殺人鬼に集まられても困るんですけど!   作:男漢

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#63 天才に心砕かれる

 

 

 

 一人の女が、口を閉じて歩いている。

 カリカリに焼いたベーコン、少し焦げ目のついた目玉焼き、湯気の出るコーヒー。それらが乗った四角の白いトレイを持ち、とある一つの扉の前に辿り着く。

 

 その扉をくぐり、そのすぐ先に再び待っていた扉もくぐる。

 厳重な守りをくぐった部屋の中には……机の上に紙を広げ、何かを書き込んでいる女がいた。

 

 

「やあ。軽食、持ってきたよ」

 

 トレイを持つ女が軽い口調でそう声かける。

 その言葉に、机に向かっていた女は肩越しに、トレイの女を睨んだ。

 

「酷いなあ、そんなに睨まなくてもいいじゃないか」

「今すぐその顔面が倍に腫れ上がるまで殴りましょうか?」

「怖い怖い。……でも君は殴らないだろう? そんな事をしても、状況は好転しないのは嫌でも理解してるから」

 

 チッ、と舌打ちをする音が静かに響く。

 机に向かっていた女―――夜桜は右手に持っていたペンを適当に放り投げ、榊浦美優の持つ軽食の乗ったトレイを奪い取った。

 

「ベッド、腰掛けるよ」

「さっさと部屋から出て行ってくれませんか?」

「そんなに邪険にしないでよ。ちょっとのお話くらいいいじゃんか」

 

 

 夜桜は額に浮かんだ青筋を親指でさすって鎮める。

 今現在、夜桜は特別に作られた監獄部屋の中、バクダンが作った超兵器MRKの設計図を書かされていた。

 

 ―――無論。

 

 バクダンと夜桜の二人は、目の前の女が所属する腹立たしいテロリスト集団にMRKの設計図を渡すつもりなど毛頭ない。

 というか、並のテロリスト集団相手ならば、壊滅させて家に帰っているだろう。

 

 しかし、そう出来ない理由がある。穏便に暴力で済ませられない理由がある。

 あの『()()()()()()()』とかいう鎧……。何らかの異世界の人格が宿主を乗っ取っている奴は、爆発物で完全武装した自分よりも確実に強い。

 そのため、実力行使に移れないのだ。目の前の榊浦美優を締め上げて脱出するのは簡単だが、鎧が一瞬ですっ飛んできては意味がない。

 

 

 勝手にベッドに腰掛けた榊浦美優。

 彼女は肩をすくめながら、軽い声色で言う。

 

「それに、私と話している間は設計図を書く手を止めてもいいよ」

「……そうですか。じゃあ遠慮なく」

「物分かりが良くて助かるね。やっぱり君の事が()()だよ、私は」

 

 その言葉をお前に言われた所で何一つ嬉しくない。

 心の中に浮かんだ罵倒を口の中で噛み殺しつつ、榊浦美優の方に体を向けた。

 

「それで、話とは」

「うん。……あのさ、小耳に挟んだんだけど……君、親と仲が悪いんだって?」

「…………」

 

 夜桜はぷいと顔を逸らす。

 『沈黙は肯定とみなす』とはよく言ったもの。つらつら言葉を並べるよりも、すぐに顔を逸らすという行動が、夜桜と父親の仲の悪さを顕著に表していた。

 顔を逸らしたまま、不満を一切隠さずに言葉に乗せて言い放つ。

 

「人の家族仲に首を突っ込んで楽しいですか?」

「いや、侮辱するつもりはなかったんだ。君とはそう……つまり、()()()()()()()をしたいと思って」

 

「は?」

 

 

 思わず口から低い声が出る。

 舐めてんのかこいつ。何だよ家族不仲トークって。

 

『話の飛び方と相手の気持ちを考えられない感じが陰キャくさいな……。フヒヒ、案外私と同じ属性……?』

 

 バクダンがすぐ傍でニタリと笑いながらそう呟く。

 行き過ぎた研究者ってみんなこんな感じなんだろうか……?

 

 

 そんな夜桜の疑問と苛つきを他所に、榊浦美優は話し続ける。

 

「私は母親とはそんなになんだけど、父親とは仲が悪くてね。これって意外な共通点だとは思わないかい?」

「別に意外でも……。というか父親って、榊浦豊の事ですか? 不仲には見えませんが」

「う~ん……。不仲っていうか、私に興味ないっていうか。遊んだ記憶がないんだよ」

 

 …………。

 それ不仲って言うか、ただ忙しくて子供と遊ぶ時間がなかっただけじゃないの? 浮遊人格統合技術なんて化け物技術を偶々とはいえ開発するには、それこそ人生丸ごと消費するくらいに研究に専念しないとだろうし。

 

 

「最近は仕事場が一緒だから偶に話すけど。昔から、もうちょっと会話してほしかったけどね……」

 

 片膝を抱え込んだ榊浦美優が、遠い何処かを見る目つきでそう呟く。

 夜桜は逸らした顔を彼女の方に戻した。

 

「……遊ぶどころか、会話をする事さえなかったんですか?」

「殆どね。父は書斎で寝てるか、研究してるか……。ずっとずっと、そんな感じだったよ」

「ふうん……」

 

 夜桜は興味なさげな顔をしながらも、心の中で静かに思う。

 

 これ……もしかして、かなり重要な情報に近づいているんじゃないか? と。

 

 

 浮遊人格統合技術が狂った技術だというのは知っている。

 その技術が、所謂二重人格……榊浦豊がそれについて研究していた時、偶々出来た物だという事も知っている。

 

 それじゃあ。

 どうして、『榊浦豊は二重人格について研究していた』のか?

 

 榊浦親子の研究所……あそこで展示されていた年表にも、そこの所は詳しく書かれていなかった。

 元々メディア露出も極端に少ない親子だ。何処かの雑誌のインタビューで語っている……なんて事はないだろう。

 

 

 もし榊浦美優から有用な情報が引き出せたなら。

 日高君が榊浦豊と対峙する時の、何かいい対策立ての一助になるかもしれない。

 

 そう考え、夜桜は思考を回し、極力怪しまれないような言葉をひねり出した。

 

 

「榊浦豊は、昔から熱心に研究をしていたんですね。……何か、目的でもあったんですか?」

「うん。目的というか……根源というか。母から聞いた話で、その母も詳しく知らないらしいけど」

「……一体、どんな話ですか?」

 

 そう尋ねる。

 

 

 榊浦美優は抱えていた膝を離し、一つ息を吐いてから。

 ゆっくりと言葉を並べた。

 

 

 

「私の母が元々、二重人格だったみたい」

 

 

 

 

「ずっと昔に、主人格(自分)に統合されて消えたもう一人―――(そら)って子がいた、って」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 案内された応接間。

 

 渋い色合いの木板で出来た床と壁。まだ日も高い時間帯であるため、部屋に一枚ある窓から日光が揺れる木の葉越しに差し込んでいる。

 風に揺れる木の葉。それに合わせ、部屋の中の木の葉の影も揺れる。外界と遮断されていると錯覚するほど静かな部屋の中、その動く影だけがこの部屋が現実にあるものだと教えてくれた。

 

 

 膝ほどの高さの机。

 それを挟むように置かれた、黒い革張りのソファーが2つ。

 

 そのソファーの内、少し手狭な大きさの方に俊介は座っていた。

 

 

「…………」

「…………」

 

 お互いに何も言葉を発さない。

 夜桜宗次郎は何もない机の上に視線を落としたまま微動だにしないし、俊介も俊介で、目の前の人物に多少委縮していたのだ。

 好きな人の家で、好きな人の家の父親に会っている。その好きな人が誘拐されているとはいえ、緊張しない方が不自然といえる。

 

 俊介は緊張で頭が真っ白になりかける中、下唇を噛んで心の動揺を無理矢理抑えた。

 緊張して固まっていたって何にも事態は進みやしないのだ。夜桜さんの安否が分からない以上、時間は少しも無駄にはしていられないのだから。

 

「あのっ」

「ああ」

「えっとですね」

「ああ」

「その……」

「…………」

「…………」

 

 

 

『何してんの?』

 

 俺の横で胡坐をかいて座っているハンガー。彼女があくび混じりにそう言った。

 仕方ないじゃん。ただの高校生に超敏腕のバリバリ社長と一対一で話せとか無茶言うなって。緊張で言葉飛ぶわ。

 

 

『ぐあーッと勢いで話しゃいいんだよ。あ、相手の首絞めながらだといい感じに緊張しないかもよ?』

 

 緊張しないっていうかそれもう拷問してるだけだろ。話し合いじゃなくて殺し合いに発展するわ。

 俺が声出して反論できないからって好き放題言いやがってこの野郎。

 

 

 

 ハンガーへの怒りを表情に出さないよう、心の中で噛み殺す。

 すると、夜桜宗次郎が伏せていた目を上げ、ポツリポツリと語り始めた。

 

「……凡そだが、君の用件は分かっているんだ」

「えっ」

「『届け物がある』と使用人に言っていたそうだが……それは嘘なのだろう? 真の目的は別にある……」

 

 

 さ、流石……。

 俺が咄嗟に吐いた嘘なんて簡単に見破られていた。これが夜桜さんのお父さんか……。

 

 いやしかし、それもそうか。

 一人娘が誘拐されたこの状況、そんな時に訪ねて来た見知らぬクラスメイト。今は明らかに授業時間中だと言うのにだ。

 誘拐事件と何か関わりがあると考えるのは何らおかしいことではない。頭が良い人であるなら尚更、この考えに素早く辿り着くだろう。

 

 

 俊介は決意を決めた表情で息を吸う。

 夜桜宗次郎もまた、すっと息を吸い込み、言葉と共に吸った息を吐き出した。

 

「じ、実は――――」

 

 

「分かっている。君もまた、紗由莉との『()()()()』がしたいという訳だな……?」

 

 

「そ、そうで―――――――()?」

 

 

 

 

 ……?

 何言ってんだこの人。

 ()()()()? 何の話してんの?

 

 

 

 

 俊介の戸惑いもつゆ知らず、宗次郎はスラスラと話を進めていく。

 

「そうだな、まずは君の家柄から教えて貰おうか。それと人格は宿っているかな」

「ちょっ……えっ。な、何の話をされているんでしょうか?」

「? 君もそれが目的だったんだろう?」

 

 そんな訳ねーだろ。

 

 

『……あれ? 普通自分の娘って大事なもんだよな……? そうだよな俊介?』

 

 ガチの快楽殺人鬼のハンガーですらちょっと戸惑ってるじゃないか。

 

 

 宗次郎の謎の言動による困惑を頭を振って消し去る。

 少しだけ声を荒げ、きょとんとする彼に向って叫んだ。

 

「お見合いの話をしに来たんじゃありません。もっと大事な話です!」

「もっと大事な話……?」

「あるでしょ、お見合いよりも大事なのが!!」

「ふむ」

 

 顎を抑え、考え込む宗次郎。

 マジかこの人。娘が誘拐されてんだぞ、真っ先にそれが思い浮かぶだろ。どういう思考回路してんだ。

 

 

「ああ……もしかして、紗由莉が―――」

 

「はい!!」

 

「―――全国異世界マーシャルアーツ武道大会で準優勝した事についての、インタビューとか?」

 

 

 全然違えよ。

 

 

 ……えっ? というか夜桜さん、そんな大会で全国準優勝してたの? 

 全く知らなかったし、そんな格闘技の大会が全国規模で開かれてた事も今知ったんだけど。

 

『……あの女の強さで準優勝か……。俺ですら素手じゃあ負けるんだけどな……』

 

 なんかぼそっと呟いたハンガーの言葉を無視する。理解するのが怖い。ハンガーって殺人鬼の中でも上から数えた方が早い部類なんだよ。

 

 驚きと困惑で再びずれかけた思考を、頭を振って元に戻す。

 失礼だとはわかりながらも、目の前にある机を少し強く叩いて音を出し、それと共に声を荒げた。

 

 

「そんなんじゃないです!! 娘さんが―――()()()()()()()ですよ!!」

 

 

 埒が明かないので、ストレートに言い放つ。

 なんで高校生の俺がそれを知ってるのかとか、なんでそんな事について知りたいのかとか、色々疑問はあるだろう。しかしこうハッキリ言わないと、いつまで経っても話が進まないのは目に見えていた。

 夜桜さんの誘拐が真っ先に浮かばない彼の態度に、若干冷静さを忘れるほど苛ついていたのかもしれない。

 

 

 宗次郎はそんな俺のドストレートな言葉を聞き……数秒程経ってから。

 

 

「ああ、その件か……。まあ、どうにかするだろう」

 

 

 とだけ、静かに言い放った。

 

 

 

『……あ? こんだけ?』

 

 俺が言葉を発するよりも早く、ハンガーが困惑の言葉を口に出す。

 彼女の言葉を皮切りに、宗次郎の更に意味不明な言葉で真っ白になっていた俺の頭が再稼働し始めた。

 

 頭が茹で上がるような感覚がする。

 それが怒りに近い感情だと理解するのにすら、数秒要する程に頭が回らなかった。

 

 

「な、何考えてるんですか……? 娘が誘拐されてるんですよ?!」

「だな」

「そんな軽い反応で済ませていい物じゃないでしょう!? もっと、こう……!!」

「もっとこう、何だ?」

 

 

 宗次郎が瞼を細めた鋭い眼光をこちらに向ける。

 

 

「日高君。君は、紗由莉が()()だという事を知っているか?」

「……はい」

 

 彼の質問。

 そう悩むこともなく、『天才か?』という問いに肯定の言葉を返した。夜桜さんが天才でなければ、天才という言葉は使い道がなくなるだろう。それくらい、彼女は才に溢れている。

 

 

「紗由莉は昔から何でも出来た。文字通り、()()()だ。

 1を聞いて10……いや50を知る。一度見た事はすぐに真似できるし、見た事がなくても数回挑戦すればあっさりと成功させてしまう」

 

『だろーな……。ニンジャの歩き方を数回見て不完全とはいえ真似できる奴だからな。ニンジャの野郎の隠密がバケモン過ぎて、完全に真似するのは無理だろうが……』

 

「厳しく育てれば、それだけ大きく成長する。海外から世界的な講師を招く事もあったし、私自身が教えたことも多い。そしてそれらを全て余すことなく吸収し、更に昇華させていった」

 

 

 ハンガーが言った、ニンジャの歩き方云々が少し気になるが……。今は気にするべき時ではないだろう。

 宗次郎の話の続きに耳を傾ける。

 

 

「天才であった。しかし、まだ理解は出来た。紗由莉は人の範疇に収まっていた」

 

「……しかし」

 

「10歳のあの日、紗由莉に宿った人格は……人の範疇に収まり切らない『()()』であったのだ」

 

 

 そこで言葉を区切り、宗次郎は顔を俯けた。

 

 夜桜さんに宿った怪物の人格とは……十中八九、バクダンの事だろう。あのマッドパンクですら、爆発物の分野では彼女に絶対敵わないというほどだ。

 件の超兵器MRKは、もはや魔法と言ってもいいレベルの爆弾である。……いやまあ、魔法は実際にあるし、使う奴もいるんだけど……。

 

 

 宗次郎は顔を俯けたまま、額に手を当てる。

 

「紗由莉は私を越えて、理解できない所まで行ってしまった。何をしても私より上なんだよ。あの子でどうにか出来ないのなら、私にどうにかするなど到底無理だ……今回の誘拐の件だってな」

「…………」

 

 

 つまり。

 この人は……夜桜さんが天才すぎて、自分が何をやっても力になれない……って思ってるのか。

 

 

 

「……何にもできないって事は、ないと思いますよ」

 

 なぜか、先ほどまで沸き立っていた頭と心が氷でも当てられたように冷えていく。

 

 いや、多少苛ついてはいる。

 娘が誘拐されていると言うのに、才能だ何だと言い訳して、なぜ何も行動しないのか……とか。

 

 けど……多分。

 俺自身、荒事なんかは殺人鬼の人格達に頼りっきりで、それ以外は普通の事を精一杯やって普通にこなすのが限界の男だから……。

 才能のない俺だから、少し理解できてしまうのかもしれない。

 

 

「その、ですね。上手く言えないんですけど……あ、その、さっきはすみません。机勢いよく叩いてしまって」

「いやいいんだ。気にしないでくれ」

 

 彼は顔を上げないまま、額に当てていた手を外して横に振った。

 

 人の心に直接刺さるような言葉を放てるほど、俺は器用に話せない。

 サイコシンパスのような悪魔的な声を持っている訳でもないし、キュウビみたいに人を惑わす話術も持ってない。

 だからこそ愚直に、地べたを這ってでも進むしかない。少しずつ。

 

「紗由莉さんは天才で、俺は全然足元に及ばないですけど……。そんな俺でも、何もできないってことは、ないんじゃないかなって」

「……そうだな。だから私は今、紗由莉が出来るだけマシな男と結婚できるよう……密かにお見合いの話を進めている訳だし」

「それは……」

 

 

 何もしてないって訳じゃないんだろうけど、今の状況でお見合いの話を進めるのは、ちょっと違うだろうに。

 そんな俺の心の中を分かっていたように、彼は低い声で言葉を漏らす。

 

「分かっている。今するべきじゃない事をして、現実逃避しているのは……」

「…………」

「娘の才能に嫉妬して、勝手に届かないと諦めて。……父親として失格だと、つくづく思う」

 

 

 父親云々は俺には分からない。子供持ったことないし。

 

 

「お見合いはアレですけど……他にも色々出来る事はあると思います。高校生の俺には思い浮かばないような事が、色々」

「……そうかな?」

「きっとそうですよ。こう……コネとか」

「コネか。それなら確かに、紗由莉よりもあるかもな……フフッ」

 

 宗次郎は顔を上げ、口元を指で隠しながら笑い声をこぼした。

 

 ちょっとは元気になってくれたようで良かった。

 苛つく事もありはしたけど……やっぱ、好きな人の家族だしな。変に落ち込んでいるよりは、元気で居てくれた方が嬉しい。

 

 

 彼は一瞬視線を机の上に落とした後、こちらの顔に目を向ける。

 

「君は……人の心の中身を吐露させる才能があるな」

「え?」

「つまり……そうだな。人と関わって心を溶かす才能……カウンセラーとかが向いているだろう」

 

 嘘だろ。

 俺、知らない人と会話するのがちょっと怖い、隅で一人細々としているのが好きなタイプなんですけど。

 

 

「カウンセラー、ですか。ど、どうですかね……」

「私は人の才能を見抜くのだけが取り柄だからね。きっと向いている」

「あはは……」

「……フフ。しかし、最初の話が逸れ過ぎたか。

 今度こそ君の『本当の用件』を聞こう。日高君は……この家に何かを調べるために来たのだろう?」

 

 

 ピリッ、と。

 肌に感じる空気が一瞬で入れ替わった。

 

 先ほどまでの宗次郎さんの、どこか他人事のような柔らかな空気ではない。肌を極小の刃物で刺されているような鋭い空気だ。

 

 しかし、そんな鋭い空気でありながら、どこか安心できる。

 この人はこの誘拐事件に、本気で向き合う気になったのだと思えるから。

 

 

「はい。実は、紗由莉さんの部屋を―――」

 

 

 

 

 ―――瞬間。

 

 

 

 

 言葉を遮るように、ハンガーが勢いよく椅子から立ち上がった。

 

 

 

『―――ちょっと話を中断しな、俊介』

「?」

『……クヒヒッ、面白くなってきたなぁ~。な、な、俊介、久々に吊ってもいいだろ?』

「何を言って……」

 

 ハンガーの突然の言葉に、目の前に宗次郎さんがいるにも関わらず言葉を返してしまう。

 彼女は残虐な笑みを隠そうともしないまま、実に愉快そうに言った。

 

 

『屋敷の外にいっぱいあるんだよ。人を数人殺してさぁ、自分が無敵だって一番イキってる時期の馬鹿共の気配が……な』

 

 

 

 

 

 

 

 






遅くなって申し訳ございません。


どんなルートを進んでも夜桜宗次郎がすぐに立ち直っちゃう!(プロット大ガバ)
それもこれも全て日高とかいう夜桜一家キラーが悪いんだ。

ちなみに夜桜宗次郎もうだうだ言ってるけど、一から起業して大成功させてる天才なんだ。
夜桜紗由莉がバグってるだけなんだ。なんだこいつ?
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