殺人鬼に集まられても困るんですけど!   作:男漢

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#120 女嫌い

 

 

 

 ――――俊介がトールビットに体の主導権を譲り、解剖を始めた頃。

 

 

 

 

 ゼロツーとジャンの二人は繁華街の中央にある、外との唯一の出入り口がある看守達のタワーの前にいた。

 異世界プリズンの巨大地下空間の天井まで伸びるタワーの高さは百数十メートルくらいだろうか。地下にある建物としては破格の大きさだ。

 

 脱出経路の水道パイプの点検口……。

 そこを開けるための鍵があるとしたら、間違いなくこの看守達の集うタワーしかない。

 

 クソみたいに頑丈な点検口の扉をぶっ壊すのも最後の手段として残しているが、壊した瞬間にアラームが鳴りそうだからなるべくやりたくない。

 

 タワー上部のバスが通る出入口から、看守にバレずに脱出する方法でもあれば一番楽なのだが……。

 まあ流石に無理。

 看守は囚人に舐められまくってるけど、フルオート銃を持った重武装の十数人の看守が一斉に発砲してきたら大抵の人格は普通に死ぬ。強行突破は銃弾がノーダメくらい強い人格じゃないと無理ゲー。

 

 それに看守に脱獄がバレて一番嫌なのは『人対』がすっ飛んでくることだ。

 銀行員がデスクの下にワンタッチで警察を呼ぶボタンを隠してるみたいに、看守連中も人対を呼び出すボタンを持っているとみて間違いない。

 そして人対の牙殻が到着したら……もう看守が全員フル装備で襲い掛かって来るよりも遥かに無理ゲー。いや無理ゲーっていうかその時点でゲームオーバーだ。

 

 

 ……やっぱ、強行突破はどう考えても厳しいな。

 水道パイプから脱獄するプランが安パイか。

 

 

 

 ゼロツーはそんな風に考えていた思考を切り上げ、ジャンの方を向く。

 

「……ま、一応タワーの前に来たけど……やっぱ明るい内はどう考えても無理だな」

「ん~。まあそりゃね」

 

 昼時間にタワーの内部に忍び込むのはやはり不可能に近い。他の囚人や看守の目がありすぎる。

 とすると、囚人がおらずに看守の気も多少緩む夜時間が最適だが……。

 

 夜時間に動くには死体の解剖を終わらせ、リングや体の何処かにある殺害装置を妨害する装置を作らなければならない。

 ……つまり、解剖組向が成果を出すまでこちらも動けないということだ。

 

 全てを同時並行していくのが理想だけど、そう上手くはいかないらしい。

 二人はタワーから目を逸らし、踵を返そうとして。

 

 

「……ん?」

 

 ふと、ジャンが聴力を強化した己の耳に、何かの騒ぎ声が飛び込んで来たのに気づいた。

 不思議そうな顔をするゼロツーが彼に言葉を放つ。

 

「どうした?」

「いや……。西区の辺りから、騒ぎ声が聞こえたような気がしてな……」

「……西区……」

 

 現在進行形で解剖を進めている二人がいるのが西区だ。

 しかし西区と言ってもそこそこの広さがある。騒ぎが起きている場所と二人が解剖している場所が近い可能性は高くないが……。

 

 …………。

 

 やはり、念のために何が起きているのか確認しに行った方がいいだろう。

 万が一ということもある。暴れ者ばかりが収監されるこの刑務所では何が起きてもおかしくない。

 

「ジャン。ちょっと様子見に行くぞ」

「了解」

 

 ゼロツーの声にジャンが短く言葉を返し、二人は歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――30分前。

 

 

 

 西区にある二階建ての料理店……他の店と比べて少し華美な装飾が施された、異世界プリズン内で唯一の料亭。

 刑務所の外にある料亭とは比べるまでもない装飾だが、長い刑務所生活で目が貧相になった囚人達にとっては眩しさで瞼が閉じてしまうほどの高級料亭だ。

 無論提供される料理の値段も、他の店とは一線を画す。

 

 ……そんな料亭の一番豪華な部屋の中。

 

 

 上座側には、複数人の屈強な男の護衛を連れた、闘技場の司会者兼運営の男が座っていた。運営の男の横の座布団だけが不自然に空になっている。恐らくそこは彼の側近である知雫の席だが、彼女の姿はない。

 彼らは机の上に乗った料理に見向きすることなく、佇まいを整えてじっと顔を目の前に向けている。

 

 そしてそれに相対するように。

 

 下座側にピシッと整った正座で座る、金の片眼鏡(モノクル)を掛けた厭勝(えんしょう)がいた。

 彼は机の上にあるお茶に手を伸ばして一口含み、静かに器を置く。

 

「……刑務所の中とは思えないお点前、と言ったところでしょうか。いやはや、私のイメージしていた刑務所暮らしとは違うことばかりで驚かされっぱなしですよ」

「気に入っていただけたようで何より……」

 

 闘技場の運営が恭しく頭を下げる。

 その仕草に厭勝がにこりと笑みを浮かべ、静かな声色で問いかける。

 

「それで、今回は私にどのようなご用向きでしょうか?」

「……私達が運営する闘技場は多くの囚人に利用され、大きく成長してきました。しかし私達は刑務所一番の娯楽を運営する者として、常に成長するための努力を続ける義務があると考えております」

「そうですね。良いお考えだと思います」

「そして、ダンク・パンカーズのボスとして組織運営を行っていた厭勝(えんしょう)様のご助力があれば、私達は更なる成長を遂げられると確信しております」

 

 

 ……運営の男がつらつらと、薄っぺらい建前を並べる。

 

 彼は厭勝をスカウトして闘技場を更に成長させる、なんてことは微塵も考えていない。

 重要なのは『厭勝が自分の部下になること』。それ自体が目的だった。

 

 刑務所の外の裏社会ではトップクラスの規模の組織だった『ダンク・パンカーズ』。

 世界各地に人身売買用の市場を持ち、主要国家の全てに支部を置いている。

 何処かの国の重要人物やその家族だって平然と誘拐し、翌日には人身売買市場に奴隷として並ぶなんてこともザラだ。酷い時には解体されて臓器になっていることもある。

 

 国を相手に真正面から喧嘩を売っても平気な、まさに規格外の組織。

 それが『ダンク・パンカーズ』。

 

 ……もしそんな組織を率いる男が配下になったら、刑務所の人間たちは一体どんな風に見るだろうか?

 

 怪物組織のボスである厭勝を更に上から従える自分。

 まず間違いなく刑務所での地位は最高潮に高まり、そこから変動することはなくなる。永遠にトップの座に君臨できる。

 

 刑務所の外では雲の上の存在だった厭勝だが……この中なら、闘技場の運営としてコツコツ地位を高めてきた自分の方が格上だ。

 元の世界でも届かなかった本当の頂点に至ることができる。

 

 

 ……そういう思惑を運営の男は持っていた。

 

 

 

 運営の男の話を静かに聞き終わった厭勝は、顎に手を当てる。

 そのまま男の顔をじっと見つめ、短く言葉を吐く。

 

「ふむ。……()()()()()はそれで終わりですか?」

「? え、ええ……」

 

 『初めの言葉』?

 運営の男はその単語の意図を上手く理解できず、生返事をする。

 

「…………」

 

 その時、厭勝が誰にも聞こえないように厭勝が小さくため息を吐いた。

 そしてやけに低い声色の言葉を口から漏らすように放つ。

 

「つまりあなた達は、私を闘技場の運営側に『()()()()』しに来た……という認識でよろしいでしょうか?」

「はい。待遇につきましては、幹部の位を……」

「いえ結構。これ以上聞く必要はありません」

 

 そう運営の男が語り始めようとしたところで、厭勝がスッと手を上げて話を止めた。

 そして正座を崩し、あぐらをかくような姿勢に変わる。再び机の上の茶器に手を伸ばす。

 

 先ほどの品性を感じさせる動作が嘘のように、ゴクゴクと音を鳴らして茶を飲み干していく。

 すぐに空になった茶器から口を離し、ゴトン!と勢いよく机に置いた。

 

 

 

「突然ですが――――私の嫌いな()()を知っていますか?」

「……女性が苦手だと伺っております」

「その通りです。まあ恥ずかしい話、私の前の世界の出来事も関係しておりまして……とにかく、()がすこぶる嫌いなのですよ」

 

 指でトントンと、机を叩く厭勝。

 その度に彼から発せられる目に見えない()()が増していく。

 

「私のダンク・パンカーズは生きた人間に加え、専用の()()()による新鮮な臓器の売買も行っております。ダンク・パンカーズで取り扱った女はざっと50万人から55万人、つまり私の手でそれだけの女を生きたまま地獄のような目に遭わせた、もしくは本当に地獄に叩き落とした……ということですね」

「…………」

「私一人で暴れても、排除できる女は恐らく100人から200人が限度でしょうね。しかし調達から売買までの()()()を作ってやると、私の知らない人間が私の知らない間に女を誘拐したり殺したり……私の嫌いなものが世の中から勝手に消えていく便利な流れができあがるのですよ」

 

 モノクルの裏にある瞳がほの暗い色から、迸るような邪悪さを纏ったどす黒い色へと変化していく。

 運営の男の周囲にいる護衛達は背筋に冷たい悪寒が走り、いつでも動けるように姿勢を整え始める。そんな中、運営の男が警戒した様子で言葉を吐いた。

 

「い、一体何が言いたいのですか?」

「ああ失礼。こういう話題になるとついつい話し込んでしまうのが私の悪い癖ですね。……先ほどの話の通り、私が大の女嫌いということは理解いただけましたか?」

「え、ええ……」

「そして私はですね。私の『()()()』という特徴を『()()()』として使っているんですよ」

「試金石……?」

 

 問いかける男。

 厭勝は机を叩く指の動きを止め、相手から見えない机の下に手を移動させる。

 

「私がダンク・パンカーズのボスとして直々に交渉に赴く……。その際に私が相手に求めるのは『最低限の()を持っているか?』ということです」

「…………」

「裏社会で情報屋に少し金を握らせれば『厭勝が女嫌い』なんてことはすぐ分かります。そして交渉の場に『媚びるための女』……()()()()()()()()()を用意すればどうなるかもすぐに分かります」

「……っ……」

「そういう『最低限の情報網を持っているか』や『相手に合わせた礼儀と交渉場所を準備できるか』など……基本的なところを見るわけです。そんな基本の()もできない連中とは話す価値も感じません」

 

 下座側に座る厭勝から、実際に殴られているかのような強い圧力が発せられる。薄っぺらい笑顔の下には侮蔑と敵意の感情が入り混じっているのが容易に感じ取れた。

 机の上に並ぶ豪華絢爛な料理達から漂う香りを嗅いでも食欲は一切湧かず、むしろ吐き気が胃の中からせり上がるような感覚がする。

 

 

 ……しかし。

 

 

 運営の男には、なぜ厭勝がここまでキレているのかが理解できなかった。

 彼が女嫌いなのは裏社会で超が付くほど有名な話だ。だからこそ女性である知雫は連れて来なかった。

 

 ……知雫は最後まで『厭勝』なんて危ないヤツとは関わるなと言っていた。

 しかしダンク・パンカーズのボスであった厭勝を部下にできた実績があれば、この刑務所内で最高の地位が約束される。

 今の厭勝は部下が一人もおらず孤独な状態。数の力で圧を掛ければすぐに部下にできると考えたのだ。

 

 それでも知雫は関わるなと煩わしく言い張っていたので、半ば喧嘩別れに放ってきたのだ。

 

 

 今更ながらに後悔の念が頭の中を薄っすらよぎる。

 しかし数の差というか細いアドバンテージが冷静さを繋ぎとめ、運営の男の正気を保たせた。

 そして震える口で言葉を吐く。

 

「……お、俺……いや、私を殺すつもりですか?」

「おや。そういう言葉を吐くということは、どうやら今回の問題点が分かっていないご様子ですね。……いいでしょう」

 

 厭勝は空になった茶器を手に持ち、それを叩き割らんとする勢いで数度、ドン!ドン!と机に叩きつけた。

 ……彼らのいる個室の外の扉から早歩きでこちらに向かってくる足音が響く。

 静かな部屋の中に呼吸音と足音だけが響く中、音もなくふすまが開かれた。

 

 

「何か御用でしょうッ――――」

 

 

 ふすまを開いたのは、刑務所内の料亭で女将の真似事をする女囚人だった。オレンジ色の囚人服を脱ぎ、少し安っぽい浴衣に身を包む、黒髪を結んだ女。

 真似事ながらも洗練されたその動きは、元の世界で同じようなことをやっていたのを見る者に伺わせる動きだった。

 刑務所内という限定された場所の高級料亭で働くには充分な礼儀作法を持っていると言える。

 

 

 ……しかし。

 もしかするとこの刑務所内で更正に向かっていた、稀な囚人の一人かもしれない彼女の命は。

 

 

 

 ――――――――バキィッ!!!

 

 

 

 厭勝が放った裏拳によって首の骨をへし折られ、呆気なく終わりを迎えた。

 

「ッ――――な、何を……!」

「これが問題点ですよ。この料亭に女が勤め、机の上に並ぶこの料理も女が運んできた……。全く、料亭の一つも支配できていないのですか……」

 

 彼女が床に伏し、血の泡を吐きながら痙攣する。助かる見込みはない。

 厭勝は空になった茶器を適当に後ろに放り投げ、懐から取り出したハンカチで女将を殴った手を拭きながら立ち上がった。

 

「今の私はダンク・パンカーズのボスではなくただの一囚人ですからね。開口一番で問題点について言及した上で謝罪するなら許しましたが……まあ、無駄な気遣いでしたね」

「お……お前ら! 金は弾むから、この男をさっさと殺せ!」

「大方私を部下にして、更に権力を盤石にしようと考えていたのでしょうが……そういう小賢しい真似をするから『お山の大将ごっこ』を抜け出せないのですよ」

 

 運営の男が用意した護衛の一人が机を蹴り上げる。

 それに呼応するように他の護衛達が厭勝に襲い掛かろうとする――――が。

 

 厭勝が蹴り上げられた樫の机を片手でキャッチし、メキメキと机にヒビが入るほどの力を込める。

 そして数十キロはある机を薄い紙切れのように振り回して護衛の一人を壁に叩きつけ、壁に粘り気を持って張り付く汚い肉片に変えた。

 

「ひっ……!」

「この程度ですか。なら()()()充分殺せますね」

 

 そう言いながら、厭勝は他の護衛たちに目を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおっ……なんじゃこりゃ!?」

 

 騒ぎが発生している場所へ辿り着いたゼロツーとジャン。

 そこは刑務所内で一番値が張ると言われた料亭であり、金ナシの一般囚人たちが一度は行ってみたいと噂する憧れの場所だ。

 肉と魚の香ばしい匂いがブレンドされたような空気が微かに漂い、目の前を通るだけでも少しだけ食欲が刺激されるようなところだ。

 

 しかし今は。

 

 何時もの食材の匂いなどつゆも感じず、むしろむせ返るような血の臭いが店の外まで充満している。

 料亭の窓や入口、果ては木で出来た壁を突き破って死体が顔を覗かせていた。

 そしてどの死体も一目で致命傷と分かる酷い裂傷を負っている。……中には体の中身を勢いよくぶちまけている奴もいた。

 

 そんな中、ジャンがゼロツーの肩を叩き、二階の方を指さす。

 

「ゼロツー。あの二階から飛び出してる首無し死体……あれってまさか……」

「ん? ……う、うわっ……グロ……!」

 

 ジャンが指し示した方向……料亭の二階部分に目を向ける。

 木製の壁をぶち破って外に飛び出しているその死体は頭部の形が歪にひしゃげ、首が四回か五回ほど力づくで回転させられていた。無理やり回転させられた首の皮膚が裂けてぼたぼたと血が落ち、肝心の頭部もぶらぶらと振り子のように揺れている。

 

「あの顔は……闘技場の運営の奴か……? マジか、この刑務所内じゃかなりのビッグネームだぞ……」

 

 この刑務所内で圧倒的な利権を握る闘技場。

 最も金が集まる闘技場の運営の男は、囚人であれば誰もが無視できないほどの権力を持っている。いざとなれば金に物を言わせて数の力で気に食わない相手をすり潰せる人物だ。

 まあきゃるとる~ぜ等の圧倒的な個人の武力には敵わないかもしれないが……。

 それでも強大な『力』を持っているのに間違いはない。

 

「一体何が起きたんだ……」

 

 そんな風に呟くゼロツーの疑問に答えるように。

 料亭の中から死体を蹴り飛ばし、ゆっくりながらも力強い足音で出てくる人影が一つ。

 両手にゴツイ片手斧を持ち、赤いフードを深くかぶって顔を隠す大男。刑務所内では誰もが知っているほどに有名な男だ。

 

「よ、()()()()()()……?」

 

 野次馬とばかりに料亭を見ていた囚人達が一斉にどよめく。

 傭兵赤ずきん。依頼を受ければ誰でも殺すが……逆に言えば、誰かが依頼をしなければ誰も殺さない。

 

 彼に依頼をしたのは誰か。

 そんな疑問が野次馬の中に湧くが、その答えはすぐに店の中から現れた。

 

「……随分、野次馬が集まっているみたいですね」

 

 血に濡れた囚人服をキッチリと着込む、金の片眼鏡(モノクル)を掛ける男。

 刑務所の外で超巨大組織ダンク・パンカーズを率いていたボス、厭勝だった。

 彼はくるりと野次馬たちを見回したあと、興味なさそうに視線を逸らし、赤ずきんの方に目を向ける。

 

「ありがとうございました。実は私は荒事が苦手でしてね……この店の人間を皆殺しにするのは少し手間だったので、とても助かりましたよ」

「…………」

「あなたが殺した人数は13人……前金だけで足りそうですね。また今度頼みます。それでは」

 

 厭勝がそう言うと、赤ずきんは無言で片手斧を腰のベルトに戻す。

 そして踵を返した後、野次馬の囚人達を片手で押しのけながら道の奥へと去って行った。

 

「……ところで。あなた達も私に何か御用ですか?」

 

 赤ずきんの背中を見送った厭勝が野次馬たちにそう問いかけた。

 怖いものを安全な所から傍観したかっただけで、自分が恐ろしい目にあう覚悟はない。厭勝の圧に当てられた囚人達は蜘蛛の子を散らすように去って行く。

 ゼロツーとジャンもその囚人たちの波に紛れるようにその場を去る。

 あんな厭勝(バケモノ)に目を付けられるメリットは一つもない。ここは逃げに徹するに限る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……早歩きで曲がり角をいくつか曲がった頃、人の気配がない場所で立ち止まる二人。

 ゼロツーが高級料亭がある方角に目を向けながら、眉をひそめて言う。

 

「アレはちょっとやばいな……。刑務所の中の勢力図が書き換わるんじゃないか?」

「まあ少なくとも、闘技場の今後については確実に揉めそう……って感じ。もしかすると大規模な動乱が起きるかも……」

「クッソ、なんでこんな時期に……!」

 

 苛立ちから、盗聴器があるのも忘れて思わず言葉が漏れそうになるゼロツー。

 看守の警戒が薄い平和な時に脱獄するはずだったのに、もし大きな暴動でも起きたら看守の警戒レベルが一気に跳ね上がる。

 そうすると脱獄もしにくくなってしまう。最悪の展開だ。

 

「…………あー、もう……!」

 

 歯噛みするゼロツー。

 しかし過去の出来事はどうすることもできない。

 考えるべきは未来、これからどう対応していくかの一点のみなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







傭兵を先に雇っていたということは、厭勝は最初から皆殺しにする気満々だったのでは……?
まあ格下の人間が自分を配下にしようと画策して来たら、多少ムカつきもするかも……。
関係ない店のスタッフごと皆殺しにしたのは多分『女を寄越した店側も悪い』とか考えてるかもしれませんね。


そんなことより更新速度上昇だ!


今回の話を書く途中で執筆フォームのフォントが変わってしまい、何か変な感覚の中で書き殴りました……
フォントに慣れるまで校正が上手くいかず色々グチャグチャになってしまうかもしれません
後から順次修正していきますので、どうかご容赦ください
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