「25人って…。そんなモビルスーツあんのかよ?」
規格外とも言える対戦相手の人数に固まっていた地球寮の面々ではあったが、そんな空気を打ち破るかのようにチュチュがなんとか乾いた笑いを出しながら尋ねる。
半端者たちの寄せ集めが『25機のモビルスーツ』を用意できる財力も施設もあるわけがない。そう考えるのは学園の人間であれば普通のことだ。
もしも、そんな事をできるとしたら、私兵や軍事企業を傘下に持つ上澄みの企業なら用意は可能だろう。
「中古品のハイザックが用意されているらしいわ。」
ああ、なるほど。と、全員が納得した。ヴァックストンだからなぁ。……ではなく、軍事以外でも使えるそれなりの汎用性に、とにかく安価な機体だ。状態や経歴を無視すれば、二束三文と言える価値で購入できるだろう。
「そもそも、登録してないモビルスーツの使用は禁止では?」
そんなに早く使用登録はできないはずですよ?と、ボブが尋ねる。今回ボブが助っ人として参加するのも、ジョージが渡したモビルスーツが使えないのも、地球寮が保有しているモビルスーツのデータを登録してないからだ。
え?ジョージのモビルアーマーや、ボブが使用しているGタイプはって?、そりゃ、作る技術も登録できる地位も処理することが出来る立場もある狂人さんがやってやりましたよ。 そりゃ、何日も徹夜しますわ。
…………自画自賛するわけではないが、ソレだけの能力があるわけだ。
「事前に登録してある。そういう流れになってるのよ!」
バァン!とデスクを叩くミオリネ。普段はムカついてしかたのない。厄介この上ない。鼻につく等々の悪い一言が浮かんでくるだけかと思っていた決闘委員会たちが、横暴に見えるだけで少なからず防波堤になっていたことを知ることになる。それにまたもや苛立ってしまう。いや、知っていたが感情的に認めたくないのが正解と言える。
「………」
ボブも苦々しい顔をしてしまう。この様な学園自治に企業が大っぴらに入り込む様になったのは、自分に大きな一因があると考えたのかもしれない。
『隙を作った者たちも、その様な行動をする者たちも、くだらん。』
『ルールを守らぬ者は処罰しなければならん。しかし、ルールを守っているだけの立場で身を守り、要求を通そうとする無能の話を聞く耳はない。』
苦虫を噛み潰したようなミオリネの耳に、デリングの声が聞こえた気がした。もちろん、デリングがこの場にいるわけもない。ミオリネの記憶の中での一面が出てきたのだろう。
冷徹で冷酷だが、言うだけのことをする男であり、それを知っているから今の状況にミオリネは更に苛立つ。
「ッチ。あたらしいヤツが使えれば数は揃えれるのによ。」
複雑な表情をしているミオリネとボブ。そして人数差があることに黙り込んでいた地球寮の面々の空気を壊すのは、またもやチュチュ。良くも悪くも空気に流されないのだろう。
「………」
しかし、その空気の破り方が舌打ちをして寮長であるマルタンを睨みつける行為というのは、当事者じゃなくとも少し恐怖心を覚えるものだろう。事実、睨まれたマルタンも声も出せずに小さくなっているが、周りの男子生徒も顔がひきっていた。
「なんでもらってすぐに使えるようにしないんだよ!」
「そう言われても…」
今回の件はマルタンの慎重な面が悪い方向に出てしまったのは待ちがない。しかし、まさかこんな事になるとは誰も思わなかったろう。
「ちょっとチュチュ。それはやり過ぎ。」
そんな荒れ始めたチュチュを落ち着かせるニカを見て、ボブはなんとなく地球寮のパワーバランスを理解したような気がした。
解消の方向性や方法は別として、ともかく淀んで居た空気が晴れたことで気を取り戻したミオリネが状況説明を再開した。
「スレッタがホルダーである限り、決闘を受けないといけない。たとえ、この話を受け流せても何時かは断れなくなるわ。」
それに断れたとしても、こんな恥知らずな事をする相手だ。要求も頭数も増えるだろう。それにグエルは(公的には)所在不明。エランは病気療養。ジョージは生死不明。唯一、帰校すれば動けそうなシャディクも明確に戻る時期もわからない。
「ここで調子に乗っている半端者たちに一撃をブチかまし、中身スカスカの連中に侮り難し!ってしなきゃ詰みなのよ!」
本日何度目かのデスク強打をして、お嬢様とは思えない言葉で宣言するミオリネ。勢いに押されてボブ以外の男子生徒は拍手をしている。
「ここで受けないと更に悪くなるのには同感ですね。…ですが、そう仰られても、もう決闘は承認されていて、本日の午後ですよね?」
ミオリネの話には同意を示すボブではあるが、そんな事より決闘に関する現実的な話をするべく決闘の日時を伝えた。
「………」
しかし、ミオリネは悩むように眉を寄せて、口を閉じてしまった。なにせ、このアスティカシアで多人数戦を経験している生徒が片手も居ない。居たとしても3機〜5機程度。機体の種類は別としても、25機なんて機数相手はいるわけもない。――この規模は『
この世界で人類を統率・統一できるような強い政府が存在していないのもあり、自衛のために私有戦力を多くもっているのだが、学生のレクリエーションで出す数ではない。
「数で揉み潰される未来しか思いつかねぇ。」
「そうそう。大穴どころか賭けにもなってない。」
ムリー。と、情けない声を出したのは、賭け事好きのヌーノとオジェロの二人組。両手を上げて首を振る。
敵の数と機体は分かっていても戦闘区域はランダム。寄せ集めの敵ではあるが、こちらも当日に集められた即席メンバー。
「あ、当たって砕けます!」
「砕けちゃダメだろ。」
悪い事項しか出てこない状況に飲まれない気合を込めて、スレッタは負けません!と、気勢を上げるが、周りの面々はお前が砕けたら一番ダメだろ。とツッコミを入れる。
しかし、不確定要素が多く、ぶっつけ本番になるのでは…。考えても考えても答えの出ないまま、時間が過ぎる。
「エアリアルが負けなければ良し!」
「全部ぶっ飛ばせば問題なし!」
「勝てば大穴万馬券だ!」
考えすぎて、ぷっつり切れたのか。全員が「スレッタ守る。テキ殺す。」という考えで一致してしまい、作戦らしい作戦もなく決闘に挑むことになる。
「………確かにそういう結果になれば問題ないわね。ああ、頭が痛い。」
「できる限りのことはさせていただきます。」
何も前向きな作戦が浮かばなかったミオリネは不満そうに頭を抱えた。そんなミオリネに全力を尽くすことをボブは誓う。
もはや、地球寮全体が考えるより、動く方向にシフトしてしまい、話し合い続行は不可能になっていたので、やるしかない。
「私一人じゃ、何も出来ない…!」
解散した地球寮のエントランスで、ミオリネが何も出来ない自分の無力さに項垂れる一方で、
「ハイザック25機か。」
新たな出発一歩目に相応しい試練と、新しい玩具を使える。と、ボブは自分の肩書や過去を気にせずに働ける場所に感謝していた。
※次回予告(多分)
『ネームドキャラが乗ったワンオフガンダムに、三下モブのハイザックが勝てるわきゃねぇだろぉ!!』
『このガンダムすごいよ!さすが宇宙世紀産のフラッグシップカスタム機!パワーがあふれる!』
『ハイパーメガキャノンである!!』
次回・ハイザック死す。
※だいたい合ってるぐらいのものです。セリフやテンションに関しては保証しません。次回は来週の水曜までには投稿できると思います。
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