「腑抜け共が!!!人間如きに臆するなど、恥を知れ!」
獣身四足獣(ゾーオスティア)
獣の身を持ちながら2足で歩く亜人種であり、「魔爪」の2つ名を最近父から継いだばかりの男であるヴィジャー・ラージャンダラーが吠える。
バザーが、人間の領土から戻って来ない。
その噂が流れ、人間の中でバザーが討ち取られたことが伝わることにそう時間がかからなかった。
十傑の中でも有力な王だったバザーが討ち取られたことは、亜人種全体に畏怖と脅威を植え付けた。
故に、ヴィジャーは決断した。報復を。
だが、結果は散々だった。
『氷炎雷』ナスレネ・ベルト・キュール
『白老』ハリシャ・アンカーラ
十傑のうち2体は気付けばアベリオン丘陵の縄張りから姿を消していた、聞いた話によるとより奥へ、正確に言えば聖王国から離れた場所へと消えた。
『十傑の1人が、名前1つで逃げるのか!!』
『若造か、年寄りの最後の忠告じゃ。彼の名が騙りだろうが儂等には関係無いことじゃ、アレには関わるな。』
ハリシャの言葉を思い出し、ヴィジャーは拳を硬く握らなおす。
わかり切った様に、最後の、それこそ哀れなものをみる様な目が忘れられない。
故に、ヴィジャーは止まれない。
「故に、来たのは私のみか」
「・・・正確には、ヘクトワイゼス・ア・ラーガラーとロケシュも来ている。まぁ奴らは友軍と言うよりかは自分達の武威を見せる機会が欲しいだけだろう、俺を上として崇めることは無い」
ムゥアー・プラクシャー、『黒鋼』の異名を持つ同族を目の前にヴィジャーはそう零す。
「獣帝、灰王、螺旋槍が消えたことも多いだろう。十傑のうち4人が消えた、危機感を持っていることは間違い無いだろう」
ムゥアーはそう言いながら、眼前に広がる亜人種の軍勢を見る。
危機感と、畏怖。
そうして、過去最大の亜人種連合は結成されていた。
事実として、10傑は既に崩壊していた。
機能している者は殆ど存在しない。
裏を返せば、これはアベリオン丘陵の王になるチャンスとも言える。
縄張りも十傑の機能不全により消失した、そして相手はほんの少し前まで見下していた人間である。
『危機感の足りて無い愚かな他種族』が数体死んだところで問題は無い、他種族は自分たちより弱くて愚かだ。
故に、この戦争は当然のことだった。
「俺は、必ず王になる。この戦で、『魔爪』の名を聞けば必ずヴィジャー・ラージャンダラーとなる、父を超えるということを証明してみせる!」
決意を燃やすヴィジャーを、ムゥアーは静かに見つめている。
戦の火蓋が、切られようとしていた。
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「おいおい、何て数だよ」
眼前に広がる戦場を見つめながら、六色の1人に数えられる
オルランド・カンパーノはそう呟く。
彼は強さだけでローブル聖王国の聖王国九色の一色を与えられた、腕利きの粗暴な戦士である。
大柄な体躯が震えている、武者震いだ。
オルランド・カンパーノは、かつて豪王・バザーと直に戦ったことがある。
ただしその時は持ち堪えただけだ、決着では無い。
そしてそんなバザーは、聖王国内部に入り、多大な被害を与え、そして死んだ。
遺体の姿を、カンパーノは今でも覚えている。
バフォルクの遺体がまるで災害に遭った様に無造作に散らばり、それを村人が片付けている。
そんな遺体の端に、バザーは転がっていた。
身に着けていた豪華な魔道具はそのまま付けられている。この遺体を見て、カンパーノは理解していた。
バザー、自分が目標とした強者の1人。
それは、まるでそこいらの雑兵の様に殺されていた。
苦戦したのなら、戦闘の跡は残るだろう。
だがバザーの身体に付いていた傷は大きなものだけ。
魔道具に興味があるのなら身体から取って行くだろう。
世界は、広い。
それが、カンパーノの出した結論だった。
「この戦が終わったら、旅にでも出るかな」
「それは九色を抜けるということか?」
不意に出された声に、カンパーノは後ろを見る。
そこには、カンパーノと同じく九色の黒であるパベル・バラハがそこにはいた。
猛禽類を思わせる眼をこちらに向けながら、バラハは問う。
「いえ、ただちょっと思いましてね。このままで良いのかなんて」
「・・・・徴兵期間はとっくに過ぎている、お前を止める権利は私には無い」
とは言え、惜しいとバラハは感じている、オルランド・カンパーノは聖王国が誇る戦士だ。
「とは言え、これからのことはこれが済んでの話ですね。いやー眼前の光景に自然と怖気付いたのかも知れませんね。」
「あぁ、それなら心配無い」
「心配無い?おかしなこと言いますね、見えてます?この景色を、過去最大級の亜人種連合。歴史に刻まれますね。」
そう言いながら、カンパーノは眼前の亜人種連合を見る。
この威容も見て心配無いなど、一体誰が言えるのだろうか。
「お前は、神の存在をしっているか?」
「神?あぁそっち系の話ですかい?六大神とか」
「いや、それより古い」
それを聞いて、カンパーノは首を傾げる。
冒険者は聖王国ではそこまで力を持っていない、冒険者が信じる神の存在なぞ、知り様が無い。
故に、知らなかった。
「私も詳しくは知らないんだが、、、お前も知らないか。王都からの伝来だ。依頼を受けた冒険者が来る、神が来るとあった、、、なんの話なんだろうな」
次の瞬間、カンパーノのバラハの背後が急に曇り始めた。
2人が背後を見ると、曇り1つ無い青空が急激に曇り始める。
それはまるで積乱雲の様に大きく、広がっていく。
雷と、雨の中
神が、来た。