『始まりの冒険者』は世界を回る   作:くろこんチャン

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蒼の薔薇エピソードです。

設定がガバいと思われますが寛大な心でお許し下さい。


8話 王国

厳しい、しかし亜人種の脅威の去ったアベリオン丘陵をスサノオはただ歩いていた。

 

道中、力量差も分からずに襲いかかって来た亜人種をある程度間引きながら厳しい丘陵地帯を歩く。

 

 彼が滅ぼした亜人種は、あくまで巨大な勢力というだけに過ぎない。

 

 スサノオがどれほど滅ぼしても彼らはいずれ数を増やし元に戻る、つまりこの行為に対した意味は無いのだ。

 

 だが、スサノオがアベリオン丘陵にいる亜人種を絶滅させられないのかと言えばそれは否である。

 

 彼の持つ魔法の中には僅かながら探知系のものも含まれているしそもそも寿命という概念が無い彼にとってしらみ潰しに探していけば理論上、あくまで理論上ではあるが不可能ということは無いのだ。

 

 ただスサノオがそれをすることは無い、彼とて好きで殺す訳では無いし亜人種に恨みがある訳でも無い。

 

 否、あったかも知れないがあくまで過去のことである。

 

 アダマンタイトのプレートを首に下げた神は、無表情で荒野を、血に染まった大地を悠々と進んで行くのだった。

 

 目指す場所は決まっている。

 

 王国、その王都リ・エスティーゼ。

 

 そこにある彼の拠点である。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「なぁ、聞いたかよ。聖王国の話をよ」

 

「聖王国の話、だけでは何かわからん。詳しく話せ」

 

王都リ・エスティーゼ、その酒場で2人の冒険者が話をしていた。

 

 1人は巨石を思わせるような大柄な体躯をしている。短く刈り上げられた金髪の髪に、肉食獣のような瞳、女性の左右の太腿を合わせた位のサイズの首、腕は丸太のように太い。

 

 1目で戦士のわかるその見た目と、首にかけられたアダマンタイトのプレートが彼女の実力を示していた。

 

 「聖王国の亜人種の軍勢をたった1人で滅ぼしたバケモンの話だよ」

 

「・・・・・・・・」

 

 黙りこくる眼前の同僚に対し、戦士ガガーランは訝しむ様に顔を覗き込む。

 

「やめろ、ジロジロ見るな」

 

「いや、なんか元気ねぇなと思ってな。」

 

「うるさい」

 

ガガーランの眼前に座る冒険者は、身長は小柄で髪は金髪、赤いローブを深く被り、物々しい仮面を身につけている。

 

 彼女の名はイビルアイ、『蒼の薔薇』という王国でも有数のアダマンタイト級冒険者のメンバーだ。

 

 「その話は聞いている、ラキュースもその話をしていたからな」

 

「しっかし、亜人種の軍勢か。1人1人が英雄級に属するって言うじゃねぇか」

 

「・・亜人種は強い、中でもアベリオン丘陵にいる十傑と呼ばれる者たちは英雄の領域だ」

 

そう言いながらイビルアイは、どこか懐かしい様な顔をする。

 

 その背景を少しだけ知っているガガーランは、興味深そうに黙って話を聞いている。

 

 「その軍勢を単独で滅ぼし、なおかつ聖王国から差し出された宝物も地位も全て固辞した。巷では神が降臨されたと大騒ぎだ。」

 

「神ってなると法国あたりが黙ってねぇ筈だがねぇ?」

 

「六大神とはまた異なる神だからな、良い顔はするまい。敵対するほど愚かな国では無いはずだが、民衆の人気を放って置くだけとも思えん」

 

敵対とは行かずとも何かしら手を打つだろう、そう言いながらイビルアイは紅茶を流し込む。

 

 吸血鬼なんだから喉なんて乾かねぇだろう、とツッコミを入れたくなるのをかろうじてガガーランは押し込む。

 

 からかうのが好きとは言っても限度はあるのだ。

 

「なんと、イビルアイに春が来た」

 

「男の話、ボスに報告」

 

 「・・・なんだ、2人ともいたのかよ」

 

不意に、酒場にいた誰にも気配を気付かれずに2人の少女が姿を表していた。

 

 

2人とも髪はオレンジに近い金色。スラリとした肢体をしており、全身にぴったり密着する様な服装をしている。

 

ティアとティナ、蒼の薔薇きっての忍者2人である。

 

 「冗談はともかく、スサノオは知ってる。有名」

 

「そもそも、私たちの神様だし」

 

「まぁ、俺らも噂ぐらいは知ってるぜ?像にして持ってる奴もいるぐらいだしよ、、、」

 

冒険者にも神がいる、あまりにも珍しいそれは、過去に挙げたあまりにも大きな偉業により神格化されたらしい。

 

 人間の可能性を広げた神、亜人種に飼われるだけの存在であった家畜以下の生命を押し上げた神。

 

 荒ぶる旧き神である。

 

 「それだけじゃ無い」

 

「ってぇと、そっちの話か」

 

「今日のガガーランは察しが良い、いつもの脳筋は?」

 

「へっ、いつも通りだろうがよ」

 

「冗談はともかく、あっちの世界では有名人」

 

「イジャニーヤの祖が倒されてる」

 

イジャニーヤ、二百年前に活躍した十三英雄の1人たる暗殺者の名である。

 

 現在は、その名を継いだ暗殺集団となっていた。ティナとティアも以前はその構成員だった。

 

「奴とは戦うな、イジャニーヤの教え」

 

「フン、それは向こう次第だな」

 

「お、いつになく強気じゃねぇか、おちびさん」

 

「・・・・確かに奴は強いのだろう、今回の件、伝説に謳われる以上の存在かも知らない。だがあの時、八欲王が跋扈し魔人が暴れていた時、奴は何をしていた?あくまで世界を救ったのは十三英雄だ、アイツじゃ無い」

 

イビルアイは、過去にインベリアという国を滅ぼした国墜としという忌名がある。

 

 あれほどの実力がありながら何故という気持ちは少しはあるのだろう。

 

 「まぁ、そんなことを言っても仕方無いな。幸いにして奴の建てたと見られるものはこの王都近くにも存在する。いずれ姿を見せるだろう。」

 

そう言うイビルアイに促され、蒼の薔薇の面々も一息吐く。

 

 その後、本当に神と対面することになるとは、夢にも思っていなかった。

 

 

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