「お初にお目にかかります、ローブル聖王国、神官団団長ケラルト・カストディオと申します。この度はアダマンタイト級冒険者であるスサノオ様とお会いすることが出来光栄です。」
聖王国首都、ホバンスにてケラルトとスサノオは邂逅していた。
スサノオの心ははっきり言って帰りたい一色である、そもスサノオの目的は次に寝るまでの暇つぶしと、世界各地に点在する拠点に顔を出し不備が無いかチェックすることである。
だが、事情がそれを許さなかった。バフォルクとの戦闘後、村人を全て蘇生した際にMPをかなり消費した。加えて蘇生という初めての経験をした村人のメンタルケアもありかなり長い間村に滞在することになってしまった。
そして神と崇められ
聖王国から騎士団が派遣され
何故かオルランド・カンパーノと戦い勝利し
そして今に至る。
そもそも、公権力に入らなくて良いという理由から(と言うか正確には面倒臭いから)冒険者をやっているという筋金入りの自由人である。
早く帰りたいと思うのはあまりに当然のことであった。
「アダマンタイト級冒険者、スサノオだ。」
ぶっきらぼうにそう答える、尊大な態度と言うには遠慮があり丁寧と言うには少し配慮が足りない。
そんな印象を受けあまり今回の歓談を歓迎する気がスサノオに無いことを察したケラルトは直ぐに話を進めようとする。
「今回は十傑の討伐、誠にありがとうございました。冒険者組合からの依頼という訳ではありませんがバフォルクの軍勢の打破、豪王バザーの討伐。報酬は聖王国からお支払いさせて頂きます」
「感謝する、神官団団長殿。」
その後も、報酬に関する話がケラルトからされる。
ちなみにスサノオはアダマンタイト冒険者として十分な財を持っていたりする、故に不要だと断りたかったがそれはそれで話が長くなりそうなのでスサノオはただ時が流れるのを待っていた。
次第に話は、取り止めの無い雑談へと移っていく。
「興味本位でお聞きしますが、スサノオ様はエルフなどの長寿な種族なのですか?」
「いや?人間種ではあるな、不老不死なだけだ。」
スサノオの種族は『嵐神』という特殊なものに進化している、死亡という概念がそもそも無い。
裏を返せば、これはまさしく呪いというものである。死にたくても、死なないのだ。
「そうですか、お答え頂きありがとうございました」
ケラルトに、武人の力量を見定める能力は無い。結局この会談の直前まで『スサノオは本物なのか』という疑問は払拭出来ずにいた。
首元にかけられたアダマンタイトで出来たプレート、そしてバフォルクを確かに壊滅させたという実力だけがスサノオをスサノオとして立証する証明になっている。
(最早、本物かどうかは関係無い。その名を語るに相応しい実力を持っているというだけでも引き入れる価値はある、最低限、聖王国に悪影響を持たさない様にしたいですね)
「最後に、こちらは聖王女様であるカルカ様からのお願いとなるのですが、我が国には九色という聖王国の称号があります。そのうちの一席を十傑討伐という多大な貢献をしたスサノオ様にお渡し出来ればと考えているのですが」
あまりにも、大きな賭けをケラルトはしていた。
慎重派なケラルトらしからぬこの大きな動きには理由が幾つが存在する。
まずは最近の亜人種の動きだ、バザーを倒したという噂は人間種だけで無くアベリオン丘陵に住む亜人種にも広く伝わっており、それによりバザーに成り代わろうと活動を活発化させているとい後情報も入っている。
前回の一件もあり聖王国の防壁が十全に機能するとも限らない、こちらの保持する戦力ではあまりに心許ないと言わざるを得ない。
ローブル聖王国は、まさに戦力を求めていたのだ。
加えるならばその名声も、スサノオという名は冒険者の開祖、全ての冒険者にとって憧れの存在である。
彼が聖王国の冒険者組合に所属するというだけでも、各国から冒険者が集まって来るだろう。
通常、アダマンタイト級冒険者が来るということは絶大な効果を齎す。
具体的には安全性の確保、知名度の上昇などだ。故に各国はアダマンタイト級冒険者に対し常に勧誘を行なっている。
スサノオを早い段階で聖王国に取り込みたいと考えるもう一つの理由がこれである、この偉人を破格の待遇で迎え入れたいと考える国は多いだろう。
特に法国などはどんな手を用いてでも手に入れようとするだろう、スサノオは六大神では無いが、それと同列に語られる神そのものだ。
真偽を確かめるという意味でも、必ずアプローチをかけて来るだろう。
「報酬については受け取るが、九色については断らせて頂こう。冒険者として、公権力に組みする訳にはいかない」
「九色は聖王女様から与えられる名誉職です、受け取るのに身分は関係ありません。」
九色は強さによって選ばれるが、時には聖王国への貢献や戦闘力以外でも選ばれる例がある。
今回に関して、聖王国が求めているのは完全にスサノオの武力だが冒険者などの身分の理由だけで九色を受け取れないということは無い。
例えばオルランド・カンパーノは問題行動を繰り返して何度も降格処分をくらい班長というあまり高く無い地位にいるが、それでも九色の1人である。
「・・・それでは保留にさせて頂こう、私は聖王国について知らないも同然。知らない国にいきなりというのも困る」
「それは、その通りですね。不躾な頼みをしてしまい申し訳ありません。」
それを出されて押し込めるほど、ケラルトはスサノオという男を正しく理解出来ている自信は無い。
諦めて自身の非礼を詫びる。
「こちらこそ折角の頼みを断り申し訳無い、変わりにという訳では無いが、アダマンタイト級冒険者として依頼があれば応えよう」
瞬間、ケラルトの口が僅かに緩んだのをスサノオは見逃さなかった。
お願いとは、最初に重いをし徐々に条件を緩めて行くと意見が通りやすいというものがある。
ケラルトはまさしくそれを実践して見せた、これが聖王国における智を一手に引き受けるケラルト・カストディオの交渉術である。
「それでは、依頼が1つあるのですがよろしいでしょうか?それは、アベリオン丘陵の亜人種の掃討です」
やられたな、と思いながらも真っ直ぐにスサノオは正面を見る。
人間とは、こういう強かさを持つ生き物だった。
そんな今更なことを、スサノオは身をもって経験していた。