「二人とも良く動くねぇ。」
アスティカシア高等専門学園や、ベネリットグループに連なる拠点がある場所から遥かに離れた木星で、ジョージの父・フランク率いる開拓団が生中継されているグエルとエランの決闘を見ていた。部下の一人が何の気無しにベネリットグループ内で配信されていることを思い出して、酒の肴に。と、見ていたのだが、今では中々に盛り上がりを見せ、ジュピトリス内部では決闘開始からの単時間に賭けの対象になっているほどだった。
「確かに学生としてではなく、いちパイロットしてもソコソコに。いえ、中々に上手くやっていけるかと。」
「多数同士ではわかりませんよ。」
「命のやり取りではないのでなんとも。」
やんややんやと騒ぎ、楽しむ部下の言葉にフランクは頷く。確かに学生としては別格と言える動きだろう。重箱の隅をつつくような事は言わずに見ごたえのある決闘に酒や食事が進むが、エランがD装備―ダチュラユニット―を展開したことによって、ピタリと動きが止まる。
「「「うわぁ…」」」
分裂し終わったファラクトを見て、時間を取り戻したフランクの部下たちは苦々しい顔をした。自分たちの主の一人息子であるジョージの無茶苦茶は見ているが、ソレはソレ。コレはコレ。流石にソレはダメだろう…
「「「
「ここは木星だからね。ついた頃には終わってるって。」
……などということはなく、そんな悪ふざけはヴァックストンのお家芸だ!と言った反応を示した。駄目だコイツラ染まりきってやがる。
「やったなぁ。オヤジもなぁ。」
良くも悪くも騒ぎが激しくなったジュピトリス内部で、フランクはコメカミを揉みつつ言葉をこぼした。
〜〜 一方。決闘の行われているアスティカシアでは… 〜〜
「エラン!手加減してたな!」
ファラクト本体が発光したのを確認してから、エランの動きが正確に、すばやく、えげつないモノになっていた。ファラクトとD装備の連携の粗も少なくなったのでグエルは攻撃に移るどころか防御も回避も
(自律兵器だか、遠隔操作兵器だかしらないが、あのコバエのようなヤツが厄介だ。)
上空からのファラクト本体ビームも苛烈になり、防御中心だったD装備も地上でのビーム攻撃が追加され、さらにガンビットによるビームの追加によって詰将棋の様に追い込まれているのが分かることもグエルを更に苛立たせていた。しかし、回避する以外に対応するすべもない。
「そのコバエみたいなヤツは、攻撃だけじゃなく探知までやるのか、よ!」
数分前の倍以上のアラート音と、モニターに映る多数のビームを確認しつつもグエルは苛立ちの感情に飲まれないように大声を出して感情を発散する。避けきれなかったビームが外装を少し溶かし、電磁ビームが右足に命中して体勢が崩れる。
「機能停止させる武器だと!とんでもなく面倒だ!」
転倒しそうなディランザを後転させるように一回転させるグエルは機能不全になった右足。いや、ぶらつき、グラつく右足首をロックして戦闘を継続する。エラーがモニターに流れ続けるが、グエルにココで止める考えも、引き下がる感情も浮かんでこない。
「盾と矛と取り巻き。いや、エラン本体を倒すことだけ考えろ。」
満身創痍。敗色濃厚のディランザとグエルからは現状とは違い、気炎が上がるような気迫と勝つための意思が見えるようにプラネイトディフェンサーを展開して後退をやめて、前進を開始した。
『信じられない。この状況で前に出るなんて。それに、パーメットスコアを上げたファラクトたちの攻撃を防ぐなんて。』
「グエル……。」
本当に君は気に食わない。と、言葉を口の中に留めてコチラに向けて前進するディランザに意識を集中させた。
『満足に調整されてない機体で、動きも制限されているのに。』
エランは何時もの感情を押し殺した顔をすることもなく、牙を剥く様に歯を食いしばる。戦闘状況に目を奪われ、このコクピット内部を見ている人が居ないことが本当に彼にとっては幸いだったろう。
「踏まれるだけの人生を歩んでないのに…!」
再びギリリと歯ぎしりをして、右に左に回避しつつも前進するグエルに対して、エランは攻撃速度を更に加速させた。
「どうしたエラン。派手だが雑になったぞ。」
グエルはどこか余裕が生まれたように声を掛ける。返答はないが、数分前まで余裕もなく、感情を発散させるために叫んでいたのとは違って、今は迫る攻撃を淡々と対応できるようになっていた。凡人には信じられないことではあるが、この短時間でグエルの素質とでも言うものが『ファラクト−Dの粗』というものに順応したのかもしれない。そうとしか言えない適応速度だった。
片手片足に大きな不備がありながらも、右に左に避けながらディランザを前進させる。電磁ビームや大型ビームなどの致命傷になりそうな攻撃はプラネイトディフェンサーで防ぎ、細かい攻撃は重量級の機体であるディランザとは思えない動きで回避している。
「これでこちらも射程内だぞ。」
前進し、前進を続けて、ついに大型ヒートアックスでD装備に斬りかかり、ビームキャノンでファラクトに射撃を行う。電磁ビームやビームの雨あられの中なのは変わらないのにである。
「うっそぉ。」
目まぐるしく動く決闘を見ていたシャディクはポカンと口を開けて驚いていた。周りの決闘委員会の面々も同じような表情だ。彼らは知らないが、これを見ているグループ企業のお偉方も一部を除いて同じような反応をしている。
状況が動きすぎることに対する驚きもあるが、エラン擁するペイル社がココまでやることにも、グエルのパイロット技能に不安を吹き飛ばす動きにもだった。
「これ、どうなるんです?」
「さぁ?」
セセリアの疑問に、ジョージも戦う二人に対して驚いて適当に返すが、
「とりあえず。そろそろ決着はつくんじゃないかな?案外、あっけなく。」
と、補足しておいた。
次回。決着させます。広げている話とか。伏線とかを少しずつ回収しないと全部遥か彼方に飛んでいきそう。悪い意味で。
やられ量産機と言えば…?
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