『始まりの冒険者』は世界を回る   作:くろこんチャン

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帝国の動きをちょっと書いて見ました。

短めですすいません


12話 帝国

 

 

「以上がブルムラシュー侯からの報告だ。」

 

「大規模な拠点の破壊痕、聖王国における亜人種軍勢の討滅。これは、只事ではありますまい」

 

バハルス帝国、その首都たるアーウィンタール皇城の最奥にて2人の男が向かい座っている。

 

1人は金髪に、濃い紫の瞳を有する青年だ。すらりと若い足と少し細身の体躯ではあるが、この若さで生来の支配者のオーラを身に纏っている。

 

その瞳は未だ知り得ぬ好奇心により爛々と光り輝いていた。

 

彼の名はジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス。

 

このバハルス帝国皇帝である。

 

「じいならば、八本指の壊滅、亜人種の軍勢の討滅など問題にもなるまい?」

 

「はて、実際に対峙せねば確たることは言えませぬが、、、人間たる八本指ならば1人ずつであれば対処出来るでしょう。ただ亜人種軍勢の討滅はどうだか。亜人種には英雄級の力を持つ者も複数いると聞きます、それを完全に葬るとなれば大規模な魔法の行使が必要です、容易ならざることは確かでしょう」

 

そう言ってのけるのは枯れ枝のような老人だ。

 

身長の半分ほどの長さがある白い髭を蓄えたその老人は、長く生きたことを表すような皺が顔中に刻まれている。

 

フールーダ・パラダイン、帝国の主席魔法使いである。

 

「既に聖王国の様子は配下を通じて破壊痕を情報魔法で探知済みです、恐ろしいものでした。あれぞまさしく、神の所業と言うべきかと」

 

「しかし、王国の破壊痕は大人しいものだったと聞いているぞ」

 

「王国王都内部でしたので、大規模な魔術の行使を避けたか、もしくは魔法そのものの使用を避けたとみられますな」

 

「じいの推測通りなら、魔法を使わずにアダマンタイト級の面々を殺したと聞こえるが?」

 

フールーダの魔法痕跡の薄さから見えた考察、それは2つの意味を持っていた。

 

・スサノオは王都内に被害を齎すことを良しとしなかった(人に対して、王国に対して、?に対して友好的である)

 

・スサノオは、大規模な魔術行使が可能であるにも関わらず戦士としても優れている

 

「だが、魔法の行使も可能で戦士としても優秀とは・・・・」

 

「魔術師としては儂よりも上でしょう、第7位階魔法、否、第8位階に届くやも知れません」

 

「まさか、爺よりも上とはな」

 

ジルクニフは、帝国に尽くしてきたフールーダという男を良く知っている。

 

少しばかり魔法キチな面もあるが、尊敬できる師であることに疑いも無い。

 

そんな彼が確実に上と見ているスサノオという冒険者に、ジルクニフは心躍らせていた。

 

王国と帝国は、定期的に戦争を行っている。

 

王国の国力をすり減らす為の策ではあるのだが、それを一気に終わらせることが出来る実力者の存在をジルクニフは求めていた。

 

「それにしても、良いタイミングで出てきてくれたものだ。まさか私の時代に寝た神が起きてくれるとは」

 

「各国も対応には苦労していそうです、聖王国などは露骨に失敗してる様子。王国は不明ではありますが、王国からいなくなっているという情報を考えますと良い返事は出してありますまい」

 

その情報から、ジルクニフは王国に対して特別な感情があるというより人情によるものであると考察を進めた。

 

スサノオの行動原理は、単純だ。

 

助かるが、深くは入り込まない。

 

肩入れし過ぎない、英雄然としており国の事情にもが関わらない。

 

「まさしく、冒険者だな」

 

「ええ、取り込むのは難しいと愚考致しますが」

 

「それは、今までの者が愚鈍だったに過ぎん。私は違う」

 

そう、ジルクニフは言い放つ。

 

冒険者には確かに、国の事情や戦争などに肩入れしないという不文律があるがそれはあまりにあやふやで自由な者だ。

 

例えば、王国のレエブン侯に仕える冒険者は、引退したとは言えオリハルコン級の冒険者たちである。

 

この様に冒険者は辞めれば自由だし、幾らでもやり様はある。そのことをジルグニフは良く自覚していた。

 

「会いたいな」

 

「難しいでしょうが、不可能ではありますまい、相手は神と言われる人物ではありますが冒険者、指名依頼などで帝国に呼ぶなど手段はあります。」

 

「そうか」

 

頭の中で、対スサノオのシュミレーションを既にジルクニフは終えている。

 

相手はアダマンタイト級冒険者、金に困っている様子は無い。

 

女?それも可能性は低いだろう。

 

話の中で、会いさえ出来ればそこから糸口を辿り相手の欲しいもの、思考、行動パターンを丸裸にして行く。

 

ジルクニフはそれが出来る男だった。

 

「スサノオを配下に加えることが出来れば、王国どころか人類圏全てを手中に収めることも出来るかも知れないな」

 

「陛下」

 

「わかっている、失言だ」

 

どこに監視の目があるかもわからない状況での思わず口にした失言にフールーダから叱責が飛ぶ。

 

だが、口にしたものは仕方が無い。既にジルクニフの中でその道筋が徐々に出来上がっていた。

 

「会いたいな」

 

「いずれ、必ずや」

 

そう不敵に言い放つフールーダに、ジルクニフは皇帝らしい艶やかな笑みを向けた。

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