殺人鬼に集まられても困るんですけど!   作:男漢

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#70 ボヤ騒ぎ

 

 

 

「初めまして。私、人格犯罪対処部隊の白戸成也と申します」

 

 金縁の眼鏡。無地の黒ネクタイに黒のスーツ。胸には二重らせんの金バッジ。

 風貌は真面目なビジネスマンか公僕のそれに違いない。しかし身から放つ歴戦の武士のような空気が、校長の全身に冷たい汗をかかせていた。

 ハッキリ言って、先に警察所属という事を明かしておかなければ白戸はインテリヤクザの若頭にしか見えない。彼も校長になるまでにある程度社会の荒波に揉まれて来ただろうが、命の危機を感じたことのない一般人が戦慄するのは当然であった。

 

 

 白戸は校長に丁寧な動作で名刺を渡した後、静かに椅子に座る。

 口角を僅かに上げた自然な笑顔を崩さない白戸。強張った表情を浮かべる校長。

 

 先に口を開いたのは校長だった。耐え切れなくなったと言うべきだろう。

 

「そ、それで、今日は一体どのようなご用件でしょうか……?」

「ええ。先日、貴校の生徒である夜桜紗由莉が誘拐されたのはご存知ですね?」

「……はい。警察に通達された通り、無用な混乱を避けるために生徒や教師には一切を知らせておりません。校内でそれを知るのは私だけです」

 

 

 夜桜紗由莉。

 校長ですらこの高校のランクには相応しくないと認めるほど優秀である女子生徒。そんな彼女がつい先日、誘拐されたとの連絡が警察からあった。

 国認定の人格持ちが誘拐、しかもそれが自分の高校に通う生徒だ。一体どんなことになってしまうのか、自分にどれほどの責任がのしかかるのか……そう戦々恐々していた所、警察からは誘拐の旨を一切合切隠すように命じられたのだ。

 

 警察がなぜ誘拐事件を隠ぺいする事になったのか、校長には分からない。

 しかし逆らった所でどうにも出来ない。誘拐事件を解決する力など普通の高校の校長が持っている訳がないのだ。故に事件の解決を警察に任せ、夜桜紗由莉の誘拐事件の旨を心の内に留めておくことにしたのだった。

 

 

 

「しかし一体、その事件がどうしたのですか? 私が知っている事は話した、いや、元々夜桜さんの人となり程度しか知らなかったですが……」

「今回は事情聴取に来た訳ではありません。実はですね、件の誘拐事件に貴校の生徒が関わっている可能性がありまして。今から校内を調査する許可を頂きたいのです」

「えっ、ええ……ッ!? う、うちの生徒が誘拐事件に……?!」

 

 校長は分かりやすく狼狽した。

 まあそれも当然だ。

 

 自分の学校に誘拐事件の被害者がいるのと、事件の関係者がいるというのでは全く意味が違う。

 もし刑事事件の加害者が学校から出たとなれば、世間からの酷いバッシングや今学校に通っている生徒の将来へのダメージ、その他諸々の悪影響が無数に考えられる。

 つい数ヵ月前に、旧校舎で星野という一人の男子生徒が意識不明の重体で発見されたばかりなのだ。その犯人は本校の生徒だろうという所まで捜査が進んだらしいが、その後何故か捜査が立ち消えになってしまった。

 

 暴力事件、誘拐事件。

 短期間に続いたこの2つの凶悪事件、こんな事件と本校生徒の誰かが関わっている事が世間にバレれば一体どうなってしまう事か……。

 

 

「そ、それは任意ですか?」

「……まあ。令状(ふだ)は持っていませんし、一応、任意という形にはなりますね」

「なら……お断りさせて頂きます。我が校には何もありません! お帰り下さい!」

 

 校長はこれ以上の責任を回避するため、白戸の捜査を断った。

 

 いささか浅はかな行動と見えなくもない。

 しかしいくら彼が一高校の校長まで昇り詰めたといえど、四百名を超える生徒の将来を傷つける恐れと自身に追及される責任の重さを恐れ、目の前の事実から逃げるだけの短絡的な決断をしてしまうのは仕方ないとも言える。

 

 

 そして。

 白戸は、そもそも校長に否定という選択肢を与える気はなかった。

 

「…………ま、仕方ありませんね」

 

 彼が右手を校長の顔に向けた瞬間、校長の顔が一瞬で呆けた物に変わった。

 白戸はゆっくりと立ち上がり、校長の肩にポンと手を置く。

 

 

 この学校、そもそも星野という男子生徒への暴力事件の捜査が警察上層部の圧力で掻き消えた。

 そして夜桜紗由莉……国認定の人格持ちというとんでもない大事件ですら、上層部の圧力で捜査が止められている。

 

 2つの事件に共通しているのは。

 この学校と……『怪人二十面相』の存在だ。

 

 星野の事件では、怪人二十面相の痕跡が検出された直後に捜査が掻き消えた。

 この時点で怪人はこの高校の生徒の可能性が高いとは睨んでいたが……流石に四百名の生徒を全て調べるのは上層部に睨まれた状態では厳しかった。

 

 今回の事件は、この学校に通っている夜桜紗由莉が誘拐された。

 そして白戸が直行した夜桜邸にて怪人二十面相を発見。怪人は以前から夜桜に付き纏っており、恐らく夜桜の関係者であると考えられる。

 

 ……まただ。

 人対が勝手に動いているだけの、警察の捜査の打ち切られた事件にまた怪人の名前が出てきた。

 

 

 

 国認定の人格持ちの誘拐事件を隠すメリットは警察上層部にはない。

 捜査を止めるなんてもっての外である。国認定の人格持ちというのは国が認めた重要人物であり、これの誘拐事件の隠ぺいなど正気の沙汰ではないからだ。これを正気でやっているなら上層部は底なしの無能と言わざるを得ない。

 

 そしていくら何でも警察のトップ陣はそこまで馬鹿ではない。という事はつまり、強い権力を持った何者かが上層部に圧力を掛けて無理やり捜査を止めている事になる。

 

 そしてその何者かが捜査を止めている理由は。

 『怪人二十面相』。

 何度も名前が出ているのに正体が一向に分からない、この人格犯罪者が関係していると考えられる。

 

 

 

 

(警察の動きを止められる程の権力者……。怪人は大臣の息子か何かか? いや、この学校にそれほどの権力者の親族はいなかったはず……)

 

 白戸が校長の肩から手を離した瞬間、彼が眠るように机に突っ伏した。

 穏やかな寝息を立てる校長を一瞥した後、白戸は白い手袋を手に装着する。その手袋の甲には開かれた瞳の絵が描かれている。

 

「ま、いいでしょう。警察上層部は夜桜誘拐事件の捜査中止とその隠ぺいに追われ、私の動きに気付いても手を出す暇はない。せっかくできたこの隙を有効活用しましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーし。……どうすっか」

 

 俊介は授業と授業の合間の休憩時間に、人目に付きにくい階段の下の謎のスペースに来ていた。

 放課後は偶にカップルが占領しているが、こんな短い休憩時間にこんな埃っぽくて薄暗い場所に来るのはガチボッチの俊介くらいである。

 

『白戸って言ったら魔法使う奴だろ。なんかこう……キュウビの術でバレない様に誘拐出来ないの?』

 

 マッドパンクが壁にもたれかかりながらそう言った。

 するとキュウビは顔を横に振り、扇子で口元を隠しながら言葉を返す。

 

『無理……いや、分からんのじゃ』

『どういう事だよ、分からんって』

『わらわの使う道術と、白戸とかいう眼鏡が使う魔法はちょっと別種類すぎるのじゃ。わらわが道術を使ってもバレないかもしれないし、一瞬でバレるかもしれん。……その判断すら出来ない程にわらわの術と種類が違うということじゃ』

 

 つまり、超常現象的な方法は相手に即バレするリスクがあるという事だ。

 キュウビの術は勿論、ドールの操作術も十分超常現象の内に入る。バレるリスクはあるだろう。

 

 わざわざ相手の得意な魔法、超常現象の土俵で戦う事もない。

 ということは。

 

 

『要は結局、拙者お得意の物理☆に戻って来るって事でござるな!』

 

 

 意気揚々と手を挙げてそう宣言するニンジャ。

 いかにも自信たっぷりと言った様子の彼に、エンジェルが首を少し傾けながら静かに問いかけた。

 

『……随分と元気ですが、どうにかする策でも思いついたのですか?』

『ふむ。拙者としては、ここらでデカい事を起こすのが得策と考えるでござる』

「デカい事?」

『うむ。警察とか消防とか、外部の人間が強制的に学校に介入せざるを得ない大事故などでござる』

「は?」

 

 ただでさえ人対の眼鏡が来て困ってるのに、余計に警察とか呼んでどうするんだよ。

 俊介がそれを口に出すよりも早く、ニンジャが顔の前で人差し指を細かく左右に振りながらチッチッと舌を鳴らす。

 

『まず、学校の授業時間中に警察が一人で捜査に来るなんてありえないでござるよ』

「……なんで?」

『捜査なんて人海戦術が大正義の七面倒臭いこと、一人でする訳がないでござろう。つまり、相手は正規の手つづきを経てここに来た訳ではないと予想されるでござる。恐らく俊介の身分を予測し、この場で同一人物の証拠を見つけてとっ捕まえる為に無理やり乗り込んできた……ってところでござるか』

 

 まあ、あれだけ人対の前に身を晒してたら、ある程度アタリを付けられるのは仕方ないとは俊介自身も分かっていた。

 一回人対の全員をダークナイトで完璧に倒した事もあるし。無理やり学校に踏み込んでくるくらいには恨まれているだろうというのも薄々分かる。

 

「でも、それがどうして大事故を起こすことに繋がるんだよ?」

 

 故に俊介は問うた。

 確かに白戸が不正な身分で捜査に来ているのはその通りかもしれないが、それがどうして大事件を起こすことに繋がるのだろうか、と。

 するとニンジャはよどみない口ぶりで言葉を吐く。

 

『相手は不正な身分で、そこに大事故の対応という正規の目的を持った警官が来れば、奴は撤退するか身を隠さざるを得ない。もしくは魔法で警官全員を洗脳するか。……どれにしろ拙者達への監視の目は必ず薄れるでござる。その隙を突くでござるよ』

「はあ……なるほど? でも警官が大量に来れば、それこそ榊浦美優の誘拐現場を見られるリスクが増えるんじゃ……」

『木っ端の警官がどうにか出来る訳ないでござる。ここに居るのは全員、元の世界で公的機関をおちょくりまくった大犯罪者でござるよ』

 

 

 ……そういえばそうだった。

 つい忘れるけど、13人ともガチモンの殺人鬼なんだよな。ビビってるのは自分だけで、その気になれば警官を道端の小石レベルに吹き飛ばせる奴ら。

 

 

 それにしても、学校に第三者が介入せざるを得ない大事件か。

 

 生徒数人を襲って血塗れにする? いやそれこそ白戸に見つかる可能性が高すぎる。あとあんまやりたくない。

 

 エンジェルの怪力パンチで学校の一部を破壊する? 音がデカすぎてこれもすぐ見つかりそうだな。あと警察がすぐに介入するレベルの事件かと言うと微妙な気がする。

 

 

 となると……。

 

 

 …………。

 

 

 

「……よし。ボヤ騒ぎを起こそう」

 

 俊介が最終的に選んだのは、火だった。

 決断を下した俊介に向かってニンジャが感嘆の声を上げる。

 

『お? おお~! 中々良い選択でござるな俊介! 不良生徒の煙草の不始末を装って火事を起こすのは安パイ――――』

「――――フライヤーでボヤ騒ぎを起こす」

『は?』

 

 ニンジャの素っ頓狂な声。

 それと同時に、ダークナイトを除く殺人鬼達の顔が一斉に煙草を吹かすフライヤーに向いた後、焦った表情で俊介の方向に顔を戻す。

 

『ちょっと待て! フライヤーが火点けたらボヤ騒ぎどころじゃ済まねえぞ!』

『考え直してください俊介。この学校が炭になります』

『そうよ! 人間焼肉が数百人分出来上がる様なんて見たくないわ!』

 

 一様に俊介に中止を求める言葉を出す殺人鬼達。

 フライヤーは静かに煙草を吹かしながら俊介の方を見ている。

 

 

 なぜ殺人鬼達がここまでフライヤーを表に出したがらないのか。

 それは、彼女がダークナイトの次に危険だからである。

 

 彼女の近くにある火は何故か猛烈な勢いで強くなる。本人曰く『気合いで強くできるけど弱くはできない』との事で、本気を出せばマッチの火から街を丸ごと一つ炭に出来るそうだ。

 火の消し方は知らないし興味もない。そして自分は火の中では死ぬどころか体調が良くなるらしく、業火の中で普通に寝たりもできるらしい。

 

 つまり、彼女は火に関しては何か神がかった物の加護を受けているとしか思えない特異体質を持っている。

 この火という物が欠かせない現代社会において、そこら辺を歩いているだけで大火事を起こしまくる彼女は危険と言わざるを得ない。なので俊介はフライヤーを滅多に表に出さないのだ。

 

 しかし逆に言えば、火を起こしたい状況で彼女以上に心強い存在はいない。コントロールできないのが玉に瑕だが。

 

「旧校舎でよく不良が煙草吸ってるよな。休憩時間はあと6分……全然いけるだろ。フライヤー!」

『マジで良いのか? 旧校舎っつったら木造だろ。止まんねえぞ』

「煙草が偶々引火しただけだろ? 中にいた生徒は全員外に逃げて気絶してたそうだしな」

『……言うねえ。良いぜ、やってやるよ』

 

 フライヤーは咥えていた煙草を床に落とし、足先で踏みしめた。

 

 

 

 

 

 

 ――――旧校舎。

 

 木造の今は使われていない校舎は、星野の暴行事件から時間が経ち、また不良生徒が入り込むようになり始めた。

 教師が滅多に入って来ないので不良生徒達の溜まり場と化していて、少し探せば煙草の吸殻なんかはすぐに発見できる。

 

 そんな旧校舎の中、俊介はフライヤーと横並びで立っていた。

 ヘッズハンターが旧校舎中を飛び回り、既に誰もいないのは確認している。後は豪快にこの旧校舎に火を点けるだけだ。

 

 そんな折、ニンジャがこそこそと俊介に近づいて来て耳打ちをする。

 

『し、俊介……。拙者が言った事とは言え、ボヤでフライヤーは流石にやりすぎではないでござるか……?』

「変に弱い火だと人対にすぐ鎮火されるだろ。下手に鎮火されるくらいなら、一発で通報されるくらいにやってやるさ」

『まあ……そりゃそうでござるが』

「けど流石に全身は渡さない、両腕だけで留めるよ。怖いし」

『……そこが安パイでござるなぁ』

 

 そう言い残し、ニンジャは俊介の中に戻った。

 周囲にいるのはフライヤーと俊介のみ。お互い、こんな風に二人きりになるのは久しぶりで妙な空気が漂う。

 

 

「……あー。まあ、よろしく」

『そうだな……。じゃ、さっさとやるか。夜桜を一刻も早く助けたいんだろ』

「なんか……ごめん。都合の良い時だけ表に出して」

『別にいいよ。俺に謝る前に、好きな女を助ける事だけ考えな。手遅れになったら洒落になんねーからよ。……ま、偶には何か燃やさせてほしいけどな』

「ごめん。それは嫌だ」

『この話の流れで断んのはおかしいだろコラ』

 

 フライヤーと僅かに会話して空気を軟化させる。

 お互いに七年間連れ添った仲なので、少し話せば気まずい空気くらいはすぐに吹き飛ぶのだ。俊介は苦笑しつつ、フライヤーに両腕の主導権を渡す。

 

「火を点ける物を探してみるか。ライターとか落ちてるかも」

『必要ねえ』

「え?」

『こんな木造建築物、()()()()()()()だ』

「は? 何言ってんだよ。流石に火種がないと……」

『まあ歩いてみろって。両足の主導権は俊介にあんだからよ』

 

 フライヤーは口角を上げて笑い、せっかく俊介から渡された両腕をだらんと力なく垂らす。

 歩くだけで充分、という意味が分からない。いや意味が分かるが、歩くだけで火がつくなど俊介の常識では考えられない。

 

 しかし俊介はフライヤーに言われた通り、正面に伸びる廊下を踏みしめるように歩き始めた。

 

 

 一歩。

 

 

 二歩。

 

 

 三歩。

 

 

「…………?」

 

 俊介は鼻孔をくすぐる、嗅ぎ慣れない匂いを感じ取った。

 そしてその正体もすぐに分かった。

 

 ――――()()()()

 

「ちょっと待て……嘘だろ」

『もっと歩きな。これじゃあボヤにもならねえからよ』

「…………」

 

 本当にただ歩いているだけなのだ。

 何やら意味が分からないが、俊介はフライヤーの言う通り歩みを進める。

 

 

 四歩。

 

 

 五歩。

 

 

 六歩。

 

 

 焦げ臭さが更に勢いを増し始める。

 段々と黒い煙も目に付くようになってきた。

 

 

 七歩。

 

 

 八歩。

 

 

 九歩。

 

 

 揺らめく火の手が視界に入り始めた。

 それは壁を燃やし、天井にまで伸びようとし始めている。俊介は少しだけ足を進めるのを躊躇うが、すぐに歩くのを再開した。 

 

 

 

 ――――十歩。

 

 

 そこで、一体何が火種になっているのかが分かった。

 何のことはない。

 

 煙草の吸殻によるボヤ騒ぎを偽装するのではなく。

 教室の隅にあった煙草の吸殻を火種に、本当に火が出ていたのだ。

 

 しかし、それは明らかに、物理法則に反した火の勢いであった。

 なにせ。

 

 教室の隅にあった数センチほどの煙草の吸殻から、巨大な教室を埋め尽くすほどの業火が勢いよく噴き出しているのだから。

 まるで煙草の吸殻が飛行機のジェットエンジンのように青い火を噴き出している様に俊介は己の目を疑った。

 

 ……いやだっておかしいだろ。

 なんで数センチの煙草から太さ二メートルくらいの青い炎が上向きに噴き出してんだよ。物理法則に反してるとかいうレベルじゃないぞ。一体何がどうなっているんだ。

 

 

 俊介が思わず足を止めてその異常な光景を見ていると、フライヤーの操る両腕が俊介の鼻先を軽く突いた。

 

『おーい。あんまり見てると両腕以外黒焦げになんぞ』

「あ、ああ……ごめん」

『でもまあ分かるよ。俺も生きたまま火葬場に突っ込まれた時からこんな感じの事が出来るようになってな。最初は俺も見惚れたもんだ』

「生きたまま火葬場……?」

『ん、あ~……わりぃ忘れろ。気持ちのいい話じゃねえからな』

 

 俊介は殺人鬼達の人となりは知っているが、その過去は殆ど知っていない。何人かは知っているが、基本向こうから話さない限りは触れないようにしているからだ。

 フライヤーも過去に何かあったんだろうなと思いつつ、俊介は再び歩みを進める。

 

 

 そして何十歩か歩き、ようやく別の窓から旧校舎の外に出る頃。

 

 俊介が少し離れ、遠くから旧校舎を見ると。

 

 

 天空に向かって空高く伸びる、直径十数メートルの青い火柱が生えていた。

 ただの木造建築物である旧校舎を基点にごうごうと燃えるそれは恐ろしい熱気を放っている。明らかに木が大量に燃えた程度で起きる火の勢いではない。

 

 

 

「………………?」

 

 

 

 俊介は世の中に一般的に流布されている物理法則を疑った。

 

 

 

 

 そしてニンジャに体を変わり、人目に付かないように現校舎の教室へと戻る。

 窓のすぐ横にある机に座って一息つき、窓の外を見る。

 

 旧校舎から巨大な火柱が未だに昇っているのが見えた。

 

(離れても衰えないのか……)

 

 煙草によるボヤ騒ぎにしては余りに豪快すぎる火柱を見ながら、俊介は『旧校舎が消し炭になるだけだしいいか』と現実逃避を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






俊介はフライヤーを滅多に表に出さないので能力を測り切れてません
物理法則は無視しちゃ駄目だろ!




フライヤーの過去は考えてるけど、重すぎて書くのが憚られる。
三十路のトールビットと同じく、俊介を異性の恋愛対象として見てない組に相応しい過去を考えてましたが、重すぎてやんなっちゃった……ワァ……!
NTR音声を聞きながら設定考えて生まれたヘッズハンターとフライヤー。そこに大した違いはねえだろうが!

でもいつかは覚悟決めて書きます。いつかね。





-Tips-
Q.国認定の人格持ちの誘拐事件って、実際どれくらいヤバい事なの?
A.直々に国から認定される人格持ちってのは、バクダンみたいに異世界のヤバい兵器とか道具とかの優秀な研究者が大半です。そんな奴の誘拐っていうのはつまり簡潔に言うと、犯罪者に核爆弾のレシピ一式が盗まれたみたいなものです。そんな大事件を隠ぺいとか普通にチョーヤベーぜ!

Q.たとえ核爆弾のレシピ一式やそれに類似する物が盗まれたところで、材料を盗まれなければ問題ないのでは?
A.問題ないわけないだろ。それに異世界で積み上げられた科学知識なので、この世界の科学とは違いすぎて何を材料にするのかが全く見当がつきません。極論、その辺に落ちてる石と枝を利用して大量破壊兵器を作ってくる可能性もあるので、マジヤベーぜ!

Q.こんなヤバい奴らを国認定の人格持ちとして優遇してるのは誰だぁっ!
A.国と榊浦親子。
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