落ちた彗星   作:くろから

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墜落

押しつぶすような灰色の空、血で染め上げたかのような赤黒い大地。

刹那の閃光の様に命が散りゆく戦場でひときわに激しい戦いをする兵器が二つ

そう、俺たちは兵器、唯命令のままに目標を屠り、地獄に向かって突き進む弾丸。

命令完遂のため幾度でも死地を歩く死の一兵卒。

 

そんな俺は今、この血塗られた生の中でもとびきりの死地にいた

 

もう何日戦ったのか、一週間か、一月か、それすらわからなくなるほど続いた赤い津波を跳ね除けて、最後に、最強の宿敵(とも)が来た。

技術は互角、単純な身体能力では一歩劣り、異能の性能でこちらが一歩勝る。

これだけは初めて戦った時から変わらない僕たちのデザインの違い。

 

 

一つ違うとすれば、今回はどちらかが死ぬまで終わらないということ

 

 

最初は殺すまでやることはなかった、敵になってからは決着を避けてきた

 

抗ってきた

 

それがもう望めないと僕はあいつの初撃で知った

殺すまで終わらない、といっても戦力としては限りなく互角の僕たちに決着は訪れない

だがここは常にその様子を変え続ける戦場だ、想定外はいくらでも起こり得る。

 

そして世界とは残酷にできている

また、限りなく互角、というのは少しつついた程度の衝撃で崩れる均衡ということでもある

 

たった一撃の不発弾の爆発で俺は追い詰められ、俺は敗北した

左目をえぐられて、肩口から斬られた俺は唯、無二の友人の幸せを願って身を任せると不意に体が浮いたような感覚が襲った

世界が反転したような感覚とともに俺は気を失い、次に見たのは記録でしか見たことのない植物と、銀髪の女性だった

・・・今わの際の夢としては、妙な始まりだ

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~

春の日差しの下で気分よく眠りこけていた美鈴に向かいナイフか飛ぶ

「どわっ!?ちょ…咲夜さん!?常日頃のことですがもう少し優しい起こし方をしていただけませんか!?」

「あら、門番のくせに常日頃から居眠りをしているあなたがいけないのよ?」

頻繁に白黒泥棒が出入りしているのだからこのくらいは当然のことでしょ

「それじゃ、私は人里に買い物に行くから、侵入者はお願いね?」

「任せてください!鼠一匹も入れませんよ!」

「はいはい」

美鈴とりあえず起きているのなら大丈夫かしら

「少し騒がしいわね」

いつも霧の湖は妖精たちが遊んでいるためにぎやかなものだけど、今日は少し勝手が違う、湖畔で遊ぶ妖精たちの姿が不気味なほどに少なく、代わりに動物霊がたむろしている。

 まるで、災害が発生する前触れのような異様さだ。

「近々また異変が起こるのかしら」

輝針城異変以来異変の解決に動いたことはないが、久しぶりに楽しんでみようかしら

 

刹那、世界が強く捩れた

「なにこれ…気持ち悪い」

時が止まったのとは違う、もっと歪な変化を感じた。

すると、動物霊すらも気配をくらます、まるで何か、強大な力から身を潜めるよう。

聞こえるのは木の葉の擦れる音と、些か現世には似合わない腐った肉の焼けるような不快な匂い、死臭だ。

臭い、まるで戦場を切り取って持ってきたようだ。

「まったく、なんの冗談かしら」

正直馴染みあるものとはいえ慣れるものではない、こんなものに慣れるとすればそれは、この幻想郷とはかけ離れた現世に顕れた地獄だろう。

生い茂った雑草をかき分けると、一本の樹木にもたれ掛かるように私と同じくらいの少年が倒れていた。

「…これは、」

ひどい、血で凝り固まった洋服でよくはわからないが、全身くまなく傷を負っている、特に握りつぶされたような左手とまるで炭になったような右足。

不意に少年がうめき、薄く目を開ける、サファイアのような深い青の目はまだ濁っていない

「直ぐに運ばなくちゃ」

幸いにも幻想郷には大体何でも直せる薬師がいる、命は助かるだろう

〜〜〜〜永遠亭〜〜〜〜

からからと引き戸の開く音が来客を告げる

「はいはい、それじゃ、カルテの記入を…って咲夜!?誰よそれ!?」

「急患よ、診てあげてくれる?」

咲夜に背負われた少年をみて優曇華の顔がサッと青ざめる

「お師匠様はこっちですが…なんですかその人!?何やったんですか!?」

「分からないわ、拾い物だもの」

「はぁ!?」

長い廊下の奥から永琳がやってくる

「何の騒ぎかと思えば…こっちよ、それとここからは部外秘よ、吸血鬼のメイドはここまでね」

「わかったわ」

廊下の奥に二人が消えていく、これで助からないということはまずないだろう、もし助からなかったとしたらそれは、彼がここで果てる運命だったということだ。

「さてと、寄り道が長くなっちゃったわね」

小さくこぼすと咲夜は人里に向けて飛び立つ、いつもよりも少し速度を上げて風を受ける。

人里にこんな戦場の匂いをまとったまま入るものではない。

人里に降りると少し自分の匂いに意識を向ける

「気休めくらいにはなったかしら」

人里に入っていく咲夜の背を赤く染まった龍の像が見つめていた

 

 

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