殺人鬼に集まられても困るんですけど!   作:男漢

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#53 意味不明、しかし地獄

 

 

 

 俊介は給食を口の中に運びながら、考え事をしていた。

 その内容は勿論、今日の注射の時から現れ始めた透明な人間達の事だ。

 

 自分に打たれた注射が何か、ぼんやりとは知っている。

 浮遊人格統合技術が何か?を小学生向けに簡略化して説明する――実際には重要な部分が巧妙に隠された――授業を学校で受けたからだ。

 

 

 注射を受けた後、いきなりあの半透明の人物達が目の前に現れた。

 

 という事はつまり。

 あの十数人の彼ら彼女らが、()()()()()宿()()()()()……という事なのだろう。

 

 

(……どうしよう……)

 

 日高俊介は悩んでいた。

 浮遊人格統合技術によって人格を宿らせた者……()()()()

 

 人格持ちは、人格持ちであるという旨を国に報告せねばならない。

 しかし病院で注射を受けた時、突然目の前に現れた半透明の彼らを幽霊だと思い込んでしまい、恐怖で気絶してしまった。

 

 ……実際は幽霊だと思い込んだ恐怖に加え、死んだばかりで気の立っていた殺人鬼の気迫のせいで気絶してしまったのだが……俊介はそれを知ることはない。

 

 

 そうして次に目覚めると、家の前。

 母親は集まった半透明の彼らに気付くどころか、人格が周囲にいるかも?という事に思考を割いてすらいない。

 つまり母は、自分の息子が人格持ちになった事に気付いていないのだ。よって国への申請も済ませていないという事になる。

 

(国への申請を済ませてないと、違法とか、犯罪とか……そういう事になるのかな……)

 

 ただの小学生にとって、国の法を犯すという行為は途轍もなく恐ろしい物に思えた。

 ある程度度胸も知恵も付いた大人ならばこうも行かないだろう。年端も行かない小学生に浮遊人格統合技術を施す行為は、子供の犯罪への恐怖心を煽り、隠れた人格持ちをあぶり出す効果もあったのだ。

 

 

「…………」

 

 帰ったら、母親に人格持ちだと言おう。

 

 

 ――――そう思っていた矢先の事だった。

 

 

 

『大きな箱が1階、6年生の教室に届きました。先生方は受け取りに向かって下さい』

 

 

 意味不明な内容の放送。それにしては、やたらと切羽詰まった様子の声色だった。

 

「……?」

 

 普段聞き慣れない言葉の放送に、給食を食べていた教室内の小学生たちの手が止まる。

 実はこれは。校内に不審者が侵入した時、不審者に情報を与えないためにわざと内容をぼかしているのだ。

 

 大きな箱は不審者。

 1階、6年生の教室に届いたというのは、その場所に不審者がいるという事。

 

 

 しかし。

 避難訓練の時にしか聞かないこの放送。平凡に暮らす子供が、日常から非日常へと意識を即座に変えられる訳もなく。

 

 誰も状況を上手く把握できぬまま―――

 

 

「――――きゃぁあああああああああ!!!」

 

 

 階下から、女子生徒の悲鳴が教室に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これは中々……』

 

 忍者は目に付いた人間を襲いまくる血みどろの小学生をこっそりと観察していた。

 爪と歯で人を裂き散らかすその姿はまさに獣。

 動きは荒いが、何十人の小学生や数人の成人した教師など相手にならない位に強い。

 

「け、警察に通報しろ!」

「もうしてます!!」

 

 今は体格のいい……おそらく体育教師の2人が椅子を持って応戦している。

 だが5秒も経たない内に片方の男の腕が深く裂かれ、鮮血が噴き出した。それに気を取られたもう片方の男も胸を深く裂かれ、地面に倒れる。

 

「ふしゅるるるるる………」

 

 彼は血に染まった廊下の中、火照った体の熱を逃がすように深く息を吐いた。

 

 ポリポリと頭を掻きつつ、忍者は考える。

 間違いなく、常人では相手にならない程にこの小学生は強い。しかし……どこか違和感がある。

 

 違和感の理由は何となく分かる。()()だ。

 明らかに相手に当たらない距離で腕を振るったり、地面に着地するタイミングを失敗して不自然に体勢を崩していたりする。

 素の身体能力が常人とは比較にならないため、それだけの失敗をやらかしてもそうそう負けはしないだろうが。

 

 

『まるで()()()()()()()()()ような動きでござ…………ん?』

 

 入れ物にでも入った……。

 子供の体……浮遊人格統合技術……子供にあるまじき身体能力と強さ……。

 

 

 忍者はうっすらと気付いた。

 子供の中に大人の体を持つ人格が入り込み、あの体を操っているのだろうと。

 

『……ははぁ、そういう事でござるか。真に恐ろしい技術でござるなぁ、異世界で疑似的な蘇りが出来るとは……』

 

 もしこの予想が合っているとすれば、自分たちも俊介という子供に何らかの方法で入り込めば、体を操れるのかもしれない。

 寧ろそのまま第二の人生を歩む……蘇りすらも果たせるだろう。

 

 そしてこれはつまり、自分達もまた、宿主であろう俊介という子供の体を乗っ取れるという事になる。

 

 

『ふ~む。死人の拙者らにとって、蘇りの情報はどんな財宝にも値するでござるな……』

 

 外道忍者とて頭が回らない訳ではない。この情報が一部の者にとっては喉から手が出るほど欲しい物だとはすぐに理解できる。

 寧ろ徹底的にこの情報を秘匿し、自分だけが蘇るという手もある。

 

 

 ……しかし。

 

『こんな面白い情報を自分の内に留めておくなんて勿体ないでござる!!』

 

 この男は頭が回らない訳ではないが、極まった馬鹿ではあった。

 懐から小型のマイクを取り出し、一度俊介の前に全員で集まった時各人にこっそり付けていた盗聴器兼スピーカーから声を届ける。

 

 

『マイクテス、マイクテス。あ~、簡潔に申すと、俊介君の体を乗っ取る事で生き返れるでござる。以上!』

 

 

 突然鳴り響いた、短い言葉。

 だが学校の各地で適当に動いている殺人鬼達は、その声を決して聞き漏らさなかった。

 

 

 俊介の体を奪い、蘇生を目論む者。

 逆に俊介を守ろうとする者。

 状況を静観し、漁夫の利で一番いい結果をもぎ取ろうと目論む者。

 愉快犯。

 何を考えているか分からない最強の化け物。

 

 

 各々が各々の目的を持ちながら、自分達の宿主――――日高俊介の下へと移動を開始し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ……!」

 

 俊介は人の波にもみくちゃにされ、壁に押し付けられる。

 あの時教室中に響いた悲鳴。それは当然と言えば当然だが、給食を食べていた他の教室にも聞こえていたらしい。

 

 その結果、俊介のいる教室と他の教室の生徒達が一気にパニックに陥った。

 普段なら教室内で一緒に給食を食べている担任もいない。……後に分かる話だが、実は警察を呼ぶという建前で一目散に職員室に逃げていたらしい。他の教師数名が重傷を負わされているため、怯えるのも仕方ないが。

 

 他の教室に居た教師が生徒達を宥めようとするが、相手は恐慌状態に陥った100人近い小学生。いくら子供と言えど余りに数が多く、教師ですらも押し流されてしまった。

 

 我先にと逃げる他の生徒達の波に逆らうように進み、一瞬ためらったが、女子トイレの中へと入り込んだ。

 逃げ場のないトイレの中に入る者は流石にいなかったのか。中は外の喧騒が嘘のように静かだった。

 

 

「な、なんか嫌だな……女子トイレの中って……」

 

 女子トイレという特異な空間に対する興奮より、他の生徒に見られたらどうしようという不安が勝ったようである。健全だ。

 誰も入ってこないようにと祈りながら1分ほど待っていると、外から聞こえていた大量の足音がようやく消え去った。

 

 

 動きやすくなったし、自分もさっさと逃げようと思った、その時。

 

 

『―――ここに居たのか』

 

 

 背後から女性の声が聞こえた。

 振り返ると、そこに立っていたのはボロ布を縄で体に巻き付けたという煽情的な格好の女性(ハンガー)

 

 おまけに体が半透明で、若干向こうの景色が透けて見える。確か……他の半透明の人物達、人格と一緒に居た女性だ。

 という事はつまり、このおかしな格好の彼女もまた、自分の中に宿った人格という事である。

 

 俊介は女子トイレに居た瞬間を見られたせいか、若干ドギマギしながら言葉を返す。

 

「ど、どうも……」

『あ~あ~。いいんだよ、そんなにかしこまんなくてもさぁ、俺だってそう良い生まれな訳じゃないし?』

「はあ……」

『小難しい話はお互い嫌いっぽいな。ま、あれだ。俺の用事を簡潔に言うとだな』

 

 

 そこまで言うと、彼女は体の何処かから古くボロい荒縄を取り出した。

 それを舌でなめずりながら、目の前の少年に向かって殺気を噴き出しながら言い放つ。

 

『俺はまだまだ、人を吊り続けたくてしょうがなくてさ……! そんでお前の体を乗っ取ったら生き返れるらしくてな!! だから……ちょっと俺に渡せよ!!』

 

「ひっ……!」

 

 異世界で数百人殺したド級の殺人鬼が放つ殺気。それに俊介が怯えるのは仕方のない事だろう。

 俊介は足をもつれさせながらも、女子トイレの外まで逃げ出した。

 

『はい残念♪』

 

 しかし、俊介の先にいつの間にか彼女が回り込んでいた。

 年端も行かぬただの小学生相手に気付かれぬよう回り込むなど、彼女にとっては朝飯前なのだ。

 

 彼女は荒縄を手の中で弄びながら、俊介へと体を近づける。

 

『さ~て、どうやったら体を乗っ取れんのかな?』

「や、やめて……!」

『そりゃあ、ちょっと聞けない相談ッ――――』

 

 

 ―――瞬間。

 

 

 その言葉を遮るように、彼女の顔面へ鋭い蹴りが突き刺さった。

 廊下に体を叩きつけられる寸前に受け身を取り、蹴りを放った人物から距離を取る。

 

『ったく、偶々近い所でよかったな……!』

『なんだお前……』

 

 俊介を助ける蹴りを放ったのは、黒コートの青年(ヘッズハンター)だった。

 2人は殺気を隠そうともしないまま、お互いに鋭く睨み合う。

 

 数秒も経たない内に、先に動いたのは女性の方だった。

 左手に荒縄を持ったまま右手で殴りかかる。それは乱雑な動きだが、常人……いや格闘技をやっている者でさえ見切れるか怪しい速度のパンチであった。

 

 だが青年は難なく回避し、逆にみぞおちへ鋭いカウンターパンチを決めた。

 

『かはっ……!』

『弱いとは言わないが、少し力不足だな―――』

『―――お前がな!』

 

 そう叫ぶ彼女。

 青年がみぞおちから引き抜いた拳には、荒縄がびっしりと巻き付けられていた。

 

『なッ―――』

 

 青年の体が荒縄の巻かれた拳に引っ張られ、天井に叩きつけられる。

 そのまま続けて地面に引っ張られる瞬間、首に縄の輪っかが通された。体には下へ進む力が掛かり、首の縄には上へ進む力が掛かっている。簡単には外すことができない縄の構造である。

 

『あーあー、縄持った俺に無策で突っ込むからさ。半透明だから分かりにくいけど、お前のその顔色がいつ赤くなって、青くなって、土色になるのか……楽しみにしてるぜ』

『ッ……』

 

 首を絞め続ける縄を青年が引きちぎろうとするが、拳に巻かれた縄と酸欠のせいで上手く力が出せない。

 そんな青年の危機的状況を―――1本の回転する包丁が縄を切り裂き、打開した。

 

『大丈夫!?』

『あぁ!? ったく何してくれてんだよ、せっかく吊り上げたのにさぁ!!』

 

 包丁を投げたのはコックだった。

 解放された青年は首を抑えながら構え直すが、何かを感じたのかすぐさま後方に飛び下がる。そのすぐ後、彼が立っていた場所に青い炎が勢いよく噴き出した。

 

 2人が戦闘していたのはものの30秒程度。

 しかし俊介を中心に広がる半径100メートルの空間の中、30秒で俊介の場所を突き止めるなど殺人鬼達にとっては容易い事であった。

 

 

『おらおら貴様ら、わらわにそのガキを譲るのじゃ!』

『見た目が良いからって調子乗ってんじゃねえぞ、コラァ!!』

『ハハハハ、中々楽しい状況じゃねえかよ!!』

 

 狐目の女性(キュウビ)が怪しげな術で青い炎をまき散らす。それを掻き消し、狐目の彼女ごと焼き尽くさんと超強力な火炎瓶を投げまくっているのが赤い髪のヤンキー風スタイルな女性(フライヤー)

 その炎の渦の中を楽しそうに闊歩しながら俊介の下へ向かう、翼を付けた全身真っ白の巨女(エンジェル)

 

 翼の女が俊介に手を伸ばす。

 その瞬間、彼女の手が銃弾によって撃ち抜かれた。銃による傷は皆無であるが、衝撃で手が吹っ飛ばされる。

 

『B兵器の巣窟より酷いな、ここは……!!』

『とりあえず暴れればいいのさ、結果は後で付いてくる!!』

『拙者、その考え方大好きでござるよ! 忍法・嫌がらせの術!!』

 

 ゴツイ拳銃を片手で撃ちつつ、もう片方の手で小銃の弾をばら撒くガスマスクの男(ガスマスク)

 そんな彼の後ろから拷問用の有刺鉄線をそこら中に置いたり、切断用ののこぎりを振り回す黒兎の仮面をつけた女性(トールビット)

 その2人の周りをちょろちょろしながら、特製配合の催涙ガスをぶちまける元凶の外道忍者(ニンジャ)

 

『待て待て私は無理だ! 体が硝子と同じくらい脆いんだぞ!!』

『うっせえな、ここで隠れてたら乗り遅れるぞ!! 生き返りたくないのか!!』

 

 ちょっと様子を見に来たが、この騒ぎに加われそうになかったので隠れていた細身の男(サイコシンパス)

 その男と共に、俊介争奪戦なのかただ単に暴れたい奴らが集まってる祭りなのか分からない物に参加しようとする作業服の少年(マッドパンク)

 

 

 ―――そうして、全員が程よくヒートアップし始めた頃。

 

『グギャッハッハッハ!!!』

 

 機を見計らっていた最強の化け物(ダークナイト)が女子トイレ前の廊下に姿を現し、殺人鬼達を一蹴し始めた。

 そんな中、先ほどボコボコにされた翼の女が額に青筋を浮かべながら化け物に掴みかかる。

 

『またてめえか、しつけェんだよ!!』

『グギャオ!』

『死ねッ―――!!』

 

 その埒外の腕力を以て、化け物を廊下の外―――校外へと放り投げる。

 尤も、放り投げられる瞬間に化け物は彼女の体を蹴り飛ばし、一瞬で気絶させたのだが。

 

『いッた……よくもやってくれたな、前時代的な鎧野郎が!!』

 

 作業服の少年がキレながら起き上がり、同じように廊下の外へと飛び出る。

 そしてポケットの中から取り出した怪しげな赤いボタンを押した瞬間、彼の体を覆うように70メートルほどの機械で作られた四つ腕の巨人が姿を現した。

 

『ギガント・インパクト!!』

 

 タイミングを合わせ、四つの腕全てで同時に鎧の化け物を殴り飛ばす。

 瞬間。最強の名を冠する鎧ですら受け流せない衝撃が全身に走り、俊介から100メートル離れた場所にある壁まで一瞬で吹き飛ばされた。

 

 

『ギャ……ギャハ……!』

 

 透明な壁に垂直に着地し、愉快そうに笑う化け物。

 右手を顔の前で軽く握った瞬間、何処からか現れた黒い粒子が右手に集まり、禍々しい細身の剣の形を作った。

 

 剣を揺らす度、黒い軌跡が走る。

 それを持ったまま、先ほど自分を吹っ飛ばした巨人の下まで一気に近寄り、バラバラに切り裂いた。

 

『うおっ……! ま、まま、マジか……僕の最高傑作が……』

 

 作業服の少年は体格が小さく、偶々斬られなかったようだ。

 背中にジェットパックを付け、元いた廊下へと戻る。すると黒い鎧も後を追うように廊下の中へと戻って来た。

 

 

 

 ――――控えめに言って、地獄。

 半透明で現実に影響がないとはいえ、それぞれの世界で最悪と言われた殺人鬼達が全力で喧嘩しているのだ。ハッキリ言って意味が分からないし、滅茶苦茶に怖い。

 

『だいじょーぶ、だいじょーぶ』

 

 俊介の背中を、触れられはしないが、優しくなでる黒髪のドレスを着た少女(ドール)

 彼女も半透明である故、目の前の人格達と同じ類なのだろう。

 

 目の前は地獄、超怖い。

 傍にいる少女は優しい。

 

 一体何が何だか、気が狂いそうな情報量で頭が埋め尽くされ。

 

 

「う、うぇぇぇぇぇえええん…………!」

 

 

 ―――結果、俊介はガチ泣きした。

 

 普通の小学生に耐えられる状況ではなかった。

 

 しかし、暴れる理由や蘇生のための目標としていた少年が突然泣き出した異常事態に、殺人鬼達がピタリと動きを止める。

 

『な、泣いちゃった……どうしよう』

『えぇ……どうするったってさぁ……。あ、これなんかどうだ。からくりボックス』

 

 おろおろするドレスの少女。

 そして俊介の前に、作業服を着た少年が半透明の黒い箱を差し出した。

 

 えづく俊介が、目の周りを真っ赤にしながらも箱に顔を近づけた瞬間。

 大きな音と共に、血まみれの幽霊の顔が勢いよく飛び出した。たちの悪いびっくり箱だったのだ。

 

 

「びぇぇぇえええええん!!」

 

 

 先ほどよりも勢いよく泣き出す俊介。

 

『何やってんだお前馬鹿か!!』

『僕ならこれで泣き止むもん!』

『貴方が良くてもこの子が更に泣き出したら意味ないでしょーが!!』

 

 

 その時、目を覚ましていた翼の真っ白な女がポリポリと頭を掻く。

 泣き声が耳についたのか、余りに泣かれて体を奪う気もなくしたのか。とにかく俊介の泣き声を止めようと体を近づけた。

 

『あー、おい。泣き止めよ』

「うぅぅぁ、ぁ、うぇええええん……」

『うるさ……あー、ほら、私の口調がこええのか? あー……け、敬語で話しますから、どうか落ち着いてください』

「うっ、うっ……」

 

 彼女が敬語で、親しみやすく話しかけた事が功を奏したのか。

 俊介の泣き声が次第に収まり始め、周りの殺人鬼達がほっと息を吐く。

 

 

 そんな中、殺人鬼達から少し離れ、クスクスと口を押さえながら笑う男が1人。

 

(あー面白いでござる……。全員で戦い始めた時はどうなるかと思ったでござるが、これはこれで面白い結末に……ん?)

 

 腐れ忍者が、何かに気付いたように階段の方を向いた。

 水の滴る音と靴底で床を叩く音が同時に聞こえる。

 

『あっ、忘れてた』

 

 階段から姿を現したのは、今日だけで幾十人もの死傷者を出している小学生であった。

 普通なら忘れるはずもない存在だが、倫理観が乏しく、そもそもその小学生より遥かに人を殺しまくっている忍者にとっては割とどうでもいい存在だったのだ。面白くもないし。

 

 血まみれの小学生に殺人鬼達が全員気付く。

 そして一歩遅れ、泣きまくっていた俊介もかの小学生に気付いた。というか俊介の泣き声に反応して寄って来たのだ。

 

『ん……なんだあれ』

「ひっ」

『あッ! おいちょっとこっちに来るなッ―――』

 

 目の前に広がる血の臭いに恐怖し、翼の女に抱き着くように近づく俊介。

 しかし半透明だから触れられる訳もなく、体の大部分が重なってしまう。そして偶然、頭を下げていた彼女と俊介の頭が重なってしまったのだ。

 

「――――ん、あ?」

 

 一瞬、動きを固め、状況が理解できないと言った様子で目をパチクリさせる俊介。

 いや、中に入っているのは既に俊介ではない。先ほどの一連の行動は、偶然にも―――体の強制交換の条件を満たしてしまったのだ。

 

「うお、お。体小さすぎ、感覚歪む……」

「うぐるるる……ぐおおおあああっ!!!」

 

 人外怪力の女が入った俊介に、小学生が襲い掛かる。

 

「よいしょっと」

 

 だがまあ、人体を一発で切り裂けないような雑魚に負けるはずもなく。

 腹に強めにパンチを打ち込まれ、廊下の窓枠ごと窓ガラスを突き破り、地面に落下。一発で気絶した。

 

 

「…………」

 

 そして、俊介の体を手に入れた彼女だったが。

 

『体の感覚合わん。今はいらね』

 

 体の小ささが気に食わないと、すぐに体の支配権を俊介に戻した。体を奪うのは難しいが、返すのは念じるだけで大丈夫だった。

 

「……?」

『…………』

 

 突然体が変わった感覚に、理解が追い付かない俊介。

 体を奪う方法。それがやろうと思えば案外簡単であった事に気付いたが、今更奪う雰囲気でもないな~と思う殺人鬼達。

 

 何とも言えない状況に陥り、反応に困った両者が取った選択は。

 『とりあえずこの場から逃げる』であった。

 

 

 

 

 

 





なんか話の方向が変な方向に逸れた
まあええか

追記
ルビミス多くて申し訳ないです
ネット環境ないところでメモ帳に書いてたのがいけなかった

追追記
作者多忙のため、暫く更新を土日限定とさせていただきます。
ご容赦ください。
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