タクシーに乗り込んでから一時間と少し。
まだ明け方ということもあり、高速道路の車も少なく、当初の予想よりも早く帰り着くことができた。
折川家の前でタクシーに代金を払い、マオの体をそっと抱きかかえる。
意識がやっと戻ってきたマオは、家の二階の窓を指さしながら細い声を出した。
「すまん……部屋の中に、ワシを戻してくれ……」
地下施設にマオがやってきたのは大体四時半より少し前だった。
当然、まだ小学生の女児がそんな早朝に外出するのを親が認めるはずもない。
なので折川とマオは父親に黙ってこっそりと家の中を抜け出してきていたらしい。
「結城の親は、いつも六時に目覚めて結城を起こしに来る……。その時にベッドにいないのを見られると、都合が悪い……」
マオのかすれた声を聞き、夜桜は納得の頷きを返す。
そして二階の窓を見ながら短く言葉を吐いた。
「二階の……ベランダがある、あそこの窓ですよね?」
「ああ……」
そう確認すると、夜桜はマオを一度降ろし、肩に担ぐように持ち直した。
左手でマオの体を持ちつつ、空いた右手を使ってひょいひょいと軽い身のこなしで二階の窓の近くまで登っていく。
そしてベランダに音もなく着地したあと、窓を開けようとスライドさせる。
しかし窓は数ミリも動かずガタンと小さな衝突音を鳴らした。
どうやら鍵が掛かっているらしい。
「マオさん、窓に鍵が」
「待て、今開ける……」
マオが右の人差し指を軽く折り曲げる。
その瞬間、窓の鍵がカチンッ!と音を鳴らしてひとりでに回った。
……魔法って凄く便利だ。
私みたいに、鍵を開けるのにいちいち爆弾を使って壊す必要がないところがとても良い。
「どんなところに魅力を感じてるんだ、お前は……」
……思考を読まれたらしい。
少し恥ずかしく思いながらも、窓を開けて結城の私室に入った。
部屋の中は家具等にピンクの装飾が目立つ、なんとも女の子らしい内装だった。
動物をデフォルメした小さめのぬいぐるみがベッドのヘッドボードに並んでいる。
本棚には教科書が隙間なく並んでおり、そこには埃一つ見当たらない。
よく掃除が行き届いているようだ。部屋の主の几帳面な性格が伺える。
そして、本棚の教科書たちの中に『ぬいぐるみの作り方』と題した本が混じっていた。よく読み込んでいるのか、その一冊だけ他の本と比較して明らかにボロボロである。
もしかして、先ほどベッドに並んでいたぬいぐるみは全て自作なのだろうか。
売り物として店に並んでいても全くおかしくないクオリティだった。
『意外な趣味だな』と思いながらもベッドに近づくとき、ふと、部屋の隅にある学習机が視界に入った。
学習机には透明なデスクマットが敷かれており、その下には小学校の時間割や一週間の勉強計画表が入れられている。
そして、机の一番目立つ場所に父親と母親と結城の三人で写った家族写真が入っていた。
「…………」
夜桜は無言でそれを見つめたあと、目を一度ぎゅうっと瞑ってから、静かに開く。
ベッドの上にマオを優しく降ろしたあと、布団をそっと掛けた。
「……私の連絡先を渡しておきます。一息ついたら連絡してください」
「わかった……後で連絡する」
マオの手に走り書きしたメモを握らせる。
そして音が鳴らないように慎重に窓を開けてベランダに移動し、道路へと飛び降りた。危なげなく着地し、結城の私室を見上げる。
学習机にあった結城の家族写真を思い出し、夜桜は少しだけ目を細める。
既にマオさんには協力を確約してもらったのだから、私も私の責務を果たさなければならない。
とりあえず夜桜家経由で、できるだけ優秀な弁護士を手配するように準備しないと……。
そこまで考えた所で、ふらりと、足から少しだけ力が抜けるような感覚がした。
……自分で考えているよりも体に疲労が溜まっているらしい。
(……連絡が来るまで、家に帰って休もう……)
夜桜は足に力を入れなおし、駅近くにあるマンションへの帰路を歩き始めた。
……が、疲れ過ぎていたので、折川家から少し離れた場所で再度タクシーを拾い直した。
――――朝八時。
六時半ごろに自宅のマンションに帰り着き、一時間ほどの仮眠。
そしてつい先ほど起床し、シャワーを浴びて、遅めの朝食をもそもそと食べ始めた夜桜。
地下施設に行く前は、眠気を覚ます為に温かいコーンスープしか飲まなかったので、これが今日初めてのマトモな食事である。
「…………」
黙々と、たまごとハムがたっぷり挟まったサンドイッチを摘まむ。
シャワーを浴びてすぐにマンション下層に併設されているコンビニで買ってきたものだ。
思わず三つほど買ってしまったが、何の苦も無く食べきってしまった。疲労が溜まっていた上に腹も減っていたのだろう。
「カメラの映像、確認しとかなきゃな……」
夜桜は食べ終えたサンドイッチのゴミをゴミ箱に突っ込み、作業机の上に置いている小型カメラに目を向けた。
額に装着していたカメラの中には地下施設の映像がたっぷりと録画されている。
あの時は気づかなかったことが映っているかもしれないし、内容を一通り見る必要がある。
「うーん、やることがいっぱいだー……」
椅子の背もたれに体重を掛けると、ギシリと軋むような音がわずかに響いた。
幸いなのは、今日が休日であったことだ。疲れた体に鞭打って学校に行く必要がない。
まあ、もし学校があったとしても休んでいた可能性は高いけど。
「さて、と……ちょっとずつ動き始めようかな」
そんなことを呟きながら椅子から立ち上がったとき。
タイミングを見計らったように、充電器に挿しっぱなしにしていた携帯から電話の着信音が鳴り響いた。
充電器を抜き、携帯の画面を見る。
知らない番号からだったが、相手が誰かは大体見当がつく。
緑のボタンを押し、髪をかきあげるように携帯を耳に当てた。
『……もしもし、こちら魔王。これは夜桜女史の番号で間違いないか』
電話口から聞こえてきた声はやはりマオのものだった。
耳に携帯を当てながら彼女に言葉を返す。
「ええ、夜桜で間違いないです。まだ別れてから二時間しか経ってませんが、もう大丈夫なんですか?」
『本調子ではないが支障はない。それに、動くのは早いほうが好ましいだろう?』
「……そうですね。今からそちらの家にタクシーを手配するので、少し待っていただいて……」
『その必要はない』
夜桜の言葉を遮るように、マオが短く言葉を吐く。
まさか徒歩で来る気なのだろうかと思った瞬間、部屋の中に『ピンポーン』と甲高いチャイム音が鳴り響いた。
玄関の方に視線を向けつつ、夜桜は電話口に言葉を返す。
「……このマンション、部外者は居住者の許可を取らないと入れないはずなんですが」
『25階にあるスポーツジムの開閉可能な窓はもっと小さい方が良いんじゃないか? 小柄な体格の者なら、空を飛んで外から鍵を開ければ簡単に入り込める』
「…………」
これも、『魔法』か。
裏の世界では常識だけど、表の世界では物語の中だけの物と思われている技術。
『世界には魔法使いが実在する』っていうのは昔から知ってたけど、ここまで汎用性が高いものだとは思わなかった。使い手の技量が凄いからかな。
でも……いくら科学全盛の時代とはいえ、魔法はもうちょっと世の中に知られててもいいような気はするんだけどね。
国が隠匿でもしてるのかな?
一般人が素手から火を出したり、道具なしに空を飛べるようになったら、治安維持の難易度が桁違いに上がるだろうし。
いや……魔法使い本人たちがあまり世間に知られないようにしてるのかも?
あんまり考えなしに魔法の知識を広めると、たまたま自分の魔法の才能に気づいた人が増長して、悪いことに手を染めるかもしれないし。
それとも、裏社会の住人が自ら隠してる?
さっきと同じで、魔法の才能に気づいた新参者が突然裏で台頭してきたら目障りだもんね。
相手を叩き潰すよりも、まずは新たな魔法使いを発生させないよう対策をする。その対策を超えて現れるようなら……って感じなのかな。
……うーん。
考えてもわかんないな。
まあ暇になった時に思い出したら改めて調べてみるか。
『あれこれ考えてないではよ開けんか。壁越しでも思考読めるんだぞ』
「あっ、すみません」
夜桜は未だに繋がっていた電話を切り、玄関の前に移動する。
扉を開けた先には、魔王の姿ではなく折川結城の姿をしたマオがいた。ピンク色のカバーをつけたスマホを耳から離し、ポケットに入れている。
「お待たせしました。どうぞ中に入ってください」
「うむ」
マオは靴を脱ぎ、膝を曲げて綺麗に整えてからリビングに歩を進めた。
玄関の扉を閉めた後に夜桜もリビングに戻る。
彼女を案内したリビングは一見綺麗だが、部屋の隅には刑務所を探すのに使った地図が乱雑に積み重ねられている。俊介の家に忍び込む前に軽く片付けていたのだ。
地下施設に侵入しても何の成果もなかったので、再度広げる必要があるだろう。
なかなか大変な作業だ……やっぱり片付けない方が良かったかもしれない。
夜桜はそんなことを思いながら、トットッと短い歩幅でキッチンに移動する。
そして、リビングの壁一面に広がる窓から街を見下ろしているマオに声を掛けた。
「マオさん。紅茶と緑茶、どっちにしますか?」
「紅茶で頼む」
窓の方を見たまま振り返らずに短く返事するマオ。
白磁のティーカップ二つに紅茶のパックを入れ、電気ケトルで沸かしたお湯を注ぐ。蓋をして軽く蒸らし、紅茶の香りを引き立ててからパックを抜く。
ちょっとした工夫だが、これで客人に出しても最低限恥ずかしくない味になったはずだ。……まあそもそもインスタントだから、大した工夫のしようがないんだけど。
ソーサーにのせたカップをリビングのテーブルに運び、マオの方を見る。
彼女は未だに腕を組んで窓から街を見下ろしていた。夜桜はマオの小さな背中に視線を合わせながら声を掛ける。
「紅茶の用意ができましたよ。……空を飛べるなら、もっと綺麗な街の景色をいつでも見られるんじゃないですか?」
「……確かに、儂は本気を出せば雲の上でティータイムができるがな。空を飛んで見る景色と窓から見た景色はまた違った趣があるのだ」
「そうなんですか?」
「そうだ。『窓枠』という額縁に飾られた『景色』という絵画……なんと美しい。いつか空を飛べるようになったら夜桜女史も儂の言うことが分かるだろう」
果たしてそんな日が来るだろうか。
夜桜が内心でそう思っていると、マオが「ふっ」と笑いながら振り返ってテーブルの方に歩いてきた。
彼女は人差し指で空を横に切り、椅子を魔法で動かす。
そして優雅な動きで腰掛けてから流れるように足を組み、机の上にあるティーカップの紅茶を一飲みした。
夜桜もそれに続くようにゆっくりと椅子に座る。
「マオさん。改めてですけど、今朝はありがとうございました」
椅子に座り、議論を始める前に。
夜桜はマオに向かって深く頭を下げながら感謝の言葉を口にした。
それを聞いたマオは、少し気まずそうに目を逸らしながら言葉を吐く。
「儂は殆ど何もしていないがな。むしろぶっ倒れて余計に迷惑をかけてしまった気が……」
「そんなことないですよ。もしあなたが来てくれなかったら、私は銃を持った警備員たちを相手にすることになってましたから。私も流石に、銃を持った集団相手はかなりキツイですし」
「ふむ。まあそういうことなら……その感謝を受け取ろう」
マオはそう言いながら香りを楽しむようにカップを揺らし、くいっと更に一飲みする。
「まあぶっちゃけた話、儂に感謝する必要はあまりないがな。儂も打算ありきで動いておる故に」
「それはそうかもしれませんが……」
「しかし、それでも女史が恩義を返したいと言うのなら……儂ではなく、結城にしてやれ。儂もそちらの方が嬉しい」
「!」
夜桜はマオのその言葉に目を見開き、深く頷く。
本当に、結城ちゃんにだけはとても優しいな……。弁護士の件、とても腕の立つ人を複数依頼できるように頑張ってみよう。
けどマオさんにも何か恩返ししないと気が済まないな。
……たしかマオさんってジュニアアイドルやってたよね?
夜桜グループの傘下企業のCMに彼女を起用できないかな。
でも流石に知名度が足りないかも……うーん、ねじ込めるか試してみるか。
そんなことを考えていると、マオがじっと細めた目をこちらに向けてきた。
心の中を読まれたらしい。
ティーカップを机のソーサーの上に置き、落ち着いた声色で言葉を吐く。
「……アイドル業を応援してくれるのは嬉しいが、儂への礼は本当に構わんのだぞ?」
「私の感謝の気持ちですよ。結城ちゃんへのお礼とは別に、マオさんにもお礼がしたいんです。あ、もちろん別の戦略で知名度向上を図っているなら、このお話は断っていただいても……」
「いやいや嬉しいぞ? 儂、商業施設で最近やっとライブできるようになった地下卒業しかけアイドルだし。しかし儂の懸念点は別にあるのだ……」
冗談交じりのジョークを話すときのような軽い声色。
マオはわずかな笑みを浮かべながら、夜桜の目をじっと見据える。
「今の段階でCM起用なら、儂、今から『
「『これ』って……何か分かったんですか?」
「ククク。ま、うだうだ話を引き延ばすのは好きではない……結論から言おう」
そう言ったマオは、犬歯を露出するほど口角を上げたあくどい笑みを浮かべる。
背もたれに体重を深く預けながら夜桜の顔を見据え、言葉を紡いだ。
「
その言葉に――――思わず、夜桜はバッと立ち上がった。
座っていた椅子が大きく後ろに傾き、地面に倒れる――――直前に、時間が固まったようにピタリと動きを止めた。
フローリングを傷つけないようマオが魔法で留めたのだ。
しかし、夜桜の頭にはフローリングの傷だとかはすっぽり抜け落ちていた。
机越しのマオに身を乗り出し、肩を掴んでがくがくと前後に揺らしながら大声で問いかける。その目は異様に血走っていて、一般人がうっかり見てしまうとその日の夢に出そうなほど怖かった。
「ど、ど、え、と、特定!? 日高君の居場所を!! 本当ですか?!」
「あーあーあーあー分かった分かった! 最初から話す! 落ち着け落ち着け!!」
マオが夜桜の手を振り払い、椅子を元の角度に戻す。
そして魔法で夜桜を無理やり椅子に座らせてから、乱れた服をさっさっと手で整えた。
「ふぅ……。さて、順を追って話そうか」
「お願いしますッ!」
「おおう、元気満々だな。……ま、ないよりいいか」
ティーカップに入った紅茶で一度喉を潤し、マオはゆったりとした声色で語り始めた。
「夜桜女史よ、お前がアニーシャを見つけたのは本当に幸運だったな。儂が
「アニーシャさんが……!?」
「うむ。ま、儂があれこれ口で語るより、実際に見ながらの方が理解は早いだろう」
そう言うとマオは人差し指で空に円を描いた。
その瞬間、夜桜とマオを最短距離で結ぶように、星屑が集まったように輝く線が空中に浮かび上がる。指でその線に触れても何の感触もない。
「このキラキラした物は、一体……?」
「これは『縁』だ。地下施設で契約を締結したとき、儂がこっそり結んどいた」
「……縁? 結ぶ? すみません、ちょっと魔法関連は詳しくなくて……」
「おおそうか。んーと……」
「魔法使えないからな、そりゃ分からんよな」と呟きながら、マオが顎を押さえる。
分かりやすい例がないかを頭の中でうんうんと考え……良い例が思いついたのか、軽く頷いたのちに言葉を紡ぎ始めた。
「そうだな。この線は、魔法で作った『契約書』だと思えばいい」
「契約書、ですか?」
「ああ。これを結んでおくと色々便利な効果を付けることができるのだ。儂の場合、夜桜女史に身の危険が迫った時にアラートが鳴るようにしている」
「へえ……」
魔法で結ぶ契約書、か。
なんとなくは理解できるけど……。
まあ、心を読めるマオさんが何も言わない辺り、何もかも詳しく把握する必要はないということだろう。
そう思っていると、彼女が顔の前で手を組みながら言葉を吐き始めた。
「……しかしのう、この縁は少し厄介な点があってな……」
「厄介な点?」
「縁を結んだ者同士の間に、先ほどからキラキラ光りまくっとる線ができてしまうのだ。いわば魔力のケーブルだな。今は儂が敢えて可視化しとるが普段はガチガチに隠しておる、見られて気分の良い物じゃないしな」
「魔力のケーブル……」
契約を結んだ者同士に、キラキラした線ができる。
そしてさっきマオさんは『アニーシャさんを見つけたのは幸運だった』と……。
…………!!
「まさか……!」
「うむ、勘が鋭いな。お察しの通り『アニーシャと平民には縁が結ばれていた』」
二人に縁が結ばれている!
それなら……!
「その縁の、魔力のケーブルを辿っていけば……!」
「おのずと平民の居場所に辿り着く。単純な結論だな。そしてもう既にやった」
「早いッ! ……ありがとうございますッ!!」
「苦しゅうない」
マオはポケットからスマホを取り出し、地図アプリを開く。
そして指で何度か画面をスワイプしたあと、夜桜に画面を見せた。
「アニーシャの縁が伸びている先は、ここだ」
「…………」
マオが地図アプリで示したのは、近畿地方にある山脈の奥深くだった。
ただの木しか映っていないその場所にはマトモに舗装された道路が一本も伸びていない。
恐らく刑務所は地下にあり、どこかに地下に入るための入り口があるのだろう。
「ま、儂の魔法でテレポートさせるから行きも帰りも安心しろ。侵入方法もほぼ確立していると言ったのはそのためだ」
「なるほど……」
流石マオさんだ。魔法に関してはこの上ないほどに頼りになる。
それに侵入方法を確保してくれたのは勿論だけど、刑務所の場所がわかったのも大きい。入り口は分からないけど、そんなもの場所さえわかればどうとでも探せる。
刑務所に食事等の荷物を運ぶ車は当然走っているだろうから、もしかすると、その荷物の中に何か仕込めるかも?
夜桜はあれこれ考えながら、この先に動く手順を考えていた時……。
ふと、疑問に思ったことをマオに向かって問いかけた。
「……というか、今まで何回も日高君に会っていたんですよね? その時に、マオさんの言う『縁』には気づかなかったんですか?」
「むっ。……むむう……痛いところを突くな」
「なにか理由でも?」
「まあアレだ。日高に会うたびアニーシャが怖すぎて縁を探す余裕がなかったというか……」
……そういえば、マオさんはアニーシャさんに酷いトラウマを持っているんだっけ。
マオさんは心を読むことで人格体も見えるから、アニーシャさんの姿も丸見えだし……。
夜桜が納得しかけたところで、マオが続けるように言葉を吐いた。
「あと、単純にアニーシャが『縁』を隠しておったのもある」
「隠してた?」
「うむ。あの力一辺倒の化け物にしては考えられないほど巧妙にだ。だから日高側の縁はこの魔王ですらも見えなかった。……まあ、アニーシャ本体の方は隠す気ないレベルのぶっとい縁でぎゅんぎゅん魔力送ってたけど」
「ええ……」
魔法が使えないから見えなかったけど、あの時そんな光景が広がってたんだ。
私も本格的に魔法覚えようかな……。使えると色々便利そうだし。
そんなことを考えていると、マオが何かを思い出したように顔をパッと上げ、夜桜に言葉を吐いた。
「……あ。そういえば、一つ気になったことがあったんだった」
「? 何ですか?」
「さっき、両者の間に結んだ縁には『効果』が付けられると言っただろう?」
「そうですね。私の場合は、マオさんにアラートが鳴る効果だと」
「そうそう。それでな、アニーシャの奴はバカみたいな量の魔力を常に送り続けて、日高に
小首を傾げる夜桜。
マオはピンと人差し指を立てながら、ハッキリとした声で言う。
「『害意のある毒・薬』の完全防御。神の毒ですら飲用水扱いにしてしまう過剰にもほどがある物だったんだが……こんな効果を付けている理由、何か知らないか?」
害意のある毒・薬を完全防御?
……なんでそんなものを……。
…………。
……ああ、道理であの時……*1。
「ちょっと待て。今お前の心の中読んだぞ夜桜女史」
「何のことですか?」
「お前、お前……流石に駄目だろ! おいっ! おい!」
何のことか分からないなー。
あっ。
マオさんの紅茶がいつの間にかなくなっちゃってるし、新しく淹れなおしてあげないとなー。
「待てッ、やめろ……なんか怖い! 自分で淹れる!」
「いいんですよー。お客さんなんだから、座っててくださいねー」
「分かった、日高には言わないからやめろッ! やめろって!! 人間もっと怖くなるから!! 怖くなるから!!!」
人間へのトラウマをさらに強くしかけるマオを無視して、夜桜はキッチンへと向かった。
-Tips-
Q.夜桜の薬()やいつぞやの麻薬が効果なかったのって、アニーシャの縁のおかげなの?
A.俊介は精神に作用する類の薬はそもそも素で効きません。過剰すぎる縁の効果はささやかなおまけです、安心してください。
Q.ハッピーサラミとかいうメキシコで売ってそうな麻薬入りお菓子を買って食いまくってたのはなぜ?
A.味が好きだから。
Q.アニーシャの縁は結局何の効果があるの?
A.スズメバチに襲われまくったり、フグを踊り食いしても大丈夫。
Q.なんでアニーシャはこんな過剰すぎる効果を付けたの?
A.『 』だから。
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再びファンアートを描いていただきました!! 本当にありがとうございます!!!
ヘッズハンター
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トールビット
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