「ヴァックストンに喧嘩売るなんて、ドコの馬鹿だ!」
「ニコラス!モビルスーツを貸せ!」
「万が一があったらご当主様たちに顔向けできません!おとなし――「高熱源体多数接近!衝撃に備えて!」
火星支部の旗艦であるアガメムノン級改装型・イグアスに多数のミサイルが降り注ぐ。対空砲火の網をくぐり抜けた数発が命中して船を大きく揺らす。
「各艦。全砲門自由射撃!モビルスーツ隊発進!まさか先手を取られるとは、不覚です!」
「後悔する前に、反撃!反撃!モビルスーツ貸せって!」
小惑星群にジョージを迎えに出た火星支部艦隊であったが、ジョージを回収し、いざ帰るというところで、小惑星群に潜んでいた所属不明の部隊に奇襲を受けてしまった。
艦砲とミサイルの二段階攻撃を受けて被害を出してしまったヴァックストン火星支部部隊であったが、奇襲を凌ぎつつ艦隊での反撃とモビルスーツ部隊を発進させた。予備のモビルスーツを望むジョージであったが、
「無理です!大人しくしてください!それにしても、我々のレーダーの探知網を掻い潜って攻撃を受けるとは…」
支部長のニコラスはその望みを失態に後悔しつつも萎縮もせずに、頑なに拒否をする。いくら後継者とはいえ、月支部長のケンイチロウ以外は直属の部下ではない。拒否されても仕方がない上にニコラスの言う通り、乗り慣れない量産機で万が一あったら彼1人の首では済まない。
「この頑固者が!」
「それでこの地位に付きましたので!各モビルスーツは艦砲の射線に飛び込むなよ!各艦は敵モビルスーツの奇襲も有り得る。レーダーから目を離すな!」
奇襲を受けたときは少しばかり慌てたが、体勢を立て直せば数に勝る火星支部艦隊。ニコラスの面白みもないが堅実な指揮により戦況はヴァックストン側にすぐさま傾く。
『若旦那。戦功立てたらボーナスよろしく!』
『ハイザックより動きが軽ぅい。』
「気を抜くな!あと馴れ馴れしいぞ!公的な記録が残るのだから気をつけろ!」
見た目は派手に見えるがカチカチの司令官。それとは反対にノリノリイケイケの勇猛な部下たち。火星支部は司令官と戦闘員が正反対でありなが、ニコラスの薫陶が行き届いている。
そのため、ヴァックストン本拠の地球と、最前線とも言える木星の中間点である火星を任される『迅速性と堅実さ』を兼ねている部隊であるとも言える。今回は奇襲を受けてしまったのは猿も木から落ちるというものだったろう。……そんな説明はともかくとして。
攻撃が飛んでこなくなった火星支部旗艦・イグアスのブリッジで、ジョージは敵の戦闘艦が中隊規模のマラサイとゼク・アインによって包囲され、攻撃を開始するのを確認した。
『思ったより硬ぇな!』
『対空砲台が少ない分。装甲を硬くしたのか?』
敵の戦闘艦は、火力と防御力は優れている様だが、モビルスーツを搭載している様子もなく、対空砲台も脅威になるほどではないように見える。
油断は出来ないが、このままの状態なら消化試合になるだろう。ニコラスは通信機を取り、いくつかの方法を使って連絡を取り合おうとするが……
「救難チャンネル。広域のチャンネル。また、海賊が使用する事の多いチャンネルでも反応なし、か。」
全く通信に対して反応しない正体不明の面々。心なしか砲撃速度が上がった気がするが、その程度では意味がない。
「終わったな。」
「周囲に熱源は確認できません。モビルスーツ隊からの目視にも反応は無いと報告を受けています。」
結局。何も反応すること無く、数隻の戦闘艦は全滅した。ジョージが出ることもなければ、ニコラスのベルフェゴールの出番もない。
中隊規模のマラサイとゼク・アインに囲まれての攻撃や、アガメムノン級やサラミスの艦砲によって、最後の最後まで粘ったが戦況は変わることはなく、火星支部艦隊の勝利に終わった。
「ジョージ様。すいませんが、アスティカシアへお送りするのは状況確認後になりそうです。」
戦闘は終わり、安全確保のために哨戒を出しつつユックリと艦隊は火星支部に戻ることになった。
「コッチは私用だから構わないよ。迎えに来てくれてだけで助かってる。」
火星支部に死人は出なかったが、怪我人は出てしまっており、船にも損害が出てしまった。被害状況と安全確保が出来るまでは……。と、ニコラスは申し訳ないと頭を下げる。
しかし、ジョージとしては支部艦隊を私用で使ったのが、被害を出させた原因でもあるので、これ以上のワガママを言うつもりもなかったのでニコラスの頭を上げさせた。
(2日程度だと思ってたが、数日は帰るのが遅くなりそうだな。まったく、もう。)
結果的にジョージの帰校は数日遅れ、正体不明の戦闘艦も回収して分析したが、ベネリットグループやそれに類する企業の製品・部品を使ってはいるが、正規品ではなく、登録外の改造品ということだけがわかるだけだった。
「まぁ、なんとかなるかな。」
イグアスの艦橋で気楽に考えていたジョージではあったが、学園に戻った頃にはかなりドロドロになっているとは思いもしなかった。
ジョージくん。帰宅・帰校中。帰ってビックリな状況になるとは知る由もなく…。次は大人たちの動く番です。大人というのはシガラミが多いのです。
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