『始まりの冒険者』は世界を回る   作:くろこんチャン

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13話 再開

13話 

 

トブの大森林、と呼ばれる場所がある。

 

アゼルリシア山脈の南端、エ・ランテルの北側に鎮座するそれは膨大な森林地帯でありその大きさは王国の5分の1とも言われている。

 

そんな大森林が、揺れた。

 

地震では無い。

 

災害の予兆でも無い。

 

これはそう、何かが起きる予兆だった。

 

大地が震える、土埃が舞い視界が完全に閉ざされる。

 

煙の後に現れたそれは、あまりに大きく、あまりに巨きかった。

 

推定でも高さは100メートルはある、300メートルはある触手が6本あり獰猛な牙を携えたそれは、凄まじい咆哮を挙げている。

 

かつて、この魔樹を人はザイトルクワエと呼んだ。

 

かつて竜王が戦い、封印したこの魔樹は漸く封印が解かれ目を覚ましたのである。

 

全ての世界を無秩序に破壊する為に。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

故に、これは必然だった。

 

神と呼ばれし冒険者は、その眼をザイトルクワエに向けている。

 

ザイトルクワエに向けられた視線には何の感情も籠って居ない。

 

ザイトルクワエも、既にその視線に気付いている。

 

ザイトルクワエは、その恐怖を知っていた。

 

彼は、眼前の恐怖を無視出来ず、理性なき頭をフル回転させる。

 

そして、答えに辿り着いた。

 

ザイトルクワエなりの、ザイトルクワエらしい答えに。

 

瞬間、魔樹の体は肥大化した。

 

ただでさえ、大きな身体がより大きくなって行く。

 

それは虚勢だったのだろうか、あまりにも物悲しい目をした魔樹は、情けなくも見えていた。

 

「大きくなった、魔力も増したな。それでどうする」

 

無論、殺す。

 

触手が、一般人からすると目にも止まらぬ速さの一撃が繰り出される。

 

ザイトルクワエのレベルは80〜85と言われている。

 

まさしくこの世界における強者だ、破滅の竜王と言われるのもうなづける。

 

だが、相手があまりに悪すぎた。

 

触手は、スサノオに触れることも許されるこの世界から『消失』した。

 

振り切った後の手応えの無さに、そして自らの触手が消失していることに気付きザイトルクワエは戦慄する。

 

彼はこの恐怖を知っていた。

 

眼前の、圧倒的強者を、知っている。

 

「人に仇名す前に、消えろ」

 

一閃、目にも止まらぬ回し蹴りがザイトルクワエを襲う。

 

この魔樹は、初めて自分の圧倒的な耐久性を恨んだ。

 

苦しまずに死ねたのに、それはザイトルクワエにとって初めての思考だった。

 

敵を殺す為に仕上げた体が、徐々に萎んで行く。

 

魔樹が選んだのは敵を殺す為の進化では無くむしろ退化。

 

目の前の恐怖から逃れる為に、魔樹は自ら退化を選んだのだ。

 

魔樹は自ら枯れる能力を得て、そして死んだ。

 

「人でさえも、あまりの恐怖に自ら死を選ぶことがあると聞くが。モンスターもそうなることがあるとは驚きだな」

 

そう言いながらスサノオはザイトルクワエだったものの頭から葉を回収する。

 

ザイトルクワエの葉は万病に聞くと言われているのだ。

 

黙々と、スサノオはザイトルクワエの葉を回収して行く。

 

全ての作業を終えた後、スサノオは立ち上がり一言だけ、口を開いた。

 

「ーーーーーーーで、そこにいるのは誰だ?」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空気が、一変した。

 

この空気を、スサノオは知っている。

 

数100年ぶりに感じるこの感情を、スサノオはかつて知っていた。

 

恐怖、警戒、殺意。

 

様々なものを入り乱れさせながら幾つかの影が何も無かった筈の場所から出現する。

 

出て来たのは異業種たち。

 

カマキリとアリを融合させた様なライトブルーの巨大な蟲。

 

漆黒のボールガウンを着た長い銀髪の吸血鬼。

 

双子のダークエルフ。

 

黒髪のオールバック、丸い眼鏡をかけた最上位悪魔。

 

純白の悪魔と仰々しい角の付いた悪魔。

 

執事服を着た老人。

 

今し方死んだザイトルクワエなどより遥かに高みにいる者たちが、この場に集結していた。

 

だが、スサノオはその誰も見ていなかった。

 

その中央にいる、人物だけを、彼は見ていた。

 

中央に、骸骨の化け物がいた。

 

眼光は赤黒く光っており、頭の後ろには黒い後光のようなものが刺している。

 

「お会いするのは初めてだな、、、スサノオさん」

 

それを聞き、スサノオは何かを確信していた。

 

その内心に、幾つもの内心があったことに気付いたものは誰も居なかった。

 

スサノオが失望していたことを、知るものは誰も居なかった。

 

ただ、スサノオは目の前の現実を受け入れがたかった。

 

それは、誰にも気付かれることも無かった。

 

一言だけ、スサノオは言う。

 

「名を、聞こう」

 

それを受け、骨の魔術師は真っ直ぐな眼差しをスサノオに向ける。

 

「あぁ、名乗っていなかったな。私はアインズ・ウール・ゴウンと言う。お会い出来て光栄だよ」

 

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