
そして、三度瞬きした。
其処には薄紅を基調としたレース、フリル、リボンに飾られた華美な洋服。スカートはパニエで脹らませ、靴は編み上げのブーツや厚底のワンストラップシューズという出で立ち。
薄紫色の豊かな髪にはリボンが飾られた美少女――推定年齢二十二。乙女座の小柄な美女。
メルティエの脳内でカテゴライズされた外見で騙されると危険な人物筆頭、である。
「エダ……お前、なんつぅ格好してるのよ」
呆然と近くに出現したエスメラルダを見る。
ゴシック・アンド・ロリータ。略してゴスロリである。
身長が百五十を切る彼女はどこに出しても恥ずかしくも、おかしくない程のロリであり、その服装はゴスロリ。
メルティエを見据える彼女は、泰然とした態度でその場に居る。
外見が美少女。そして人目を引く服装。
そんな彼女と会話する長身、ロングコートの男。
当然、メルティエとエスメラルダは擦れ違う人間の無遠慮な視線を集めた。
「と、とりあえず行こう」
「ん」
まさか、憲兵さんとか走ってこないよな等と呟く男を、
「思っていたより、マシな顔をしている」
「そうか?」
「昨日は無表情に近かった」
昨日を思い出そうとする男を、紅色の瞳が瞬きせずに観ていた。
「まぁ、気晴らしになるような事があった。それだけだよ」
そんな表情であったか、と
「アンリと寝たの?」
僅かな段差に躓き、コケた。
コンクリートに膝と頭を打ち据えてとんでもなく痛い。涙腺が緩んだら涙目確実である。
「おまぁ!? 公共の場で何言って」
「喧しい」
綺麗に揃えられた手刀。
それが、吸い込まれるようにメルティエの喉を強かに突いた。
「――っ!?」
形容できない声が喉から漏れるが、彼女は平常運転である。
つまり、のたうち回る男の襟元を掴み、ずるずると引き摺る。
「面倒くさい。こっちの方が楽」
「ごふ、上官に向かって暴力的な……他の隊なら厳罰もんだぞ、これ」
「いまは
咳き込みながら待遇の改善を申し付けるが、傍若無人な彼女は意に介さない。
作戦行動中にも蹴りをもらっているのだが。
「いや、お前普通に」
思い出そうとすれば、ノーマルスーツの下から主張する、臀部。綺麗な曲線を描いたお尻。
見事な丸みを帯びたその形。健全な男子である事も手伝いスーツの下を想像して――。
「
◇
「―――はっ!?」
気がつけば、最近見慣れた天井。メルティエは自室の床に転がされていた。
ズキリ、と首に痛みを覚える。
記憶が朧気だ。確か持て余した休暇を解消しようと、ズムシティに――。
「う、頭が」
左右に振ること二回、部屋を見渡すと机の上に封筒。蠟で封印されており、その上にジオン公国の国章が在った。
緊急通達かもしれない、と備え付けのペーパーナイフで中身を取り出す。
文面に視線を走らせるが。しかし、内容は緊急性皆無のものだった。
所属部隊転籍通知。
中身を見て、思わず舌打ちしてしまう。
彼がそのような不作法を、無意識下でしたのにはある意味当然の事だ。
ザビ家の抱える問題が浮き彫りになる、その最たるものだからに他ならない。
現在のジオン公国軍は三つに分かれている。
ジオン軍は連邦軍と比べて戦力が小さい。
しかしそれを理解してなお、軍を三分割にする愚を犯すのはなぜか。
理由は簡単、というか頭を抱えるレベルの代物。
兄弟の仲違い、それに由って形成された派閥の組織化である。
階級こそ低いもののザビ家内ではギレン・ザビ大将に次ぐ発言力を有するキシリア・ザビ少将と宇宙艦隊総司令官ドズル・ザビ中将が今後の方針に関する意見の相違から対立。
キシリア少将は地球上の鉱山基地を押さえ、連邦軍の再建を遅らせると同時にジオンが今後戦い続けるための資源確保が急務と主張。
対するドズル中将は制宙権を完全に掌握し、戦力が回復次第ルナツーに駐屯する連邦艦隊に進軍する事を主張。
キシリア少将は今後のジオン戦力拡充と連邦戦力延滞を狙い長期化を見据えてのもの。
ドズル中将は控えた地球降下作戦の前準備として、地球とルナツーからの二面作戦を阻止する為に攻撃を仕掛けるというもの。
開戦直前まで用兵論の相違から度々衝突していた両者である、鬱憤が溜まりに溜まったのか互いに自分の意見が通らねば職を辞するとまで
これは既に裁決されている。
後に月面基地グラナダを本拠とし特殊部隊が多く所属する、キシリア少将麾下突撃機動軍。
建設中の宇宙要塞ソロモンを基点に公国軍最大規模を誇る、ドズル中将麾下宇宙攻撃軍。
総帥護衛部隊に位置し、また前記に所属しない軍を麾下とした、ギレン大将麾下本土防衛軍。
以上、三つに分割することで一応の決着をみた。
メルティエに今までこの通達が訪れなかったのは暫定的に宇宙攻撃軍に組み込まれ、戦線に配置されていたためだ。
そのおかげで同じ宇宙攻撃軍であったから予備役とは言え、
現在のジオン軍は戦力が低下しているため、旗色が明確になっていない彼のような人材を水面下で奪い合っている。
フェルデナンド・ヘイリン大佐は宇宙攻撃軍に所属している。この事から自分が抜ければ新たなモビルスーツパイロット、部隊を充てがわられるだろう。
メルティエとしては戦友とも呼べる間柄の指揮下から離れたくない。
冷静沈着な彼の指揮と彼に従うブリッジクルーは戦場に飛び込むパイロットに安心感を与えてくれたからだ。
次も同様な人物と部隊に恵まれるかわからない。
むしろ、劣悪なのが多いだろう。
次の所属先のモビルスーツ隊パイロットにはアンリエッタ・ジーベル中尉、エメラルダ・カークス中尉が幸いにも記され、他には補充隊員として二名が入る事となっている。
モビルスーツ隊の隊長は変わらずメルティエ・イクス大尉。
一先ずは安堵の息を吐く。
艦隊から引き離されるだけではなく、信頼した隊員も四散させられたら堪ったものではない。
気を取り直して、肝心の所属部隊を確認した。
「いや、どうしてこうなった」
何度も視線を行き来するが、それが変わることはなかった。
誤字連絡・評価・感想をお待ちしております。
ところで、皆さんの原作キャラで好きなのはどれですか?
ちなみに作者は外伝関係のキャラが好きです。
マスター・ピース・レイヤー、ヴィッシュ・ドナヒューとか特に好きです。
「親友になれたかも知れない」の辺りに涙しました。