『始まりの冒険者』は世界を回る   作:くろこんチャン

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スサノオの能力とかを人物紹介で知りたいという方が多かったのでどこかで設定を放出したいですね。

ただ文字数が凄いのでもう少しスリムにした後に公開出来ればなと思っています。


10話 交渉

 

 

「おい童貞、本当なのかよ。アイツが来るってのは」

 

「ガガーラン様、流石にその呼び名は、、、はい、日付と場所はお伝えしております。時間に遅れる様な方では無いかと思われますが。」

 

「それにしても偶然とはあるものですね、クライムが街中でアダマンタイト級冒険者とお会いするだなんて」

 

王城の一室に、蒼の薔薇、クライム、そしてその主たるラナーが集結していた。

 

話題の主はあの冒険者、以前話していた「冒険者の神」と言われる者である。

 

「ラナー様には既に人となりはお伝えしましたが、噂に違わぬ人でした。衣服が汚れることも厭わず少年を救い神殿まで連れて行くなど高潔さも兼ね備えているお方です。」

 

「成る程ね、おいイビルアイ。お前が対抗心を燃やしてた奴に会えそうだぜ」

 

「私は対抗心など燃やしていない!」

 

「そう、懸想してるだけ」

 

「いやん、イビルアイには私がいるのに」

 

「貴方たち、もう直ぐ来る時間なのだから静かにして・・・」

 

取っ組み合いを始めたイビルアイたちを横目に、彼女らのリーダーであるラキュースはため息を吐く。

 

今回スサノオとの会談をわざわざ取り付けたのか、それは彼女らがいま直面している問題のせいだ。

 

八本指、そして新しくわかった彼女たちの敵ーーー六碗、と噂されている者たちである。

 

彼らは1人1人がアダマンタイトに匹敵する腕を持つとされており、いかに王国に2つしか無いトップ冒険者である彼女たちでも苦戦は必死であるからだ。

 

数の多さでも、勢力でも彼女たちは劣勢を強いられている。

 

足りないのはその戦力だけでは無い、情報においてもその差は歴然だ。

 

それを補う為、冒険者の祖である彼に助力を乞おうとラキュースたちはしていた。

 

(そうで無くても最低限彼の実力は見定めておきたいところなのよね、王国の危機に現れた超級の戦力、偽物で敵のスパイなんて可能性すらあるもの)

 

そう、はっきり言ってそう言った可能性すらあるのだ。

 

自分たちを貶めようと八本指が用意した刺客か、内定により作り出された偽物である可能性もラキュースは見ていた。

 

「そう言えばラキュース、聞きましたか。エ・ランテル近郊の村々が襲われたいるという話」

 

「ええ、このことさえ無ければ私たちも同行したいところなのだけれど」

 

「それなら大丈夫です、先程の会議で近々王国戦士長様の派遣が決定されましたから」

 

王国戦士長、とは周辺国家最強と言われるガゼフ・ストロノーフのことだ。

 

 確かに彼ならば野盗だろうと、帝国騎士だろうと大丈夫なのだろう。

 

「姫様、お客様が、、スサノオ様が到着されました」

 

「中に入って頂いて」

 

ラナー付きの侍女からかかった声に、中の面々に緊張が走る。

 

(いよいよね)

 

(はい、上手くいけば良いのですが)

 

ラキュースとラナーの間に、視線だけでのやり取りが交わされると同時に、静かに扉は開け放たれた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

眼前に飛び込むのは、異様な光景だった。

 

クライム、そう名乗った少年を除けば全員が女性のこの部屋の全員からの視線がスサノオを貫く。

 

好奇、懐疑、敬意がごちゃ混ぜになった感触が少しだけ懐かしく、スサノオにとっては煩わしいものを思い出させた。

 

スサノオが王女の前で簡単に挨拶をすると、冒険者故に礼儀は不要だ、とラナー王女に言われてしまった。

 

「この場には、私の友人であるラキュースとその仲間である蒼の薔薇の皆さんしかいませんから」

 

そう言われるがままに席に座らされる、先程よりもより強い圧力がスサノオを襲う。

 

特に物理的に左の重戦車の様な女性からの圧力がスサノオを襲うが、彼は身じろぎもしないまま涼しい顔をしていた。

 

「スサノオ様、お初にお目にかかります、王国でアダマンタイト級冒険者として活動しております。蒼の薔薇のラキュースと申します。我ら冒険者の祖と呼ばれる方にお会い出来てこちらこそ光栄です」

 

そう言いつつラキュースは内心冷や汗をかきつつ頭を下げる。

 

アダマンタイト級冒険者、王国のトップとしての自負は完全に打ち砕かれていた。

 

冒険者として、格上の相手に遭遇することはそこまで珍しい話では無い。

 

チームとして完成していた頃ならいざ知らず最初の頃は、そして現在もそれなりの修羅場は潜って来た自信がある。

 

そんな自信を、完全に打ち砕かれていた。

 

ただそこに居るだけで見るものを生物的本能に基づき恐怖させる威圧、蒼の薔薇の面々の誰もが、その力に圧倒されていた。

 

平気な顔をしたいるのは実力を見抜くということが出来ないラナーと、そういった経験のまだ浅いクライムだけだ。

 

(何かの影響で不評を買った?不味い、せめて王国に対して悪印象を抱かせない様にしないと)

 

ラナーとスサノオが話している間、ラキュースは内心そのようなことを考えている。

 

ラナーも漸くラキュースの様子に気付いたのだろう、気を使う様にこちらを見るがラキュースは気がつかなかった。

 

「・・・お前は、何者だ」

 

「何者、とは?」

 

不意に、口を開いたのはイビルアイだった。

 

「実力など、確かめるまでも無い。冒険者の神、確かにそうなのだろう。お前は、『プレイヤー』と呼ばれる存在なのか?」

 

その問いに、この場が急速に冷えて行くのを蒼の薔薇の面々は感じている。

 

 ほんの少しだけ、そんな空白の後にスサノオはこれだけを答えた。

 

「いや、違う。違う・・・と思う」

 

イビルアイは、その答えに納得した。

 

ラナーは、その回答に安堵した。

 

イビルアイは、そうなのだろう、そうであるのだろうと考えていた。

 

眼前にいるその人こそ、昔打ち倒した魔人の元、彼の化け物どもの親であるのだろうと納得していた。

 

その様な存在ならば、あれらを作ることは可能なのであろうと。

 

ラナーはスサノオを必死で読み解こうとした。

 

世俗には関わらない、困ってる人を見捨てない、だが無条件では無い。

 

あまりにもちぐはぐな彼の姿にラナーは疑問を持たずには居られなかった。

 

人間には、それなりに自分の信念や行動原則が存在する。

 

ラナーが『習性』と思うそれを、スサノオからはまるで捉えることが出来ない。

 

ただ、あちらはあまり好意的にこちらを見ていないということだけはわかっていた。

 

「そろそろ本題に入ってもよろしいでしょうか」

 

最早本題に入ることも無く、穏便に済ます方が良いのでは。

 

そうラキュースすら思っていた瞬間、ラナーは口に出してしまっていた。

 

もう、後戻りは出来ない。

 

スサノオに促されるがままに、ラナーは口を開く。

 

「八本指、という組織はご存知でしょうか」

 

窃盗、麻薬の販売、栽培、違法奴隷の斡旋。

 

この国を憂う王女として真摯に、ラナーは彼の組織について語る。

 

「現在、蒼の薔薇と私に協力してくれる一部の貴族の私兵で、王都に点在する八本指の拠点を殲滅する大規模な作戦を立てています。そこに・・スサノオ様も参加して頂け無いでしょうか?」

 

言い終わり、ラナーが息を吐き切った瞬間、スサノオと目が合う。

 

その透き通ったような目を見た瞬間、ラナーは理解した。

 

見られてる、気付かれている。と。

 

自分のことも、自分の考えも、自らが隠そうとして来た、自らの正体もと。

 

「良いだろう」

 

その答えはシンプルだった。

 

ただ、その答えがあまりにも意外すぎて、まるで眼前に現れたドラゴンが「仲良くしよう」と言って来たかの様なあまりにも意外な結果に、その場の全員が硬直していた。

 

「ただし、1つ条件がある。他の助力はいらない、全ての組織を、私が1人で終わらせる」

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