俊介はジャンに担がれたまま、ビニールシートに覆われた区画に入る。
地下空間の太陽代わりである巨大なライトの光はビニールシートで遮光されている。そのため中は薄暗いと思っていたが、多種多様な色のライトが辺りを照らし回っていて意外と暗くはない。
寧ろ暗闇を華美な色合いの光で切り裂く色街と言った感じで、外の街よりも更にディープで怪しい感じが演出としてかもし出されている。
17歳の俊介は刑務所の外でそういう水商売的な店が多くあるエリアに立ち入ったことは数度しかない。
その何度か立ち入った経験も全て真昼間のことだったので、暗い夜の色街を思わせる雰囲気の場所に入るのはこれが初めてだった。
「……いい加減離せ! ヘッズハンター!!」
『はいよ!』
だがそういう街に立ち入る経験は成人してからで充分だ。
中からヘッズハンターを呼び出して瞬時に同調を行う。そして一気に跳ね上がった身体能力でジャンの腕を解き、真上に飛び上がって少し離れた所に着地した。
「……!」
「俺は帰る。悪いけどこんな変な場所に入り浸るつもりはない」
ジャンは無理やり振りほどかれた自身の腕を驚いた表情で見た後、俊介の方に顔を向ける。
「その急激に強くなった力……人格交代? いやでも、一瞬の硬直もなかったし性格が変わったようにも見えない。……まさか、『
「だったらどうだって言うんだよ」
「…………いいやぁ?」
ジャンは目を細めて口角を僅かに上げた。
その表情は、陽気な仮面の裏に隠れた悪意が思わず漏れ出してしまったと言う風な笑みだった。
そして先ほどより人を食ったような視線をこちらに向ける。
「無理やり連れてきて悪いね俊介っち。でも飯を奢りたい気分なのはマジだよ。甘いのと辛いのどっちが好き?」
「うるせえ。飯はどうせ嘘か、俺をこの闘技場に連れてくるための方便だろ。……本当の目的は何だよ?」
「あちゃー……ま、流石にもう騙し通せんか。ここで下手に隠し立てしてっと本気でぶん殴られそうだしな。降参しま~す」
両手を顔の横まで上げてふりふりと振る、ふざけた様子のジャン。
俊介はヘッズハンターと同調して跳ね上がった視力と第六感でじろじろとジャンの身体を観察する。
何処にも武器を持っている気配はないし、ただの素手での喧嘩なら今の身体能力で負けるはずがない。少し離れた所から話を聞くだけなら大丈夫そうだ。
「でも勘違いしないでくれよ。闘技場が俺の本当の目的とは言え、この先に飯を食う所があるのはマジだぜ」
「…………」
「この闘技場では賭け事もやっててな。俺は最近ちょっと負け続きで金欠でよ、一発逆転の狙える強さを持ってて且つ顔の売れてない奴を探してたんだ。そしたら俊介っち、殆ど名が売れてないのに人対に相当狙われてたらしいじゃんか。こりゃこの子しかないってビビビーッと来たわけよ」
ジャンが嘘か真か、どちらを語っているのか全く読み取れない飄々とした口ぶりで話す。
しかしこの話が本当だとしたら、この男は俺のことを試合に無理やり参加させようとしていたわけだ。闘技場や処刑場とも言われるような場所の試合に。
俊介は当然否定の言葉を吐く。
「……理屈は理解出来なくもないが、参加するつもりはない。他を当たれ」
「わぁーってるよ。俺より強い奴をここからどうやって参加させんだっての。自分から参加したいってんならともかくな」
大袈裟に残念と言った表情を浮かべ、顔を横に振るジャン。
やはりその動作にはどこか芝居がかった物が感じられた。
俊介の横に立つヘッズハンターが腕を組みながら言葉を発する。
『……どうも嘘くさいな』
「やっぱそう思うか、ヘッズハンター」
『強いと見込んだ俊介を力づくで拉致したりする辺り、奴は腕っぷしに自信がある。なのになぜ自分でその試合に出ない? 自分はそれなりに強い癖に、他に強い奴を探すとは金欠で困っているという割に随分と迂遠な方法を取るな……。ま、自分で戦って怪我をしたくないと言われればそれまでだが……』
「…………」
奴の話には一本筋が通っているようで、やはり何か引っかかる。
まるで更に別の目的を裏に引っ込めているような……。でもまるっきり嘘という訳でもない。
嘘と真実を織り交ぜながら話していると言った感じだ。何処かの本で嘘の話には少しの真実を混ぜると分かりにくいと聞いたことがある。
どちらにせよ信用に値しない男だ。今の話の真偽がどうあれ、これ以上進む必要はない。
俊介が踵を返そうとすると、ジャンが右手で銃の形を作りながら俊介に言葉を投げかけた。
「でも俊介っち。試合の参加云々はなしにしてもさ、やっぱり俺と一緒に闘技場に行かない?」
「はあ?」
「大昔にゃ殴り合いや殺し合いの見世物は娯楽だったって話だ。この刑務所じゃこの闘技場が一番の娯楽だし……何か知りたいことがあるなら、やっぱり人の多いここで情報収集が一番なのよ」
「だから何なんだよ」
「チッチッチッ。俊介っちも当然考えてるだろ?」
ジャンが一拍息を溜めた後に、言葉を吐いた。
「『
「ッ!」
「はっははは、やっぱ当たりか! ここに来たばっかの奴はみんな考えるんだよ! でもさ、一時は脱獄を考えても、この刑務所でうだうだ生きる人格犯罪者が殆どなんだ」
「…………」
「その『理由』を知るにはやっぱり、人と情報が集まる闘技場が一番さ。……どう、今なら俺がエスコートしちゃうよ?」
「………………」
俊介は訝しんだ顔を浮かべながら、ジャンを睨み続ける。
これは罠だ。
確実にこいつは何かしらの真の思惑を裏に隠している。
俊介の横にいるヘッズハンターが腕を解きつつ、声を出す。
『俊介。俺も怪しいとは思うが、確かに、人が集まる場所には情報も集まる。脱獄を考えるなら、いや脱獄をするか否かの判断を下すにも情報は必要だ』
「ヘッズハンター……」
『だからと言って、今ここで目の前の男に付いて行く必要もない。後日俺達だけで来ることもできる』
「…………」
ヘッズハンターの言う通り、後日俺達だけでここに来ることもできるのだ。
しかしこの刑務所の先達であるジャンの先導がなければ、闘技場のことを色々と把握するのにも時間が掛かるだろう。
だがそれは逆に、時間が掛かるのさえ許容できるなら今ここで帰ってもいいということだ。怪しげな罠を踏む心配もない。
調査の手間と時間を惜しんで、罠を踏みに行くか。
それとも罠を避け、時間が掛かる事を許容するか……。
俺は……。
「俺は甘い物の方が好きだ」
「へえ?」
俊介が自身の嗜好を伝えると、ジャンは面白そうに更に口角を上げた。
少しだけ目を大きくしたヘッズハンターが、俊介に近づいて言う。
『……俊介。本当にそっちで良いのか。俺はてっきりここで帰ると……』
「俺がもし本当に脱獄するなら、早く出た方が良いってのが昨日の結論だろ。なら、時間節約のためにも多少は危険なことに踏み込まなきゃな」
そして、「それに」と言葉を続ける俊介。
「今はヘッズハンターの力をそっくりそのまま借りてるんだからな。頼りにしてるぜ?」
『……ああ! 不甲斐ない俺の力で良ければ、いくらでも使ってくれ』
ヘッズハンターの強い頷きに、俊介も軽く頷き返す。
そして正面のジャンのすぐ傍まで近づき、顎で道の先にある闘技場までの案内をするように促した。
ジャンが歩き出し、そのすぐ後ろを俊介が付いて行く。
「甘いのね。……チュロスでいい?」
「なんで刑務所の中にチュロスが売ってんだよ」
何故なのかは分からない。
黒いビニールシートで覆われた区画を進む度、闘技場以外にも余り風紀的によろしくない店も幾つか見えた。
俊介は店先で手招きする殆ど半裸の女性から目を逸らしつつも歩き続ける。
その時、とある事に気付いた。
(……なんか、小さい子が増えてきた……?)
闘技場に近づく度、刑務所に来てすぐに出会った『魔法少女☆きゃるとる~ぜ』のような少年少女の姿がチラホラと見え始めたのだ。
中には口にするのも憚られるような格好で歩いているような少女もいて、思わず俊介は目を逸らす。
なんで確実に治安の悪い場所に近づいているのに、体も成長し切っていないような子達が増え始めるんだろう。いや……小さな子だとしても確実に全員犯罪者ではあるんだけど。
しかしよく見ると、そんな小さな子に紛れるように明らかにヤバそうな奴も何人か歩いている。そういうヤバそうな奴らは決まって囚人服の胸に『B』の刺繍が入っていた。
ちなみに年端も行かない少年少女たちの胸には『C』の文字が刺繍されている。
この囚人のA、B、Cの分け方……何か規則性があるんだろうか。
少なくとも無意味という訳ではなさそうだ。
そんな風に周囲を見ながら考えていると、前を歩いているジャンが立ち止まった。
俊介もそれに気付いて足を止める。
「着いた。ここだよ、ここ」
「……ここが、
黒いビニールシートに覆われた区画の中に、更に赤褐色のビニールシートで覆われた巨大なテントのような物があった。
そのテントの中からは野太い歓声が断続的に聞こえてくる。風のない地下空間なのに音圧でテントがごわごわと揺れている。
そして何より異質だったのは、分厚いビニール越しでも濃く漂う血の香りだ。
荒事で幾らか血の臭いには慣れている俊介でも思わず息が乱れるような鉄臭さ。一体どれだけの人数が死ねばこんな強い臭いがするようになるのか。
そう思いつつ俊介はそのテントに近づき。
「…………う゛ッ!」
赤褐色のビニールシートの塗装が所々剥げているのに気付いて、それから連想するようにとある事に気付き、勢いよく後ずさった。
分厚いビニールシートの内側に闘技場がある。
なのに俊介達がいる外に血の臭いが漏れていた……のではない。
この赤黒いビニールシート、元々はこの区画の空を覆う黒いビニールシートと同じ物だったのだ。
それが夥しいほどの血によって一面真っ赤に染まり、時間経過によって血液が黒く変色してしまっているのだ。
所々塗装が剥げているのではなく、そこは偶々血が被さらなかっただけなのだ。恐らく血に染まりすぎて掃除するのが面倒になったので内側から外側へ裏返されたのだろう。
俊介が顔を大きくしかめていると、ジャンは俊介の肩をポンと叩く。
そしてテントの近くにある屋台のような物を指さした。
「食い物は外で買うんだよ。中で売ってたら飛び散った血が全部食い物に掛かるし」
「…………」
「あ、これお金。チュロスはあそこで売ってるから。俺は中で席確保してくるね」
ジャンは俺にチャラチャラと小銭が入った小袋を押し付けてくる。
そして自分はさっさとテントの中に入っていった。
「うぇっぷ……」
いくら甘い物が好きでも、ここ以上に血の香り濃いテントの中で物なんか食える訳あるか。
でもチュロス食べたい。ストレスが頭を埋め尽くしてる。糖分欲しい。
夜桜さんを助けるのに集中しすぎてずっと甘い物なんか食べてなかったし……でも血の臭いが濃すぎて……うごご。
俊介はジャンから受け取った小袋を前に、うんうんと悩み倒した挙句。
首に手を当て、中から人格を呼び出した。
「……クッキング。ちょっと出て来てくれ」
『……はいはい? どうしたのかしら……うわ何ここ?』
「あそこの屋台でチュロス買いたいんだけどさ、調理過程で変な物混ざってないか見て来てくれないか」
『うん、分かったわ。ちょっと待っててねん』
クッキングは返事をして屋台の方へ走っていく。
あの屋台は充分百メートル圏内に入っている、見るだけなら全く問題ない。
『俊介、お前そこまでして甘い物が食べたいのか……』
「いいだろ別にっ。俺が甘い物好きでもっ」
『いや俊介が甘い物好きなのは知ってるけどさ。メンタル強すぎて、男子高校生一人で女性だらけのスイーツ店に余裕で突貫したりするし……』
時折スイーツ店に出没する殺人鬼の人格を携えた男子高校生。字面だけ見ると確かにヤバい。
でもいいだろ別に。男の入店が禁止されてる訳でもないんだからな!
そんな風にヘッズハンターと俊介が話していると、クッキングが小走りで戻ってきた。
『俊介ちゃん。変な物は入っていなかった……けど、あんまりオススメしないわよ?』
「どうして?」
『衛生的に不安だし、あと作り方がゴミだわ。まずいわよ』
ええ。
クッキングが料理に対してハッキリ『ゴミ』なんて言い切るの初めて聞いたよ。
「いや、それでも、俺は甘い物を前にして止まれない……!」
『一口食べておいしくなかったら止めときなさいよ……?』
不安げなクッキングの顔を横に、俊介はチュロスの屋台を営む女性囚人から一本だけ購入。
そして指先くらいの長さだけを歯で噛み千切り、口の中で咀嚼した。
…………。
咀嚼してすぐに感じたのは油の重たさ。
期待していたサクサクの触感とはかけ離れたべたつきが口の中に広がる。こうなったのはきっと油を良く切っていないからだ。
そして肝心の油も少し生臭さを感じる。何か別の物を作った古い油を流用しているようだ。風味が全くないどころか嗅覚を潰してしまうような生ごみ臭さである。
さらに砂糖も殆ど使われていないようで、舌に広がる甘味が全くない。
一番最悪なのはチュロスの中側が完全な生焼けであることだ。
ねちゃねちゃと奥歯に絡みつくようなその触感は、まるでナメクジを口の中で転がしながら噛み潰しているようである。一度噛むごとに最悪な気分が胃の底からせり上がってくる。
「――――ぶっ!!!」
俊介は思わず口の中にあったチュロスを地面に吐いた。
クソ不味いじゃねーかボケ!
『ああほら、言わんこっちゃない……』
『でも逆に気になるな。そこまで不味いチュロスなんて』
「なら食わせてやるよヘッズハンター」
俊介は手の中にあるチュロスを何時ぞや牙殻さんに教わったコピー方でコピーし、ヘッズハンターに半透明のチュロスを投げ渡した。
それを片手で受け取ったヘッズハンターは、勢いよく半分辺りまで大きく口に含んで噛み千切った後……。
『うッ!? うぐっ、げろろろろ……』
『うわっ!? 何やってんのよもう、馬鹿じゃないの?!』
思いっきり嘔吐した。
それを見たクッキングが青筋を立ててキレる。
時速六百キロ越えで移動する史上最悪の殺人鬼が思わず嘔吐するほどにクソ不味いチュロス。
もし外でこんな物を食べたら迷わずクレームを入れるが、刑務所の中で売っている物だとすると納得するほかない。これが刑務所クオリティか。
……というか、ジャンはこれを美味い飯だとか言って俺をここに連れてこようとしてたのか?
もし美味しいチュロスだと思ってこれを食べてたら、俺は初めての殺人を決行していたかもしれない。
俊介は左手に持ったチュロスに向けてテレフォンパンチの構えを取る。
「こんな物今すぐ粉々にしてやる! オラッ! 時速六百キロのパンチが火を噴くぞ!」
『やっちまえ俊介! つか売ってる屋台ごと壊せ!』
『あなた達が美味しくないのを分かってて食べたんでしょ?! 不味いけど食べられるものを作ってるんだから、屋台に手を出すのはやめなさい!』
不味い物を食べさせられてキレた
そして興奮した二人がチュロスにプロボクサー顔負けの超速パンチを放とうとしていた時。
――――――――ぐごぎゅるるぐるぐるぎゅるるるるるるッッ!!!
俊介の背後から恐ろしいほどに大きく、腹の虫が暴れる音が響いた。
咄嗟に後方へと振り返る三人。
「……もし、そこの可愛らしい御方。申し訳ないのですが、捨てるくらいでしたら、私にそれを譲っていただけないでしょうか」
ぼそぼそと喋る、俊介よりも遥かに大きな女性。
身長は確実に二メートルを超えている。
きめ細やかな白い肌に色素が薄い金髪をへそ辺りまで長く垂らし、何処か幸薄い印象を感じさせる。そして頭には修道女を思わせる黒いベールを被っていた。
そして俊介が最も目を惹かれた彼女の特徴は『口元』だ。
まるで自身で何かを封印するように、太い鉄の糸で自身の上唇と下唇を閉じるように縫っている。その糸の隙間で僅かに開く唇を小さく開閉させ、ぼそぼそと喋っているのだ。
「あ、はっ……はい」
俊介は妙な出で立ちの彼女に思わずぎょっとしながらも、肯定の意を返す。
彼女は恭しく頭を下げ、俊介の手元にあるチュロスの位置まで体をかがめた。
「驚かせてしまって申し訳ございません。この口の糸ですよね。」
「いえ、そんな……」
「お気になさらないで下さい、慣れていますから。…………重ね重ね申し訳ないのですが、そのままチュロスの先をこちらに向けて貰ってもいいですか?」
「あ、はい」
言われた通り、俊介は彼女の方にチュロスの先を向ける。
そこで自分が噛んだ跡が残っているのに気付き、指でその部分だけ折ろうとする。しかし彼女はそれを「もったいない」と言わんばかりに手で制止した。
「失礼します……」
糸の隙間で僅かに動く唇を大きく開き、先っぽにキスをするように口を付ける。
そしてそのまま頭を前に動かし、それなりの長さがあるチュロスをぬろろろと一気に丸のみした。
チュロスを持つ『俊介の指』ごと。
「なッ!? 何を!!」
思わず手を引こうとする俊介の手首を、彼女が予想していたように素早く掴む。
そのまま長い舌を口内でずるずると這わせ、俊介の指を何度も舌でなぞってから、やっと手と口を離した。
俊介の手からはチュロスが消え、代わりに地面に滴るほどの大量の涎が残った。
「んっ……ふぅ」
彼女はそれを口の中で何度か咀嚼してから、大きく喉を鳴らして飲み込む。
そして瞼を細めてにこりと微笑んだ。
「ありがとうございます。おかげで少しだけお腹が満たされました」
「そ……そりゃよかったです」
「私の名前は『シスター・イート』。と言ってもここでは少し有名人なので、既にお知りになられているかもしれませんが……」
「あ、俺の名前は『日高俊介』です。この刑務所には昨日来たばっかで……なのでその、これからよろしくお願いします」
俊介は若干引き気味にそう答える。
すると彼女は表情を悲しげなものに変え、俊介の前に跪いて祈るように両手を合わせた。
「そうなのですか……。ここでの暮らしはお辛いかもしれませんが、いつでも私が相談にお乗りします。あなたに神のご加護があらんことを」
「は、はあ……そうですね」
「それでは、用事があるのでこれで失礼します。また会いましょうね、日高さん」
彼女はゆっくり立ち上がり、大きな体からは想像できないほど静かな足音でテントの裏側の方へと歩いて行った。
「…………」
シスター・イートと名乗った女性。
彼女の囚人服の胸元には『B-110』と刺繍されていた。
そして俊介がじっとシスター・イートの歩いて行った方を見つめていた時。
なぜかクッキングが少し驚いた顔をしているのに気が付いた。
『あの子……』
「どうした、クッキング」
『いえ、何でもないわ』
顔を逸らすクッキング。
頭の中で何かを考えているらしいが、それを明かすつもりは今のところないらしい。
俊介もそれを無理に問い詰めようとはせず、言葉を切る。
そしてチュロスを買って食べるという本懐を果たせたのか果たせていないのか分からぬまま、三人は共にテントの中へと足を踏み入れた。
闘技場のテントの中に入る所まで書きたかった
クソ不味いチュロスで騒いでる描写で俺は何文字書いてるんだよ
もっとこう……他に文字数を割くべき描写があるだろう!
シスター・イートがチュロスを俊介の指ごと口に含むシーンとか!