ありがとうございます。
「本当にすみませんでした」
開口一番。
先手必勝。
アインズーーモモンガがしたのは謝罪だった。
「それは、先ほどのNPCの態度についてか?」
それ以外もです、そう言いかけたモモンガはすぐ様口をつぐんだ。
アインズ・ウール・ゴウン、その内部にある一室でモモンガとスサノオは向かい合って座っていた。
モモンガとスサノオ以外は誰もいない、モモンガがスサノオに非礼があってはいけないと追い出したのだ。
実際、慇懃無礼な態度を終始取り続けるスサノオにも問題があるが、ぶっきらぼうな態度のスサノオにアルベドたちが戦闘をしかけたばかりだった。
モモンガは、日付にしておよそ半月前にこの世界にギルドごと転移した。
ユグドラシルのサービス終了日、玉座の間にてその瞬間を迎えようとしていたモモンガに待っていたのはこの異常事態。
すぐ様各地への偵察、自身も冒険者に扮してエ・ランテルへと入ろうとしたが、これは開始してすぐ様デミウルゴス、アルベド両名に反対され撤退している。
その理由こそが、このスサノオという存在である。
情報収集の為出たセバスらの耳に入って来たのは、人智を越える神の存在である。
デミウルゴスもアルベドも、外の世界にモモンガに危害を加え得る存在がいるとわかっていてわざわざ見逃すほど愚かでは無かった。
だが、モモンガはスサノオという存在を知っていた。
ただ、確信が無かったのだ。
そのスサノオは、果たして同じスサノオなのか、と。
「たっちさんと、貴方の戦いを見たことがあります。」
たっち・みー
その言葉を聞いた瞬間、スサノオの身体が一瞬震えた気がした。
銀色の戦士、赤きマント。
純銀の聖騎士が脳裏に一瞬だけ映る。
「とても仲が良かったと聞いています、、、この世界のこと、教えてくれませんか?」
「・・・揺り返しだ」
「揺り返し?」
「この世界には、100年前後にプレーヤーがこの世界に転移して来る。彼らは神になったり、破壊したり、好きに生きている」
それは、モモンガにとっても衝撃的な言葉だった。
色々な意味において。
「な、なら」
「先に言っておく」
モモンガの言葉を遮るようにスサノオは言う。
「記憶の限り、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーが転移して来た記憶は無い」
それは、スサノオにとって何度も言った言葉であった。
プレーヤーに会うと、皆口を揃えてこう言った。
『もしかしたら他のメンバーもいるかも知れない』
『また皆で冒険できるかも知れない!』
淡い期待だ。
だが、それをスサノオは笑わない。
笑わない理由が、彼にはあった。
「そ、そうですか、、、、」
モモンガは、当然の、自分の抱いていた淡い希望が打ち砕かれているのを感じていた。
それ以上に、眼前のスサノオを見てただ絶望していた。
目の前のスサノオは最早人間では無い、ということにモモンガは気付いたのだ。
スサノオは、最早丸っきりスサノオという生物なのだ。
モモンガは、考える。
スサノオは、今自分がおかれている現状を100年の揺り返しと言った。
つまりスサノオは『最低でも』100歳以上であるのだろう。
噂に聞いた伝説が本当ならば600年以上を生きている計算になる。
そして、スサノオはまさしく神になっていた。
ただ、それはあまりに長い永劫の時間だ。
はっきり言って地獄と言っていい。
人間は、それだけ長い間正気を保ってはいられないのだから。
人間の精神は、心は、100年以上の時を過ごすには繊細すぎる。
「これから、どうすれば良いと思いますか?」
ふと、モモンガはこれからについてスサノオに聞いていた。
最早彼に、果たすべき責務は無いのかも知れない。
モモンガは、アインズ・ウール・ゴウンを名乗ることを決めた男の目の前は、真っ暗になっていた。
「好きに生きろ」
「は?」
スサノオが出した答えは、単純明快なものだった。
「誰もが好きに生きた。竜と戦った者がいた、国を創った男がいた。世界を救った男がいた。全てを破壊した男がいた。」
それは、スサノオが生きた半生。
後悔と、歓喜に満ち溢れたスサノオの心からの声だった。
「生きるとは、自由だ。この世界に来た時誰もが自由を謳歌した、やり方と生き様はそれぞれ違ったが、皆がこの世界を楽しんでいた。前の世界とは違う、ここでは何でもできる力がお前にはあるんだ」
夢すらも
生すらも
ーーー死すらも。
自由だ。
そう言うスサノオは、まさしく冒険者の顔をする。
全てを見て回ったのだ。
この世界の全てを歩いたのだ。
そこにいたのはただしく「冒険者」だった。
それだけを語り終えると、スサノオはゆっくりと席を立つ。
最早語るべきことは無いと言う様に。
「スサノオさん、では貴方は何の為に生きてるんです?」
それを引き止めることはモモンガには出来なかった。
代わりに、これだけを、スサノオに問うた。
ならばお前は何故生きているのだと。
「私は、待っている」
「何を、ですか?」
「人だ」
それだけを言い残すと、スサノオは扉からも、アインズ・ウール・ゴウンからも去っていった。
「なんだ、貴方は諦めて無いんですね」
そんなモモンガの声が、虚しく部屋に響いたのだった。
数年後、アインズ・ウール・ゴウン魔道国が進出。
人類圏を淘汰し、世界征服に乗り出す。
だが、スサノオの領地は魔道王の命により完璧に保全され誰も近寄ることは無かったと言う。
ニグンー死んだよ!
エンリー生存やったね!
ちなみに死の螺旋を止める人が居ないからこの小説ではエ・ランテルは壊滅するよ!
故にクレマンティーヌは生存ルート!
お母さんに会えると良いですね、カジット!