殺人鬼に集まられても困るんですけど!   作:男漢

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#137 進み続ける人間

 

 

 

 ――――俊介が未来革命機関の拠点で捕まってしまってから、三日後。

 

 

 夜桜は橘さんへの見舞いを終えた後、帰路に就いていた。

 向かう先は生まれ育った我が家……ではなく、駅から徒歩十分ほどの場所にあるマンションである。

 

 夜桜の生家は未来革命機関の上級兵士に破壊され、住めなくなってしまった。

 そして壊れた部分だけを修繕するのは却って面倒だと家長の夜桜宗次郎が判断し、今は瓦礫を撤去して新たな家を建てている途中なのである。

 

 

 新居が建つまでの間、住む家を失った夜桜は適当に空いていたマンションに()()()移り住んだ。

 駅から徒歩十分以内でセキュリティは万全。

 35階建てのマンションの最上階。広さは4LDK。リビングの壁一面に広がった窓で街を一望することができる。

 

 たしか家賃は……百万以上、二百万以下といったところだろうか。

 詳しい数字までは覚えていない。借りるときに家賃は殆ど気にしなかったためである。

 重要視したのは『余計な人間が入ってこないセキュリティ性』だ。

 

 

「ただいまー……」

 

 夜桜は誰もいない部屋の中に向かって帰りの声を掛けた。

 もちろん返事が返ってくるはずもない。

 

 耳が痛くなるような静寂が広がる中、スリッパを履いた夜桜の足音がパタパタと響く。

 電灯のスイッチを付けるのも何処か億劫な気分だ。

 リビングの壁一面にかかったカーテンを手で掴み、肩幅分ほどの広さだけ開いた。

 

 遮光カーテンの隙間から夕日の紅い光が室内に差し込む。

 そして薄暗い部屋の中が血のような色で照らされた。 

 

 

 

 床や壁一面に隙間がないほどビッシリと地図が貼り付けられ、幾重にも重なっている。すべて日本の何処かの土地を記した地図だ。

 そして地図には赤いマーカーで印や線、メモ書きのような文字が乱雑に書かれている。新聞や写真の切り抜き、何処からか手に入れた食料品等の流通量が書かれた書類も貼り付けられていた。

 

 しかし。

 ほとんどの地図には巨大な×マークが書かれており、その一帯の調査が徒労に終わったことを示していた。

 

 部屋の隅にあるゴミ箱は既に丸められた地図で溢れかえっている。ゴミ箱の中身がゴミ袋に移し替えられた様子はない。

 過度のストレスでインクが残ったままの赤いペンはへし折られ、フローリングの床にインクの染みを作っていた。

 

 

 

 夜桜は汚部屋と言ってもいい惨状の室内を一瞥するも、興味なさげに窓の外に目を向ける。

 そして無言のまま、視界に広がる景色を見つめた。

 

「…………」

 

 地平線に沈んでいく夕焼けの紅い光。道行く車のライトと建物の光が散りばめられた紅い街の姿は、人工的な風景なのにどこか神秘的な姿を放っていた。

 薄暗く広すぎる部屋に一人、夕日の紅に顔を染める夜桜の息遣いだけが静かに響く。

 

「……日高君……」

 

 ぽつりと、何処とも知れぬ場所にいる思い人の名を呟く。

 証拠はないが確信はある。この世界のどこかに彼はまだ生きている。

 しかし……その居場所を見つけ、追いかける術が今の夜桜にはなかった。

 

 自分の無力さが途方もなく悔しい。

 『才覚あふれる少女』なんて持て囃されても、今の自分では好きな人の居場所すら知ることができない。今すぐ抱きしめたいのにその願望は叶わない。

 

「……見つからない、見つけられない……。私じゃ……!」

 

 精神を蝕む絶望が器から漏れ出るように、夜桜の瞳の端に雫を溜める。

 夕日の光を目いっぱいに受けた涙は宝石のように光り輝き、それが頬に一筋垂れたところで。

 

 

 

 ――――ピンポーン。

 

 

 

 と、部屋中にインターホンの甲高い音が鳴り響いた。

 夜桜がインターホンの画面に目を向けると同時に、玄関扉の前にいる人物が声を出す。

 

『突然すまない、紗由莉。私だ』

「……()()()()……?」

 

 それは夜桜の実父・『夜桜 宗次郎(よざくら そうじろう)』の声だった。

 その声を聞いて彼女はぐっと親指で両目の涙をぬぐう。

 

 

 現在、このマンションの部屋は『夜桜紗由莉』個人の金で借りている。

 俊介の調査をするために一人の部屋が欲しかったのは勿論だが、単純に不仲である父と母と一緒の部屋で生活するのが嫌だったのだ。

 未成年の身分で借りるのは少々難儀したが、そこは適当にどうにかした。

 

 そのため、この部屋の住所も父には教えていないのだが……。

 まあ、父なら自分の居場所を調べる方法などいくらでも持っているだろう。

 

「…………」

 

 無言の夜桜は部屋の中を静かに見まわす。

 俊介の居所を調査した後がめちゃくちゃに散乱している。今から急いで片付けても10分は掛かるだろう。

 

 父を玄関前で待ちぼうけさせることに心はなんら痛まないが。

 自暴自棄のような、何もかも投げやりになったような気分ではこれらを隠す気も起きない。

 

 夜桜はふらふらとした足取りで、玄関に移動して鍵を開ける。

 扉の向こうでは宗次郎が静かな面持ちで立っていた。そしてチラリと娘の顔を確認し、冷静さを保った重い声を出す。

 

「少し痩せたか、紗由莉」

「どうでもいいでしょ。……何の用?」

「話したいことがある。部屋にあげてくれないか?」

 

 そう言うと、宗次郎は右手に持った純白の紙袋に入った菓子折りを見せた。

 ……私が好きでよく食べているブランドのクッキーだ。教えたことはないはずなのに。

 

「……用事が済んだらすぐに帰ってね」

「ああ」

 

 夜桜は目を細めて嫌そうな雰囲気を出しつつも、宗次郎を部屋に招き入れた。

 玄関を入ってすぐの所にある壁のスイッチを押し、部屋の電気を点ける。

 

 宗次郎は右手にクッキーの袋を持ったままリビングに足を踏み入れ……あまりの惨状っぷりに少しだけ目を見開いた。元々イメージしていた清潔な部屋とかけ離れた紙屑まみれの部屋に慄いたのだ。

 目を見開く父をよそに、夜桜はキッチンに移動しながら言葉を吐く。

 

「まあ適当に座ってよ、飲み物出すから。水道水しかないけど」

「……(うち)の使用人を呼ばないのか? 連絡先は知っているだろう」

「あの人達はお父さんが雇ってるから。新しく使用人を雇うこともできなくはないけど、信頼のない人を部屋に入れたくないし」

 

 透明なコップ二つに水道水を注ぎ、元々部屋に備え付けられていた机に置く。

 そして椅子を引き、宗次郎と向かい合うように座った。

 

 若干の気まずさがお互いに残る中、宗次郎が一番に口を開く。

 

「ちゃんと……食べているか?」

「食べてるよ。最低限はね」

「そうか……なら良いんだが」

 

 会話が三行で終了し、再び気まずい時間が始まる。

 しかしこのままでは一向に事態が進まない。

 

 

 

 宗次郎はコップの水を少しだけ含み、緊張で乾いた口内を湿らせる。

 そして決意したように、言葉を口から放った。

 

「……紗由莉。一つだけ、大切な話がある。日高君のことだ」

「…………」

「お前が彼のことを好いているのは……さすがに、この部屋の様子を見れば分かる。だが……」

 

 夜桜の視線が無意識に強まる。

 その鋭い視線を受けた宗次郎は緊張と共に薄く息を吐き、言葉を続ける。

 

「彼と()()()()()()で関わるのはやめておきなさい」

「……は? どういう意味?」

 

 地獄の釜の底から響くような重い声。

 ゴキゴキと夜桜の指を鳴らす音がリビングに反響する。今の夜桜にとって俊介の話題は大きな地雷になっていた。その内容が俊介を侮辱する類のものであるなら尚更、たとえ実父であっても口にした者は悲惨な目にあうことになる。

 

「わざわざ嫌味を言うために私の家を突き止めて、菓子折り片手にのこのこやって来たの?」

「違う」

 

 そんな夜桜の脅しに近い威圧に、宗次郎は冷や汗一つ垂らさずに言葉を返した。

 

「人柄が良い子であるのは認める。しかし……あの子を追いかけるのは()()ぞ」

「……どういう意味?」

「あの子は『進み続けられる子』だからだ。()()()()()()、な」

 

 無表情にも似た、沈痛な面持ちでそう語る宗次郎。

 その顔を見た夜桜も怒りを抑えた真剣な表情を浮かべ、言葉を返す。

 

「話の意図がうまく見えないけど?」

「日高君は……お前を助けるために『未来革命機関』という巨大組織と戦った。いくら人格の力があるとはいえ、ただの高校生の彼がだ。これがどれだけ異常なことかは語るまでもなくわかるだろう?」

「…………まあね」

 

 夜桜は語気を抑えながらも、宗次郎の言葉に短く同意した。

 未来革命機関。大幹部のピュアホワイトを筆頭とした実力者が多く連なる、裏社会でもトップクラスの巨大武装組織である。一般人の女性を実験台にし、デザインベイビーの兵士を増やして兵力を強め続けていた。

 まかり間違っても、一般人が生涯を通して関わってはならない極悪組織である。

 

 しかし、俊介は未来革命機関をほぼ単独で潰した。

 ピュアホワイトに胸を斬られるという重傷を負いはしたものの、頑強な精神力で立ち上がったのだ。夜桜のように特別な出自でもない普通の高校生が……。

 

 

 宗次郎は目を細め、何かを思い出すように話す。

 

「私は重傷で病院に運ばれ、目を覚ました彼の目を見た時……久しぶりに『恐怖』を感じた」

「恐怖……何に?」

「……普通は、強大なテロ組織を追う過程で大怪我を負えば、どれだけ強がっても決意は揺らぐ。人間は怖がる生物なのだから当然の反応だ。それは本能と言ってもいい」

 

 そこで一度言葉を止め、宗次郎は息を溜める。

 そして何かを吐き出すように言葉を放った。

 

「しかし、彼の瞳には一切の淀みがなかった。輝くような揺るぎない覚悟に染まっていたのだ」

「…………」

「『進み続けられる人間』。それは何かの目標に向かって、頭が壊れそうなほど苦悩しながらも、常に一定以上の歩幅で進み続ける者のことだ。行く先が『地獄』だとしてもな」

 

 夜桜は父との微妙な関係も忘れ、彼の言葉に集中して耳を傾けていた。

 そして宗次郎は細めた目を開いて夜桜と視線を合わせる。その視線は娘に向けるような視線と一人前の大人に向けるような視線が入り混じった奇妙なものだった。

 

「紗由莉、まだお前は出会ったことがないかもしれない。だがよく覚えていてほしい」

「……何?」

「日高君のような『進み続けられる人間』は世界に僅かながらも存在する。どれだけ地獄のような道でも、自分以外の全てを無視して前に進み続ける者たち……」

 

 宗次郎は夜桜の目を強く見据えたまま、言葉を続けた。

 

「そういう者たちが至る先が……人間を超えた『()()』だ」

「……怪物……」

「言い方は悪いが事実だ。お前もこの先きっとそういう人間と出会う。そして日高君は、そういう『進み続けられる人間』の中でも最上位に位置する精神の持ち主と言っていい」

「それは……日高君が、いつか怪物になるかもってこと?」

「あるいはな。今はまだ、彼は自分の『進み続ける道』を見つけていないようだが……もし見つけてしまえば止まらないだろう。行き先が地獄だとしても」

 

 視線を下げ、机の上を見る夜桜。

 それを見た宗次郎は少し心配げな目を浮かべながらも、強い口調の言葉を投げかけ続ける。

 

「紗由莉。私はその恋心を否定する気はないが……日高君を()()()()気ならば覚悟を決めた方がいい」

「…………」

「心が折れそうな茨の道でも、進み続ける彼を追い続ける覚悟を。自分も共に『怪物』となる決意をな」

 

 宗次郎は少し脅すような声色でそう話す。

 それは娘を彼なりに心配してのことであった。自身の脅しくらいで揺らぐような覚悟ならば、俊介と付き合う道を認めるわけにはいかない。

 

 俊介は奇跡的なバランスで普通の道を歩いているが……何かのはずみで、宗次郎の想像も及ばない怪物に成長する恐れがある。それだけのポテンシャルを秘めている。

 

 怪物になりゆく彼の背中を追い続けるとき、紗由莉は本当に幸せなのだろうか。

 娘の幸せを真に願うのならば、俊介以外の人物と添い遂げる道もあるのではないか。

 

 そう思ってやまないのだ。

 

 

 

 ――――しかし。

 

 

 

「……ふふっ」

 

 宗次郎の心配を払しょくするように、夜桜は軽い調子で笑い声を漏らした。

 そして父の目を見据えて深い覚悟の灯った瞳を見せる。

 

「日高君が何があっても進み続ける人間で……私が日高君を必死に追い続けるだけの人生を送るかもって?」

「……ああ」

「舐めないで。私が一番、日高君が誰よりも凄いことを知ってるんだから。そんなのとっくに覚悟してる」

 

 夜桜は目を動かし、部屋の中に散乱した地図を見る。

 それらを見まわしながら彼女は言葉を紡ぐ。

 

「日高君が前に進み続けるなら、追いかけるなんて安いことは言わない。私は何をしてでもその隣に立つよ」

 

「もし日高君がおかしな方向に進もうとしてるなら、私が手を引いて歩くよ」

 

「行く先が茨の道でも、手を繋いで歩けばきっと素敵な旅路になるよ」

 

「日高君と歩けるなら、どんな道でも私にとっては夢物語みたいな旅になるよ」

 

 

 ……その一連の言葉を聞いた宗次郎は、温和な表情を浮かべる。

 そして優し気な声色の言葉を放った。

 

「紗由莉。……辛い道だと思うが、大丈夫か?」

「心配ないよ。私……自分でもびっくりするぐらい、本当に日高君が好きなの」

 

 そう言った後、夜桜はにへらと顔を崩し。

 

「私が色んな才能を授かったのは、きっと日高君と一緒に歩くためだったって。今ならそう思えるんだ」

「…………そうか」

 

 宗次郎は心の底から幸せそうに言った娘の表情を見て、静かな声を吐いた。

 

 娘の溢れんばかりの才能に驚いた。その才能を活かすために教育を施したが、全ての分野において最高の結果を発揮する夜桜に戦慄した。

 そして娘が人外じみた爆弾技師の人格を宿らせたとき、実の娘相手に恐れをなしてしまった。

 

 宗次郎の想像以上に、娘は優秀過ぎたのだ。

 そして、娘をまるで人間ではないもののように恐れてしまった。そう扱ってしまった。邪険にしてしまった。

 

 ……しかし……。

 

(なんだ。紗由莉も……才能があるだけで、普通の女の子じゃないか)

 

 宗次郎は今になってやっと。

 遅まきながら、そう気づいた。

 

 

 

 

 にっと口角をわずかに上げた表情を浮かべる宗次郎。

 そして、懐から三つ折りの紙を取り出した。

 

「ならば……これはもう必要ないな」

「? 何それ?」

「紗由莉に山ほど来ていた縁談の中で……私セレクトではあるが、一番条件が良かった相手の釣書だ。念のためとに思ったが、杞憂だったな」

 

 宗次郎は手に持った三つ折りの紙をビリビリに破り裂いた。

 机の上に広がる細かい紙屑。宗次郎はそれを二度と見ることはなく、夜桜の方に視線を向ける。

 

「紗由莉、私を頼れとは言わない。()()()()()()。夜桜グループを含めてな」

「……お父さん……」

「がんばれよ。私は父親失格の人間だが、それでも……まだ、お前の力になってやりたいと思ってる」

「……うん」

 

 夜桜が短くそう答えたあと、宗次郎は椅子を引いて立ち上がった。

 今回の用事は俊介について夜桜がどう思っているのかを聞くためだったのだ。だが既に答えは出た。これ以上はこの場に留まる必要もない。

 

 宗次郎は父親として家族団らんの時間を過ごす……なんて柄ではないし。

 地図だらけの部屋で、母親が欠けた状態で家族団らんをするのは無理だろう。

 また今度機会を見て、考えるとしよう。

 

 

 玄関まで移動し、靴を履く。

 そして玄関扉に手を掛けたとき、宗次郎の背中に夜桜が声を掛けた。

 

「ね、お父さん」

「?」

「私が橘さんの病院に行くのを予想して、根回ししてくれてたでしょ?」

「ああ……まあな」

 

 宗次郎は未来革命機関に捕まっていた女性たちが入る病院を知っていた。

 そして夜桜がその病院に訪れることを見越し、事前に院長に話を通していたのだ。

 特に嘘を吐く必要もないので、夜桜の問いにうなずいて答える宗次郎。

 

 そして振り返る宗次郎に対し、夜桜が少し気恥しそうな表情を浮かべて声を放つ。

 

「それに、なんていうかその……小恥ずかしいけど……」

「…………」

「今まで……育ててくれてありがとね。他にも色々、ありがとう。ずっと言う機会がなかったんだけど」

 

 それを聞いた宗次郎は、驚いたように目を見開き。

 すぐあとにふっと声を漏らして笑みを浮かべた。

 

「気にしなくていい。……それに、私こそ今まで悪かった」

「ホントにね。いや本気で」

「……まさか肯定されるとはな。いや、娘に対する態度ではなかった私に完全に非があるし、仕方ないか」

 

 宗次郎は優しい笑みを浮かべながら、玄関扉を開ける。

 そして扉をくぐり、夜桜にひらりと手を振った。

 

「それではな。……食事はきちんと取るんだぞ」

「分かってるよ。もう、しつこいって」

「そう言いたくなるものなんだよ。自然とな」

 

 その言葉を最後に、宗次郎の姿が扉の向こうへと消える。

 部屋に広がる静寂。

 

 

 

 夜桜は少しの間玄関扉の前で立ち尽くした後、「ん~っ」と声を漏らして伸びをした。

 

「そうだな……お父さんの言う通り、ちょっと何か食べようかな」

 

 俊介が収監されてから三日。

 学校の時間や最低限の睡眠時間以外は、刑務所の場所を探すためずっと地図とにらめっこを続けていた。食事も本当に生きるために最低限の量しか取っていなかった。

 冷静になって食事のことを考えると、自然と腹の虫がくるると声を鳴らす。……今から外に買いに行くのは面倒くさいし、デリバリーでも頼もうかな。

 

 スマホで料理のデリバリーサイトを開きつつ、わずかに開いたリビングのカーテンの隙間から外を見る。

 そして外の景色を見ながら物思いにふけり始めた。

 

「日高君の隣に立つためには……何はともかく、まずは日高君の居場所を見つけないと」

 

 だが、一体どこを探せば見つけられるだろう?

 政府に秘匿された刑務所。地図とにらめっこしたり、古い施設を利用しているのではないかとそれなりの大きさの廃建造物を調べたり、食料品の不審な流通を調べてみたり……。

 

 刑務所が日本国内にあるなら、このまま時間を掛ければ見つけられる……とは思う。

 しかし、もし刑務所が日本国内にないなら終わりだ。調べる範囲が世界中に広がったら、もはや夜桜では探しきれない。

 

「日本国内にあるのを期待して、地図とのにらめっこは続けるけど……何か()()()()()()が欲しいなぁ」

 

 デリバリーサイトで計一万円分ほどの料理を頼み、スマホを携帯にしまう。

 

「日高君なら……何か……うーん……あ!」

 

 そこで夜桜は思い出す。

 

 自分が未来革命機関に捕まった時、俊介に自分の居場所を知らせるため、発信器をひそかに仕込んでいたこと。

 その発信器のレーダーを自分の部屋に隠していたこと。

 

「万が一の時のために、自分の部屋に居場所を知らせる何かを置いてるかもしれない……!」

 

 俊介は少し抜けているところがあるが、俊介の中にいる殺人鬼達はかなり用意周到だ。

 もしかすると夜桜の思う通り、何かの秘密装置を置いている可能性はある。

 

 

 ……別に。

 

 合法的に俊介の部屋へ忍び込む理由を考えているわけではない。

 決してそんなことはない。

 この機に乗じて部屋の中をくまなく探そうとか、そういうことは……決して。

 

「……そうと決まったら……!」

 

 夜桜はデリバリーが来るまでの間に。

 ごそごそと、怪しげな黒い服を準備し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 










俊介が彼氏になるのを夜桜家が公認したようです。
なお、俊介本人は未だに夜桜からの好意に気づいていない模様。外堀埋めすぎてもう堀がないですよ。


ちなみに今回の対話で夜桜のブレーキが緩んだ(当社比)ので、次回からアクセル全開です。
俊介の隣に立つためには倫理観なんて緩めないとやってられないんだ。
元から緩んでる?

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