「エランのヤツ。ウドの大木かと思ったら、随分と速いな。クソったれめ!」
決闘が開始され、40分強が経過した。タイマンで、決められた範囲での戦闘である決闘で、グエルがココまで時間をかけるのは珍しい。
それだけ、エランのファラクト-Dが強力で、てこずっているのだろう。
『そこまでして勝ちたいか!元・ホルダー!』
『不格好な真似するなよ!』
しかし、決闘を見ている学園関係者たちからは不満ばかりが掲示板に記される。
不格好と言われるように、現状のグエルのディランザは、実を低くして瓦礫に身を隠している。
開始早々、巨大なファラクト-Dをレーダーで確認。接敵したが、多数の大型及び小型のビーム砲によって危うく消滅するところだった。……決闘出力の範囲ではあったので死にはしないのだが。
「ジョージの奴め。エランに余計な知恵つけさせやがって。特許の申請ぐらいしろ!」
悪態と文句をコクピット内部で続けるグエル。情けない姿なのも、不格好なのも自覚している。しかしながら、相手の情報がないうえに、この決闘で負ければさらに失うモノが増える。
そんな彼らしくない後ろ向きになってる気持ちによって、全力を出し切れていないグエルは、身を隠しながら場当たり的な行動しかできなかった。
「ヴァックストン!水星女!お前たちのせいだぞ!余計なことばかりして!」
決闘を止めず、また、止められず、尊敬している兄がモビルスーツではあるが物陰に隠れて敵から逃げているのを見て、ラウダはジョージに詰め寄る。
そして、この場には居ないが構わない。と、スレッタに対しても恨み節をぶつける。
「少し騒がしいですよ?大人しくしていなさい。」
掴みかかってきたラウダに、柔らかく丁寧な言葉をかけながら、強力な張り手でふっとばすジョージ。
「静かになりましたね。」
「ジョージ先輩。イキナリ過ぎないです?」
空中で3回転してから落下し、気を失ったラウダ。そんな彼に一瞥もせず、決闘のモニターを食い入るように見るジョージ。
セセリアが口を引きつらせながら意見を述べる。
「失礼。決闘の審判に気を取られてまして。メディカルルームに運んでおいてください。」
「もう。自分の製品を使われてるからって、グエル先輩に肩入れしないでくださいよ?」
ブーブー言いながらも、ジョージの機嫌が悪いわけではないと分かるとロウジと一緒にセセリアはラウダを介抱しはじめる。
たしかに、グエルのディランザにポン付けしている自社製のバックパックは気になるが、ジョージが気にしているのは、エランのファラクト-Dの方だ。
(ファラクトがぶっ放した大型ビーム砲。アレ、切り替え式の発生機直結型ビーム砲だよな。)
数回の射撃によって、拡散と収束をすぐに切り替えることができる上に、連射する事が可能なのを確認したジョージ。
(……ペイル社に売った覚えがないんだけど?まさか、どこかで漏れたのか?)
試作品ではあるが作って、保管していたはずの『
(まさか。あのグエルが、こんなに消極的な戦闘をするとは思わなかった。想定なら消費した時間の半分で勝負は終わっていたはずなのに。)
今までの機体とは真逆の特性を持った超重量級の改造機体を操るエランは、息を吐く。
(確かに使用感はともかく、負担はマシになっている。)
モビルスーツを操縦して戦闘をおこなうとなれば、通常の人間であるなら体力も消費し、脳も緊張する。命の危機がない決闘でも決着後に動けなくなる者もいる。しかし、『強化人士』である彼からすれば、その疲労も少ない。
(データの上ではその通りなんだろう。)
さらにGUND-ARMを使用しない操縦補佐のシステムもあるため疲労は少なくなる。
『
「体に問題はない。予定時間を超過したことに気を取られただけだ。」
自分の心配なのか。作品を心配しているのか。ベルメリアの質問にいつも通り淡々と言葉を返そうとする。しかし、そうしようとすると感情が乱れようと頭に雑音が生まれる。
息を吐いたのは、自分でも飲み込めない苛立ちを追い出すために、なんとかしようと思ったからだろう。
(グエルや自分自身の挙動の一つ一つが苛立ってしょうがない。)
特徴的なバックパックを背負ったディランザが、物陰からビームライフルとビームバルカンで攻撃をしてくる。
「……」
盲撃ちのような攻撃を放つグエルに更に苛立ちを覚えながら、八脚と推進機によって体に似合わぬ動きで攻撃を回避。
エランは『主砲』のチャージを開始。
『何発射てンだよ!それは!』
グエルの文句を大型ビーム砲が障害物ごと吹き飛ばすために発射された。
「い、一方的ですね。と、止めますか?」
「………」
「??? ジョージ先輩?」
「あ、ああ。今回の条件はブレードアンテナの破壊及び機体の起動不能だ。停止は行えない。そのままで頼む。」
変わらないエランの一方的な押せ押せ状況に心配したのか。同情したのか。ロウジが止めるべきかを尋ねるが、ジョージは反応が遅れながらも、決闘の継続を決定する。
「流石だね。グエルは。」
「ギャラリーの受けは最悪ですけどねー。」
光の奔流とも言えるファラクト-Dのビームが、障害物を吹き飛ばすが、グエルの反応は消えることはない。破片や地面への接触によって機体は傷だらけではあるが、内部や武装へのダメージは殆ど無いだろう。
『よく狙って打たないと、この大きさでも当たらない。たとえ当たったとしても、その距離だと有効打にはならないとは思うけどね。』
『そんな事はわかってる!敵に情けをかけて後悔するなよ!』
モニターでは決闘者の2名のやり取りが聞こえる。エランはほとんど変わらないが、グエルは自分の不甲斐なさと苛立ちを顔に出しながら、感情を相手にぶつける。
このあたりのやり取りを、ただ見るだけならいつも通りなのだが、決闘場の状況を見ると、
『豪快かつ果敢な戦闘を行うグエルは、慎重になって、小心な戦闘を。』
『緻密でありながら、迅速な戦闘を行うエランが、大雑把に無理矢理な戦闘を。』
何時もとは真逆の状況に、決闘委員会も口数が少ない。
「ジョージ。ほとんど喋らないけど、そんなにペイル社の新型に興味があるのかな?」
「……それもありますが、グエル。バックパックを全然使用しないから、今はそっちが気になってまして。」
ポン付けするだけの簡単装着タイプだけど、性能はいいんですけどねぇ。と、ジョージは腕を組む。
そう言われると、決闘委員会の面々も性能とやらは気になる。なにせ、ジョージは滅茶苦茶やってる狂人的な面があるが――最近は、少しおとなしく見えるけど――、開発者としての面もそれなりには知られている。
そんな人間が『使える』という装備を見てみたい好奇心が湧いてきた。
「何が入ってるです?ヒントでもいいから教えてくださいよ。多数の推進機が見えますから、機動力アップ系とか?ねぇねぇ。」
「ベコベコだけどね。」
教えてくれ。と、尋ねるセセリアに、気にはなるけどグエルが転がったり、身を隠してるから凹みと傷だらけで動くのか心配するシャディク。
そんな軽い雰囲気とは違いモニターの向こう側ではグエルのディランザが泥臭く飛び回り、エランがバケモノを操り破壊を振りまいていた。
「バックパックの各種推進機は、重量増加による機動力と運動性低下から保護のためで、あれの中は武器が入ってるんだけど…」
なんで各種推進機や、武器を使わないのだろうか?と、ジョージは言葉を止めて、首をひねる。
「じゃあ、なんで使わないんですか?グエル先輩。」
「忘れてんじゃないのぉ?」
同じ様に首をひねるロウジに、忘れているなら面白そうだ。と、ニヤニヤするセセリア。
「もしかして。マシントラブルかな?」
以前のように試すような態度ではなく、ただ疑問に思ったシャディクはジョージに聞いてくる。
「まさか。絶対にない。断言するよ。」
そんな疑問を鼻で笑うジョージ。これでも、『使用限界まで使える製品を作っている』自負がある。万が一にもマシントラブルやシステムエラーが発生しても、別の方法で使う手段もある。そもそも自信がない製品に、自分の名前や、会社の看板を書き込む訳がない。
……それはともかく。自信満々なジョージではあるが、使わないならともかく、使えないのは技術者としても、パイロットとしても、経営者としても困る。あと、一応友人の心配もしており、使えない理由を考え、調べることにした。
端末を取り出し、グエルのディランザとバックパックのデータの確認を開始した。
「……そりゃ動かん。」
「早いね。原因がわかるの。」
「故障でもなかったですよ。システムのアップデートをしてないから、ディランザ側が認識していないだけでした。」
アホらしい。と、呆れたため息を吐いたジョージ。彼の説明に、周りの面々も呆れたような身振りやため息を行った。
地面に転がって、気絶していると思われたラウダ以外は…
『原因がわかったよ。兄さん。』
その一通のメッセージによって、天秤が動くことになった。
上中下で終わると思ったのになぁ。次回は日曜日までには投稿できると思います。
今回より後書き、前書き。または両方に、ジョージたちオリキャラを掴みやすいよう小話を少しずつ書いていこうと思います。
※ジョージたちの小話 その一
ジョージの特殊な体験である各ガンダムシリーズの知識と経験は、転生や憑依ではなく、『追体験』であり、好きなことも嫌いなことも拒否できない。
※ジョージたちの小話 その二
初めての追体験は、ジョージが3歳の時。初の体験先は『ロームフェラ財団』の『スーパーエレガント』
体験初日に脳疲労と筋疲労で病院に運ばれ、二ヶ月症状が続くことになった。
グエルVSエランの結末はいかに!?
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エラン勝利(データ破損前予定)
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グエル勝利(再構築するしなぁ)
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ダブルKO(甘えるな考えろ)